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菅義偉首相は5月7日の記者会見で、11日までの予定だった緊急事態宣言を31日まで延長すると表明しました。
菅首相は「短期集中」という言葉がお気に入りだったようですが、短期だから集中できるというものでもありません。
そもそも感染減少が目的なのですから、1日の新規感染者数何人以下とか病床使用率何%以下という目標を決めて、それを達成すれば解除とするべきなのに、そうした目標や基準はなにもなく、解除の日付けだけ決めるというのが根本的に間違っています。

今回、31日まで延長と決まりましたが、この日付けも無意味です。
したがって、今後の展開は、感染状況を見て各自が判断しなければなりません。


まん延防止等重点措置が4月5日から大阪・兵庫・宮城で始まり、12日から東京・京都・沖縄に拡大され、25日からは非常事態宣言が東京・大阪・京都・兵庫に発令されて現在に至りますが、感染は抑制されるどころか、逆に拡大する傾向が見られます。
連休の反動ということも考えなければいけませんが、新規感染者数は8日が7244人、9日が6492人と、第4波が始まって一番目、二番目に大きい数字となっています。

緊急事態宣言下で感染が拡大するというのは深刻な事態です。
これはイギリス型変異ウイルスのせいでしょう。

イギリスでは、昨年3月に1回目のロックダウンをし、夏ごろにはかなり感染を抑え込んだのですが、9月ごろから急拡大して、11月から再びロックダウンになりました。
ただ、現在は感染は減少し、ロックダウンは段階的に緩和されつつあります。
強力なロックダウンに加えて、ワクチン接種が急速に進んだからです。

日本には強力なロックダウンもありませんし、ワクチン接種も進んでいません。

なお、「テレ朝ニュース」の「抑え込んでいたのに…モンゴルで感染急拡大」という記事によると、モンゴルでもイギリス型変異ウイルスのために感染が急拡大し、インド以上に深刻な状況になっているそうです。

スクリーンショット (1)

東アジアには“ファクターX”があって、ヨーロッパみたいに深刻にならないという説がありましたが、モンゴルの状況を見ると、その説は捨て去らなければならないようです。

日本でもイギリス型が大阪から東京へと広がっています。
このままでは、5月31日の宣言解除はもちろん、東京五輪開催も不可能です。

コロナとの戦いは長期戦を覚悟しなければなりません。

そうすると、飲食業界などはますます苦境に陥ります。休業補償金や協力金を税金から出しつづけるのもたいへんです。
なにかいい方法はないでしょうか。



現在、緊急事態宣言下では、飲食店は20時までの時短営業に加え酒類の提供禁止となっています。
酒類提供禁止のために居酒屋などは実質営業不可能ですし、一般の飲食店の経営にも響きます。

私は夕食時にはいくらかの酒を飲むのが習慣なので、レストランなどで夕食をとるときに酒がないと困惑します。
一杯のビールかハイボールかグラスワインがあるだけで、食事の楽しさが断然違います。
割増料金を払えばお酒が飲めるという制度にすれば、いくらまでなら払うかと考えました。
どうせビール一杯だけなので、2割増し、3割増しぐらいは平気ですし、2倍でも払うかもしれません。

かりにレストランで酒類の価格を2倍にして、従来の半分の注文があったとすれば、店の売り上げは同じで、原価が少ない分、利益は増大します。
そして、酔っぱらって大声で話すような人もへりますから、感染防止にもなります。

居酒屋でも同じやり方が可能です。

たとえば東京都は、飲食店に対する時短営業要請も酒類提供禁止もやめて、酒類価格を2倍にするという要請だけします。
そうすれば、客数はへり、酒類の消費もへるので、感染リスクは下がりますが、店の収益はある程度維持できます。
酒類の消費があまりへらなければ、酒類の価格を3倍にすればいいわけです。

つまり、価格メカニズムを利用して入店の人数と酒類の消費を抑制し、感染防止をしつつ、店の収益も維持しようということです。

不当値上げだと怒る客がいるかもしれませんが、酒類提供禁止よりはましです。
それに、払ったお金は苦境にある飲食店のためになるので、払い甲斐もあるはずです。


価格メカニズムを使うことはイベント関係でも可能です。

イベント関係では入場者の制限が行われています。
あるコンサートの入場者を半分にするなら、ファンの数は同じでチケット数はへるのですから、チケット価格は上がって当然です。
これまでは人数制限は一時的なことだと考えられてきたので、料金に手はつけられませんでしたが、これが長期化するなら、チケット代を値上げして収益を確保するのは当然のことです。
チケット価格を従来より高く設定すれば、自然と入場者がへるので人数制限をしたのと同じことになり、それでいて収益はあまりへりません。

それにしても、人を動かすのに価格メカニズムを利用するということに頭が回らない人も多いようです。
緊急事態宣言下、国と東京都は首都圏の鉄道各社に運行本数をへらすように要請しましたが、実際に本数がへると車内が混雑して不満が噴出し、結局通常の本数に戻しました。
電車の本数がへれば人流もへると思ったのでしょうが、まったくバカな考えです。
こういうときこそ価格メカニズムを利用するべきです。
人流をへらしたいなら運賃を高くすればいいのです。そうすれば確実に利用者はへります(定期券を持っている人が多いので、実際にはむずかしいでしょうが)。


価格メカニズムによる行動は合理的なものなので、「短期集中」だの「気のゆるみ」だのといった精神論による不快感がありません。
「コロナ割増料金」という考え方が広く世の中に受け入れられれば、飲食店やイベント関係業者が救われます。