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トランプ大統領をにらみつけるグレタ・トゥーンベリさん


「ヒステリー」という言葉を久しぶりに目にしました。

ヒステリーは神経症の一種ですが、ギリシャ語で「子宮」を意味する言葉が語源で、女性特有の神経症とされてきました。女性がちょっと興奮すると「ヒスを起こした」と揶揄され、性差別と結びついた言葉です。
ですから、すっかり死語になっていたのですが、突然死語が復活したのは、国連の気候行動サミットでスピーチした16歳の環境活動家グレタ・トゥーンべリさんを人格攻撃するためです。
「環境ヒステリー」という言葉までつくられました。

トゥーンべリさんは自分がアスペルガー症候群であることを公表していますが、テレビでキャスターや政治評論家までが「精神異常」や「精神障害」という言葉でトゥーンベリさんを攻撃して、問題になりました。
発達障害の人を発達障害を理由に攻撃するというのは、通常はありえないことです。

「父親の操り人形だ」とか「環境活動家に利用されている」という批判もありましたが、これもトゥーンベリさんの人格を認めていないわけで、一種の人格攻撃です。


トゥーンベリさんが訴えたのは、地球温暖化対策が不十分だということですから、反論するならそのことについて反論するべきです。
人格攻撃になってしまったのは、温暖化対策に反対する人たちがまともな論理を持っていないからでしょう。

それに加えて、トゥーンベリさんが16歳の子どもだということもあります。
「子どもはおとなに従うべき」という価値観を持っていると、自分の意志で行動している子どもが許せません。
今回、トゥーンベリさんが激しい人格攻撃を受けたのは、そういうおとなが多かったからでしょう。

トゥーンベリさんに怒りを向けるおとなを揶揄する動画を、オーストラリアABCテレビがつくって話題になっています。

グレタ・トゥーンベリさんにお怒りの皆様に“コールセンター“が誕生。オトナの「赤ちゃん返り」を描き話題に

トゥーンベリさんに怒りを向けるおとなを「赤ちゃん返り」と見なしているわけです。
これは実際にありうることです。子ども時代に自分の意志を踏みにじられたことがトラウマになっているおとなは、トゥーンベリさんのように自分の意志で行動する子どもを見ると、子ども時代の怒りがよみがえってくるのです。
この心理は、子どもを虐待する親の心理とも共通します。

トゥーンベリさんは「親の操り人形」と攻撃されましたが、親の操り人形ということで言えば、現在、学校に行ったり習いごとをしたりしている子どもはすべて親の操り人形です。
親の操り人形はまったく問題にされなくて、自分の意志で行動する子どもは問題にされるのは、今の世の中の価値観が根本的に間違っているからです。

トゥーンベリさんを巡る今回の騒動でわかったのは、地球温暖化も問題ですが、自分の意志で行動する子どもを攻撃する世の中も大いに問題だということです。