村田基の逆転日記

親子関係から国際関係までを把握する統一理論がここに

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新型コロナウイルス感染症に乗じて、世界的に差別的言動がふえています。

中でも目立っているのがトランプ大統領です。
トランプ大統領はWHOのテドロス事務局長をしきりに非難しますが、これはテドロス事務局長がエチオピア出身の黒人だからです。トランプ大統領はオバマ元大統領のように黒人が高い地位につくことが許せません。
トランプ大統領はまた、新型コロナウイルスを“チャイナ・ウイルス”と呼び、「中国はウイルスの発生源で、素早く食い止められたはずだし、そうしていれば世界中に拡大しなかった」と言って、中国に損害賠償請求をする可能性に言及していますが、これも中国人への差別からです。
そして、テドロス事務局長は中国寄りだとして、両者をまとめて非難しています。

確かにWHOと中国はいろいろと間違いを犯しましたが、多くの国の政府も間違いを犯しています。
中でもひどいのがトランプ政権です。オバマ政権が強化したCDC(米疾病管理予防センター)の予算を大幅に削減し、今年1月末には武漢での状況を伝える報告書が上がっていたにもかかわらず、トランプ大統領は「暖かくなる4月にはウイルスは消えてなくなる」などと楽観論を述べて、中国からの入国を禁止する以外の手をほとんど打ちませんでした。トランプ政権が中国に対して損害賠償請求をすることが可能なら、アメリカ国民はトランプ政権に対してもっと巨額の損害賠償請求をすることが可能でしょう。


日本でも、トランプ大統領の尻馬に乗って、テドロス事務局長は中国寄りでけしからんと非難する人がいますが、これも差別意識からきた非難です。

日本人は欧米に対してコンプレックスを持っているので、たとえばWHOの事務局長がフランス人で、アメリカ寄りだったとしても、「あの事務局長はアメリカ寄りだからけしからん」という人はいません。テドロス氏がエチオピア人で、中国寄りだから非難しているのです。

日本人は国際機関のトップを批判したことはほとんどありませんが、例外が潘基文国連事務総長です。それまで国連事務総長批判などしたことのない日本人が、潘基文氏については任期中ずっと批判しっぱなしでした。もちろんこれは潘基文氏が韓国人だからです。潘基文氏がポルトガル人のアントニオ・グテーレス氏に替わると、批判はぱったりとやみました。

新型コロナウイルスは中国起源で、最初は日本と韓国に広がったことから、海外ではウイルスにからめて日本人も差別の対象になりました。
その日本人が“武漢ウイルス”などという言葉を使って、ウイルスと中国人を関連づけようとしているのは情けない限りで、それは日本人にも返ってくることになります。
中国政府の対応を批判するなら、“武漢ウイルス”などという言葉を使わずにするべきです。


新型コロナウイルスに関連した差別はいっぱい見られます。
休業要請に応じないパチンコ店に非難が集中し、店名をさらされたりしているのは、やはりパチンコ業界の社会的地位が低いからでしょう。
キャバレーやクラブなどもそうです。警察が夜の歌舞伎町をこれ見よがしにパトロールするのも公平ではありません。
湘南の海に集まるサーファーがやたら非難されるのも、スポーツ愛好家の中でもサーファーが低く見られているからではないでしょうか。
少なくともゴルフ練習場に集まるゴルファーと扱いが違うと思われます。


テドロス事務局長やパチンコ店を非難している人は、自分が差別感情から非難しているとは思っていないでしょうが、差別主義とはそういうものなので、注意が必要です。

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5月6日に緊急事態宣言を解除するか否かが焦点になってきました。
これを判断するには、とりあえず外国の状況を把握しておく必要があります。

世界でいちばん新型コロナウイルス対策に失敗している国はアメリカです。
現時点でアメリカの感染者数は約98万人、死亡者数は約5万5000人です。
その次がスペインで、感染者数は約22万人、死亡者数は約2万3000人ですから、アメリカの悪さは際立っています。

アメリカはいち早く2月2日に緊急事態宣言を発令し、中国からの入国を全面的に禁止しました。
アメリカのCDC(疾病予防管理センター)はきわめて強力な組織であるとされ、日本もそれを手本に同じような組織をつくるべきだとよくいわれます。
それでいてこの惨状です。

一方、新型コロナウイルス発祥の国である中国は、現時点で感染者数は約8万8000人、死亡者数は約4600人ですが、最近の感染者数は1日数十人です。
武漢でもロックダウンは解除され、全国的に経済活動も復活しつつあります。

アメリカ対中国でいえば、中国の完全な勝利です。
中国はすべて手探りで対策をしてきて成功し、アメリカは中国のやり方を見ていながら失敗しました。
トランプ大統領は“アメリカワースト”というべき状況にブチ切れて、中国やWHOに当たり散らしています。

もっとも、グローバルな視野で見ると、アメリカばかりが失敗しているとはいえません。
感染者数が多い順にいうと、アメリカのあとはスペイン、イタリア、フランス、ドイツ、イギリスと、ヨーロッパの主要国です。
WHOの調べでは、死亡者の約9割が米欧に集中しているということです。


中国周辺の国はどうかというと、韓国、台湾、ベトナム、モンゴルは感染の抑え込みに成功しています。
韓国はロックダウンせずに感染を抑え込み、今では飲食店も普通に営業しています。台湾は無観客ながらプロ野球が開幕しました。ベトナムはいまだに死者0人ですし、モンゴルの感染者は100人以下です(北朝鮮は0人?)。

ということは、「新型コロナウイルスは欧米で猛威をふるっているが、東アジアではほぼ抑え込まれた」ということです。

これはどういうことかというと、BCG接種で新型コロナウイルスにある程度免疫ができるので、BCG接種を実施している国ではあまり感染が広がらないのだという仮説があります。
その仮説もありそうなのですが、もうひとつの仮説として、東アジアではCOVID-19に似たコロナウイルスによる病気(インフルエンザや風邪など)が流行したことがあり、そのため東アジアではCOVID-19に対する集団免疫がある程度できているのだという考え方もあります。
「週刊現代」5月2・9日合併号で経済産業研究所上席研究員の藤和彦氏もこの説を述べています。
ユーラシア大陸では、東から西に行くほどCOVID-19が猛威をふるうという傾向があるので、この仮説も有力だと思われます(とすると、今後南米やアフリカで猛威をふるうことになります)。


そうすると、日本は東アジアで唯一、感染対策に失敗した国ということになります。
その理由は簡単です。日本は東京オリンピック開催のために感染者を少なく見せようとし、PCR検査数を少なくしたからです。クラスターを追跡するという方針は間違っていないと思いますが、検査数が少ないために見逃したクラスターがあって、クラスターといえない個人から個人への感染もあって、市中感染が拡大し、それがここにきて表面化してきたわけです。

とはいえ、まだ日本の感染者数は約1万3000人、死亡者数は約400人です。
東アジアでは劣等生ですが、欧米と比べると優等生です。

最近、日本は医療崩壊の瀬戸際だと言われますが、おそらく勘違いです。
たとえばニューヨーク州(人口約1900万人)の感染者数は約28万8000人、死亡者数は1万7000人です。
東京都(人口約1400万人)の感染者数は約3900人、死亡者数は約100人です。
ニューヨークは医療崩壊の瀬戸際だと言われますが、今のところ持ちこたえています。
2ケタ少ない東京都で医療崩壊が起きたら、世界の物笑いです。
今、医療崩壊が言われるのは、医師会などが利権のためにあおっているのではないでしょうか。


日本は緊急事態宣言以来、欧米のやり方を真似て“準ロックダウン”ともいうべき状態にあります。
しかし、感染者数、死亡者数を見れば、日本は欧米とはぜんぜん違います。
ちょっと前の韓国と同じような状態です。

日本人は明治維新以来、欧米を崇拝し、アジアを軽蔑し、もっぱら欧米から学んできましたが、こと新型コロナウイルスで参考になるのは、韓国や台湾のやり方です。
“準ロックダウン”みたいなことはやめて、経済活動を続けながら、徹底した検査と徹底した隔離で感染を阻止できるのではないでしょうか。

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新型コロナウイルス対策に成功しているのは女性リーダーの国だ――という説があります。
「Forbes JAPAN」の「コロナ対策に成功した国々、共通点は女性リーダーの存在」という記事が指摘しました(4月18日のTBS系「新・情報7daysニュースキャスター」でもやっていました)。

その記事によると、アンゲラ・メルケル首相のドイツ、蔡英文総統の台湾、ジャシンダ・アーダーン首相のニュージーランド、カトリン・ヤコブスドッティル首相のアイスランド、サンナ・マリン首相のフィンランド、アーナ・ソールバルグ首相のノルウェーは、いずれも感染拡大を抑え込んで、国民の支持も得ているということです。

女性リーダーと男性リーダーでそんな違いがあるのかというと、ある可能性は十分にあります。


狩猟採集生活をしている未開社会では、採集は男女ともにしますが、狩猟はもっぱら男性が担うという性別役割分業があります(ですから、性別役割分業はジェンダーばかりとはいえません)。
その延長線上と思われますが、戦争ももっぱら男性が担ってきました。
そのため男性の頭には戦争の文化がいっぱい詰まっています。


男は、新型コロナウイルス対策をどうしても戦争になぞらえてしまいます。
戦争というのは、攻撃は最大の防御なので、敵を識別し、攻撃するというのが基本です。

ウイルスが国内に侵入していないときは、ウイルスは敵として認識することができ、ウイルスの侵入を防ぐ水際作戦を行うことができます。
これでうまくいけばよかったのですが、世界でうまくいった国はないようです。

ウイルスが国内に入り込んで広がれば、敵がどこにいるかわからないので、攻撃のしようがありません。
もちろん感染者は敵ではありません。
ただ、勘違いして、感染者を差別したり、発熱しているのに旅行したり会社に行ったりした人を非難する人はいますが。

ウイルスが国内に広がった時点でフェーズが変わり、戦争にたとえるなら、国が戦場ではなく野戦病院になったようなものです。
戦うことよりも、医療崩壊を招かないように病床と医療スタッフをふやすとか、マスクや防護服や人工呼吸器を確保するとか、隔離施設を別につくるといったことが最優先の課題になります。
感染拡大を防ぐ手段も、要するに家にじっとしていることですから、“戦う”というイメージではありません。

ところが、男の頭はなかなか“戦う”モードから切り替わることができません。
その典型がトランプ大統領です。最初に中国からの全面入国禁止やEUからの入国禁止という水際作戦を行い、それが失敗したあとも、いまだに中国を攻撃し、WHOを攻撃しています。
安倍首相も、外出自粛を呼びかけながら、「動き回る若者」や「夜の繁華街」を敵視して攻撃しています。


武漢で医療崩壊が起こったとき、日本でも同じことが起こるかもしれないと思って、早めに医療体制を強化することもできましたし、都市封鎖のやり方を参考にすることもできました。
しかし、中国を敵国ととらえている男は、中国から学ぼうとはしません。
韓国もドライブスルー方式のPCR検査などを考えだし、感染拡大を抑え込むことに成功しましたが、日本の男は韓国を敵視しているので、かたくなに韓国から学ぼうとしませんでした。
敵味方を分ける発想はウイルス対策の足かせです。

もちろん日本の男がみんなそうだというのではありません。右翼とか自称保守の男がそういう“戦争脳”なのです。

女性にはそういう“戦争脳”はまずありません。
そのため女性リーダーの国はウイルス対策に成功しているようです。
台湾の蔡英文総統は、中台は敵対関係にあるのに、中国からの情報収集に努めて、いち早く正しい対策を打ち出しました。
それによって台湾の感染者は今でも400人台です。


安倍首相は4月10日に田原総一朗氏と面会した際、「実は私自身、第三次世界大戦は、おそらく核戦争になるであろうと考えていた。だが、コロナウイルス拡大こそ第3次世界大戦であると認識している」と語ったそうです。田原氏が自身のブログで明らかにしました。

今の状況を第三次世界大戦になぞらえる感覚もどうかと思いますが、安倍首相はおそらく戦争の指揮官のつもりでしょう。
ウイルス対策を戦争だととらえると、迷走するしかありません。
それに、戦争の指揮官は野戦病院の内部のことなど考えないので、そのために日本は医療崩壊の瀬戸際になっています。

今の日本に必要なのは、戦争の指揮官でも兵士でもなく、野戦病院の運営をするナイチンゲールです。

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若者は感染しても気づかないまま動き回って感染を広げる――そんなことが言われてきました。
まるで若者が感染を広げる犯人みたいです。

厚生労働省は4月13日、新型コロナウイルスの年代別の感染者数と死亡率を初めて公表しました。
それによると、感染者数は20代から50代がもっとも多くなっています。

年代別感染者数
日経新聞4月13日「80~90代死亡率、平均の6倍超 新型コロナで厚労省」より

若者が感染を広げているのなら、20代をピークにした山が形成されそうなものですが、そうはならずに、20代から50代までが同じ高さの高台を形成しています。
要するに「働く世代」が感染し、感染させているのです。

これは考えてみれば当然のことです。
働く人は満員電車に乗り、職場では閉ざされた部屋に机を並べて仕事をし、接客したり、営業活動をしたり、取引先と会ったりしています。働いているだけで、どんな活動的な若者よりも多くの人と接触するわけです。

ところが、働くことが感染拡大の大きな原因であるということがこれまであまり言われませんでした。

厚生労働省は3月1日、新型コロナウイルスの集団感染が確認された場の共通点として、「換気が悪く」「人が密に集まって過ごすような空間」「不特定多数の人が接触するおそれが高い場所」の三条件を挙げ、具体的にスポーツジム、屋形船、ビュッフェスタイルの会食、雀荘、スキーのゲストハウス、密閉された仮設テントなどを示しました。
この中に満員電車が入っていないのはおかしいという声が上がりましたが、厚労省や専門家会議の人間は満員電車の危険性はずっと認めてきませんでした。

イベント自粛やライブハウス、カラオケ、スポーツジムなどの営業自粛が行われるようになると、あとは出社して仕事をすることが最大の感染原因になりました。
在宅勤務が勧められましたが、在宅勤務が可能な仕事は限られています。

しかし、感染防止に「出勤自粛」がいいとはわかっていても、経済のことを考えると、なかなか言えません。
寅さんが「それを言っちゃあおしまいよ」と言うやつです。


そこで、「出勤自粛」を言わない代わりに、ほかのことがターゲットになりました。
本丸を攻めるのはむずかしいので、代わりに手薄な出城を攻めようということです。

安倍首相は2月27日、全国の小中高が臨時休校するように要請しました。まったく唐突な要請で、今となっては感染防止の効果もほとんどなかったことが明らかですが、学校は休みにしても経済的損失がほとんどないので、「出勤自粛」の代わりには好都合でした。

それから、若者がターゲットになりました。
さらに、安倍首相は「夜の繁華街の接客を伴う飲食店の利用自粛」を全国的に呼びかけ、キャバレーやナイトクラブをターゲットにしました。
若者や水商売には社会的な力がないので、攻めるのは容易です。

「夜の繁華街」をターゲットにしたため、夜の繁華街から人はいなくなりましたが、逆に「昼間の商店街」に人があふれるという現象が起きました。


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夜の歌舞伎町で外出自粛を呼びかける警官(ANNnews20/04/11)

警察は夜の歌舞伎町などを警棒を持ってパトロールし、外出自粛を呼びかけました。
しかし、夜の歌舞伎町にはほとんど人がいないのですから、感染拡大のリスクはほとんどなく、そんなところで外出自粛を呼びかけても意味がありません。
外出自粛を呼びかけるなら、混雑している昼間の商店街でするべきです。
それと、通勤客で混雑している品川駅とか東京駅などでするべきです。


そうしたところ、安倍首相は11日、オフィスでの仕事は「原則として自宅でできるようにする。どうしても出勤が必要な場合でも出勤者は最低7割は減らす」と語り、とうとう本丸への攻めを開始したようです。
厚労省が13日に年代別感染者数を公表したのも、この首相発言を支援する意味でしょう。

もっとも、安倍首相が「出勤者7割減」を言っただけでうまくいくものではありません。
休業補償を求める声がさらに強くなっていますし、安倍首相の本気度が試されます。

ともあれ、感染拡大の最大の原因が明らかになったことで、対策もやりやすくなりました。
警察も、なにか役立つことがしたいなら、夜の歌舞伎町などは放っておいて、丸の内とか新橋とかでサラリーマンに向かって「出勤自粛」を呼びかけるべきです。

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4月7日に緊急事態宣言が出されたものの、休業要請の対象に百貨店、理髪店、ホームセンター、居酒屋などを含めるかどうかで国と都が対立し、発表は10日以降にずれ込みそうです。
これでは「緊急」の意味がありませんし、国民の緊張感もなくなってしまいます。

緊急事態宣言が出された翌日、都心のターミナルはさすがに人出は少なかったようですが、私の地元の商店街(東京都内)はいつもと同じくらいの人出でした。
安倍首相は「人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減」という目標を掲げましたが、とうていむりです。

小池都知事や吉村大阪府知事、日本医師会などは政府に対して早く緊急事態宣言を出すように求めていましたが、彼らは緊急事態宣言を出せば魔法の呪文のように効果があると勘違いしていたのではないでしょうか。

日本人は長期戦とか持久戦が苦手で、短期決戦を好みます。
たぶん国土が狭くて山の多い地形が関係しているのでしょう。国土の広いロシア人とか中国人は持久戦が得意です。
また、日本海海戦と奉天会戦で決着した日露戦争の成功体験も影響しているかもしれません。
太平洋戦争でも日本軍はやたら決戦の機会を求め、すぐにバンザイ突撃をして玉砕しました。

安倍首相は記者会見で「ゴールデンウイークが終わる5月6日までの1か月に限定して」外出自粛をお願いすると言いました。そのため、5月6日に緊急事態宣言が終わると思っている人がいるかもしれません。
しかし、安倍首相はそのあとに「この緊急事態を1か月で脱出するためには、人と人との接触を7割から8割削減することが前提です。これは並大抵のことではありません」と言っています。
つまり目標を達成できなければ、あるいは感染者の増加が止まらなければ、緊急事態宣言は継続されるわけです(いったん解除されてもまたすぐ復活するはずです)。

そういう長期戦を想定すれば、休業要請で国と都が対立しているのは、国に分があります。理髪店やホームセンターの休業を主張する都は、短期決戦で勝利できると思っているのです。


武漢市は4月8日、都市封鎖が解除されました。1月23日から2か月半ぶりです。
徹底した外出禁止、企業活動の全面的停止という最強の都市封鎖をしてもこれだけの時間がかかりました。
しかも、封鎖解除といっても、もとに戻れたわけではありません。今でも外出規制は続いて、街にはあまり人影がありません。

イタリアも強力な外出禁止を1か月続けて、最近ようやく新規感染者数が横ばいになり、ピークに達したといわれています。
しかし、これで終わったわけではなく、これからまだまだ都市封鎖は続くことになります。

中国は感染の封じ込めに成功したようですが、そう単純なことではありません。
山中伸弥教授にインタビューした日経新聞の「コロナ禍はいつ収まるのか 京大・山中氏が出した答え」という記事によると、中国の最近の感染者の状況は次のようなものです。

(中国では)ピーク時は1日に1000人以上の新規感染者が発生していましたが、3月中旬から100人未満となり、下旬には1日の新規感染者数が10人から20人台の日が続いていました。ところが、3月末から再び100人を超える日が増えてきたのです。
中国政府は人民に対して厳しい外出規制を課してきましたが、3月に入ってから状況に応じて都市ごとに規制を緩めました。その結果、週末になると商業施設や観光施設が混雑するようになりました。感染の第2波がやってくるリスクが、ひたひたと高まっているのです。
世界保健機関(WHO)の基準ではウイルスの潜伏期間の2倍の期間、感染者が新たに発生しなければ終息宣言となります。新型コロナウイルスの潜伏期間は2週間とみられていることから、少なくとも4週間、感染者数がゼロにならない限り、ウイルスとの闘いは終わりません。
独裁的な中国共産党をもってしても、感染者数をゼロにするのは至難の業です。21世紀の世界では、人の往来を完全にシャットアウトすることは誰にもできません。
つまり緊急事態宣言を出して感染拡大の第1波を乗り越えられたとしても、新型コロナウイルスを完全に封じ込めるには相当長い期間がかかるのは(残念ながら)間違いありません。山中教授が「1年は続く」と指摘したのは、感染力の極めて高い新型コロナウイルスの本質を見抜いているからです。
もちろん、バイオテクノロジーを駆使すれば、効果的なワクチンや治療薬も開発できるでしょう。ただ、その未来がやってくるには年単位の時間がかかります。それまでの間、私たちは医療崩壊を防ぎながら、何とかしのいでいくしかありません。山中教授は、ウイルスとの闘いをマラソンに例えました。もはや、長期戦で臨むことを覚悟するしかありません。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57816670Y0A400C2000000/
北海道ではいち早く独自に緊急事態宣言を出して、一時は感染を抑え込みましたが、9日の発表では過去最高の18人の感染者が出たということで、またぶり返しています。


私は今の新型インフルエンザ等対策特別措置法による緊急事態宣言では外出自粛要請しかできないので、法律を改正して罰則つきの外出禁止命令を出せるようにするべきだと考えていましたが、そうしたところで長期戦になります。苦しい戦いが長く続くのはたいへんです。
長期戦が可能なようにゆるいやり方をするのが賢明です
ただ、そうすると感染者は増えていきます。


現時点で日本における新型コロナウイルス感染者の数は約5500人です。
日本の人口を計算しやすいように1億1000万人とすると、10万人に5人がかかる病気です。
死亡者は100人をちょっと越えたところで、死亡率は約2%ですから、今のところ10万人に0.1人が死ぬ病気です。
今後、この数字が10倍、さらには100倍になったところで、それほど恐れることはないのではないでしょうか。

ちなみに日本では2018年に9万4654人が肺炎で亡くなっています。


テレビの解説で、「緊急事態宣言をした以上、対策を小出しにするという戦力の逐次投入はやめるべきだ」と語っている人がいました。
短期決戦の勝利があると思っているのです。
小池都知事や安倍首相もそうかもしれません。
“休業補償なき休業”も短期決戦を前提としています。

しかし、この戦いに早い勝利はありません。
長期戦、持久戦に持ち込んで、医療崩壊を防ぎながら特効薬かワクチンの開発を待つというのが正しい戦略です。

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このところ新型コロナウイルス感染者数が増大し、「緊急事態宣言」が出される雲行きです。

しかし、感染者率のもっとも高い東京でも、感染者は1000人をちょっと越えたところです。東京の人口が1千万人強であることを考えると、1万人に1人の割合です。死亡率は数パーセントですから、私自身はまったく脅威に感じません。
脆弱な医療システムに合わせた緊急事態宣言かなと思います。

ただ、感染者数が正確に把握できているかという問題があります。
感染者数の増大は、3月24日にオリンピック延期が決まってから始まったという印象があります。意図的にPCR検査数を増やしたということはないでしょうか。

「新型コロナウイルス国内感染の状況」というサイトから、毎日の新規感染者数のグラフ(約2か月間)と、毎日のPCR検査実施数のグラフ(1か月間)を引用します。

感染者数新規

検査人数

PCR検査数はバラツキが大きくてわかりにくいですが、増大する傾向にはあるものの、オリンピック延期決定後にとくに増えたとはいえないようです。
一方、日々の感染者数は着実に増えているので、「感染が拡大している」ということはいえます(オリンピック延長決定後に急に感染者が増えたような印象があるのは、安倍首相や小池都知事の態度が変わったためかもしれません)。

むしろ問題は、検査数がまだ低い水準にあることです。
世界各国と比べても低すぎます。

正確な感染者数を把握しないまま緊急事態宣言を出すと、困ったことになります。
普通は新規感染者数がへってくれば宣言を解除することになりますが、もともと感染者数を低く抑えていると、ほんとうにへったかどうかわかりません。
つまり緊急事態宣言を出す以上は、感染者数をある程度正しく把握していないといけないのです。

これからしばらくは検査要求に対してキャパいっぱいに応えて検査し、できる限り正しい感染者数を出して、緊急事態宣言はそのあとにするべきだと思います。


緊急事態宣言を出すとどうなるのでしょうか。
都市封鎖、ロックダウンという言葉があります。武漢市では都市封鎖が行われ、その直前には多数の人が武漢市から脱出するという事態がありましたし、イタリア北部からも多数の人が駅に詰めかけ、南部に脱出しようとしました。
一部の都市が汚染された場合は、こうした文字通りの都市封鎖をしなければなりませんが、今の日本は東京だけというわけではないので、文字通りの都市封鎖は無意味です。

もうひとつの都市封鎖の意味は、強力な外出禁止措置です。
たとえばフランスでは、1日1度の買い物や運動や犬の散歩のため以外の外出は禁止され、街角に警官が立っていて、違反者は罰金刑です。

感染防止には人と人が接触する機会をできる限りへらすことですから、外出禁止がいちばん有効です。
多くの商店や飲食店も休業です。武漢では企業活動も停止しましたが、ヨーロッパでは企業はある程度営業をしているようです。生活必需品の物流とライフラインの維持はされます。

しかし、日本の非常事態宣言では法的に外出禁止をすることはできません。
ということは、これまで行われてきた外出自粛要請が続くだけです。
要するにいちばん肝心のことができないのです。
ザル法という言葉がありますが、ザルの真ん中に大きな穴が空いているという法律です。
武漢市で強力な外出禁止措置がとられているのを横目で見ながら、日本の国会では外出禁止のできない欠陥法をつくっていたのです。


ただ、緊急事態宣言が出ると、「政府が法律に基づく緊急事態宣言を出した」という緊張感から、しばらくは外出自粛が広く行われるでしょう。
しかし、長期化すると気がゆるんできて、外出する人が増えてきます。
最初は自粛している人は自粛しない人を非難するでしょう。人は不公平だと思うと、不公平なことをする人に“正義の怒り”を覚えるからです。
しかし、自粛しない人がある程度まで増えると、今度は自分が自粛をやめることで不公平を解消しようとし、“自粛体制”が一気に崩壊するということが考えられます。

これまで自粛要請に素直に従うというのが日本人の“美徳”でしたが、アリの一穴で、これをきっかけに日本人のモラルハザードが進むかもしれません。


国会は新型インフルエンザ等対策特別措置法が欠陥法であることを認めて、緊急事態宣言を出す前に、罰則つきの外出禁止命令が出せるように法律を改正するべきです。

安倍マスク
首相官邸HPより

安倍首相が全国のすべての世帯に2枚ずつ布マスクを配布すると表明したら、大炎上しました。

安倍首相がマスク配布を表明したのは4月1日の夕方です。
翌日の朝日新聞朝刊には、マスク配布については10行ほど書かれていただけでしたが、ネットで炎上したのを受けて、夕刊では一面トップの記事で、マスク配布の背景や評価などが書かれていました。
朝日新聞は最初、10行ぐらいのニュースバリューと判断したのでしょう。

しかし、今は休業補償をどうするとか、全国民に10万円配布しろという議論が行われているさ中で、そのタイミングでマスク2枚が出てきたのは衝撃的でした。
安倍政権の中で「国民に金は払いたくないが、国民の不満が高まるのは困る。そうだ、マスクを配れば国民は喜ぶだろう」みたいな議論が行われたのではないかと想像してしまいます。

安倍政権は新型コロナ問題でお粗末な対応を続けてきましたが、マスク不足はそれを象徴しています。
マスク不足の経緯について振り返ってみました。


もともと日本はマスクの8割を輸入していて、そのほとんどは中国からです。
新型コロナウイルスで日本国内のマスク需要が急増し、同時に中国からの輸入が止まったので、一気にマスク不足になりました。
政府は国内メーカーに増産を依頼し、それは順調にいっていると菅官房長官は2月12日に明言しました。

マスクの品薄、来週以降に解消したい=官房長官
[東京 12日 ロイター] - 菅義偉官房長官は12日午後の会見で、品薄になっているマスクの供給に関し、できるだけ早い品薄解消に努めていると説明し、現在、想定している時期は来週以降であると述べた。

午前の会見で、毎週1億枚の供給を目指していると発言したことに関連し「生産・流通のきめ細かい状況の把握に努めている」とし、官民一体となって早期の品薄解消に向け対応していると語った。
https://jp.reuters.com/article/suga-mask-idJPKBN2060ST

しかし、マスク不足はまったく解消されませんでした。
転売目的で買い占める“転売ヤー”のせいだということで、批判が高まり、政令改正でマスク転売禁止の措置がとられました。
私は、不安から多めに買う人がいなくなれば、品薄はいずれ解消するものと思っていました。

ところが、菅官房長官の3月27日の会見を伝える次の記事を見て、考えが変わりました。

マスク供給、4月1億枚増加 品薄解消は「一定程度の時間」 新型コロナ
 新型コロナウイルスの感染拡大で品薄が続くマスクについて、菅義偉官房長官は27日の会見で、4月の国内供給量が現在の月6億枚から1億枚程度上積みできるとの見通しを示した。ただ、医療機関や介護施設などに優先的に提供していることもあり、店頭での品薄解消までには「一定程度の時間を要する」と述べた。
 マスクの国内供給量はもともと月4億枚だった。感染拡大後、政府は各メーカーに増産を要請し、生産ラインを増設する企業に補助金を出すなどして、3月は月6億枚に増えたと説明している。ただ、1月の1週間だけで9億枚が売れるなど、膨らんだ需要に供給が追いついていない。
(後略)
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14419947.html?pn=2

もともと月4億枚が消費されていたのですから、新型コロナウイルスで需要が急増した現在、月6億枚とか7億枚で足りるわけがありません。
一般社団法人日本衛生材料工業連合会のホームページにも年間50億枚程度が生産・輸入されていたことが示されています。

マスクの統計

マスクの需要は、おそらくコロナショック以前の3倍から4倍くらいになっているのではないでしょうか。
以前は、街を歩いている人でマスク着用の人は、1割か、多く見積もっても2割に届かなかったと思います。今は、8割とまではいかなくても7割ぐらいの人はマスク着用です。ずっと家にいる人や過疎地の人のことを考えても、最低でも3倍は必要だと思います。

ともかく、月6億枚とか7億枚では全然足りません。
すぐに品薄は解消するようなことを言っていた菅官房長官は、愚かすぎるか国民を欺こうとしたか、どちらかです。

政府はマスク不足を解消する努力をしていませんでした。
それは次の記事を見てもわかります。
スペイン、中国からマスク爆買い 人工呼吸器など含め計520億円
【パリ共同】スペイン政府は25日、新型コロナウイルスの大流行により国内で不足しているマスクや人工呼吸器など計4億3200万ユーロ(約520億円)分の医療用具を中国から購入する契約を結んだと発表した。

 感染が急拡大したスペインの死者はイタリアに次ぐ規模で、25日に死者が約3400人となり、中国の公式発表数を超えた。病院などでも必要な物品が不足し、医療従事者の感染も深刻化している。

 購入するのはマスク5億5千万枚、人工呼吸器950台、550万回分の迅速なウイルス検査キット、手袋1100万枚。今月から6月の間に全て納入されるという。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200326-00000030-kyodonews-int
スペインが中国からマスクを買えるなら、日本も買えたはずです。日本の官僚が仕事をしていないのです。

それから、台湾も日本と同じくマスク不足に陥りましたが、素早く対応して、今ではマスクを海外に送れるまでになりました。
台湾がマスク外交 人道支援で海外に1000万枚寄贈
【台北時事】台湾の蔡英文総統は1日、記者会見し、人道支援の一環として、新型コロナウイルスの感染が深刻な欧米など友好国の医療従事者向けにマスク計1000万枚を寄贈すると発表した。増産により台湾内で必要な量を確保しているほか、感染拡大も効果的に抑制しており、蔡氏は「今こそ国際社会に支援の手を差し伸べる時だ」と強調した。
 台湾は、「一つの中国」原則を主張する中国の圧力で、世界保健機関(WHO)から排除されている。マスク外交により、国際社会における台湾の存在感を内外に示し、台湾が目指すWHOへのオブザーバー参加など国際活動の拡大に向け、各国の支援を仰ぎたい考えだ。
 マスクは、米国に200万枚、イタリアやスペイン、フランスなど欧州11カ国に700万枚、外交関係のある友好国に100万枚をそれぞれ無償提供する。米国には今でも毎週10万枚を供与しているが、感染者が急増している実態を踏まえ、別途支給する。今後の情勢を鑑み、第2弾の国際支援も検討している。 
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020040100961&g=int
いまだにマスク不足の日本と、マスクの海外支援までできる台湾と、歴然たる差がつきました(日本は台湾からもマスクを買えたはずです)。

海外からマスクを買ったり、国内メーカーに増産を手配したりするのは、政治家ではなく官僚の仕事です。
官僚にまったくやる気がないとしか思えません。

これはマスク以外のことでも同じです。
最近、医療崩壊を防ぐために早く緊急事態宣言をするべきだという声がありますが、現時点で日本における新型コロナウイルス感染者の数は3000人程度です。こんな数で医療崩壊が起きるとしたら、医療体制が脆弱すぎます。
感染者用の病床を増やし、軽症者用の隔離施設をつくり、人工呼吸器などを手配するという当然のことがまったくできていないのです。
最近になってバタバタしている始末です。

安倍政権は人事権を握ることで官僚を支配してきましたが、仕事のできる官僚を取り立てるのではなく、政権に都合のよいことをする官僚を取り立ててきました。
その結果、官僚は官邸の顔色ばかりをうかがうようになりました。

官僚が出世しようと思えば、政権の支持率を上げるような政策を出すことです。
布マスク2枚の全世帯配布はまさにそれです。

ただ、あまりにも露骨でした。
新型コロナウイルスの感染拡大が深刻なだけに、こんなときにも人気取りに走る安倍政権に、さすがの国民もあきれたというわけです。

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東京オリンピック延期が決まってから、「安心モード」から「危機モード」へがらりと転換しました。
安倍首相や小池都知事が記者会見して、新型コロナウイルスへの危機感をあおっています。
しかし、現時点で日本の感染者数は2000人弱で、死亡者数は54人です(クルーズ船を除く)。
とても「瀬戸際」だの「緊急事態宣言」だのというレベルではありません。


最近、日本人の危機感が高まっているのは、イタリア、フランス、イギリス、ニューヨークなどで都市封鎖が行われているという海外のニュースに影響されているからでしょう。
たとえばイタリアでは全土で外出規制措置が取られ、生活必需品の買い物と通院の場合だけ外出が認められ、外出理由を書いた自己申告書を携行し、不要の外出と見なされた場合は罰金、逮捕もあるということです。買い物は一人で行かなければなりません。二人、三人がいっしょだと、それだけ感染の可能性が高いからです。店は入店制限されているので、行列しなければなりませんし、レジ前には床にテープが貼られて、人と人が接近しないようになっています。
フランス、イギリスも似たような外出規制が行われています。

こうしたニュースに毎日接していると、日本もそうなるのではないかという危機感を持っても不思議ではありません。
しかし、それらの国の感染者数は日本とまったく違います。

「個人投資家ニュース」というサイトに、世界各国の最新の感染者数、死亡者数が一覧となって出ています。
それによると、最近感染が沈静化している中国を別にすると、現時点(3月31日)で感染者数のトップ10はこのようになっています。

アメリカ  143,836人
 イタリア  97,689人
 スペイン  85,195人
 ドイツ  63,929人
 イラン  41,495人
 フランス  40,751人
 イギリス  22,141人
 スイス  15,526人
 ベルギー  11,899人
 オランダ  11,814人
 
日本の感染者数は2000人ほどですから、ほとんどヒトケタ以上違います。

それから、これらの国は、イランを除くとすべて“西側先進国”です。
どうしてこのような偏りが生じるのかというと、BCGワクチンの接種によるという説があります。日本や韓国、ソ連東欧圏ではずっとBCG接種が行われていましたが、結核のリスクがほとんどなくなった西欧ではBCG接種があまり行われていなかったそうです。
結核菌に対する免疫が新型コロナウイルスに対してもある程度有効だということです。

この説は今のところ主にネットで言われているので、いまいち信ぴょう性がありませんが、「Bloomberg」も「BCGワクチン、豪州で治験-新型コロナへの有効性を検証」という記事を書いていて、けっこう有力かもしれません。
もしBCGが有効なら、日本では感染爆発は起こりにくいことになります。

BCGのことはともかく、日本人にとって西欧諸国は大きな存在です。日本人が「国際社会」というとき、それはほとんど西欧諸国のことです。
とりわけアメリカ、イギリス、フランス、ドイツのことは大きく報道されるので、大きな影響を受けがちです。
冷静に考えれば、それらの国と日本では感染者数がヒトケタ以上違うので、日本が同じように都市封鎖するのは愚かなことです。

ちなみにインドは3月25日、13億人を対象に21日間の外出禁止令を出して全土を封鎖しました。ニュースで警官が違反者を棒で叩いたり、罰としてスクワットをさせたりする映像を見た人もいるでしょう。
ところが、このときインドでの感染者数は500人余りでしたし、現時点でも1000人ちょっとです。
おそらくイギリスなどの影響を受けすぎて、パニックになって都市封鎖の判断をしてしまったものと思われます。

今、日本が「緊急事態宣言」の議論をしているのも同じようなものです。

「緊急事態宣言」というと、なにかすごいことが起こりそうですが、日本の「緊急事態宣言」では罰則のある外出禁止令は出せません。ですから、今までと同じ外出自粛要請とイベント自粛要請が続くだけです(強制的な土地収用や物資の保管命令などはできるようになります)。

日本が欧米の真似をするのも、インドの真似をするのも愚かなことです。

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東京オリンピック開催が1年程度延期されることになりました。
もやもやが解消して、すっきりした気分です。
ちょっと冷静になったところで、最近の新型コロナウイルスの感染拡大について考えてみました。

このところ、イタリア、スペイン、フランス、ドイツ、イギリス、アメリカという欧米諸国で爆発的に感染拡大が進んでいます。

中国はかなり感染を抑え込んで、少しずつ封鎖解除を進めています。
平常へと近づけていくと、また感染が拡大するのではないかという懸念はありますが、とりあえずはいい傾向です。

韓国は早くに感染が発生しましたが、最近はかなり抑え込んでいます。
韓国のやり方を手本にするべきだという声もあります。

日本も早くに感染が発生しましたが、感染者の数はそれほどふえません。
PCR検査の数を意図的に抑えて、感染者を少なく見せかけているのではないかという疑惑がずっとありました。そういうことはあるのかもしれませんが、最近の他国での爆発的な感染拡大を見ると、やはり日本での感染は少ないと思えます。

日本で感染が抑えられている理由として、公衆衛生のレベルが高いからだという説があります。日本人はもともと手洗いやうがいをよくし、マスクをつける習慣があったということです。
確かにそれもあるでしょう。

それに加えて、対人関係の文化もあると思います。

日本人のあいさつはおじぎです。
対して欧米のあいさつは、握手、キス、ハグです。
おじぎは身体の接触がありませんが、握手、キス、ハグにはあります。
これは感染に関して大きな違いです。

日本人は肉親の間でも体を接触させるあいさつをしません。
たとえば、戦争に行って死んだと思われていた息子が奇跡的に帰ってきて、母親と感動の対面をしたというときも、日本人は抱擁はしません。互いに見つめ合って、せいぜい手を握るくらいです。
そもそも愛情表現の習慣がないともいえます。
小津安二郎の映画でも、家族間の愛情は、表情やわずかなしぐさで表現されるだけです。

対して欧米では、愛情表現も“濃厚”です。
とくにラテン系の国にその傾向があり、イタリアやスペインでは女性を見ると男は口説いてくるという話もあります。

友人関係のあいさつも日本と違います。
「イタリア人の挨拶の仕方は?キスは上手? 」というサイトを参考にまとめてみました。

イタリア人は、初対面では握手をします。
普通の友人だと、頬と頬を合わせてキスの音を立てるというあいさつをします(音を立てるだけでキスはしていない)。右と左の頬に1回ずつ計2回しますが、スイスだと計3回するそうです。
親しい友人になると、実際に頬に唇を当ててキスをします。
そして、カップルになると、人前でも唇と唇を合わせてキスをします。

このように日常的に手や唇を接触させていれば、感染が爆発的に広がるのも納得がいきます。


日本ではおじぎが基本ですから、誰とも体の接触はありません(名刺交換で間接的に触れるぐらいです)。
それに、若い人は人間関係が希薄です。オタクは、二人称に「お宅」という言葉を使っていたことが語源で、他人行儀なつき合い方をします。最近は“”恋愛離れも言われます。“引きこもり”は感染のリスクは限りなくゼロに近いです(引きこもりは家族ともめったに顔を合わせません)。
現に日本では若者の感染者の数はかなり少ないようです。

欧米は握手、キス、ハグの文化で、アジアはだいたいおじぎの文化です。
また、ラテン系の国と北欧の国でもあいさつの文化や人間関係のあり方は微妙に違います。
中国人は、日本人と比べても大声で話す傾向があり、その分つばなどが飛ぶ理屈です。
最近の日本人は熱くなって議論するということがあまりない気がします。
こうした文化の差が感染の差になって現れている気がします。
もっとも、これから感染が広がりそうですが。

もともと握手、キス、ハグというのは感染症のリスクがあり、そういう文化のあることが不思議でした。
これをきっかけに欧米もおじぎの文化になっていくかもしれません。

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新型コロナウイルスの世界的感染拡大で、東京オリンピックの予定通りの開催はむりな情勢です。

そこで1年延期か2年延期かという議論になっていますが、私の考えるベストのシナリオは、3か月延期しての10月開催です。
10月なら気候も申し分ありませんし、選手選考をやり直す必要もないはずです。

もちろんそのときに新型コロナの感染がある程度終息しているというのが条件です。
いつ終息するかを見通すのは困難ですから、とりあえず日本としては3か月延期を提案し、そのときにまだ終息していなかったら1年延期にすればいいわけです。

しかし、この案は非現実的だと思う人が多いかもしれません。アメリカのテレビ局にとって、秋の開催だとほかのスポーツイベントと重なってしまいます。もともと猛暑の7月開催になったのも、巨額の放映権料を払うアメリカのテレビ局の都合に合わせたからです。
したがって、延期するとなれば、入ってくるはずの放映権料が入ってこなくなり、大きな損失が発生します。

しかし、オリンピックについての最終的な責任はIOCにあります。
ここは安倍首相やJOCががんばって、その損失分はIOCに穴埋めさせることです。
IOCは誘致をめぐる裏金疑惑が絶えない組織ですから、金の亡者みたいな人間が集まっていそうですが、アスリートや国際世論を味方につければ、IOCに払わせることも不可能ではないと思います。

それがむりなら、各国のオリンピック委員会がその国力に応じて負担するというやり方もあります。
1年か2年の延期、中止との比較の問題になるので、各国がどう判断するのかわかりませんが。


いずれにしても、3か月程度の延期を目指すのがいいのではないかと個人的に思っていたら、日本政府も同じことを考えていたようです。
17日放送の『ひるおび!』(TBS)で、田崎史郎氏が政府は10月か11月への延期を考えていると語ったのです。
田崎氏は安倍政権に深く食い込んでいる人ですから、その話には信ぴょう性があります。
田崎氏の話は「リテラ」の次の記事に詳しく書かれています。

「田崎史郎が明かした安倍首相の“五輪私物化丸出し”年内延期計画! 安倍在任中に開催のため米テレビ放映権を1400億円で購入」

田崎氏の話によると、アメリカのテレビ局の放映権料は1400億円だそうです。
そして、その分は日本政府が出すのだそうです。
なぜ日本政府が出すのかというと、安倍首相の任期中にオリンピックをやるためと、オリンピックを成功させた勢いで解散総選挙をやるためだというのです。

いろいろとあきれた話ですが、私は損失を日本政府が穴埋めするというところにびっくりしました。その発想は私にはなかったからです。

安倍政権は、一斉休校のために休業したフリーランスへの補償など国民への支払いはケチケチするのに、イージスアショアやF35戦闘機などは爆買いし、ロシアとの経済協力も進め、海外へは気前よくバラマキします。

“売国慣れ”した政治家にとっては、海外への1400億円の支払いなどはなんでもないのかもしれません。恐れ入りました。

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