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コロナ禍が長引くとともに、若者を攻撃して不満のはけ口にする風潮が強まっています。

7月28日、小池百合子都知事は取材陣に対して、「ワクチンを受けた高齢の人たちの感染はぐっと下がっていて、逆にワクチンを受けておらず重症や中等症になる若い世代が増えている」と状況を説明したあと、「ワクチンを若い人にも打ってほしい。若い人たちの行動がカギを握っているので、ぜひ、ご協力いただきたい」と若者に呼びかけました。

しかし、実際はワクチンの絶対数が不足して、打ちたくても打てないのが実情です。それに、高齢者から先に打ち出したので、ワクチンを打った若者が少ないのは当たり前です。
小池都知事の言い分だけ聞いていると、まるでワクチンを打たない若者が悪いみたいです。

小池都知事は感染拡大で都民に行動自粛を呼びかけるとき、必ず同時に不満のはけ口になる攻撃対象を示してきました。
昨年4月の最初の緊急事態宣言のときはパチンコ店でした。パチンコ店が感染拡大を招いているという根拠もないのにパチンコ店だけを問題にし、営業自粛要請に従わないパチンコ店の店名を公表するなどしました(これは東京都だけではありませんでしたが)。
その次は風俗店です。ホストクラブ、歌舞伎町、さらには「夜の街」というよくわからないものまでも攻撃の対象にしました。

最近はもっぱら若者です。
「若者は動き回って感染を広げる」という理屈で、とくに若者に対して強く行動自粛を呼びかけ、若者の路上飲みや公園飲みを非難しました。
そして、感染者の中で若者の比率が高まっていることが問題であるかのように再三述べるので、やはり若者が悪いようなイメージになりました(高齢者優先でワクチン接種をしてきたので若者の感染率が高まるのは当然です)。

「若者が感染を広げている」ということは、小池都知事だけでなく、政府関係者からもよく言われます。
パチンコ店、風俗店は社会的に低く見られ、政治力もないので、不満のはけ口にするにはもってこいです。若者も同じような存在なのでしょう。

そして、とうとう小池知事はワクチンを拒否する若者を非難するようなことを言ったわけです。


若者にワクチン拒否の傾向があることは事実です。
FNNプライムオンラインの「なぜ若者はワクチン接種に消極的なのか? 接種に不安を抱える若者たちのホンネ」(7月19日)という記事によると、『ワクチン未接種の若者3600人を対象に番組でアンケートを行ったところ、「受ける」人が49%、「受けない」人が19%、「迷っている」人が32%という結果になった』ということです。
これはネット調査ですから、少し偏りがあるかもしれませんが、ほかの調査でも若者はワクチン接種に消極的です。
これは当然のことで、若者は感染しても重症化することは少なく、逆にワクチン接種による副反応は強く出るからです。

年齢による副反応の違いはかなりのものです。

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『コロナワクチン副反応の出やすさに『3つの特徴』…1回目より2回目・男性より女性か・高齢者より若い人』より


これを見ると、高齢者と比べて若者にワクチン拒否の傾向が強いのは当たり前のことと思えます。

若者はネットを使って高齢者より幅広く情報収集をしています。
新聞やテレビは、副反応がこれほど多く生じて、それもけっこう苦しい思いをする人が多いということをほとんど報道しません。私も有名人のSNSやブログでの発信で副反応がかなり苦しいものだということを最近知りました。
それに、ワクチン接種後に死亡した事例が7月30日までに919例報告されていますが、一応接種と死亡の因果関係はないとされているので、マスコミはあまり取り上げません。ただ、ネットでは議論されています。
そうしたことも若者がワクチン拒否に傾く理由でしょう。

若者にワクチン拒否の傾向があるのは、合理的な判断によるものと思われます。


ところが、小池都知事のような人は、若者はデマに踊らされていると見ているようです。
しかし、ワクチン接種は自分の命と健康に直結する問題ですから、誰でも真剣に考えます。
「ワクチン拒否の若者はデマに踊らされている」という認識は、若者をバカにしたものです。

たとえば橋下徹氏もそういう認識なので、自分の子どもの説得もできません。
橋下徹氏 娘の〝ワクチン拒否〟嘆く「お父さん、50年後保障できるの?って…」
元大阪府知事で弁護士の橋下徹氏が31日放送の読売テレビ「今田耕司のネタバレMTG」に出演。若者の間で出回っているコロナワクチンのデマについて語った。

 橋下氏は「僕はいろんな番組で最初は『社会防衛のためにはワクチンは絶対強制が必要だ』と。日本では強制はできないので、『半ば強制は必要でしょう』と言ってたんですけど」と前置きし「うちの子供はワクチン拒否ですから」と苦笑い。

 一生懸命説明し、その時点よりは子どもの理解も進んだというが「やっぱりネットの中の情報、うちの娘もそうなんですけど、『子宮に影響がある』っていうのが…。特に医療従事者を語る人がそれを言ってたりとか。『お父さんそれは50年後、絶対大丈夫っていうことを保障できるの?』って(言われた)。俺、ワクチンの専門家じゃないしな…。それがすごい今浸透してるんでね」と悩ましげだった。

 その直後に首相官邸のツイッターがデマを打ち消すつぶやきを投稿したというが、橋下氏は「デマと言われる情報はもっと詳しく書いてあるんですよ、この(ツイッターの)4行だけでそりゃ子供たち信用しませんよ」と指摘した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/e952f5f44d34a71531ad365ea6faf555d344622e

橋下氏の娘さんは自分の妊娠出産のことを真剣に考えていますが、橋下氏は「社会防衛」のことを考えているので、話が合うわけがありません。

娘さんの心配は一概に否定できるものではありません。
厚生労働省のホームページは、ワクチン接種と不妊の関係について次のように書いています。

Q.ワクチンを接種することで不妊になるというのは本当ですか。
A.ワクチンが原因で不妊になるという科学的な根拠はありません。ワクチン接種により流産率は上がっておらず、妊娠しにくくなるという根拠も確認されていません。
新型コロナワクチンも含め、これまでに日本で使用されたどのワクチンも、不妊の原因になるという科学的な根拠は報告されていません(※1、※2、※3)。排卵と妊娠は、脳や卵巣で作られるホルモンによってコントロールされていますが、新型コロナワクチンには、排卵や妊娠に直接作用するホルモンは含まれていません(※4、※5)。また、卵巣や子宮に影響を与えることが知られている化学物質も含まれていません。動物実験においても、ファイザー社のワクチン、武田/モデルナ社のワクチン共に、接種したラットが問題なく妊娠・出産したことが確認されており、生まれた仔にも異常は無かったことが報告されています(※4、※5、※6)。

米国でワクチン接種後に妊娠した827人の女性の経過を調べた研究では、ワクチンを接種した人の流産率が自然に発生する流産率を上回ることはなく、ワクチンが妊娠に与える好ましくない影響は確認されませんでした(※2)。また、mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンの臨床試験では、ワクチン接種後に妊娠した人がいることも報告されており(ファイザー社:ワクチン接種群12人、プラセボ接種群11人、モデルナ社:ワクチン接種群6人、プラセボ接種群で7人)、ワクチン接種により妊娠しにくくなるという根拠は確認されていません(※4、※5)。
(攻略)
https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0086.html

ワクチン接種が妊娠に悪影響を与えるという証拠はないということですが、ワクチン接種が妊娠になんの影響も与えないという証拠もありません。827人の女性に好ましくない影響があったことは確認されていないといいますが、データが少ないですし、出産後の子どもの発達に悪影響が出たことが今後確認されるかもしれません。

副反応、接種後の死亡例、将来の悪影響などを考えてワクチン拒否をする若者がいても、一概には否定できません。
否定しようとする小池都知事や橋下氏のほうにむりがあります。


そもそも今はワクチン不足で、多くの人が打ちたくても打てない状況にあります。
そんな中で、若者のワクチン拒否がことさら問題になるのは、若者を攻撃して不満のはけ口にしようとする人がいるからだとしか思えません。