村田基の逆転日記

進化倫理学の威力を試すブログ

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イギリスが始めたロシアの外交官追放は、報復の連鎖を呼んで、米欧側とロシアがそれぞれ150人以上の外交官を追放する見通しとなりました。これは冷戦終結後最悪の事態だということです。
外交官追放になんの意味があるのかよくわかりません。国際政治の古典芸能を見ている気分です。
 
そもそもの始まりは、イギリスのスパイであったロシア人のセルゲイ・スクリパリ氏がロシアで逮捕され、アメリカとのスパイ交換でアメリカに渡り、さらにイギリスに亡命したのですが、3月4日、娘さんとともに意識不明の重体となって倒れているのが発見されたことです。
重体となった原因がロシアで開発されたノヴィチョクという神経剤であったとしてイギリス政府はロシアの犯行と断定し、ロシアの外交官追放に踏み切ったわけです。
イギリスはアメリカやEUの国にも同調を呼びかけ、大ごとになりました。
 
ノヴィチョクが検出されたからといってロシア政府の犯行と決められるかという問題があります。ノヴィチョクは冷戦崩壊後外国に流出したともいわれますし、アメリカやイギリスはその化学組成がわかっているので、自分でつくることもできるはずです。
 
それに、被害にあったのはロシア人でイギリス人ではありません。
イギリス政府もスパイ活動においては暗殺もしているはずです(フィクションとはいえ007は殺しのライセンスを持っています)
また、被害にあった2人は今でも意識不明の重体です。ですから、暗殺事件ではなく暗殺未遂事件です。
 
どう考えても、この事件はそんな大ごとになることではありません。
では、なぜイギリス政府はこの事件を大ごとにしているかというと、やはり冷戦構造を維持するためでしょう。
 
ロシアは今では資本主義国で、国際共産主義運動をしているわけではないので、放っておくと冷戦構造はなくなって、NATOの存在理由もなくなってしまいます。
そうならないようにNATO諸国はいろいろな理由をつけてロシアを敵視するように努めてきました。
平昌五輪のときは、国ぐるみのドーピングを理由にロシアに国としての参加を認めませんでした。
 
鳩山由紀夫元首相は、6月にロシアでサッカーのワールドカップが開催されるので、それに合わせてやったのだという説をツイッターで述べています。
 
 
私自身は、トランプ大統領とプーチン大統領の会談を阻止するためだと思っています。
 
トランプ大統領は3月9日に突然米朝首脳会談を行うと発表し、世界を驚かせました。
トランプ大統領は前からプーチン大統領と会談したがっていましたから、米ロ首脳会談もやりかねません。
現に20日にはトランプ大統領はプーチン大統領に大統領選勝利の祝辞を送り、その際に会談の可能性についても協議したと発表しています。
 
アメリカとロシアが手を組めば、冷戦構造は崩壊してしまいます。これにはアメリカの共和党も民主党も反対で、そのために大統領選へのロシアの干渉を大ごとにしてきました。
イギリスも、冷戦構造があるからこそアメリカといちばん親しい国としてヨーロッパ諸国に対して優位に立てるので、米ロ首脳会談はなんとしても阻止したいはずです。
 
イギリスの要請に応えてロシア外交官の追放を表明した国は25か国になったそうです。
 
トランプ大統領は史上最低の米大統領ですが、プーチン大統領と仲良くやれそうなのは唯一いいところです。しかし、そのよさも封じられています。
 
日本もイギリスから外交官追放合戦に参加するように要請されているはずですが、そんな茶番劇に乗る必要はまったくありません。

3月22日、ベルギーの空港と地下鉄で同時テロがあり、少なくとも34人が死亡しました。
マスコミは例によって盛大な差別報道をしています。朝日新聞は25日の朝刊もこの事件が一面トップでしたが、「地下鉄駅での爆発に関与したとみられる新たな容疑者が浮上した」というたいしたことのない内容です。
 
ベルギーのテロの3日前である19日にはトルコのイスタンブールで自爆テロがあり、4人が死亡し、その前の13日にはやはり自爆テロで37人が死亡しています。そのときの報道はある程度大きいものでしたが、あと追いの報道は、犯人はクルド系組織かISかといったものだけでした。
そもそもトルコではこの半年にテロで亡くなった人が180人以上になると毎日新聞が伝えています。
 
トルコ
自爆テロ、半年で4回 死者は計180人以上
 
トルコでのテロはあまり報道せず、ベルギーでのテロは大きく報道するというのは、どういうことでしょうか。人の命の価値に違いはないはずです。
 
20151113日にパリで同時多発テロがあり130人が死亡したときは大きく報道され、フェイスブックは顔写真のアイコンをトリコロールに変えられるサービスをするなどして、世界的に犠牲者を悼む声があふれました。しかし、その前日にはレバノンのベイルートで43人が死亡する連続自爆テロが起きていたのですが、こちらはほとんど顧みられませんでした。このときは「フランス人の命はレバノン人の命よりも重要なのか」という指摘があって、けっこう議論になりました。
そのときの教訓が今回に生かされたかというと、そんなことはぜんぜんありませんでした。
 
もっとも、人々の関心が文明の進んだ国に向かいがちなのも事実です。アフリカのどこかの国で何十万人も餓死者が出ているといったことは、小さなニュースにしかなりません。
 
ただ、トルコはそんなに遅れた国ではありませんし、日本とは関係が深く、安倍首相も二次政権になってから2度も訪問しています。海外旅行先としても人気です。
それなのに日本のメディアがベルギーと差をつけるのはどうしてかというと、やはり欧米の文化を崇める気持ちがあるからでしょう。欧米コンプレックスという言い方もできます。
 
これはメディアだけではなく日本人全体の問題です。日本人は明治維新以来、欧米からさまざまなことを学んできましたが、そのときに人種差別、イスラム教差別も学んでしまったのです。
 
欧米における人種差別、イスラム教差別はひじょうに根深く、これこそがテロを生む原因です。
ベルギーを含む有志連合はISへの空爆を続けてきましたが、ISの戦闘員やイラク人、シリア人の民間人を殺すことをなんとも思っていないようです。これが差別意識です。
 
しかし、相手は人間ですから、やられっぱなしでいるわけはなく、報復してくるのは当然です。報復されて、あわてふためいているのはおかしなことです。
 
そもそもはイスラエルが独立を宣言したとき、アメリカなどが支援したのも、そこに住んでいたパレスチナ人などを人間と見なしていなかったからでしょう(アメリカとしては先住民を追い払って建国した歴史の繰り返しです)。
そのときから欧米キリスト教諸国が中東のイスラム教徒を迫害するという構図が始まり、軍事力でアメリカやイスラエルに勝てないイスラム教徒はテロを手段にするようになったわけです。
 
最近は自爆テロが当たり前になっています。死ぬ覚悟の人間を止める方法があるとは思えません。今のテロ対策はみんなごまかしです。
テロの原因となっている人種差別、イスラム教差別をなくすしかありません。
 
安倍首相はベルギー同時テロについて、「いかなる理由があろうとも断じてテロは許されない。日本と価値を共有するベルギー、欧州連合が困難に直面している今、強い連帯を表明する」と発言しました。
「日本と価値を共有する」とは、まるで人種差別、イスラム教差別を共有しているみたいです。
欧米に追随するだけでは世界になんの貢献もできません。

前回の記事で、パリ同時多発テロで妻を亡くしたフランス人ジャーナリストの文章を読むと、“憎しみの連鎖”を断ち切るようなものではなく、ぜんぜん共感できないということを書きました。
しかし、あまり説得力がなかったかもしれません。こういうことは、比較する対象があるとよくわかるものです。
 
そこで、同じくテロ被害にあったマララさんの国連総会でのスピーチの一部を引用します。
フランス人ジャーナリストの文章も再掲するので、比較してください。
 
 
マララさんの国連演説の全文(翻訳)から
 
親愛なるみなさん、2012109日、タリバンは私の額の左側を銃で撃ちました。私の友人も撃たれました。彼らは銃弾で私たちを黙らせようと考えたのです。でも失敗しました。私たちが沈黙したそのとき、数えきれないほどの声が上がったのです。テロリストたちは私たちの目的を変更させ、志を阻止しようと考えたのでしょう。しかし、私の人生で変わったものは何一つありません。次のものを除いて、です。私の中で弱さ、恐怖、絶望が死にました。強さ、力、そして勇気が生まれたのです。
 
私はこれまでと変わらず「マララ」のままです。そして、私の志もまったく変わりません。私の希望も、夢もまったく変わっていないのです。
 
親愛なる少年少女のみなさん、私は誰にも抗議していません。タリバンや他のテロリストグループへの個人的な復讐心から、ここでスピーチをしているわけでもありません。ここで話している目的は、すべての子どもたちに教育が与えられる権利をはっきりと主張することにあります。すべての過激派、とりわけタリバンの息子や娘たちのために教育が必要だと思うのです。
 
私は、自分を撃ったタリバン兵士さえも憎んではいません。私が銃を手にして、彼が私の前に立っていたとしても、私は彼を撃たないでしょう。
これは、私が預言者モハメッド、キリスト、ブッダから学んだ慈悲の心です。
これは、マーティン・ルーサー・キング、ネルソン・マンデラ、そしてムハンマド・アリー・ジンナーから受け継がれた変革という財産なのです。
これは、私がガンディー、バシャ・カーン、そしてマザー・テレサから学んだ非暴力という哲学なのです。
そして、これは私の父と母から学んだ「許しの心」です。
まさに、私の魂が私に訴えてきます。「穏やかでいなさい、すべての人を愛しなさい」と。
 
 
テロで妻を失ったレリスさんのメッセージ和訳全文
 
 金曜の夜、君たちは素晴らしい人の命を奪った。私の最愛の人であり、息子の母親だった。でも君たちを憎むつもりはない。君たちが誰かも知らないし、知りたくもない。君たちは死んだ魂だ。君たちは、神の名において無差別な殺戮(さつりく)をした。もし神が自らの姿に似せて我々人間をつくったのだとしたら、妻の体に撃ち込まれた銃弾の一つ一つは神の心の傷となっているだろう。
 
 だから、決して君たちに憎しみという贈り物はあげない。君たちの望み通りに怒りで応じることは、君たちと同じ無知に屈することになる。君たちは、私が恐れ、隣人を疑いの目で見つめ、安全のために自由を犠牲にすることを望んだ。だが君たちの負けだ。(私という)プレーヤーはまだここにいる。
 
 今朝、ついに妻と再会した。何日も待ち続けた末に。彼女は金曜の夜に出かけた時のまま、そして私が恋に落ちた12年以上前と同じように美しかった。もちろん悲しみに打ちのめされている。君たちの小さな勝利を認めよう。でもそれはごくわずかな時間だけだ。妻はいつも私たちとともにあり、再び巡り合うだろう。君たちが決してたどり着けない自由な魂たちの天国で。
 
 私と息子は2人になった。でも世界中の軍隊よりも強い。そして君たちのために割く時間はこれ以上ない。昼寝から目覚めたメルビルのところに行かなければいけない。彼は生後17カ月で、いつものようにおやつを食べ、私たちはいつものように遊ぶ。そして幼い彼の人生が幸せで自由であり続けることが君たちを辱めるだろう。彼の憎しみを勝ち取ることもないのだから。
 
 
マララさんもレリス氏もテロにあって心が傷ついたはずですが、根本的なところで違います。マララさんはテロリストを憎まず、許していますが、レリス氏は「幼い彼の人生が……君たちを辱めるだろう」と、テロリストに対する勝利予告をしています。
 
ノーベル平和賞受賞者と一ジャーナリストを比べるのは不公平かもしれません。
それに、マララさんとテロリストはどちらもイスラム教徒ですが、レリス氏はおそらくキリスト教徒で、レリス氏にとってテロリストは異教徒であるという違いもあります。
また、マララさんのスピーチはテロにあってからかなり時間がたっていますが、レリス氏が文章を書いたのはテロ直後ということもあります。
ですから、レリス氏の文章に不十分なところがあってもしかたのないことです。
 
しかし、レリス氏の文章に感動したり共感したりすると、間違った方向に行ってしまいかねません。
 
ふたつの文章を比較すると、テロに打ち勝つにはどちらの道を行かなければならないかというのは歴然としています。
 
それにしても、パリ同時多発テロ以降の欧米の反応を見ていると、「汝の敵を愛しなさい」というキリストの教えはすっかり忘れられているようです。

パリ同時多発テロ以降、フランスはIS(イスラム国)への空爆を強化しています。まさに“憎しみの連鎖”です。
そうした中、パリ同時多発テロで妻を亡くしたフランス人ジャーナリストのアントワーヌ・レリス氏がフェイスブックに書いた文章が世界中に共感の輪を広げたということで、日本でも各紙が取り上げています。
 
「君たちに憎しみという贈り物はあげない」――。パリ同時多発テロで妻を亡くした仏人ジャーナリストが、テロリストに向けてつづったフェイスブック上の文章に、共感が広がっている。
 
憎しみの連鎖を断ち切るには寛容の精神が必要です。そういうことを訴えているのかと思って読んでみると、どうも様子が違います。
 
 
テロで妻を失ったレリスさんのメッセージ和訳全文
 
金曜の夜、君たちは素晴らしい人の命を奪った。私の最愛の人であり、息子の母親だった。でも君たちを憎むつもりはない。君たちが誰かも知らないし、知りたくもない。君たちは死んだ魂だ。君たちは、神の名において無差別な殺戮(さつりく)をした。もし神が自らの姿に似せて我々人間をつくったのだとしたら、妻の体に撃ち込まれた銃弾の一つ一つは神の心の傷となっているだろう。
 
 だから、決して君たちに憎しみという贈り物はあげない。君たちの望み通りに怒りで応じることは、君たちと同じ無知に屈することになる。君たちは、私が恐れ、隣人を疑いの目で見つめ、安全のために自由を犠牲にすることを望んだ。だが君たちの負けだ。(私という)プレーヤーはまだここにいる。
 
 今朝、ついに妻と再会した。何日も待ち続けた末に。彼女は金曜の夜に出かけた時のまま、そして私が恋に落ちた12年以上前と同じように美しかった。もちろん悲しみに打ちのめされている。君たちの小さな勝利を認めよう。でもそれはごくわずかな時間だけだ。妻はいつも私たちとともにあり、再び巡り合うだろう。君たちが決してたどり着けない自由な魂たちの天国で。
 
 私と息子は2人になった。でも世界中の軍隊よりも強い。そして君たちのために割く時間はこれ以上ない。昼寝から目覚めたメルビルのところに行かなければいけない。彼は生後17カ月で、いつものようにおやつを食べ、私たちはいつものように遊ぶ。そして幼い彼の人生が幸せで自由であり続けることが君たちを辱めるだろう。彼の憎しみを勝ち取ることもないのだから。
 
 
レリス氏の言っていることは、空爆による報復とは一線を画していて、そういう点で共感されるのはわかります。
 
しかし、私が気になったのは「上から目線」です。
 
「君たちと同じ無知に屈することになる」という表現は、相手をきわめて下に見ています。
「君たちが決してたどり着けない自由な魂たちの天国」という表現も、妻と自分は天国に行けるが君たちは行けないという意味で、宗教的対立の宣言です。
 
それから、戦いを意味する表現がいくつもあります。
「君たちの負けだ」とか「君たちの小さな勝利を認めよう」とか「世界中の軍隊よりも強い」とか「君たちを辱めるだろう」とか「彼の憎しみを勝ち取ることもない」とかです。
つまりレリス氏は心理的には戦闘モードにあって、テロリストと戦っているのです。
 
ただ、その戦い方が、武力によるのではなく、精神的に優位に立とうとする戦い方なのです。
 
全体の印象をいえば、レリス氏は見下していた相手から一撃を受けて倒され、その屈辱感を解消するために、相手より精神的に優位に立とうとしてこの文章を書いたという感じです。
 
オランド大統領は屈辱感を空爆の強化によって解消しようとしています。手段は違いますが、それだけの違いでしかありません。
 
テロリストを自分と同じ人間と見なして許すというのが寛容の精神ですが、そういうものはまったくありません。
 
フランスはアルジェリアの独立運動を弾圧して残虐な拷問などを行いましたが、植民地支配についてはいまだに謝罪していません。
日本人にも植民地支配を謝罪しない人がいますが、フランス人はもっとひどいわけです。
やはりそこには人種差別とイスラム教差別が根強くあると思います。
 
ヨーロッパ人でレリス氏の文章に共感する人がいるのはわかりますが、日本人はこの文章にはあまり共感できないはずですし、好意的に紹介する日本のマスコミもどうかしています。

1113日、パリで同時多発テロがあり、百数十人が亡くなりました。
これについてIS(イスラム国)が犯行声明を出しています。
 
 

パリ同時テロISが犯行声明

 
パリの同時テロ事件について、過激派組織IS=イスラミックステートを名乗るグループは、14日、インターネット上に「キリスト教徒の国フランスに対するパリでの聖なる攻撃」と題する犯行声明を出しました。
 
声明の中で、このグループは、「パリの選び抜いた場所で8人のメンバーが自動小銃と体に巻き付けた爆発物で攻撃を行った」として、スタジアムやコンサートホールの名前を挙げるなどして、これらの場所を同時に攻撃したと主張しています。
そのうえで、「フランスはISの攻撃対象であり続ける。なぜならイスラム教の預言者を侮辱したり、ISの領土に空爆を加えたりしているからだ。今回は最初の攻撃にすぎず、その通告として行ったものだ」と述べ、フランスの空爆を非難するとともにさらなる攻撃をほのめかしています。
 
 
フランスは有志連合に加わってISへの空爆をしていますから、それに対する報復ということでしょう。コンサートホール「ルバタクラン」で銃を乱射した犯人は「オランドのせいだ。お前らの大統領のせいだ。シリアに介入すべきではなかった」と言っていたという報道もあります。
空爆されたからやり返すというのは、彼らとしては当然の論理です。
 
これに対してオバマ大統領は「市民を恐怖に陥れる非道な企てだ。これはフランスに対する攻撃ではなく、世界的な人権に対する攻撃だ。米国は、フランスとともにテロや過激主義に立ち向かう」と語りました。
また、オランド大統領は「攻撃はフランス国内の支援を得て、海外で計画され組織されたものだ。フランスに対してだけでなく自由な声を発する多くの国に対して行われたもので、フランス国内外でISに対して容赦ない措置を取る」と語りました。
 
ぜんぜん話がかみ合っていません。ISは「空爆への報復」だと言っているのに、オバマ大統領は「世界的な人権に対する攻撃」だと見なし、オランド大統領は「自由な声を発する多くの国」に対する攻撃と見なしています。
オバマ大統領やオランド大統領は、「ISへの空爆は正当なものだ。それに報復するのは不当な逆恨みだ」というふうに主張してこそ、ISへ反論したことになります。
 
オバマ大統領やオランド大統領は武力を使うのは得意ですが、言論を使う能力を欠いているようです。これではISがどんどん支持を広げるのは当然です。
 
9.11テロのときも同じことがありました。ビン・ラディンはアメリカの中東政策に反対してテロを行ったのに、ブッシュ大統領は「文明への挑戦」と見なして、武力行使に走りました。このときブッシュ大統領はビン・ラディンに公開討論を申し入れるということもできたはずです。
 
つまりアメリカはテロに対して言論の力を行使せず、もっぱら武力行使をしてきたわけです。
一方、テロリスト勢力は武力ではアメリカに負けるため、言論の力を頼りにせざるをえませんでした。
その結果、「ペンは剣よりも強し」というように、アルカイダは勢力を伸ばし、インターネットをより巧みに使うISはさらに勢力を伸ばしてきたわけです。
 
今私たちは、武力でテロを抑え込もうとするのか、言論の力でテロを解決するのか、分かれ道に立っています。
 
なにも公開討論をする必要はありません。アメリカはテロリスト勢力と交渉すればいいのです。
イギリスのブレア首相はIRA(アイルランド共和国軍)と交渉して、IRAのテロを終わらせました。話し合えばテロは解決できるといういい例です。
 
田原総一朗氏もツイッターでこのように発信しています。
 
 
田原総一朗 ‏@namatahara  
パリのテロでフランスは非常事態宣言をした。テロは許し難い行為ではあるが、イスラム国の攻撃を激しくしてもテロは収まらない。むしろ思い切って外交による交渉をすべきだ。どこか沖縄県と日本政府の対立と似ている。なぜ政府はもっと時間をかけて沖縄と話し合えなかったのか。
 
田原総一朗 ‏@namatahara

沖縄とイスラムを同一視してるのではないです。沖縄に沖縄の論理があるように、イスラムにはイスラムの論理がある。アメリカやフランスがイスラムの論理を踏みにじって武力で封じ込めようとするからテロが起きるのだ。

 
 
このような発想は日本人としては当たり前のことだと思いますし、こうしたことを世界に訴えるところに日本のよさが発揮できます。
 
ところが、安倍首相は「共通の価値観を奉ずるフランスが、いま困難に直面している。日本国民はフランス国民とともにある」とか「日本ができることはなんでもする」とか言っています。武力行使がしたくてたまらないようです。

鳩山由紀夫元首相がクリミアから帰国しましたが、おかしな報道ばかりです。
たとえば、鳩山元首相が「パスポートを没収されればクリミアに移住することもある」と語ったということが報道されています。
しかし、日本でパスポートを没収されたら出国することができないので、クリミアに移住することもできません。ロシアにいる鳩山氏から日本政府がパスポートを没収するということもできるはずありません。
わけのわからない報道だなと思っていたら、テレビニュースの映像を見て納得がいきました。鳩山元首相は含み笑いをしながらしゃべっているのです。つまり記者から「パスポートを没収されたらどうするのですか」と聞かれて、そんなことがあるわけないと思って、冗談を言ったのです。
 
冗談をまともな発言のように報道するのはどうかしています。
 
いや、もっとどうかしているのは、日本政府の中に鳩山氏からパスポートを取り上げるべきだという声が出たことです。
これはもちろん言論の自由の否定です。
マスコミは鳩山氏の冗談を伝えるのではなく、日本政府の中に言論の自由を否定する声が出ていると、そちらをきびしく批判するべきです。
 
とにかくマスコミは、なにがなんでも西側寄りの報道をしなくては気がすまないようです。
次の毎日新聞の記事もへんです。
 
鳩山元首相:「納得できた」…クリミア編入に肯定的意見
 【モスクワ真野森作】ロシアメディアによると、ウクライナ南部クリミア半島を訪問中の鳩山件由紀夫元首相は11日、「民主的な住民投票を通じて、どう領土問題が解決されたか納得できた」と述べ、昨年3月のロシアによる一方的なクリミア編入を肯定的に捉える考えを示した。日本や欧米諸国が編入を国際法違反と批判する中、波紋を広げそうだ。
 
 クリミア南部ヤルタの地元首長との面会時に語った。「世界史に残る出来事になる」「住民投票がウクライナの法令にも合致していたことが分かった」などとロシア政府の見解に沿った感想も披露したという。
 
 現地の記者団には、「市民が幸せに暮らしている様子を見ることができた。軍事的影響を受けずに住民投票が実施されたのは明確だ。西側メディアは偏っている」と述べた。今回の訪問を日本政府に批判されたことについては、「批判があるのは我々の仕事が重要だからだ」と主張。「日本社会に編入の真実を伝える」と述べた。
 
 クリミア編入について、ロシアは昨年3月に親ロシア派主導で実施した住民投票で「賛成が9割」だったことを根拠に正当化してきた。だが、プーチン露大統領は今月9日放映のインタビューで、昨年2月にウクライナの親露政権が崩壊した直後に編入を決断したと明らかにしていた。
 
これはあくまで鳩山氏のクリミアでの言動を伝える記事ですが、最後の段落、『クリミア編入について、ロシアは昨年3月に親ロシア派主導で実施した住民投票で「賛成が9割」だったことを根拠に正当化してきた。だが、プーチン露大統領は今月9日放映のインタビューで、昨年2月にウクライナの親露政権が崩壊した直後に編入を決断したと明らかにしていた』という部分は、鳩山氏の意見の否定になっています。
 
記者や新聞社が鳩山氏の意見に反論したければ論説という形でするべきで、こういう記事の書き方はルール違反でしょう。
こういう記事だと、読者は自分で判断することができません。
新聞社の意見を読者に押し付けているのです。
 
それに、プーチン大統領がウクライナの親露政権が崩壊した直後に編入を決断していたとしても、それだけで編入が不当だということにはなりません。
 
一般には、「力による現状変更」だから編入は不当だといわれます。
しかし、クリミアにおけるロシア系住民の人権が侵害されていたら話は別です。
放置すると中国におけるチベット族のようになるとしたら、「力による現状変更」もやむをえないという判断もあるでしょう。
 
ですから、ほんとうに編入が不当だと主張したければ、「クリミアのロシア系住民への人権侵害はほとんどなかったにもかかわらず力による現状変更が行われた」というふうにいわなければなりません。
ところが、ロシア系住民の人権状況がどうであるかという報道はほとんどないので判断のしようがありません(親露派武装勢力によってウクライナ人の人権が侵害されているという報道はいっぱいあるのですが)
 
報道するほどの人権侵害がないのだという見方もあるでしょうが、私は前回の「いまだに生き続ける“西側”幻想」という記事で、ロシア系住民にウクライナ語の強制が行われそうになったということを書きました。これも人権侵害といえるはずです
それに、なんの人権侵害もなかったとしたら、選挙で多数のクリミア人が編入に賛成するはずがありません。
 
そこで西側メディアは「不正選挙」だったということを盛んに報道しましたが、大規模な不正選挙で住民の意志と違う選挙結果が出たら、住民が暴動を起こすかもしれませんし、平和裏に編入が行われるとも思えません。
 
西側メディアはクリミア人の人権はどうでもいいのでしょうか。
 
少なくとも鳩山元首相はクリミアを訪問してクリミア人の声を聞いています。
 
今回の鳩山元首相の行動は、日本人の人権感覚と、西側世界全体の人権感覚をあぶりだしたといえます。

鳩山由紀夫元首相がクリミアを訪問しましたが、この訪問については国内で強い反対の声がありました。
しかし、鳩山元首相の行動を批判する人たちの言い分はまともでしょうか。
 
高村副総裁「鳩山氏のクリミア訪問は国益に反する」
 自民党の高村副総裁は鳩山元総理大臣がクリミア半島を訪問したことについて、「国益に反することで遺憾だ」と強く非難しています。
 

  「鳩山由紀夫元総理がクリミアに行った。それもロシアのビザを取って行ったということは、力による現状変更を認めないという、日本の立場と相容れない。元総理が行くということは、日本の立場について国際社会に誤解をもたらすということで、国益に反することで遺憾だと思います」(自民党高村正彦副総裁)

 
 高村氏はこのように述べて、鳩山氏の行動は「国益に反する」と厳しく非難しました。
 
 また、高村氏は、民主党についても「鳩山氏を総理にしたことが総理在任中だけではなく、いまだに国益を害していることについて、少しは責任を感じていただきたい」と苦言を呈しています。(1112:47
 
私はこの中の「国益に反する」という言葉に笑ってしまいました。というのは、このところ「国益」という言葉をとんと聞いたことがないからです。
 
後藤さんと湯川さんが殺害されてから、「テロに屈しない」とか「罪をつぐなわせる」といった言葉は聞きますが、「国益」という言葉は聞きません。そもそもテロとの戦争に参戦することが国益に結びつくとは思えません。
慰安婦問題や靖国問題や侵略か否かなどの歴史認識についても、「日本の誇り」といった言葉は聞きますが、「国益」という言葉は聞きません。
 
また、「力による現状変更を認めないという、日本の立場」と言っていますが、アメリカはイラクでもアフガンでも力によって政権を倒しています。
そもそもイスラエルは、その土地を支配する国の承認なしに独立しないという国際慣例に反して、まさに「力による現状変更」による独立をして、アメリカはそれを後押しして、それが現在の中東の混乱の原因になっているわけです。
 
鳩山元首相を批判する人の論理はまったくご都合主義です。
 
 
そもそもウクライナの現政権は、選挙で選ばれた親露派政権を西側の援助を受けた勢力がクーデターで倒してできた政権ですから、これこそが「力による現状変更」です。
そして、この西側寄りの政権はロシア系住民にウクライナ語を強制しようとしました。ロシアがクリミアを編入したのは、ロシア系住民の人権を守るためであったとも言えます。
 
ところで、今「ウクライナ語の強制」で検索したところ、そのことを伝えるニュースサイトが見当たりませんでした(私は田中宇氏のメールマガジンで読んだのかもしれません)。そこで、あるブログから引用します。
 
1) 
 2月23日、ウクライナ暫定政府がロシア語等の準公用語化を決めた法律の廃止を決定(公用語としてはウクライナ語のみの使用を強制)。(注5)
 
 これは人口が6割を超えるクリミアのロシア人に対してウクライナ語を強制する意味を持つため、クリミア独立の大きな要因になった。
 
 
 2) 
 騒乱中のキエフでは、親ロシア派の市民が誘拐・暴行・殺害されている。
 
 そのため、クリミアやウクライナ東部に多いロシア系住民に恐怖が拡大していた。 
 
 (下記の注8も参照)
 
 
 3) 
 3月11日
 クリミア自治共和国議会とセヴァストポリ市議会は独立を宣言し、ロシア編入を求める決議を採択した。(注6)
 
 クリミアでもキエフと同様の狙撃事件が起きて2名が死亡。スナイパーの容疑者が拘束された。
 
 
このような事情を考えると、ロシアのクリミア編入は一概に批判できません。
 
ところが、日本におけるクリミアやウクライナに関する報道は、ほとんどすべてが「ロシア悪玉論」を前提としているので、まったく信用できません。
冷戦が終わってもいまだに“西側”が生き続けていて、報道のあり方を支配しているわけです。
 
ですから、日本にいて報道だけ見ていると、ウクライナとロシアのどちらが正しいのかまったくわかりません。鳩山元首相がクリミア入りする前に「日本には正確な事実が伝わっていない。住民がどういう気持ちでいるかこの目で見たい」と語ったのはもっともなことです。
 
鳩山元首相の行動が日本外交のあり方に反しているという批判はあるでしょうが、日本外交が正しいか否かを検討することはもっと重要です。
 
マスコミは“西側”幻想から早く卒業して、偏らない報道をしてほしいものです。

フランスの風刺新聞をねらったテロはもちろん許せないことですが、それに対するフランスの反応を見ていると、これにも首をかしげてしまいます。
表現の自由がたいせつだからといって、意地になってムハンマドの風刺画を掲載するのは明らかに筋違いです。
 
1月14日の朝日新聞に載った投稿川柳がその感じをうまく表現していると思いました。
 
 テロにノー「私はシャルリー」に少しノー(神奈川県 桑山俊昭)
 
フランスのバルス首相は“宣戦布告”をしました。典型的な暴力の連鎖です。
 
仏首相:「テロとの戦争に入った」…治安強化を表明
 【パリ宮川裕章】仏週刊紙襲撃テロ事件で、フランスのバルス首相は13日、国民議会(下院)で演説し、「フランスはテロとの戦争に入った」と宣言した。治安対策の強化に乗り出す方針を表明し、「われわれは世俗主義と自由のために戦う。(テロ再発防止のために)あらゆる手段を取る」と語った。バルス首相は演説で「これはイスラム教やイスラム教徒との戦争ではない」と強調し、「テロリズム、聖戦思想、過激思想との戦いだ」と語った。
 
 また、当局による盗聴強化の検討などに言及。自国の若者らの間で過激思想の宣伝や勧誘が拡大するのを防ぐため「その危険性について若者を教育する必要がある」と語った。
 
 フランス政府は事件を受けて、軍兵士1万人と警官ら約5000人を投入して国内警備を強化している。
 
「これはイスラム教やイスラム教徒との戦争ではない」と言いつつも、実際はイスラム教やイスラム教徒と戦うわけです。
 
フランスには公共の場所でブルカやスカーフの着用を禁じるブルカ禁止法というのがありますが、これは明らかにイスラム教徒を標的とした法律です。国ぐるみでイスラム教徒を差別しているとしかいいようがありません。
 
風刺新聞社を襲撃した犯人は、サイド・クワシとシェリフ・クワシという兄弟ですが、シェリフ・クワシは印刷会社の事務所に立てこもっているとき、電話インタビューに対して、イエメンのアルカイダ系組織から指示を受けたと語りましたし、「アラビア半島のアルカイダ」という組織が犯行声明を出しました。
ところが、フランス政府は対イスラム国の作戦を強化する方針を打ち出しました。
 
対「イスラム国」で空母派遣=緊張高まる恐れも―仏
【パリ時事】フランスのオランド大統領は14日、仏軍主力空母「シャルル・ドゴール」の艦上で行った軍への新年あいさつで、イラクなどで台頭するイスラム過激組織「イスラム国」に対する空爆に同空母を参加させる意向を表明した。仏軍は20149月に米国などが実施するイラクでの空爆に加わり、今月13日に作戦の継続を決めたばかり。
  仏風刺紙シャルリエブドなどを狙った連続テロ事件を踏まえ、仏国内ではイスラム過激派に反発する世論が高まっている。一方、イスラム国側は同紙がイスラム教を侮辱したと非難しており、空母派遣を機に両者の緊張がさらに高まる恐れもある。 
 
イスラム国はアルカイダと対立しているという報道もあり、少なくとも別の組織です。しかし、フランス政府の首脳にはイスラム勢力はみんな同じに見えるのでしょう。
これは、ブッシュ大統領がアルカイダから攻撃されてイラクに攻め込んだのに似ています。
アルカイダは原理主義的なところがあり、イラクのサダム・フセインは世俗主義で、両者はむしろ相容れないのですが、ブッシュ大統領の目にはみな同じイスラムに見えるのでしょう。
 
また、クワシ兄弟はアルジェリア系フランス人です。生まれはフランスですが、両親がアルジェリア人で、しかも両親は兄弟が幼いときに亡くなって、施設で育ったということです。
アルジェリアはフランスの植民地でしたから、アルジェリア系フランス人というのは日本でいえば在日朝鮮人みたいなものです。兄弟はさまざまな差別の中で育ったに違いありません。
 
フランス政府はいまだに過去の植民地支配について謝罪をしていません。
 
フランス政府は攻撃する対象を間違っています。
自国内にあるイスラムへの差別、旧植民地出身者への差別こそ攻撃するべきです。

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