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菅義偉政権のGoToトラベル・キャンペーンへのこだわりは異常です。
12月にGoToトラベルが一時停止になったこともあって大幅にGoTo事業の予算が余っているのに、第三次補正予算でさらに一兆円近い額を追加します。
年度内で消化できるとは思えず、野党から「不謹慎だ」という声が上がっています。
西村康稔経済再生担当相は1月26日の記者会見で、GoToトラベルの再開条件について、感染状況の指標がステージ2まで下がることだと述べました。再開する気は十分にあるようです。

菅政権がGoToトラベルにこだわることの異常さは、中国と比較するとよくわかります。
中国では春節に大規模な人の移動が起こりますが、それを抑えるために税金を使っています。

春節で17億人が移動予測 帰省しない人に報奨金やギガ
 旧正月の春節(2月12日)を控える中国で、帰省しない人に報奨金や特典を用意する地方政府が相次いでいる。今月28日からの40日間で延べ17億人が移動すると予測される中、帰省ラッシュを抑えることで新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ狙いだ。

 河北省唐山市は農民工(出稼ぎ労働者)が春節期間中に帰省しなかった場合、1人500元(約8千円)の「まごころ祝儀」を支給すると通知。天津市は市内に働きに来ている人が2月末まで市外に出なければ300元、その間に製造業などの職業訓練を受ければさらに300元を手当てするという。こうした報奨金を出す都市は沿岸部を中心に20以上に上っている。

 報奨金のほか、スマホのデータ通信量20ギガバイトのプレゼント(浙江省義烏市)や観光地や動物園の入場無料(山東省東営市)など特典をつける街もある。
 国営中央テレビも「今いる場所で年越しを」と号令をかけるなか、各地がキャンペーンを競い合う状況だ。

 例年だと春節の連休中は店や企業が軒並み閉じて休暇ムードに包まれるが、いつも通り仕事をする人や企業を支援することで帰省しない人を増やそうとする例もある。福建省アモイ市は期間中に道路清掃や公共交通機関などで働く人に1日50元(約800円)の追加手当を支給すると通知。同市翔安区は、春節前後の1週間、祝日も休まず操業した企業には職員1人あたり最高1500元を補助するとしている。

 中国本土では今年に入って河北省や黒竜江省などで感染が拡大し、国家衛生健康委員会は省をまたいで農村地方へ帰省する人に、7日以内のPCR検査を義務づけている。(平井良和)
https://digital.asahi.com/articles/ASP1W54J8P1WUHBI019.html?_requesturl=articles%2FASP1W54J8P1WUHBI019.html&pn=4

中国は感染対策がうまくいっていて、このところ1日の感染者数は100人前後です。
中国の感染対策は、当然ながら人の移動を抑えるほうに税金を使っています。
一方、日本は人の移動を促進させるほうに税金を使っているわけです。
しかも日本は、今年の夏にオリンピックをするつもりでいるのです。
中国と日本を比べると、日本の異常さがわかります。

GoToトラベル再開とオリンピック開催は両立するはずがありません。
ですから、私は菅政権はオリンピックは諦めたのかと思いました。
しかし、橋本聖子五輪相は26日の衆議院予算委員会で「1人5日間程度の勤務をお願いすることを前提に、大会期間中1万人程度の方に依頼をして医療スタッフ確保を図っている」と答弁しました。
菅政権がオリンピックを諦めず、かつGoToトラベル再開も目指しているとすれば、まったく理解不能です。


外国と比較すると見えてくることがあります。
日本ではワクチンの接種が2月末から始まるようですが、世界ではいくつもの国ですでにワクチンの接種が始まっています。
日経新聞のサイトによると、57の国と地域で始まっているそうです。
うち上位20か国は次の通りです。

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これを見ると、先進国である日本は遅すぎるのではないかと思えます。
イスラエルはやはり危機管理がしっかりしているようです。マスク不足のときは特殊部隊が空港で飛行機の積み荷を押収するなどをしていました。

日本は国内製薬メーカーの力が中国やロシア以下だということでしょうか。

そういえば、大阪では“大阪ワクチン”の開発が進められていて、昨年6月には吉村洋文知事が「今月末に人への投与、治験を実施いたします。市大の医学部附属病院の医療従事者に、まずは20例から30例の投与をする予定です」「今年中には10万から20万の単位での製造が可能になります」と希望の持てる話をしていました。
しかし、このところ“大阪ワクチン”の話を聞かないなと思っていたら、吉村知事は1月26日に出演したテレビ番組で「世界のワクチンに比べれば、周回遅れの状態になってますが、なんとか(次の)冬が来る前に大阪産ワクチンができればいいなと思っています」と語っていました。
去年の6月に言っていたことと違いすぎます。

行政のデジタル化の遅れも露呈しました。
10万円の特別定額給付金の申請をオンラインで行うとかえって遅くなるという奇妙なことが起きました。
また、役所において感染者数の報告がファックスで行われているということが世界に報道されて、あきれられました。

PCR検査数は、日本は世界でも最低レベルで、安倍前首相は「人的な目詰まりがあった」と言いました。
国立感染症研究所、厚生労働省、学者などの感染症専門家の利権が目詰まりの原因と思われますが、そういう問題を追及するのは週刊誌ぐらいで、結局どういう目詰まりがあったのかよくわかりません。
また、日本はアメリカやヨーロッパよりヒトケタ以上感染者数が少ないのに医療崩壊の危機が言われていて、これも不可解なことです。
本来こうした問題を追及するべき新聞、テレビなどのマスメディアも利権構造に組み込まれているので、わけがわかりません。
ただ、原因はわからなくても、おかしいということはわかります。


新型コロナウイルスをめぐる日本の対応はおかしなことだらけです。
新型コロナウイルスという世界共通の基準があるおかげで日本のおかしさがくっきりと見えるのは皮肉なことです。