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このところ新型コロナウイルス感染者数が増大し、「緊急事態宣言」が出される雲行きです。

しかし、感染者率のもっとも高い東京でも、感染者は1000人をちょっと越えたところです。東京の人口が1千万人強であることを考えると、1万人に1人の割合です。死亡率は数パーセントですから、私自身はまったく脅威に感じません。
脆弱な医療システムに合わせた緊急事態宣言かなと思います。

ただ、感染者数が正確に把握できているかという問題があります。
感染者数の増大は、3月24日にオリンピック延期が決まってから始まったという印象があります。意図的にPCR検査数を増やしたということはないでしょうか。

「新型コロナウイルス国内感染の状況」というサイトから、毎日の新規感染者数のグラフ(約2か月間)と、毎日のPCR検査実施数のグラフ(1か月間)を引用します。

感染者数新規

検査人数

PCR検査数はバラツキが大きくてわかりにくいですが、増大する傾向にはあるものの、オリンピック延期決定後にとくに増えたとはいえないようです。
一方、日々の感染者数は着実に増えているので、「感染が拡大している」ということはいえます(オリンピック延長決定後に急に感染者が増えたような印象があるのは、安倍首相や小池都知事の態度が変わったためかもしれません)。

むしろ問題は、検査数がまだ低い水準にあることです。
世界各国と比べても低すぎます。

正確な感染者数を把握しないまま緊急事態宣言を出すと、困ったことになります。
普通は新規感染者数がへってくれば宣言を解除することになりますが、もともと感染者数を低く抑えていると、ほんとうにへったかどうかわかりません。
つまり緊急事態宣言を出す以上は、感染者数をある程度正しく把握していないといけないのです。

これからしばらくは検査要求に対してキャパいっぱいに応えて検査し、できる限り正しい感染者数を出して、緊急事態宣言はそのあとにするべきだと思います。


緊急事態宣言を出すとどうなるのでしょうか。
都市封鎖、ロックダウンという言葉があります。武漢市では都市封鎖が行われ、その直前には多数の人が武漢市から脱出するという事態がありましたし、イタリア北部からも多数の人が駅に詰めかけ、南部に脱出しようとしました。
一部の都市が汚染された場合は、こうした文字通りの都市封鎖をしなければなりませんが、今の日本は東京だけというわけではないので、文字通りの都市封鎖は無意味です。

もうひとつの都市封鎖の意味は、強力な外出禁止措置です。
たとえばフランスでは、1日1度の買い物や運動や犬の散歩のため以外の外出は禁止され、街角に警官が立っていて、違反者は罰金刑です。

感染防止には人と人が接触する機会をできる限りへらすことですから、外出禁止がいちばん有効です。
多くの商店や飲食店も休業です。武漢では企業活動も停止しましたが、ヨーロッパでは企業はある程度営業をしているようです。生活必需品の物流とライフラインの維持はされます。

しかし、日本の非常事態宣言では法的に外出禁止をすることはできません。
ということは、これまで行われてきた外出自粛要請が続くだけです。
要するにいちばん肝心のことができないのです。
ザル法という言葉がありますが、ザルの真ん中に大きな穴が空いているという法律です。
武漢市で強力な外出禁止措置がとられているのを横目で見ながら、日本の国会では外出禁止のできない欠陥法をつくっていたのです。


ただ、緊急事態宣言が出ると、「政府が法律に基づく緊急事態宣言を出した」という緊張感から、しばらくは外出自粛が広く行われるでしょう。
しかし、長期化すると気がゆるんできて、外出する人が増えてきます。
最初は自粛している人は自粛しない人を非難するでしょう。人は不公平だと思うと、不公平なことをする人に“正義の怒り”を覚えるからです。
しかし、自粛しない人がある程度まで増えると、今度は自分が自粛をやめることで不公平を解消しようとし、“自粛体制”が一気に崩壊するということが考えられます。

これまで自粛要請に素直に従うというのが日本人の“美徳”でしたが、アリの一穴で、これをきっかけに日本人のモラルハザードが進むかもしれません。


国会は新型インフルエンザ等対策特別措置法が欠陥法であることを認めて、緊急事態宣言を出す前に、罰則つきの外出禁止命令が出せるように法律を改正するべきです。