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「2020年度に始まる大学入学共通テストで活用される英語の民間資格・検定試験について、萩生田光一文部科学相は1日、導入延期を発表した」

これは時事通信の記事を引用したものですが、各紙とも同じような書き方をしています。
この中の「活用」という言葉に違和感はないでしょうか。
ここは「活用」ではなく「利用」という言葉を使うべきです。

「活用」と「利用」は違います。「活用と利用の違い」でグーグル検索すると、いちばん上にこう出てきます。
利用の利するために用いることに対して、活用とは、物や人の機能・能力を十分に活かして用いることです。 利用が自分のための利益を先に考えるのに対し、活用は、相手を活かすことを先に考えるという点が全く異なるのです。
https://www.freeml.com/hottaworld/876

「英語民間試験を活用」と書くと、英語民間試験を活かすことが第一目的になります。
文部科学省なら、大学入学共通テストをうまく運営することが第一目的のはずですから、「利用」という言葉を使うべきです。


いつから「活用」という言葉が使われているのかを調べてみました。

大学入学共通テストが初めて提言されたのは、2013年の教育再生実行会議の第四次提言においてです。
その提言にこう書かれています。
○ 国は、大学教育を受けるために必要な能力の判定のための新たな試験(達成度 テスト(発展レベル)(仮称))を導入し、各大学の判断で利用可能とする。高等 学校教育への影響等を考慮しつつ、試験として課す教科・科目を勘案し、複数回 挑戦を可能とすることや、外国語、職業分野等の外部検定試験の活用を検討する。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/pdf/dai4_1.pdf
このときから「活用」が使われています。
入試に民間検定試験が使われるようになると、受験者の数が増えて、民間検定試験を実施する企業・団体は確実に儲かります。それが狙いなら、「活用」の言葉は正しく使われていることになります。

教育再生実行会議は第二次安倍政権における首相の私的諮問機関です。民間の力を活用することは安倍政権の基本的な方針ですから、実行会議が民間検定試験を活かすことを第一目的にしてもおかしくありません。

この提言を受けて、2014年に中央教育審議会が答申を出しますが、その中にこう書かれています。
◆ 特に英語については、四技能を総合的に評価できる問題の出題(例えば記述式問題など)や民間の資格・検定試験の活用により、「読む」「聞く」だけではなく「書く」「話す」も含めた英語の能力をバランスよく評価する。また、他の教科・科目や「合教科・科目型」「総合型」についても、英語についての検討状況も踏まえつつ、民間の資格・検定試験の開発・活用も見据えた検討を行う。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/__icsFiles/afieldfile/2015/01/14/1354191.pdf

教育再生実行会議が「活用」を使ったのにならって中央教育審議会も「活用」を使い、以後文科省は「活用」を使い続けて今にいたります。

ということは、文科省も安倍政権の意向をくんで、民間資格試験を儲けさせることを目的とするようになったのでしょう。

民間資格試験活用と利権についてはいろいろと指摘されています。
たとえば『文科省「英語民間試験の有識者会議では議事録作ってない」、政治家の絡む利権構造と一流ジャーナリストも指摘』という記事から一部を引用します。

いったいなぜそんなことになったのか。実は教育ビジネスを舞台にした、複数の政治家の絡んだ巨大な利権構造のせいだという指摘がなされています。
その指摘を行ったのは安倍首相に最も近いと言われる一流ジャーナリストの田崎史郎氏。テレビ朝日系列のモーニングショーに出演した際にこのカラクリを指摘しています。

田崎:これだけ(英語民間試験に)掛かるでしょ。大学入試センター試験は1万8000円ですよ。このお金がどこへ行くかっていうと、団体の方に行くわけですよ。英検とかベネッセとか。
英検とかベネッセとかにすれば、これ受験生って大体50万人なんですね。2回掛けると100万人なんですよ。100万人の需要がバーンと生じるわけ。誰が得をするんだっていう。それで、団体ごとにおそらく政治家がついてるんですよ、裏で。
羽鳥:利権なんですね。
田崎:最初2つくらいだったんですよ。それが6つに増えてるのはそれぞれに先生方がついてる。
https://buzzap.jp/news/20191106-minkan-eigoshiken-riken/
    英語民間試験


ともかく、英語民間資格試験を活用するという今の政策は、大学入学共通テストをよくするためではなく、受験生のためでもなく、英語民間資格試験のためだということが、「活用」という言葉を見ればわかります。

なお、メディアは、文科省発表の文書を紹介するときに「活用」という言葉を使うのはいいとして、記者が書く地の文でも「活用」を使っているのはどういうことでしょう。
たいせつなのはなにかということを考えれば、「活用」という言葉は使わないはずです。