村田基の逆転日記

進化倫理学の威力を試すブログ

タグ:安倍首相

バンクシー
「Banksy (@banksy) • Instagram photos and videos」より

上の絵は覆面アーチストのバンクシーによる新作です。
イギリス南部のサウサンプトン総合病院に届けられ、救急病棟近くのロビーに飾られました。
バンクシーの「あなた方のご尽力に感謝します。白黒ではありますが、この作品で少しでも現場が明るくなることを願っています」というメモが添えられています。
今秋まで同病院に飾られ、その後はNHS(国民保健サービス)の資金を調達するためにオークションにかけられるということです。

マスコミは、新型コロナウイルスの感染拡大で過酷な仕事を強いられている医療従事者への感謝を表現した絵というふうに報じています。
看護師の人形のほかにバットマンやスパイダーマンの人形もあるので、「看護師はヒーローである」ということを表現しているという解釈です。

しかし、バンクシーのことですから、そんな単純なことではなく、なにかの皮肉や寓意があるはずです。

バットマンやスパイダーマンの人形が入っているカゴは、どう見てもごみ箱です。
子どもはバットマンやスパイダーマンに飽きて、ごみ箱に捨て、今は看護師人形で遊んでいますが、いずれ看護師人形にも飽きて、ごみ箱に捨てることを暗示しています。


イギリスの看護師には外国からきた非白人の人が多いそうです(たいていのヨーロッパの国はそのようですが)。
日本でも医者と看護師は差別的関係にありますが、イギリスではそこに人種差別も加わるわけです。

「note」でそのことを指摘している人がいました。

今日はフランスのニュースで、バンクシーが新しく描いた絵が病院に飾られたという話をしていました。これを見た人たちは絶賛しているんです。
この絵は白人の男の子が、今までのヒーローはカゴに捨てられているように置かれている中、黒人の看護師が新たなヒーローとして遊ばれている絵です。
皮肉すぎませんか。それを白人の病院関係者の方が絶賛している姿がものすごく違和感です。この絵を見た時に私はいろんな感情が自分の中で渦巻きました。
https://note.com/momusplay/n/nf2c1cead3a6e

バンクシーのメモに「白黒ではありますが」という言葉が入っているのは、人種問題を暗示していそうです。
つまりこの絵は、過酷な現場で奮闘する看護師をヒーローとしてたたえつつも、看護師の多くが非白人であるという差別構造を皮肉っていると解釈できます。


ただ、私はそれだけではないと思います。

まずひとつは、捨てられたバットマンやスパイダーマンは、悪と戦うヒーローだということです。
というか、ヒーローというのは悪と戦うと決まったものです。
しかし、看護師のヒーローは悪とは戦いませんし、おそらくなにとも戦いません。
そういうヒーロー像の転換ということもバンクシーは言いたかったのではないかと思います(この絵のタイトルは「ゲームチェンジャー」というようです)。


そして、いちばん肝心なのは、子どもは看護師のヒーロー人形で遊ぶことにいずれ飽きるだろうということです。

現在、多くの人が医療従事者を持ち上げ、つまりヒーロー扱いして、感謝の言葉を述べています。
本気で言っているかどうかは誰にもわかりません。

たとえば、安倍首相は5月4日の記者会見でこのように語りました。
 各地の病院で集団感染が発生している状況を大変憂慮しています。しかし、医師、看護師、看護助手、そして病院スタッフの皆さんは、そのような感染リスクと背中合わせの厳しい環境の下で、強い使命感を持って、今この瞬間も頑張ってくださっています。全ては私たちの命を救うためであります。医療従事者やその家族の皆さんへの差別など、決してあってはならない。共に心からの敬意を表したいと思います。
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement/2020/0504kaiken.html
「心からの敬意」という言葉で医療従事者を持ち上げていますが、本気でそう思うなら、医療従事者に特別手当を支給すればいいのです。
現に大阪府では、基金を設けて寄付を募り、吉村知事は早ければ5月中にも、府内の病院で新型コロナ感染症の入院患者の治療にあたる医師など医療従事者に一律20万円を支給する考えを表明しています。

言うのはタダですから、いい人に見られたいために、うわべだけで医療従事者をヒーローとしてほめたたえる人もいます。
そういう人は、コロナ禍が過ぎ去れば、子どもがオモチャに飽きるように、医療従事者のことなどすっかり忘れてしまうだろう――バンクシーはあの絵にそういう皮肉を込めたのだと思います。

星野源と安倍首相

星野源さんの「うちで踊ろう」という曲に、安倍首相が勝手にコラボして、自宅で犬を抱いたり、飲み物を飲んだり、本を読んだりする動画をアップしたことが批判され、炎上しました。

これはすでに十分に批判されているので、あまり付け加えることはありませんが、私が思うのは、安倍首相は人気取りのことばかり考えているのだなということです。
よい政治を行って人気を得るという王道を行くのではなく、印象操作やメディア支配で人気を得るという安易な道を行くことを覚えてしまって(しかも記録改ざんなどで批判をかわすことも覚えてしまって)、星野源さんとのコラボ動画もその延長線上です。

「星野源は若者に人気だそうだから、私が降臨すれば、『安倍さんは私たち若者の気持ちがわかっている』となって、若者の支持率がアップするだろう」みたいに考えたのでしょう。




安倍首相はコラボ動画に添えて、こんなコメントもツイートしていたので、私はこのコメントについて論じたいと思います。

安倍ツイッター

安倍首相は、「友達と会えない。飲み会もできない」というのが若者の平均的な気持ちだと思っています。
「遊びのことばっかり考えているチャライ若者」というのが安倍首相の若者観です。
現在の緊急事態宣言下の状況では「収入がなくなってどうしよう」とか「いつになったら学校が始まるのだろう」といった不安をかかえている若者も多いはずですが、安倍首相の頭にはないようです。

安倍首相は4月7日の記者会見でも「既に自分は感染者かもしれないという意識を、特に若い皆さんを中心に全ての皆さんに持っていただきたい」と、若者を特別視した言い方をしています。まるで若者がペストを媒介するネズミみたいです(正確には媒介するのはネズミのノミです)。

新型コロナウイルスに感染すると、若者であっても命の危険があります。
星野源さんの「うちで踊ろう」にも「生きて踊ろう」「生きてまた会おう」という歌詞があり、お互いの命をたいせつにしようというメッセージが根底にあります。

安倍首相はこのツイッターで若者に呼びかけているのに、若者の命を気遣う言葉がまったくありません。
「多くの命が確実に救われています」や「医療従事者の皆さんの負担の軽減につながります」というように、若者以外の人のことばかり言っています。
これは「お国のために」と言って若者を戦争に送り出すときの論理と同じです。



そうしたところ、夫の東出昌大さんの不倫問題でなにかとお騒がせの杏さんが、星野源さんと同じようにギターの弾き語りをする動画をアップして、話題となりました。
弾き語りしている曲は加川良さん作詞作曲の「教訓Ⅰ」です。
タイミングからして、安倍首相のコラボ動画とツイッターの言葉に反応したものではないかと想像されます。


この動画には、

「自分のことを守ることが、外に出ざるを得ない人を守ることになる。利己と利他が循環するように、一人ひとりが今、できることを」

というコメントがつけられています。
このコメントは、安倍首相のコメントに対しての思いでしょう。

「教訓Ⅰ」の歌詞の最後だけ引用します。
死んで神様と 言われるよりも
生きてバカだと いわれましょうヨネ
きれいごと ならべられた時も
この命を すてないようにネ
青くなって しりごみなさい
にげなさい かくれなさい
https://www.uta-net.com/movie/43159/

安倍首相のコメントと比べると、その違いがよくわかります。
若者の命をたいせつにするかしないかの違いです。


「教訓Ⅰ」は1970年に発表された歌で、ベトナム戦争を背景にした反戦歌です。
アナクロな首相がいるために、50年前の歌が今も歌われます。

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東京オリンピック延期が3月24日に決定されたとたんに、東京での新型コロナウイルスの感染者数が急増しました。やはり誰かがコントロールしているのでしょうか。

とはいえ、まだまだ日本人の危機意識は少ないようです。
その代表格が安倍首相夫妻です。
昭恵夫人が3月末に都内で私的“桜を見る会”を楽しんでいたと「NEWSポストセブン」が報じました。

安倍昭恵氏、花見自粛要請の中で私的「桜を見る会」していた
 満開を迎えようという桜、そして笑顔の男女──その中心にいるのは、安倍首相の妻・昭恵夫人だ。森友学園問題をめぐり自殺した近畿財務局職員の手記が報じられ、疑惑が改めて注目される中、渦中の昭恵夫人は私的な“桜を見る会”を楽しんでいた。
 3月下旬の都内某所、ライトアップされた桜をバックに肩を寄せ合う13人。その中心に写っているのが昭恵夫人だ。写真を見た、参加者の知人はこう話す。
「この日の参加者は、昭恵さんと以前から交流があった人が中心だそうです。写真で昭恵夫人の隣にいるのは人気モデルの藤井リナさん。藤井さんは2014年にYouTubeで昭恵さんと対談するなど、もともと交友があったようです。他にもアイドルグループ・NEWSの手越祐也さんや音楽プロデューサーなど芸能関係者の姿もありました」
 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、小池百合子・東京都知事が花見の宴会などの自粛を要請する中、この写真を世論はどう受け止めるだろうか。
(後略)
https://www.news-postseven.com/archives/20200326_1550908.html/2

昭恵夫人は、森友問題から「桜を見る会」問題まで、世の中を引っかき回してきましたが、今も同じです。

昭恵夫人はそういう人だとして、問題は安倍首相です。危機意識がまったくないのです。
3月27日の参院予算委で立憲民主党の杉尾秀哉議員にこの問題を質問されると、安倍首相は「レストランで知人と会合を持った際に、レストランの敷地内の桜の下で撮っている」と主張し、「東京都が自粛を求めている公園での花見のような宴会を行なったという事実はない」「レストランに行ってはいけないのか」などと反論しました。

詭弁を弄して自己正当化をはかるのはいつものことですが、最大の問題は、安倍首相が感染のメカニズムをまったく理解していないことです。
問題は花見か否かではありません。
レストランで13人も集まって会食したら、密閉、密集、密接という三つの「密」を犯して、感染リスクを高めることになるからよくないのです。

昭恵夫人が感染したら安倍首相も感染する可能性が大です。
安倍首相としては、自分が感染するのは国家安全保障上の大問題ですから、昭恵夫人に向かって、そんな危ないことはやめろと言うのが当然です。


感染に対する危機感のなさは、安倍政権に一貫しているものです。安倍首相だけでなく、加藤厚労相や菅官房長官の言動にも危機感はありませんし、自民党議員全体もそうです。自民党の打ち出した経済対策は「お肉券」や「お魚券」といったものです。

一度だけ危機感がありそうに思えたのは、安倍首相が2月29日に全国の小中高の一斉休校を打ち出したときです。
しかし、一斉休校にするのは、学校を通じて感染が拡大するのを防止するためのはずですが、安倍首相は記者会見でまるで「子どものため」であるかのように言いました。

 学校が休みとなることで、親御さんには御負担をおかけいたします。とりわけ、小さなお子さんをお持ちの御家庭の皆さんには、本当に大変な御負担をおかけすることとなります。それでもなお、何よりも子供たちの健康、安全を第一に、多くの子供たちや教職員が日常的に長時間集まる、そして、同じ空間を共にすることによる感染リスクに備えなければならない。どうか御理解をいただきますようにお願いいたします。
 万が一にも、学校において子供たちへの集団感染のような事態を起こしてはならない。そうした思いの下に、今回の急な対応に全力を尽くしてくださっている自治体や教育現場の皆さんにも感謝申し上げます。
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement/2020/0229kaiken.html
安倍首相はこのときから感染のメカニズムがわかっていませんでした。
そのため、感染者のいない県にまで一斉休校を要請し、一方で学童保育施設で子どもたちが“濃厚接触”するというおかしなことになりました。

これはまずいやり方だったので、安倍首相は3月20日に休校要請は延長しないことを表明し、4月の新学期は平常通りになる見通しですが、感染者が急増して東京都が週末の外出自粛要請しているのとちぐはぐな動きになりました。


ところで、ドイツのメルケル首相は3月18日、きびしいウイルス対策をとることについて国民の理解を求めるための演説をしましたが、こちらは安倍首相とは対照的です。
その演説から一部だけ引用します。

ウィルス学者の助言は明確です。握手はもうしない、頻繁によく手を洗う、最低でも1.5メートル人との距離を取る、特にお年寄りは感染の危険性が高いのでほとんど接触しないのがベスト、ということです。
こうした要求がどれだけ難しいことか私は承知しています。緊急事態の時こそお互いに近くにいたいと思うものです。私たちは好意を身体的な近さやスキンシップとして理解しています。けれども、残念ながら現在はその逆が正しいのです。これはみんなが本当に理解しなければなりません。今は、距離だけが思いやりの表現なのです。
よかれと思ってする訪問や、不必要な旅行、こうしたことすべてが感染拡大を意味することがあるため、現在は本当に控えるべきです。専門家がこう言うのには理由があります。おじいちゃんおばあちゃんと孫は今一緒にいてはいけない、と。
不必要な接触を避けることで、病院で日々増え続ける感染者の世話をしているすべての方々を助けることになります。こうして命を救うのです。
https://www.mikako-deutschservice.com/post/コロナウイルス対策についてのメルケル独首相の演説全文

メルケル首相は感染のメカニズムを理解した上で、危機感を持って国民に呼びかけています。
比較すると、安倍首相の認識がまったくだめなことがわかります。

なお、日本では若者の行動抑制を求めていますが、ドイツでは年寄りと接触しないよう求めていて、目的が明快です。


今はウイルスが相手の戦いですから、科学的で合理的なやり方をしなければなりませんが、安倍首相の頭には精神主義ばかりが詰まっていて、科学的とか合理的ということを理解できないのかもしれません。

安倍首相
新型コロナウイルス感染症対策本部 令和2年2月27日(首相官邸ホームページより)

2月26日ごろからスーパーや薬局の店頭にトイレットペーパーがなくなりました。
オイルショックのときにトイレットペーパーがなくなりましたが、そのときの記憶で、パニックになると条件反射でトイレットペーパーを買ってしまう人がいるのでしょうか。

今回はSNS上のデマが原因のようですが、そういうデマにひっかかるのはやはり不安心理があるからです。
どうして不安心理があるかというと、どう考えても安倍首相のせいです。

政府は2月25日、新型コロナウイルス対策本部の会合を開き、「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針 」を発表しました。
この基本方針には、緊急の対策などはなにもなく「イベント等の開催について、現時点で全国一律の自粛 要請を行うものではない」となっていました。
これまで安倍首相はウイルス対策について、閣僚に対して「先手先手の対応」を指示し、「きちっとやっている。世界保健機関(WHO)も評価している」と自画自賛して「やってる感」を演出してきましたから、その流れを受けたものです。

ところが、基本方針を出した翌日に安倍首相は、全国的なスポーツ・文化イベントの開催を自粛するよう要請しました。
一夜にして基本方針を反故にしたのです。
そして、その翌日に、全国の小中高の臨時休校を要請しました。

一国のリーダーにまったく定見がないことを見た人が不安になって、トイレットペーパー騒動が起きたのかと思われます。


とはいえ、小中高の一斉休校を思い切った決断であるとして支持する声もあります。
確かに思い切った決断ではありますが、実効性はあるでしょうか。

これを書いている時点で、新型コロナウイルス感染者が出ているのは23都道府県ですから、24県では一人も感染者が出ていないことになります。感染者の確認されていないところで一斉休校するのはほとんど無意味です。
それに、文部科学省は2月25日に通達を出し、感染した児童や生徒がいた場合は、臨時休校をすみやかに行い、さらに地域全体の感染を抑えるため感染者のいない学校も積極的に臨時休校することも考えられるとしました。
つまり各地域や各学校が自主的に休校できる体制を整えていたのです。
安倍首相の一斉休校要請がいっそう無意味であることがわかります。


感染拡大を防ぐ実効性のある対策は、多くの人が集まって濃厚接触する場面をつくらないようにすることです。
そのためにすでにイベントや会合の自粛要請がされています。
あと、人が濃厚接触する場面といえば、満員電車を初めとする通勤通学の人混みです。
通勤時の混雑緩和のために、時差出勤やテレワークが推奨されていますが、まだ十分とはいえません。
ですから、今するべきことは、通勤時の混雑緩和です。
単純化していうと、「満員電車をなくす」ことです。

北海道の鈴木直道知事は「緊急事態宣言」を出して、この週末の外出を控えるよう道民に呼びかけました。
しかし、週末だけ外出を控えても、週明けから通勤のために満員電車に乗るのでは、あまり意味がありません。
とはいえ、知事が企業に対して休業要請をするのはむりでしょう。

ここは安倍首相の出番です。
安倍首相がもし実効性のある対策をしたいのなら、大都市圏の企業に対して休業要請をするべきです。
一斉休業の必要はなく、地域の半分の企業が休むというような計画休業でいいわけです。
もっとも、それでも休業補償をどうするかという問題がありますし、経済にも大打撃です。


そこまでする必要があるのかというと、たぶんないでしょう。少なくともしばらく様子見でいいのではないかと思います。

ただ、安倍首相としてはどうしても東京オリンピックを開催したいはずで、そのためには5月中には終息宣言を出さねばならず、実効性のあることはなんでもやるというなら、企業に休業要請をするしかないと思います。

考えてみれば、小中高の一斉休校は大して経済的打撃にならないので、安倍首相としては「やってる感」を出すのに都合がよかったのでしょう。

国民のことより政権維持を優先させる安倍首相は、今や百害あって一利なしの存在です。

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明けましておめでとうございます。
今年もこのブログをよろしくお願いします。

今年の日本はどうなるかと考えてみましたが、あまりいい見通しがありません。
安倍長期政権が完全に行き詰まっているからです。
安倍首相自身はこの状況をどう考えているのでしょうか。
安倍首相の「年頭所感」を読んでみました。

安倍内閣総理大臣 令和2年 年頭所感
新年あけましておめでとうございます。

 いよいよ、東京オリンピック・パラリンピックの年が幕を開けました。

 1964年、10歳の時に見た東京五輪は、今も、私の瞼に焼き付いています。身体の大きな外国選手たちに全く引けをとらない日本人選手の大活躍は、子どもたちに、未来への希望を与えてくれました。

 「人間、夢があるからこそ成長できる。
      いつの時代も『夢見る力』が大切なんです。」

 東京五輪、重量挙げ金メダリスト、三宅義信選手の言葉です。

 半世紀を経て日本に再びやってくるオリンピック・パラリンピックも、子どもたちが未来に向かって、夢を見ることができる。わくわくするような、すばらしい大会にしたいと考えています。

 昨年、ほぼ200年ぶりの皇位継承が行われ、令和の新しい時代がスタートしました。オリンピック・パラリンピックを経て、5年後には、大阪・関西万博。

 未来への躍動感があふれている今こそ、新しい時代に向けた国づくりを力強く進める時です。

 3歳から5歳まで、全ての子どもたちの幼児教育が無償化されました。この春からは、真に必要な子どもたちの高等教育の無償化が始まります。未来を担う子どもたちの未来に、大胆に投資していきます。

 人生100年時代の到来は、大きなチャンスです。働き方改革を進め、女性も男性も、若者もお年寄りも、障害や難病のある方も、誰もが活躍できる一億総活躍社会をつくりあげていく。

 全ての世代が安心できる社会保障制度へと改革を進め、最大の課題である少子高齢化に真正面から挑戦していきます。

 我が国の美しい海、領土、領空は、しっかりと守り抜いていく。従来の発想に捉われることなく、安全保障政策の不断の見直しを進めます。激動する国際情勢の荒波に立ち向かい、地球儀を俯瞰しながら、新しい日本外交の地平を切り拓いてまいります。

 未来をしっかりと見据えながら、この国のかたちに関わる大きな改革を進めていく。その先にあるのが、憲法改正です。令和2年の年頭に当たり、新しい時代の国づくりへの決意を新たにしています。

 安倍内閣に対する国民の皆様の一層の御理解と御協力をお願いいたします。本年が、皆様一人ひとりにとって、実り多き、すばらしい一年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。

令和二年一月一日
内閣総理大臣 安倍 晋三
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement/2020/0101nentou.html

全編が“ポエム”になっています。
ポエムというと小泉進次郎環境相が有名ですが、安倍首相はそれ以上かもしれません。
要するに中身がないので、言葉で飾るしかないのです。
「対米従属」を「日米は完全に一致」と言い換えたり、モリカケ問題や桜を見る会問題で嘘をついたりしているうちに、言葉で飾る能力が発達したようです。

なにかをやろうという意欲が感じられません。改憲に言及していますが、言葉だけです。
まったく空っぽでは具合が悪いので、東京オリンピック・パラリンピックを前面に打ち出して、格好をつけています。
日本政府があまり前面に出るとスポーツの政治利用になりますが、安倍首相はリオデジャネイロ・オリンピックの閉会式にもスーパーマリオの格好をしてサプライズ登場したくらいですから、当時から利用する気満々でした。


事実の誤認もあります。
安倍首相は1964年の東京オリンピックについて、「身体の大きな外国選手たちに全く引けをとらない日本人選手の大活躍」と言いましたが、そんなわけはありません。日本人選手が活躍したのは、ほとんどが体重別階級のある種目です。

1964年の東京オリンピックで日本人選手が活躍した種目は、体操、レスリング、柔道、ウエイトリフティング、バレーボールといったところです。
レスリング、柔道、ウエイトリフティングはもちろん体重別です。体操は体重別ではありませんが、相対して戦うわけではないので、身体の大きさはほとんど関係ない種目です。
そうすると、身体の大きな外国人選手に引けをとらずによく戦ったと言えるのはバレーボールだけです。
バレーボール以外の球技はまったくだめでしたし、陸上、水泳は各銅メダル一個でした。

逆に、柔道無差別級で日本人選手がオランダのアントン・ヘーシンク選手に敗れるというショックな出来事がありました。
当時、日本人の身体は今よりかなり小さくて、それは日本人のコンプレックスでしたが、「柔よく剛を制す」「相手の力を利用して勝つ」という柔道は日本人にとって精神的なよりどころでした。それが体の大きな外人選手に日本人選手が負けたので、日本人はみなパニック状態になるほどのショックを受けました。

ですから、安倍首相が「身体の大きな外国選手たちに全く引けをとらない日本人選手の大活躍は、子どもたちに、未来への希望を与えてくれました」と言ったのは、事実に反します。
ただ、バレーボール、とくに女子バレーは例外でした。安倍首相は女子バレーのことを言っているのかもしれません。

金メダルを取った女子バレーチームを率いた大松博文監督は、猛烈なスパルタ式指導で、体の小さかった日本人選手のチームを世界一にしました。大松監督は大人気になり、著書はベストセラーになって映画化もされました。のちには自民党の参議院議員にもなっています。
大松監督のスパルタ式指導、根性主義、精神主義は、日本のスポーツ界にひとつの流れをつくりました。
しかし、「身体の小ささを精神主義で補う」というやり方がうまくいくのは一時的現象です。日本のバレーボール界も結局長身の選手をそろえています。

大松監督は大河ドラマの「いだてん」にも登場しました。安倍首相(かスピーチライター)はそれを見て、年頭所感に取り入れたのでしょう。
しかし、大松監督のやり方は完全なパワハラで、今の時代にはまったく合いません。
やはりスポーツは精神主義ではなく合理主義でなければなりません。


精神主義にも存在理由はあります。昔、日本軍がアメリカ軍に対したとき、力の差を補うために精神主義を用いるしかありませんでした。それが戦後も惰性となって続き、とくにスポーツ界に生き残りました(大松監督はインパール作戦の生き残りでもあります)。
そして、安倍首相の頭の中にも生き残っているようです。

安倍首相のポエムは、内容のなさをごまかすためと、あと戦前的な精神主義からもきていると思われます。



安倍首相のポエムだけでは後味が悪いので、最後に天皇陛下の年頭の「ご感想」を張っておきます。

天皇陛下のご感想(新年に当たり)
令和2年 
上皇陛下の御退位を受け,昨年5月に即位して以来,国民の幸せを願いながら日々の務めを果たし,今日まで過ごしてきました。即位関係の諸行事を無事に終えることができ,安堵するとともに,国内外の多くの方々とお会いし,折々に温かい祝福を頂く機会も多かったこの1年は,私にとっても皇后にとっても誠に感慨深いものでした。
その一方で,昨年も台風や大雨により,多くの尊い命が失われたことに心が痛みます。寒さも厳しい折,住まいを失い,いまだ御苦労の多い生活をされている多くの方々の身を案じております。本年は、災害がない1年となることを祈ります。
新しい年が,日本と世界の人々にとって幸せな年となることを心より願いつつ,務めを果たしていきたいと考えています。
https://www.kunaicho.go.jp/page/gokanso/show/3

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沢尻エリカ容疑者が合成麻薬MDMAを所持していたとして11月16日に逮捕されたとき、安倍首相の「桜を見る会」私物化問題がマスコミに騒がれていたタイミングだっただけに、世間の関心をそらすための逮捕ではないかという憶測を呼びました。

私が最初にネットで目にしたのは、東ちづるさんが「法を犯した芸能人の逮捕に、必要以上に大騒ぎしなくていいです」「騒ぐべきは、政治家や特権階級の人たちが法を犯しても逮捕されてない現実にです」とツイートしたという記事です。
それから、ラサール石井さんが「まただよ。政府が問題を起こし、マスコミがネタにし始めると芸能人が逮捕される。これもう冗談じゃなく、次期逮捕予定者リストがあって、誰かがゴーサイン出してるでしょ」とツイートしたという記事もありました。

そして、堀江貴文氏がこの件に関して、「こいつあたまが腐ってる」と非難したというニュースを目にしました。
「あたまが腐ってる」とは尋常な言葉づかいではありません。いったい誰を非難したのかが気になって、記事を見てみました。

堀江貴文氏「まじ狂ってる」沢尻政権陰謀説に反論
ホリエモンこと実業家の堀江貴文氏(47)が、女優の沢尻エリカ容疑者(33)の逮捕をめぐりネット上でささやかれている“政権陰謀説”についての鳩山由紀夫元首相(72)のコメントに反論した。
鳩山氏は18日、ツイッターを更新し、「沢尻エリカさんが麻薬で逮捕されたが、みなさんが指摘するように、政府がスキャンダルを犯したとき、それ以上に国民が関心を示すスキャンダルで政府のスキャンダルを覆い隠すのが目的である」とコメントした。
堀江氏は鳩山氏の発言に、「まじで、ほんとにこいつあたまが腐ってる。こんな奴が総理大臣やってたとかまじ狂ってる」とツイート。「つかよ、お前よ、政権の中枢にいたろ?芸能人の麻薬逮捕ネタで覆い隠そうとか事実上できないのとかよくわかってるよな?」と反論した。
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/201911190000183.html

ホリエモンが非難したのは鳩山由紀夫氏でした。

ホリエモンのツイートに対して、「鳩山氏のことよりも安倍首相のほうを批判するべきだ」などの反論もありましたが、それよりも「あたまが腐ってる」とか「こいつ」とか「まじ狂ってる」とかの言葉づかいの悪さに対する反響のほうが大きかったようです。

鳩山氏を批判しても世の中がよくなるわけではないので、ホリエモンの言葉づかいの悪さだけが浮き上がります。
沢尻エリカ容疑者逮捕で政府の陰謀論を述べた人はほかにもいるのに、ホリエモンはなぜ鳩山氏だけ、しかも言葉をきわめて非難したのでしょうか。

キーワードは「首相」と「逮捕」です。


2005年、いわゆる郵政解散による総選挙のとき、ホリエモンは小泉純一郎首相にとくに請われて、自民党の公認や推薦はありませんでしたが、実質的に自民党候補として出馬したことがあります。つまり「首相のお友だち」だったわけです。
ところが翌年、ホリエモンは東京地検特捜部に逮捕され、最終的に実刑判決を受けます。
これがなんの罪であるのか、私は当時から何回説明を聞いてもよくわかりません。
ホリエモンも最高裁まで争ったのですから、判決には納得していないはずです。

当時、ホリエモンはプロ野球の球団買収やTBS買収に動いて、世の中をかき回していましたから、検察に目をつけられたのでしょう。
検察は独立性があって、小泉政権でもコントロールできませんでした。ですから、首相のお友だちでも逮捕されます。
というか、検察によるホリエモン逮捕は、小泉改革が進んで官僚組織の利権に及びそうになっていたことへの警告の意味があったでしょう。
私の個人的な推測ですが、小泉首相がまだ人気があったのに引退したのは、検察にスキャンダルを握られるなどして引退に追い込まれたのではないかと思っています。


ところが、安倍政権においては、検察も警察も完全にコントロールするようになりました。そのため首相のお友だちは絶対に逮捕されません。その典型は、安倍総理を持ち上げた「総理」という著書のある元TBS記者の山口敬之氏が伊藤詩織さんをレイプしたとして逮捕状まで出ていたのに、直前になって逮捕状が執行停止になったケースです。虚偽答弁をして公文書改ざんを指示した財務省の佐川宣寿氏も逮捕されません。一方、安倍首相と対立した籠池夫妻はたちまち逮捕され、長期に拘留されます。

ホリエモンはそれを見ていて、首相のお友だちなのに逮捕された自分と引き比べて、深い憤りを感じたでしょう。

そうしたところに鳩山元首相が沢尻容疑者逮捕について言及しているのを知り、「首相」と「逮捕」のキーワードが一致した瞬間、日ごろからたまっていた憤りに火がついて、怒りが爆発したのでしょう。
しかし、その怒りをぶちまける先が間違っていました。

本来は自分を逮捕した検察と実刑判決を下した裁判所に怒りを向けたいところですが、それは社会的に認められません。
そこで、いちばん安易なやり方として、今は権力のない鳩山元首相に向けたのでしょう(おそらくホリエモンは権力批判ができない人なのです)。

鳩山元首相らの主張する「『桜を見る会』問題からマスコミの目をそらせるための沢尻容疑者逮捕」説は証拠がなく、推測にしかすぎません。しかし、可能性はあるので、その説を唱えたからといって、「あたまが腐ってる」などと非難されるいわれはありません。

ホリエモンは、自分がなにに怒っているのかを自覚するべきです。
「小泉首相のお友だちの俺は逮捕されたのに、安倍首相のお友だちが逮捕されないのはけしからん」というのが正しい怒り方です。

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韓国が日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄したことについて、アメリカのポンペオ国務長官は「失望した」と述べ、米国防総省も「懸念と失望」の声明を出しました。
「失望」というのはかなり強い言葉ですから、日本の韓国嫌いの人たちは「韓国はアメリカの怒りを買った」と大喜びでした。
しかし、トランプ大統領は「韓国でなにが起こるか見てみよう」と言っただけでした。文大統領について「ひじょうによい友人だ」とも述べました。

振り返ると、ポンペオ長官がカメラの前で「失望した」と述べたとき、そんなに強い調子ではありませんでした。なにを言ってもトランプ大統領にひっくり返される可能性があるとわかっていたからでしょう。
ポンペオ長官は対北朝鮮強硬派で知られていましたが、今はそれを封印して、トランプ大統領に合わせています。


G7サミットが8月24日からフランスで開かれ、安倍首相はトランプ大統領と会談し、朝鮮半島情勢についても話し合いました。

北朝鮮のミサイルは「違反」? 日米首脳間で見解に相違
 北朝鮮が短距離弾道ミサイルの発射を繰り返していることについて、日米首脳会談の冒頭、安倍首相は「国連安保理決議に明確に違反する」と強調した。これに対し、トランプ米大統領は「首相の心情は理解できる」としつつ、「いい気分ではないが、(米朝の)合意には違反していない。長距離ミサイルの発射や核実験はしていない。ずっと通常型に近く、彼(金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長)だけでなく、多くの人(国)が実験している」と語った。日米首脳間の見解の相違をうかがわせた。(ビアリッツ=渡辺丘)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190826-00000003-asahi-int


NHKニュースによると、このときトランプ大統領は「先週キム委員長からとてもすばらしい手紙をもらったが、その中で彼は『韓国が戦争ゲームしている』と不満を示していた。私も米韓合同軍事演習は不必要だと考えている」と述べました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190825/k10012048141000.html


トランプ大統領の考えは、従来のアメリカの方針とはまったく違っています。トランプ大統領の考え方では、在韓米軍はほとんど不要で、そのうちまったく不要になります。
そして、在日米軍も同じようなものでしょう。

アメリカの基本戦略は、軍事力で世界に君臨するという覇権主義です。
トランプ大統領は、軍事費は増大させていますが、不思議なことに軍事力で世界に君臨するという発想がありません。
軍事に関しては、「伝統的なアメリカ」と「トランプのアメリカ」はまったく別なのです。
日本人はこのことをあまり理解していないようです。
トランプ大統領と金正恩委員長の仲良しぶりも、見て見ないふりをしています。

そのため、日本人はトランプ大統領についていけません。もちろん安倍首相もです。

安倍首相はついていけないだけでなく、振り回されています。
安倍首相は5月6日にトランプ大統領と電話会談したあと、記者団に対して「条件をつけずに金正恩委員長と向き合う」と語り、これまで北朝鮮にはひたすら「制裁と圧力」を強化し、拉致問題の解決を条件にして対話を拒んできた方針から大転換しました。
もちろんトランプ大統領から指示されたからです。トランプ大統領は前から「北朝鮮の非核化の費用は韓国と日本が出す」と言って、アメリカの負担は必要ないと国民に説明してきましたから、「シンゾー、早く金正恩に会って、金を出す段取りをしろ」などと言われたのでしょう。
しかし、方針を変えた安倍首相に対して北朝鮮の報道官は「執拗に平壌の門をたたいているが、ずうずうしい。わが国への敵視政策はなにも変わっていない」と罵倒しました。
それ以降、安倍首相も北朝鮮への対話呼びかけはやめたようです。

しかし、トランプ大統領の態度は一貫していて、北朝鮮に対して友好的です。
かつてはティラーソン国務長官とかマティス国防長官がトランプ大統領を抑えていましたが、今のポンペオ国務長官とかエスパー国防長官はイエスマンであるようです。

米朝の友好が進んで朝鮮半島の緊張が緩和すれば、GSOMIAなど必要ありません。文政権の決定はそれを先取りしていることになります。
文在寅大統領は北朝鮮に対してオリンピック共同開催を提言し、経済協力の先にワンコリアを実現させようと呼びかけていますが、これも「トランプのアメリカ」と連携した動きです。

日本では韓国のGSOMIA破棄によって日米韓の同盟が壊れたなどと言っていますが、日米韓の同盟を壊しているものがあるとすれば、それはトランプ大統領です。

トランプ大統領の政策にはほとんど賛成できませんが、米朝友好を進めることだけはすばらしいものです。朝鮮半島が平和になれば、日本にも大きな利益です。今は北朝鮮のミサイルが脅威だなどと言っていますが、敵対関係にあるから脅威なのであって、友好関係になれば脅威ではありません。

トランプ政権は少なくともあと1年余りは続くので、ここは平和実現の大きなチャンスです。
日本は米朝友好の後押しをするべきです。
韓国と対立している場合ではありません。

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8月15日、安倍首相は靖国神社を参拝せず、稲田朋美議員が代理人として靖国を訪れて、玉串料を納めました。
安倍首相と思想的に近い稲田議員にふさわしい役回りです。
しかし、稲田議員は、安倍首相自身が参拝しない理由についてはなにも語りませんでした。

安倍首相は、第一次安倍政権のとき靖国参拝を公約にして首相になりましたが、小泉政権で悪化した日中関係を建て直すため靖国参拝はしませんでした。そのことを「痛恨の極み」と言って第二次政権を成立させたので、安倍支持者はみな安倍首相が靖国参拝をするものと思いました。靖国参拝は正式の公約ではありませんが、準公約みたいなものです。
しかし、第二次政権で靖国参拝をしたのは一度だけです。

安倍首相は参拝しない理由を説明しません。
そのため、メディアは首相が参拝しない理由を憶測で書いています。
安倍総理大臣が靖国神社に玉串料奉納 参拝は見送り
安倍総理大臣は終戦の日の靖国神社参拝を今年も見送り、代理を通じて私費で玉串料を奉納しました。

 自民党・稲田朋美総裁特別補佐:「(安倍総理からは)令和の新しい時代を迎え、改めて我が国の平和と繁栄が祖国のために命を捧げたご英霊のおかげであると感謝と敬意を表しますということです」
 玉串料は自民党の稲田総裁特別補佐が代理で奉納しました。「安倍晋三」という肩書で納めたということです。また、これまでに安倍内閣の閣僚の参拝は確認できていません。来年春に中国の習近平国家主席が国賓として来日することなど、改善している日中関係に配慮したものとみられます。一方、自民党の小泉進次郎衆院議員や萩生田幹事長代行は参拝に訪れました。また、超党派の国会議員も集団参拝しました。
https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000162074.html
この記事は「改善している日中関係に配慮した」と書いています。
普通は、「関係筋によると」とか「政府高官によると」などと情報源が示されるものですが、そういうものがないので、あくまで記者の推測なのでしょう。

ほとんどのメディアが同じ書き方をしています。
その部分だけを抜き出してみます。


朝日新聞
中国の習近平(シーチンピン)国家主席の国賓待遇での来日を来春に控え、改善が進む日中関係に配慮する必要があると判断したとみられる。
https://www.asahi.com/articles/ASM8H32ZLM8HUTFK003.html

時事通信
関係改善が進む中国が首相の参拝に反対していることを踏まえ、日中関係に配慮したとみられる。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019081500291&g=pol

毎日新聞
 首相は13年12月に靖国神社を参拝して以降は、春秋例大祭を含めて靖国参拝を控えている。首相の参拝に反対する中国、韓国への配慮とみられる。↵
https://mainichi.jp/articles/20190815/k00/00m/010/026000c

どれもこれも「配慮」です。しかも、根拠が示されていません。
こういう横並びの記事を平気で書けるのが日本のマスメディアのだめなところです。

そもそも私は、安倍首相が靖国神社に参拝しない理由が中国への配慮のためだとは思いません。
安倍首相が一度靖国参拝したときのことを振り返ってみればわかります。

安倍首相は2012年12月26日に第二次政権を発足させ、翌年4月の靖国神社の例大祭には3人の閣僚が参拝し、安倍首相は真榊を奉納しました。これに対して中国や韓国が反発、それに対して安倍首相が国会答弁で「わが閣僚はどんな脅かしにも屈しない。尊い英霊に尊崇の念を表する自由を確保していくのは当然のことだ」と述べるなどしましたが、オバマ政権も外交ルートを通して懸念を表明したと報じられました。
結局、8月15日に安倍首相は靖国参拝をしませんでした。それに対して支持者の不満は高まりました。
10月には訪日したジョン・ケリー国務長官とチャック・ヘーゲル国防長官が千鳥ヶ淵戦没者墓苑に献花しました。これは安倍首相に靖国差参拝をするなというメッセージと思われました。
しかし、安倍首相は就任一周年の12月26日に電撃的に靖国に参拝しました。
するとアメリカはその日に在日アメリカ大使館のホームページに「日本は重要な同盟国であり友だが、アメリカ政府は日本が隣国と関係を悪化させる行動を取ったことに失望している」という声明を発表しました。
これ以降、安倍首相は靖国参拝をしていません。

この経緯を見れば、安倍首相が靖国参拝をしなくなったのは、アメリカ政府が「失望」を表明したのが決定的だったと思われます。安倍政権は日米同盟重視ですから、中国や韓国の反発は無視できても、アメリカと亀裂をつくるわけにはいきません。
ですから、各メディアが安倍首相が靖国参拝をしない理由を「中国への配慮」だと書くのは納得がいきません。

今はオバマ政権からトランプ政権に変わりましたが、国務省の考え方は同じでしょう。安倍首相がトランプ大統領に頼めば靖国参拝を認めてくれるかもしれませんが、トランプ大統領が見返りを求めるのは確実です。


各メディアがそろって「中国への配慮」と書くのは、「アメリカの圧力」とか「アメリカが許さないから」とか書くと、日本の属国ぶりが露わになってしまうからです。これは日本のタブーです。

本来は安倍首相自身か周辺の人間が理由を説明するべきです。しかし、「アメリカに止められているので」とは言えませんし、「中国に配慮して」と言うと、安倍支持者から「中国になんか配慮するな」という声が上がりそうです。そのためなにも言わないのでしょう。

各メディアは「アメリカ政府が『失望』を表明して以来、安倍首相は参拝をしていない」とか「安倍首相は参拝しない理由を説明していない」というように、事実だけを書くべきです。
根拠もなしに「中国に配慮」という推測を書くのは、安倍政権に対する甘やかしです。

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どう動くかわからないトランプ大統領の外交ですが、よく観察すると一貫性があります。
好きな国と嫌いな国、好きな指導者と嫌いな指導者がはっきりしているのです。

大阪でのG20が終わるとトランプ大統領は韓国に飛び、非武装地帯で北朝鮮の金正恩委員長と首脳会談を行いました。
6月29日にトランプ大統領がツイッターで金委員長に提案し、それで急遽会談が実現したということです。まさに電撃的な会談です。

米朝関係は、昨年6月のシンガポールでの首脳会談はうまくいき、今年2月のハノイでの会談は決裂し、そして今回の会談はうまくいったということで、まったく一貫しないようですが、そうではありません。ハノイでの決裂がイレギュラーだったのです。

トランプ大統領は一貫して金委員長に好意的で、米朝関係を改善しようと思っています。
しかし、アメリカ政府内でそんなことを考えているのはトランプ大統領だけです。側近は全員が反対です。北朝鮮が非核化を実行するとは信じがたいことですし、かりにすべてうまくいって朝鮮半島が平和になるのもアメリカにとって好ましくないからです。
ですから、トランプ大統領の強引さだけで米朝関係は牽引されていました。

ハノイでの会談は2月27日、28日に行われましたが、27日は会談、夕食会が順調に進行し、トランプ大統領は「あすは忙しくなる。多くのことが解決されると期待している」と語りました。しかし、28日は、首脳会談は30分で終わり、そのあと予定になかったポンペオ国務長官らを含めた拡大会合になり、そして、昼食会と署名式は中止となりました。
つまり27日と28日の間になにかがあったのです。なにがあったかというと、米下院の公聴会でトランプ氏の元顧問弁護士だったマイケル・コーエン氏が証言したこと以外にありません。

コーエン氏は10年間もトランプ大統領の顧問弁護士を務めた腹心で、トランプ大統領の裏側を知り尽くしています。そのコーエン氏が議会証言でトランプ氏のことを「人種差別主義者、詐欺師、ペテン師」とののしり、ポルノ女優への口止め料支払いを依頼されたこと、選挙期間中もモスクワにトランプ・タワーを建設しようとしていたこと、納税額を少なくするために資産を過少報告したことなどを証言しました。これはテレビ中継され、トランプ大統領もハノイのホテルで夜中に中継を見ていたようです。28日の朝の会談冒頭には「終始、疲れた表情を浮かべ」と朝日新聞に書かれています。
トランプ大統領が精神的に落ち込んだ瞬間を狙って、側近が一気に巻き返しをはかり、会談を決裂に持ち込んだのです。

多くの人はなぜ急に会談が決裂したのか理解できていませんが、あのときのコーエン証言がアメリカ国内でビッグイベントで、トランプ大統領の弾劾の可能性まで言われたことからすれば、十分にありうることです。

トランプ大統領は一時的に落ち込みましたが、すぐに回復し、そうすると米朝会談を決裂させたことを後悔し、修復をはかろうとしました。しかし、親書の交換はできても、側近は次の米朝会談のおぜん立てをなかなかしてくれません。そこで、大阪のG20のあと韓国へ飛び、自分でツイッターで金委員長に呼びかけて、今回の非武装地帯での会談を実現させたというわけです。

トランプ大統領がいかに金委員長を気に入って、米朝関係の改善を重視しているかが、今回の電撃会談実現でよくわかります。


トランプ大統領は好き嫌いがひじょうにはっきりした人間です。
そして、この好き嫌いは一貫して、ほとんど変わることがありません。
外交というとなにか戦略があるようですが、トランプ大統領の外交はすべて好き嫌いで動きます。
たとえばイラン核合意からの離脱は、イラン嫌いと、核合意を主導したオバマ大統領嫌いから決定され、それ以外の理由はありません。

トランプ大統領は金委員長のほかにプーチン大統領も好きです。ただ、ロシアがアメリカ大統領選挙に介入したという疑惑があるために、それほど仲良くすることはできませんが、好意を持っていることはトランプ大統領の言動のはしばしにうかがえます。
米中は現在、貿易戦争を演じていますが、トランプ大統領はもともと習近平主席に好意的でした。ですから、米中貿易戦争はいつ終結しても不思議ではありません。

北朝鮮、ロシア、中国と、本来はイデオロギー的にアメリカと対立するはずの国ですが、トランプ大統領はむしろ好意的です。よほど天邪鬼な性格なのでしょう。

もっとも好きな国は、イギリスとイスラエルです。これはアメリカの歴史からして当然です。

では、トランプ大統領が嫌いな国はというと、いっぱいあります。たとえば隣のメキシコです。カナダもあまり好きではありません。近隣国ではキューバはとくに嫌いです。

NATOの国も、イギリス以外のドイツ、フランス、トルコは嫌いです。
好き嫌いに同盟関係は関係ないようです。

イスラム圏の国はどこも嫌いです。中でもイランが嫌いなのは、過去のアメリカとの対立関係を考えると不思議ではありません。サウジアラビアは、利用価値があるので、嫌いの感情を出さないようにしているのでしょう。


では、日本はどうかというと、もちろん嫌いです。
トランプ大統領は大統領になる前から日本を繰り返し槍玉にあげていました。

「日本の科学者は車やVTRを作り、アメリカの科学者は日本を守るためのミサイルを作っている」 
「日本人はウォール街でアメリカの会社を買い、ニューヨークで不動産を買っている。(中略)どうみても彼らはこちらをコケにするためだけに法外な金額を払っているとしか思えない」(米プレイボーイ誌1990年5月号)

「日本は我々に親切ではありません。何十万台、何百万台ものコンピューターや車などを売りに来ますが、日本人は我々に食料を売らせません」(2014年の英デイリーメール紙のインタビュー)

「日本は米国に何百万台もの車を送ってくるが、東京でシボレーを見たことがありますか? 我々は日本人には叩かれっぱなしだ」
「中国、日本、メキシコから米国に雇用を取り戻す」(今年6月16日にニューヨークのトランプタワーで開かれた出馬表明演説)
http://1000nichi.blog73.fc2.com/blog-entry-7367.html

しかし、安倍首相と会って、利用価値のある存在と気づいたようです。安倍首相は大量の防衛装備品を買ってくれますし、ノーベル平和賞の推薦もしてくれます。
しかし、日本嫌いが日本好きに変わるということはありません。安倍首相を利用しているだけです。

ちなみに、トランプ大統領は数日前に「アメリカが攻撃されても日本人はソニーのテレビでそれを見ているだけだ」と安保条約の不公平性を指摘する発言をしましたが、今回検索していると、大統領選のときにもまったく同じ発言をしていたことがわかりました。トランプ大統領の頭の中は今も昔も変わりません。

安倍首相も日本国民も、トランプ大統領から好かれようという気持ちを捨てなければなりません。
安倍首相はむしろトランプ大統領にきびしい態度で臨んだほうがうまくいくのではないでしょうか。

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