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最近、違法アップロードをしないように訴えるテレビ広告が盛んに放映されています。
私はてっきり、法律が改正されたので、それを告知する広告をやっているのかと思いましたが、法律改正とは関係ないようです。

この広告は、日本民間放送連盟が放送番組の違法配信撲滅キャンペーンとして始めた「違法だよ!あげるくん」というシリーズです。
「あげるくん」「タメヨちゃん」に犬のお巡りさん(?)の「トメ吉」というキャラクターが出てきます。
昭和っぽい雰囲気に、アニメのキャラクターがかわいくて、全体的な印象はいいのですが、実は大いに問題なところがあります。




「トメ吉」は、見た目はかわいいのに、声が太くて、脅かすように「つかまるよ、マジで」などと言うのが不愉快だという意見があります。
確かに不愉快ですが、それは声や言い方だけの問題ではありません。

この広告にはいろいろなバージョンがありますが、代表的なものを書き起こしてみます。

「あげるくん、遊ばないの?」
「昨日の番組をネットにあげてから」
「またか」
「暇か」
「見られなかった人のためにあげているんだよ」
「違法」
「えっ?」
「それ、無断アップロードっていって違法だから」
「はいはい、わかりました」
「つかまるよ、マジで」

あげるくんは「見られなかった人のためにあげているんだよ」と言って、自分はいいことをしているんだと主張しますが、トメ吉はそれが悪いことだという説明をせずに、「違法だから」「つかまるよ、マジで」と言うだけです。

ほかのバージョンもすべて同じです。

「ドラマを録ってネットにあげるのは違法って言ったよね」
「でも、みんなのために僕は法を犯すのでーす」
「10年以下の懲役または1000万円以下の罰金、もしくは両方」
「バレなきゃいいんじゃない」
「バレるから。それがネットだから」
  *
「昨日のドラマ、みんなのためにアップしてあげよう」
「違法」
「えっ?」
「つかまるよ、マジで」
  *
「この番組、最高。SNSで拡散だな」
「それ、無断アップロードっていうんだよ」
「みんなが喜ぶんだよ」
「つかまるよ、マジで」

どれもみんなのためにやっている行為が「違法」として否定されます。
これでは道徳的な行為を法律が否定していることになります。
おとななら著作権法の趣旨を理解しているので、自分の頭の中で補いをつけることができますが、子どもがこの広告を見たら、理不尽な法律があるなと思うでしょう。
いや、この世界はみんなのためになることをすればつかまってしまう理不尽な世界だと思うかもしれません。

おとなが見ても、なんの説明もせずに「違法」だの「つかまるよ、マジで」だのと言われるのは不愉快です。
子どものころ、頭ごなしに説教されたことが思い出されます。

「有害CMだ」という声が高まっても不思議ではありません。


不愉快でない広告にするには、違法アップロードがなぜいけないかを説明することです。
「みんなのためにアップしてあげよう」という主張に対しては、「みんなのためっていうけど、番組のつくり手のことは考えてないよね」とか「それは将来の有料配信の利益を奪うことになるよ」とか言ってから、「つかまるよ、マジで」と言えばいいのです。

この広告のつくり手は、国民など頭ごなしに言ってやればいいのだと思っているのでしょうか。