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新型コロナウイルス対策に成功しているのは女性リーダーの国だ――という説があります。
「Forbes JAPAN」の「コロナ対策に成功した国々、共通点は女性リーダーの存在」という記事が指摘しました(4月18日のTBS系「新・情報7daysニュースキャスター」でもやっていました)。

その記事によると、アンゲラ・メルケル首相のドイツ、蔡英文総統の台湾、ジャシンダ・アーダーン首相のニュージーランド、カトリン・ヤコブスドッティル首相のアイスランド、サンナ・マリン首相のフィンランド、アーナ・ソールバルグ首相のノルウェーは、いずれも感染拡大を抑え込んで、国民の支持も得ているということです。

女性リーダーと男性リーダーでそんな違いがあるのかというと、ある可能性は十分にあります。


狩猟採集生活をしている未開社会では、採集は男女ともにしますが、狩猟はもっぱら男性が担うという性別役割分業があります(ですから、性別役割分業はジェンダーばかりとはいえません)。
その延長線上と思われますが、戦争ももっぱら男性が担ってきました。
そのため男性の頭には戦争の文化がいっぱい詰まっています。


男は、新型コロナウイルス対策をどうしても戦争になぞらえてしまいます。
戦争というのは、攻撃は最大の防御なので、敵を識別し、攻撃するというのが基本です。

ウイルスが国内に侵入していないときは、ウイルスは敵として認識することができ、ウイルスの侵入を防ぐ水際作戦を行うことができます。
これでうまくいけばよかったのですが、世界でうまくいった国はないようです。

ウイルスが国内に入り込んで広がれば、敵がどこにいるかわからないので、攻撃のしようがありません。
もちろん感染者は敵ではありません。
ただ、勘違いして、感染者を差別したり、発熱しているのに旅行したり会社に行ったりした人を非難する人はいますが。

ウイルスが国内に広がった時点でフェーズが変わり、戦争にたとえるなら、国が戦場ではなく野戦病院になったようなものです。
戦うことよりも、医療崩壊を招かないように病床と医療スタッフをふやすとか、マスクや防護服や人工呼吸器を確保するとか、隔離施設を別につくるといったことが最優先の課題になります。
感染拡大を防ぐ手段も、要するに家にじっとしていることですから、“戦う”というイメージではありません。

ところが、男の頭はなかなか“戦う”モードから切り替わることができません。
その典型がトランプ大統領です。最初に中国からの全面入国禁止やEUからの入国禁止という水際作戦を行い、それが失敗したあとも、いまだに中国を攻撃し、WHOを攻撃しています。
安倍首相も、外出自粛を呼びかけながら、「動き回る若者」や「夜の繁華街」を敵視して攻撃しています。


武漢で医療崩壊が起こったとき、日本でも同じことが起こるかもしれないと思って、早めに医療体制を強化することもできましたし、都市封鎖のやり方を参考にすることもできました。
しかし、中国を敵国ととらえている男は、中国から学ぼうとはしません。
韓国もドライブスルー方式のPCR検査などを考えだし、感染拡大を抑え込むことに成功しましたが、日本の男は韓国を敵視しているので、かたくなに韓国から学ぼうとしませんでした。
敵味方を分ける発想はウイルス対策の足かせです。

もちろん日本の男がみんなそうだというのではありません。右翼とか自称保守の男がそういう“戦争脳”なのです。

女性にはそういう“戦争脳”はまずありません。
そのため女性リーダーの国はウイルス対策に成功しているようです。
台湾の蔡英文総統は、中台は敵対関係にあるのに、中国からの情報収集に努めて、いち早く正しい対策を打ち出しました。
それによって台湾の感染者は今でも400人台です。


安倍首相は4月10日に田原総一朗氏と面会した際、「実は私自身、第三次世界大戦は、おそらく核戦争になるであろうと考えていた。だが、コロナウイルス拡大こそ第3次世界大戦であると認識している」と語ったそうです。田原氏が自身のブログで明らかにしました。

今の状況を第三次世界大戦になぞらえる感覚もどうかと思いますが、安倍首相はおそらく戦争の指揮官のつもりでしょう。
ウイルス対策を戦争だととらえると、迷走するしかありません。
それに、戦争の指揮官は野戦病院の内部のことなど考えないので、そのために日本は医療崩壊の瀬戸際になっています。

今の日本に必要なのは、戦争の指揮官でも兵士でもなく、野戦病院の運営をするナイチンゲールです。