天皇陛下のお言葉


11月10日、天皇陛下の即位を披露するパレード「祝賀御列の儀」が行われましたが、そのときの天皇陛下の「お言葉」がかつてないものでした。

敬語には丁寧語、尊敬語、謙譲語の三種類がありますが、天皇陛下は国民に対して、丁寧語は使いますが、尊敬語を使うことはひじょうに少なく、謙譲語を使うことはほぼありませんでした。
天皇は国民より上の立場にあるので、相手を上と見なす尊敬語はめったに使わず、とりわけへりくだる謙譲語は使わないということなのでしょう。
私の知る限り、謙譲語を使う唯一の例外は「いたす」です。「感謝いたします」のような言い方をされることがときどきありました。「いたす」はあまり謙譲語っぽくないからでしょうか。

尊敬語と謙譲語を使わないので、園遊会などで天皇陛下がスポーツ選手などと会話するときも、普通は「がんばってください」と言うところ、「活躍を期待します」というような独特の言い回しになります。


しかし、今回の「お言葉」は、従来とはまったく違いました。

天皇陛下のお言葉(全文)
さきに、「即位礼正殿の儀」を行い、即位を内外に宣明しました。そして、今日ここに集まられた皆さんからお祝いいただくことに感謝します。
即位から約半年、多くの方々から寄せられる気持ちを嬉しく思いながら過ごしています。また、この間、様々な機会に、国民の皆さんと直接接し、皆さんの幸せを願う思いを私たち二人であらたにしてきました。
 その中にあって、先月の台風19号をはじめ、最近の大雨などによる大きな被害に深く心を痛めています。亡くなられた方々に哀悼の意を表しますとともに、ご遺族、被災された方々にお見舞いを申し上げます。
寒さがつのる中、避難を余儀なくされ、生活再建が容易でない方が数多くおられることを案じています。
復旧が進み、被災された方々が安心できる生活が、1日も早く戻ることを心から願っています。
ここに、改めて、国民の幸せを祈るとともに、我が国の一層の発展と世界の平和を願います。
今日は寒い中にも関わらず、このように大勢の皆さんが集まり、即位をお祝いいただくことに、深く感謝いたします。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5dc68b12e4b0fcfb7f66ce81

「いただく」や「申し上げ」などの謙譲語も含めて、国民に対して普通に敬語を使って、一般の人の言葉づかいと変わりません。
こうした言葉づかいから、天皇陛下は国民と同じ地平に立っておられるのだなと推測できます。

今回の即位の一連の行事で、天皇皇后両陛下が国民にいかに人気かが明らかになりましたが、それも天皇陛下のこうした姿勢があるからでしょう。


天皇陛下の明白な意思にもかかわらず、天皇の神格化をねらう人たちはなかなかいなくなりません。
たとえば、「あいちトリエンナーレ」において、天皇の写真が燃える作品に執拗に抗議する人たちなどがそうです。天皇の写真は神聖だと主張して、天皇の神格化をねらっているのでしょう。


また、「祝賀御列の儀」において、万歳を延々と繰り返すという意味不明な演出が行われました。



万歳三唱ならぬ「万歳48唱」は、両陛下が皇居・二重橋近くから皇居内に戻られるまで続いた。まさに「エンドレス万歳」の様相だった。
この日の国民祭典に一般席で出席した女性は、BuzzFeed Newsの取材に対しこう語る。
「比較的後ろの方の席だったが、本気で万歳をしている人は目立つくらい少なかった。何回やるんだって若干笑いも起きる空気で『ちょっと怖い』『これあってるの?』という声が聞こえた」
周囲は、嵐ファンと思われる女性が多かったという。
Twitter上でも「万歳アンコールしすぎでは?w最初に音頭とってた方も戸惑ってたから予定外だったよね」「なんか怖いと感じたの俺だけ?」「止まらなくてちょっと怖い」など困惑の声も見られた。
https://www.buzzfeed.com/jp/keiyoshikawa/banzai

国民が万歳を連呼することで天皇を神格化しようという演出でしょうが、今の天皇陛下にはふさわしくありません。

さらに、安倍首相は天皇陛下の人気に便乗しようと、パレードにおいて、さもしい行動に出ました。

スクリーンショット (3)

安倍首相が車内から
祝賀御列の儀に参列した安倍首相(首相官邸HPより)

 昨日おこなわれた天皇の即位を披露するパレード「祝賀御列の儀」。天皇の即位披露の場だったパレードにもかかわらず、安倍首相は自民党本部前を通るコースに変更させ、さらには自民党本部の屋上から〈天皇陛下のご即位をお祝い申し上げます〉という垂れ幕をデカデカと吊り下げるなど、即位パレードを政権のPRに利用した。
 しかし、安倍首相は昨日の即位パレードで、それ以上に唖然とさせられるような行動に出ていた。
 即位パレードでは、天皇・皇后のオープンカーの車列の先頭を警視庁の白バイが走り、そのすぐ後ろに官房長官を乗せた車、そして安倍首相を乗せた車がつけたのだが、なんと、安倍首相は車の窓を開け、沿道の人びとに手を振っていたのだ。
 言っておくが、前回の平成の代替わりの際、当時の海部俊樹首相もパレードの車列に加わっていたが、窓を開けるようなことはしていない。当然だ。パレードの趣旨は天皇・皇后の即位披露のためであり、だからこそふたりはオープンカーに乗るのだ。実際、昨日のパレードでは、天皇・皇后のオープンカーのあとにつづいた秋篠宮夫妻の車の窓は閉められていた。
https://lite-ra.com/2019/11/post-5084.html

「即位礼正殿の儀」のときは昭恵夫人が変なドレスを着て注目されましたが、夫婦して自分が目立ちたいようです。

天皇が政治的な発言をできないのをいいことに、勝手に天皇を神格化し、それを利用しようという人たちにはあきれるばかりです。