村田基の逆転日記

進化倫理学の威力を試すブログ

タグ:厚生労働省

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日本政府の新型コロナウイルス対策を見ていると、世界のどこの国よりもだめな気がします。
どうしてこんなにだめなのでしょうか。

政府は2月25日、新型コロナウイルス対策本部を開き、対策の基本方針を決定しました。

「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針 」

この基本方針には具体策がなにもありません。
外出の自粛や時差出勤を呼びかけていますが、政府はその基準を示さず、判断は国民にゆだねています。

これはどういうことかというと、厚生労働省にまったく危機感がないのです。
そのことは「ゴジラのせき」発言からもうかがえます。

厚労省幹部「ゴジラのせき」 感染者受け入れ説明会での発言に住民は不快感
 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の新型コロナウイルス感染者らを受け入れた愛知県岡崎市での住民説明会で、厚生労働省東海北陸厚生局の金井要局長が「ゴジラ」のような大きなせきをする人がいない限り感染しないとの発言をしていたことが分かった。加藤勝信厚労相は20日の衆院予算委員会で「住民が不安を抱えながら来ている説明会で全く不適切な対応。至らない発言だった。状況を把握した上で対応する」と陳謝した。
 国民民主党の大西健介氏は「住民の皆さんに失礼かつ、あまりに緊張感のない発言だ」と処分を求めた。加藤氏は処分には言及しなかった。大西氏によると、金井氏は説明会で「飛沫感染だ。直接触らないと感染しない。めちゃくちゃ離れてまで飛ばすほど大きなせきをする人はいない。ゴジラでもなければ」と発言。「最後はジョークです。笑っていただいてよろしいんですが」と付け加えた。「笑えない」と不快感を示す住民もいたという。
https://www.sanspo.com/geino/news/20200220/sot20022016500014-n1.html
 加藤勝信厚生労働相は25日の記者会見で、「ゴジラのせき」発言をした金井要局長を「厳重注意」したと明らかにしましたが、これは処分ともいえません。

「ゴジラのせき」発言はそれほどマスコミに取り上げられませんでしたが、むしろ今の事態を理解するキーワードではないかと思います。

この発言は、金井局長個人のものというより、厚生労働省全体の気分を表現したものでしょう。
新型コロナウイルスの感染力はきわめて低いというのが彼らの認識です。
さらに、感染しても高齢者や持病のある人以外はそれほど重症化せず、個人の免疫力で十分に治癒するという認識もあるでしょう。
厚労省全体がそういう認識だとすると、これまで厚労省のやってきたことが全部理解できます。


ダイヤモンド・プリンセス号内がレッドゾーン、グリーンゾーンの区分けができておらず、隔離がでたらめだということが岩田健太郎教授によって指摘されましたが、新型コロナウイルスの感染力が弱いという認識であれば、それでもいいわけです。
多くの乗客を下船させて、公共交通機関を使って帰宅していいという指示を出したのも、新型コロナウイルスの感染力を軽視しているからです。

ダイヤモンド・プリンセス号に乗り込んで作業していた厚労省職員が、ウイルス検査を受けずに職場復帰していたという事実も明らかになりました。なぜ検査しないかというと、「検査して陽性者が出ると業務に影響するから」という理由です。
こんなおかしな理由はないということで批判が高まり、結局、加藤厚労相は22日、作業に当たった41人を対象に検査を実施すると発表しました。
検査をしなかったのも、感染力が弱いという認識だからです。それに、職員は壮年で健康体ですから、肺炎が発症しても大したことはないという認識もあったでしょう。
検査して一人でも陽性者が出ると、その濃厚接触者も隔離しなければならないので、確かに業務に影響します。

ダイヤモンド・プリンセス号に乗り込んだ医師や看護師については、検査せずに職場復帰するという方針のままです。これも感染力や肺炎の症状を軽く見ているからでしょう。

検査しないのは、国内での感染者の数を少なく見せかけるためだという説もあります。確かにそういう面もあるかもしれませんが、厚労省職員の検査もしないというのは、やはり新型コロナウイルスを軽視しているからでしょう。

また、中国から国立感染症研究所に対して1万2500人分のPCR検査キットが無償提供され、性能的にも問題ないと同研究所から厚労省に報告されているのに、いまだに活用されていません。加藤厚労相は25日の答弁で「もともとある供給力と調整していきたい」などと意味不明のことを言っています。
https://lite-ra.com/2020/02/post-5276_2.html



こうしたおかしな対応について、私は「新型コロナウイルスより怖い“嘘ウイルス”」という記事を書いて、安倍政権は「ダイヤモンド・プリンセス号の隔離はうまくいった」という“大本営発表”をしたために、自分のついた嘘を信じ込んでしまったのではないかという考えを述べました。
この考えは、事態が政治主導で動いているという前提でした。
しかし、現場を動かしているのは厚労省です。
今の事態は政治家と官僚の合作と見るべきでしょう。

厚労省の官僚は専門家集団としてのドグマにとらわれて、新型コロナウイルスの脅威が認識できていないのでしょう。
ここで思い出されるのが、東日本大震災における原発事故です。あのとき経産省、原子力安全・保安院、東京電力は“原発安全神話”に縛られていて、まったくまともな対応ができませんでした。
今の厚労省の官僚は“感染症安全神話”に縛られているのです。

なお、原発事故のときの菅直人首相は、原子力安全・保安院や東京電力がまったく無能なことをすぐに見抜き、個人的なつてで専門家の意見を聞いて、独自の判断で対応しました。もしこれが民主党政権でなく自民党政権だったとしたら、経産省、原子力安全・保安院、東京電力は自民党が育てた組織ですから、彼らの判断を疑うことができなくて、悲惨な結果を招いていたのではないかと私は思っています。

今、安倍政権は“感染症安全神話”に縛られた厚労省の判断を疑うことなく、それに丸乗っかりしています。
安倍政権がまともな新型コロナウイルス対策を出せないのは当然です。

厚生労働省が制作した「人生会議」PRポスターに各方面から反発の声が上がり、自治体への発送が中止されることになりました。

日本赤十字社が「宇崎ちゃん」という巨乳おバカキャラを使って献血キャンペーンをして炎上したのに似ています。どちらも医療関係で、インパクトのあることをやろうとして、失敗しました。

問題のポスターがこれです。

人生会議

ポスターの文章の部分を書き出しておきます。

まてまてまて
俺の人生ここで終わり?
大事なこと何にも伝えてなかったわ
それとおとん、俺が意識ないと思って
隣のベッドの人にずっと喋りかけてたけど
全然笑ってないやん
声は聞こえてるねん。
はっず!
病院でおとんのすべった話聞くなら
家で嫁と子どもとゆっくりしときたかったわ
ほんまええ加減にしいや
あーあ、もっと早く言うといたら良かった!
こうなる前に、みんな
「人生会議」しとこ

「人生会議」とはなにかというと、厚生労働省によると、「もしものときのために、あなたが望む医療やケアについて前もって考え、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取組のこと」です。
これは「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」と言ってきましたが、一般に普及させるために厚労省が「人生会議」という愛称をつけました。


厚労省がこのポスターのデザインを発表すると、たとえば全国がん患者団体連合会の天野慎介理事長は、「『人生会議』は終末期だけを考えるのではなく、患者が自分らしく生きることを支える試み。このポスターは“支える”という部分が欠けていて死ぬ直前の部分しかない。これは『人生会議』というよりは、『死に方会議』のポスターです」とフェイスブックに書き込みました。
また、卵巣がん体験者の会「スマイリー」の片木美穂代表は、「これを目にする治療に苦慮する患者さんや残された時間がそう長くないと感じている患者さんの気持ちを考えましたか?  そしてもっと患者と話をすれば良かったと深い悲しみにあるご遺族のお気持ちを考えましたか?」などと書かれた抗議文を厚労省に送付しました。

一方、ポスターを擁護する声もあります。インパクトがあるとか、死はきれいごとではないといったものです。


私の考えを言えば、このポスターはまったくだめです。炎上して当然です。
このポスターが病院の待合室に張られていたら、目にした人は、患者であれ家族であれ、どんな気持ちになるかと想像すればわかるはずです。おそらく全国から抗議が殺到したでしょう。
病院でなくて市役所などに張られていても、同じようなものです。

このポスターは、制作者の意図はともかく、心電図がフラットになっていることからして死の瞬間と想像され、怨念を残して死んでいく人間の姿と見えます。
端的に言うと、この人の顔は般若の面のようになっています。
怨念を残して死ぬのは最悪の死です。これが映画なら、この人は化けて出るはずです。

なぜそんな印象になるかというと、ポスターに起用されたお笑い芸人の小藪千豊氏が、説教したり小言をいったりするキャラだからです。
ポスターの文章に「大事なこと何にも伝えてなかったわ」「もっと早く言うといたら良かった!」とあるように、ここは反省、後悔、自責の気持ちが表現されなければなりませんが、小藪氏のキャラのせいで(あるいは演出家の意図のせいで)、まったく違うものになりました。

小藪氏は「人生会議」という愛称を決めた選定委員を務めていましたから、単にポスターの写真に出ただけではありません。
そして、小藪氏の所属する吉本興業は、このポスターの制作を請け負っていました。
ポスターは約1万4千枚制作され、その費用は厚労省によると「吉本興業と4070万円の委託価格で契約した」ということです。
こうしたポスター制作は広告代理店などがするものと思っていましたが、今や吉本興業は「安倍首相のお友だち」なので、こうしたところにまで食い込んでいたわけです。

ポスターの中で小藪氏は「ほんまええ加減にしいや」とおとんに突っ込んで、お笑いの常道を演じていますが、死んでいく人間がそんなことを思うはずがありません。
しかし、コントや新喜劇の芝居なら成立します。小藪氏は新喜劇の座長であり、吉本興業はお笑いを武器にする会社です。
吉本興業は「お笑い」を優先し、結果的に「死」を軽視するこの企画を厚労省に提出したわけです。
厚労省は当然、「ここはまじめに死を扱ってください」と言って、その企画にダメ出しするところです。

しかし、安倍首相は吉本新喜劇の舞台に立ったことがあり、新喜劇の芸人が首相官邸を表敬訪問したこともあり、両者の関係は密接です。
官僚は安倍首相を忖度して、ダメ出ししなかったのでしょう。
その結果、炎上ポスターができあがってしまったのです。

この問題は、モリカケ問題や「桜を見る会」問題と同じです。
長期政権によって、どこを切っても金太郎飴のように、安倍首相、安倍首相のお友だち、忖度官僚の三者の顔が出てきます。

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