シリーズ「横やり人生相談」です。世の中には自慢話ばかりする人がいます。職場でこういう人といっしょになったとき、どう対処すればいいかという相談です。
「勤務中 同僚が自慢話ばかり」 読売新聞「人生案内」(2011年12月15日 )
20代会社員女性。職場の同僚である50代女性についての相談です。
私の勤める会社は、社長以外の社員が私とこの女性だけという小さなところです。彼女は、私と2人きりの時に必ずといっていいほど自慢話をします。例えば、自分の子どもがいかに高学歴でいい会社に就職したかとか、友人の収入がいかに高いかとかです。
ほかにも、学歴や出身地域などで人を差別するような発言も頻繁にしてきます。しかも彼女は一度話を始めたら、30分は絶対に止まりません。最近は、何度も同じ話をするようになっています。
私はそんな話を聞きたくないので、いつもつまらなそうな態度をとりますが、彼女の話は一向に止まりません。勤務時間中ずっとそんな感じなので、彼女の仕事はミスだらけ。その尻ぬぐいを私がやらなければならないこともしばしばです。
彼女の相手をすることにほとほと疲れています。一体どうすれば、ストレスをためずにこのような人とうまくやっていくことができますか。(京都・K美)
この相談の回答者は、弁護士の土肥幸代さんです。土肥さんは「彼女の仕事中の自慢話や世間話は適当に聞き流し、取り合わないことです」と言い、同僚の仕事のミスをフォローするのも給料のうちだから、ストレス発散に工夫しなさいとアドバイスします。
私がこの回答に納得いかないのは、「彼女の仕事中の自慢話や世間話は適当に聞き流し、取り合わないことです」という部分です。
確かにその通りなのですが、相談者はそれができないから悩んで相談しているわけですから、どうすれば聞き流して、取り合わないでいられるかというところまでアドバイスしなければならないと思うのです。
というわけで、私なりの回答をしてみます。
私は相談者に、まず同僚である50代女性のことをよく観察しなさいとアドバイスします。
その女性は、誰彼かまわず自慢話をしているのではないはずです。たとえば、その会社にはもう1人社長がいるわけですが、社長に対してはそんなに自慢話はしないでしょう。一度はしても、二度三度はしないはずです。また、その女性に何人か友だちがいるとすれば、自慢話をする人としない人がいるはずです。
つまり自慢話をする人というのは、自慢話をするとうらやましがってくれる人に対してするわけです。
普通の人は、一度聞いたときはうらやましく思うかもしれませんが、何度も同じ話を聞かされると、もううらやましいという感情はわかず、馬耳東風とかカエルの面にションペンとかいう感じになりますし、さらには何度も同じ話をする人間を軽蔑するようになります。そうすると、自慢話をする人も、自慢話をする意味がなくなるので、しなくなります。
ということは、この相談者は何度も同じ話を聞かされているのに、そのたびにうらやましいという反応をしているのではないかと想像されます。相談者は「私はそんな話を聞きたくないので、いつもつまらなそうな態度をとりますが」と書いていますが、「態度をとります」ということは演技をしているということで、それを見抜かれているのです。
また、この同僚女性は差別発言を頻繁にするということですから、うらやましがらせるだけでなく、いやがらせも目的になっているのでしょう。そして、相談者は「彼女の相手をすることにほとほと疲れています」と書いているように、毎回いやがるので、いやがらせの格好のターゲットになっているわけです。
以上のことを理解すれば、対策もおのずと出てくるでしょう。
相談者は、子どもの学歴や会社の話や、友人の収入の話を聞いて毎回うらやましがるような人間で、ということはもし自分に自慢のタネがあったら人に何度も自慢しかねないのです。つまり、相談者は同僚女性と同じレベルかもっと下のレベルの人間なのです。
自分は自分が忌み嫌っている人間と同じレベルの人間であるというのは、考えるだけでいやなことですから、人間はそう認識した瞬間にそのレベルから抜け出すことができます。
つまり相談者は、同僚女性と同じようなレベルの人間なのに、自分はもっとましな人間だと思っていて、自己認識が間違っています。そのため自己をレベルアップさせることができないでいるのです。
また、「勤務時間中ずっとそんな感じなので、彼女の仕事はミスだらけ」といいますが、話をするからミスをするとは限らないでしょう。尻ぬぐいをするのもいやのようですが、そういうことは社長も見てくれているはずですし、仕事のためなのですから、いやがることではありません。「同僚女性の仕事はミスだらけで、自分が尻ぬぐいをしている」という認識もあやしいものです。
要するに相談者は、自分が同僚女性と同じようなレベルの人間だということに早く気づくことです。そうして自己認識を正しくすれば、おのずとそのレベルを脱することができます。
そうすれば、同僚女性からなにをいわれても気にならなくなります。