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5月6日に緊急事態宣言を解除するか否かが焦点になってきました。
これを判断するには、とりあえず外国の状況を把握しておく必要があります。

世界でいちばん新型コロナウイルス対策に失敗している国はアメリカです。
現時点でアメリカの感染者数は約98万人、死亡者数は約5万5000人です。
その次がスペインで、感染者数は約22万人、死亡者数は約2万3000人ですから、アメリカの悪さは際立っています。

アメリカはいち早く2月2日に緊急事態宣言を発令し、中国からの入国を全面的に禁止しました。
アメリカのCDC(疾病予防管理センター)はきわめて強力な組織であるとされ、日本もそれを手本に同じような組織をつくるべきだとよくいわれます。
それでいてこの惨状です。

一方、新型コロナウイルス発祥の国である中国は、現時点で感染者数は約8万8000人、死亡者数は約4600人ですが、最近の感染者数は1日数十人です。
武漢でもロックダウンは解除され、全国的に経済活動も復活しつつあります。

アメリカ対中国でいえば、中国の完全な勝利です。
中国はすべて手探りで対策をしてきて成功し、アメリカは中国のやり方を見ていながら失敗しました。
トランプ大統領は“アメリカワースト”というべき状況にブチ切れて、中国やWHOに当たり散らしています。

もっとも、グローバルな視野で見ると、アメリカばかりが失敗しているとはいえません。
感染者数が多い順にいうと、アメリカのあとはスペイン、イタリア、フランス、ドイツ、イギリスと、ヨーロッパの主要国です。
WHOの調べでは、死亡者の約9割が米欧に集中しているということです。


中国周辺の国はどうかというと、韓国、台湾、ベトナム、モンゴルは感染の抑え込みに成功しています。
韓国はロックダウンせずに感染を抑え込み、今では飲食店も普通に営業しています。台湾は無観客ながらプロ野球が開幕しました。ベトナムはいまだに死者0人ですし、モンゴルの感染者は100人以下です(北朝鮮は0人?)。

ということは、「新型コロナウイルスは欧米で猛威をふるっているが、東アジアではほぼ抑え込まれた」ということです。

これはどういうことかというと、BCG接種で新型コロナウイルスにある程度免疫ができるので、BCG接種を実施している国ではあまり感染が広がらないのだという仮説があります。
その仮説もありそうなのですが、もうひとつの仮説として、東アジアではCOVID-19に似たコロナウイルスによる病気(インフルエンザや風邪など)が流行したことがあり、そのため東アジアではCOVID-19に対する集団免疫がある程度できているのだという考え方もあります。
「週刊現代」5月2・9日合併号で経済産業研究所上席研究員の藤和彦氏もこの説を述べています。
ユーラシア大陸では、東から西に行くほどCOVID-19が猛威をふるうという傾向があるので、この仮説も有力だと思われます(とすると、今後南米やアフリカで猛威をふるうことになります)。


そうすると、日本は東アジアで唯一、感染対策に失敗した国ということになります。
その理由は簡単です。日本は東京オリンピック開催のために感染者を少なく見せようとし、PCR検査数を少なくしたからです。クラスターを追跡するという方針は間違っていないと思いますが、検査数が少ないために見逃したクラスターがあって、クラスターといえない個人から個人への感染もあって、市中感染が拡大し、それがここにきて表面化してきたわけです。

とはいえ、まだ日本の感染者数は約1万3000人、死亡者数は約400人です。
東アジアでは劣等生ですが、欧米と比べると優等生です。

最近、日本は医療崩壊の瀬戸際だと言われますが、おそらく勘違いです。
たとえばニューヨーク州(人口約1900万人)の感染者数は約28万8000人、死亡者数は1万7000人です。
東京都(人口約1400万人)の感染者数は約3900人、死亡者数は約100人です。
ニューヨークは医療崩壊の瀬戸際だと言われますが、今のところ持ちこたえています。
2ケタ少ない東京都で医療崩壊が起きたら、世界の物笑いです。
今、医療崩壊が言われるのは、医師会などが利権のためにあおっているのではないでしょうか。


日本は緊急事態宣言以来、欧米のやり方を真似て“準ロックダウン”ともいうべき状態にあります。
しかし、感染者数、死亡者数を見れば、日本は欧米とはぜんぜん違います。
ちょっと前の韓国と同じような状態です。

日本人は明治維新以来、欧米を崇拝し、アジアを軽蔑し、もっぱら欧米から学んできましたが、こと新型コロナウイルスで参考になるのは、韓国や台湾のやり方です。
“準ロックダウン”みたいなことはやめて、経済活動を続けながら、徹底した検査と徹底した隔離で感染を阻止できるのではないでしょうか。