村田基の逆転日記

進化倫理学の威力を試すブログ

タグ:東京オリンピック

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新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は2日の衆院厚生労働委員会で、東京五輪について「今のパンデミックの状況でやるのは普通はないが、やるということなら、開催規模をできるだけ小さくし、管理体制をできるだけ強化するのが主催する人の義務だ」と述べました。

ずいぶん踏み込んだ発言かと思いましたが、これは開催を前提とした発言ですから、政府に反旗をひるがえしたものではありません。
開催のせいで感染が拡大したときに責任逃れをする布石でしょう。

しかし、そのあとに「こういう状況の中でいったい何のためにやるのか目的が明らかになっていない」「なぜやるのかが明確になって初めて市民はそれならこの特別な状況を乗り越えよう、協力しようという気になる。国がはっきりとしたビジョンと理由を述べることが重要だ」と言ったのはなかなかの正論でした。

五輪開催は感染リスクを高めるのですから、それなりの理由や意義が示されなければいけません。
しかし、今のところ「感動」や「希望」や「夢」や「絆」といった空虚な言葉ばかりです。
IOCのバッハ会長までが「五輪の夢を実現するために誰もがいくらかの犠牲を払わないといけない」と「夢」という言葉を口にしました。

菅義偉首相は2日夜、尾身会長の発言を受けて、五輪開催の意義について、「まさに平和の祭典。一流のアスリートが東京に集まり、スポーツの力で世界に発信していく」と語りました。
橋本聖子五輪組織委会長は3日、「コロナによって分断された世界で人々の繋がりや絆の再生に貢献し、再び世界を1つにすることが今の社会に必要な五輪・パラリンピックの価値であると確信しています」と語りました。
丸川珠代五輪担当相は4日、「我々はスポーツの持つ力を信じて今までやってきた」と語りました。
やはり空虚な言葉です。

つまり五輪開催の意義を誰も語れないのです。


本来、五輪開催国にはそれなりのメリットがあります。
オリンピックは「国別対抗メダル獲得合戦」という形態をとっているのが奏功して、どの国もナショナリズムが高揚するため、世界最大のお祭りとなっています。
お祭りは見ているより参加するほうが断然楽しいものですが、外国で開催されていると、現地に行ける人はごく少数で、ほとんどの人はテレビ観戦になります。
しかし、自国で開催されると、多くの人が生で観戦できますし、海外の選手や観光客と触れ合ったり、ボランティアで参加したりして、お祭りに参加する喜びを味わえます。
そのため、日本でも自国開催がけっこう支持されて、ボランティアにも多くの人が集まりました(莫大な開催費用に見合うかは疑問ですが)。

しかし、感染対策で無観客になれば、海外の選手との触れ合いもありませんし、騒いで盛り上がることもできません。テレビ観戦するだけになってしまえば、日本で開催している意味がありません。
つまり自国開催のメリットがほとんどなくなって、感染拡大のデメリットだけがあるというのが今の状況です。

このデメリットを上回るような意義が示されていないと尾身会長は言ったわけです。


しかし、「意義」はともかく「メリット」ならあります。
開催されると膨大な放映権料が入ってきて、これはメリットです。
さらに損害賠償請求などを回避できるというメリットもあります。
メリット、デメリットを天秤にかけて、開催という判断になることは十分にありえます。

ただ、放映権料が高いから、つまりカネのために開催するとは誰も言えません。露骨に利己的なのは誰もが嫌うからです。
ましてやこの場合、命とも関わってきます。
そのため誰もが空虚な言葉しか言えなくなっているのかもしれません。


しかし、ちゃんと考えれば、「意義」はあります。
莫大な放映権料が発生するということは、世界の多くの人々がオリンピックのテレビ観戦を楽しんでいるということです。
ですから、東京五輪を開催することは、世界の人々にオリンピック観戦の楽しみを提供することになります。
とくに現在は、コロナ禍でステイホームしている人が多いので、オリンピック観戦への期待はより大きいはずです。
「コロナ禍で苦しんでいる世界の人々にオリンピック観戦の喜びを届ける」というのは立派な意義です。

日本は感染拡大というデメリットを負うが、世界にはオリンピック観戦というメリットを与える――これは利他行動というものです。
人間には生まれながらに利他心が備わっているので、こうした利他行動をすることは喜びにもなります。
人に親切にするといい気持ちになるのと同じです。

利他行動がなぜ喜びになるかというと、「損して得取れ」という言葉があるように、利他行動はいずれ自分の利益になって返ってくることが多いからです(これを互恵的利他行動といい、ゲーム理論で説明されます)。

開催国が五輪を開催するのは当たり前のことで、義務でもあります。日本はたまたまコロナ禍と重なって貧乏くじとなりました。
感染拡大を恐れて開催をやめる選択肢もありますが、多少の感染拡大は受け入れて世界の人々のために開催するという選択肢もあります。
前者を選択しても、世界は許してくれるでしょうが、後者を選択すれば、世界は歓迎し、感謝してくれるでしょう。

もっとも、日本が世界から感謝されるには、日本が主体的に選択した場合に限ります。
現状では、日本はIOCに従うだけの存在に見えますから、開催しても、同情されることはあっても感謝されることはありません。

安倍前首相が「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証」と言ったのが間違いの始まりで、その後も菅首相らが空虚な言葉を並べ立てているうちに、日本は世界から感謝されるチャンスを逃してしまいました。


「コロナ禍で苦しんでいる世界の人々にオリンピック観戦の喜びを届ける」というのは立派な開催意義です。
政治家や五輪関係者が誰もこのように語らないのは不思議です。
彼らの心は利己心ばかりで、利他心がなくなっているのでしょうか。

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3月25日に聖火リレーを始めると、橋本聖子東京五輪組織委会長が表明しました。

聖火リレーは47都道府県を回り、約1万人のランナーが参加する大規模なものです。当然、費用もかかります。聖火リレーの中止検討を表明した島根県の丸山達也知事は警備費などで7200万円の予算を計上しているということです。

組織委は感染対策を次のように行うとしています。
聖火リレーでの主なコロナ対策
<観覧客向け>
インターネットライブ中継での視聴を推奨
沿道観覧は居住地付近でするよう求める
沿道ではマスクを着用し、大声を出さず拍手による応援や配布グッズなど活用の応援を要請
過度な密集が生じた場合はリレー中断も
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-02-25/QP22LDDWX2PS01

ここまでして聖火リレーをする意味がわかりません。
人が集まりすぎると中断するということで、有名人のランナーが相次いで辞退しているのも当然です。

橋本会長は「コンセプトである『希望の道をつなごう』に沿って日本全国に希望をつなげる聖火リレーにしたい」と語りました。

組織委の決めた聖火リレーのコンセプトというのがあって、「Hope Lights Our Way(英語) / 希望の道を、つなごう。(日本語)」というもので、IOCの承認も得ているということです。

英語を直訳すると「希望はわれらの道を照らす」となって、なかなかよい言葉と思えますが、「希望の道を、つなごう」という日本語はほとんど意味不明です。


そもそも論をいえば、「聖火」というものは存在しません。
オリンピア遺跡で採火した火も、百円ライターでつけた火も、同じ火です。
ですから、聖火リレーも無意味なことです。
聖火台の火には見世物としての価値があるので、一人のランナーが国立競技場の聖火台に火をつけるパフォーマンスをすれば十分です。
「聖火」をありがたがるのは科学的精神に反しますし、子どもの教育にもよくありません。

3月2日のTBS系「ひるおび!」で、元JOC職員でスポーツコンサルタントの春日良一氏は「古代ギリシャでは4年に1度休戦するのがオリンピックだった。武器を置いてオリンピアに集まれということを各ポリスに伝えるメッセンジャーの役割をデフォルメしたのが聖火リレーだ」と言って、平和のメッセージの意義を強調していました。
しかし、聖火リレーをやったからといって世界が平和になるものではありません。
聖火は古代オリンピックで開催期間中にともされていて、1928年のアムステルダム大会で復活しましたが、聖火リレーは1936年のベルリン大会でナチスドイツが始めたものです。
聖火リレーにはナチスのオカルト趣味が入っているともいえます。

ただ、いきなり大会を始めるのではなく、聖火リレーをやりながらだんだんとオリンピック気分を盛り上げていくというのはうまいやり方です。
しかし、コロナ禍では盛り上がって人が集まってはいけないわけです。
「盛り上げるためにやるのに、盛り上がって人が集まるといけない」というジレンマに陥ります。
不要不急の聖火リレーは中止が当然です。

では、なぜ聖火リレーをやろうとするのでしょうか。
私が思うに、もし聖火リレーを中止すれば、ただでさえ大会開催に否定的な世論がさらに否定に傾いて、大会中止に追い込まれるのではないかという懸念があるからでしょう。
それぐらいしかやる理由が見当たりません。



では、コロナ禍でオリンピック大会をやる理由はなんでしょうか。

菅義偉首相は繰り返し「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として開催する」と言っています。
この表現は安倍前首相が言い出したものですが、言い出した当時は、今年7月ごろにはコロナに打ち勝っている可能性が少しはありました。
しかし、現時点では、7月に打ち勝っているということはまったく考えられません。
なにも考えずに昔の言葉を繰り返している菅首相にも困ったものです。

ということは現在、オリンピックを開催するまともな理由が示されていないのです。
「安全・安心を確保して開催する」などと言いますが、これは言葉の遊びで、開催すれば必然的に感染リスクは増大します。
世論調査で中止・延期が8割近くになるのも当然です。

では、中止すればいいかというと、そう単純ではありません。
開催したほうがいい理由もあります。
それは「お金」です。
開催中止になれば大きな損失が発生します。

ただ、その金額がどれぐらいになるのかがよくわかりません。
「東京オリンピック中止の経済損失」で検索すると、3兆4000億円、4兆5000億円、8兆円、29兆円などといろんな数字が出てきます。
これは要するに「経済波及効果」の数字で、もともと大きめに算出してあるのです。

単純に考えて、開催中止になればテレビ放映権料と入場料が入ってきませんし、スポンサー企業からの金も大幅に減額されるでしょう。
一方で開催にともなう出費はなくなるので、それを引いた額が純然たる経済損失です。
それを全部日本が負担するはずはなくて、IOCとの分担になります。

それがいくらになるかを組織委がちゃんと計算して、その数字をもとに菅首相が「中止すればこんなに損をする。だから開催するべきだ」と国民に訴えれば、説得力があります。
というか、これ以外に国民を説得することはできません。


ただ、ここで困ったことがあります。
人間は誰でも利己的で、利己的にふるまいますが、あからさまに利己的にふるまうと、周りの反発を買って、目的とする利益が得られません。
ですから、人間は「利他的に見せかけながら利己的にふるまう」という複雑なことをします。
たとえば、企業は営利が目的ですが、「顧客のため」とか「社会に貢献」とか「地球環境にやさしい」といった言葉で利他的なイメージをふりまきます。
商人は「赤字覚悟の出血サービス」と言いながら利益を得て、政治家は「国家国民のために身命を賭す」と言いながら利権を追求します。
つまり本音と建て前の使い分けをしているのですが、やっているうちに自分でも本音と建て前の区別ができなくなって、誰もが自分を利他的な人間だと勘違いしているのが実情です。

こうした考え方が進化倫理学の基本です。


ともかく、今の世の中、誰もが利己的に見られないように注意し、そして、あからさまに利己的にふるまう人間を見ると非難します。
ですから、菅首相が「中止すればこんなに損をする。だから開催するべきだ」と国民に訴えれば、国民は「お金のことしか考えないのか」「オリンピックに対する冒涜だ」などと言って、菅首相を非難するでしょう。
つまりお金のことはたいせつですが、あからさまに言ってはいけないのです。
大義名分が必要です。

「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証」というのも大義名分ですが、できが悪すぎます。

では、どんな大義名分がいいかというと、「世のため人のため」という利他的な意味のものが最善です。
具体的には「世界中のオリンピックファンとアスリートのために開催しよう」というのがいいでしょう。
実際、世界にはオリンピックを見たいと思っている人がたくさんいますし、アスリートはもちろん出場して活躍したいわけですから、単なる大義名分ではなく実質も伴っています。

中止になるとどれだけ経済損失があるかということを国民に周知しておき、「世界中のオリンピックファンとアスリートのために」ということを大義名分にして国民を鼓舞するのが、オリンピック開催を実現する最善の方法です。

それで国民が鼓舞されなければ、開催は諦めるしかありません。


それにしても、中止の場合の損失も明示されないし、まともな大義名分も掲げられないのでは、開催を目指す人たちが愚かすぎるというしかありません。
利権のことしか考えていないのでしょうか。

ブルーインパルス
河野太郎ツイッターより

5月29日、自衛隊のブルーインパルスが新型コロナウイルスに対応中の医療従事者などへ「敬意と感謝をお届けするため」に東京上空を飛行しました。

前日にこの予告を聞いたとき、私は「空から病院へマスクや防護服などを投下するのか」と、皮肉を込めて思いました。
それから、空に赤十字のマークのような、医療を象徴するものを描くのかと思いました。これは皮肉ではなく、ブルーインパルスというと空に五輪のマークを描くというイメージがあるので、あるかもしれないと思いました。

そもそも曲芸飛行は、過去にいくつも悲惨な事故を起こしていて、するべきではないという意見もあります。
ただ、今回は曲芸飛行はなくて、スモークを出しながらの編隊飛行でした。


私が皮肉っぽいことを考えたのは、医療従事者へ「敬意と感謝をお届けするため」というところに“安倍臭さ”を感じたからです。
同じことを感じたのかどうかはわかりませんが、今回の飛行に反対する声がけっこうありました。

たとえばラサール石井氏はツイッターで、医療従事者には「空を見上げる余裕もない」「政府の緊急かつ具体的な支援を医療関係者の皆様にお願いします」と述べました。
共産党の紫野あすか三鷹市議は「ブルーインパルスが飛んだらなぜ医療従事者を励ます事に繋がるのか全く理解出来ない」とツイートしました。
どちらの意見も賛否両論を巻き起こしましたが、こういうことを言いたくなるのはわかります。

しかし、今回のブルーインパルスの飛行がまったく無意味とはいえません。
ジェット機の編隊飛行は、それだけでアトラクションとしての価値があるからです。
見て楽しんだ人も多かったはずです。

今はコロナ禍のために旅客機がほとんど飛んでいなくて、東京上空でアトラクションのための飛行をするにはちょうどチャンスです。
実にいいアイデアです。
多少の経費はかかっても、それ以上に東京都民を楽しませたはずで、その意味では成功でした。


ブルーインパルスの飛行自体はいいのですが、問題は「医療従事者のため」という理由をつけたことです。
ブルーインパルスの飛行の前では、医療関係者も一般人も反社勢力も区別がないので、どうしてこれが「医療従事者のため」なのかという疑問が生じます。
また、「医療従事者のため」を言うなら、マスクの一枚でも現場に届けろよということにもなります。

最初から「都民のみなさま、不自由な生活の気晴らしにブルーインパルスの飛行をお楽しみください」と言っていれば、よけいなことを考えずに純粋に楽しめました。


よけいな意味づけをするのは、安倍首相がよくやることです(今回の飛行は河野太郎防衛相のアイデアだったようですが、安倍首相風に意味づけされています)。

3月、安倍首相がIOCのバッハ会長と電話会談をして、東京オリンピックの1年程度の延期を決めたとき、安倍首相は「人類が新型コロナウイルス感染症を克服した証として五輪を開催したい」と語りました。
オリンピックが「感染症を克服した証」などという重荷を背負わされたのでは、楽しくありません。オリンピックはあくまでスポーツとして純粋に楽しみたいものです。

安倍首相は東京オリンピックを誘致するときも、「東日本大震災から復興した証」ということで「復興五輪」を掲げました。
これは誘致のときにアピール材料として使っただけで、今では「復興」ということはあまり意識されなくなりました。

しかし、もし来年東京オリンピックが開催され、「感染症を克服した証」という意味づけがされたら、たいへんです。
おそらくそのときには感染症はまだ完全には克服されていないので、「克服した証」という建て前で現実を塗りつぶすようなことをしなければなりません。これは考えるだけでうんざりです。

来年東京オリンピックが開催されるのはかなりむずかしそうですが、もし開催されたときは、「感染症を克服した証」などという意味づけはやめて、スポーツの祭典として純粋に楽しみたいものです。

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新型コロナウイルスの世界的感染拡大で、東京オリンピックの予定通りの開催はむりな情勢です。

そこで1年延期か2年延期かという議論になっていますが、私の考えるベストのシナリオは、3か月延期しての10月開催です。
10月なら気候も申し分ありませんし、選手選考をやり直す必要もないはずです。

もちろんそのときに新型コロナの感染がある程度終息しているというのが条件です。
いつ終息するかを見通すのは困難ですから、とりあえず日本としては3か月延期を提案し、そのときにまだ終息していなかったら1年延期にすればいいわけです。

しかし、この案は非現実的だと思う人が多いかもしれません。アメリカのテレビ局にとって、秋の開催だとほかのスポーツイベントと重なってしまいます。もともと猛暑の7月開催になったのも、巨額の放映権料を払うアメリカのテレビ局の都合に合わせたからです。
したがって、延期するとなれば、入ってくるはずの放映権料が入ってこなくなり、大きな損失が発生します。

しかし、オリンピックについての最終的な責任はIOCにあります。
ここは安倍首相やJOCががんばって、その損失分はIOCに穴埋めさせることです。
IOCは誘致をめぐる裏金疑惑が絶えない組織ですから、金の亡者みたいな人間が集まっていそうですが、アスリートや国際世論を味方につければ、IOCに払わせることも不可能ではないと思います。

それがむりなら、各国のオリンピック委員会がその国力に応じて負担するというやり方もあります。
1年か2年の延期、中止との比較の問題になるので、各国がどう判断するのかわかりませんが。


いずれにしても、3か月程度の延期を目指すのがいいのではないかと個人的に思っていたら、日本政府も同じことを考えていたようです。
17日放送の『ひるおび!』(TBS)で、田崎史郎氏が政府は10月か11月への延期を考えていると語ったのです。
田崎氏は安倍政権に深く食い込んでいる人ですから、その話には信ぴょう性があります。
田崎氏の話は「リテラ」の次の記事に詳しく書かれています。

「田崎史郎が明かした安倍首相の“五輪私物化丸出し”年内延期計画! 安倍在任中に開催のため米テレビ放映権を1400億円で購入」

田崎氏の話によると、アメリカのテレビ局の放映権料は1400億円だそうです。
そして、その分は日本政府が出すのだそうです。
なぜ日本政府が出すのかというと、安倍首相の任期中にオリンピックをやるためと、オリンピックを成功させた勢いで解散総選挙をやるためだというのです。

いろいろとあきれた話ですが、私は損失を日本政府が穴埋めするというところにびっくりしました。その発想は私にはなかったからです。

安倍政権は、一斉休校のために休業したフリーランスへの補償など国民への支払いはケチケチするのに、イージスアショアやF35戦闘機などは爆買いし、ロシアとの経済協力も進め、海外へは気前よくバラマキします。

“売国慣れ”した政治家にとっては、海外への1400億円の支払いなどはなんでもないのかもしれません。恐れ入りました。

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ダイヤモンド・プリンセス号の乗客乗員から多数の新型コロナウイルス感染者が出たのは驚きでしたが、14日間たったということで、陰性の判定が出た乗客がどんどん下船して国内に散っていたのはさらに驚きでした。

肺炎はもともと恐ろしい病気で、日本では2018年に9万4千人余りが肺炎で死亡しています。そこに新型コロナウイルスで死亡する人が新たに加わっても、それほど恐れることはないということを、少し前に「新型肺炎で日本人はみな視野狭窄に」という記事に書きました。
その考えは基本的に変わりませんが、日本政府の対応のまずさは想定外でした。


ダイヤモンド・プリンセス号内で感染がどんどん広がっていくのを見て、私は各船室が空調のダクトでつながっているのではないかと考えたりしました。そんなことでもなければ説明がつきません。
そうしたところ、感染症の専門家である岩田健太郎神戸大学教授がダイヤモンド・プリンセス号の船内に入って、その実態をYouTubeに動画で投稿し、「エボラのときのアフリカやSARSのときの中国よりひどい」「グリーン(ゾーン)もレッド(ゾーン)もグチャグチャになっていて、どこが危なくてどこが危なくないのかまったく区別かつかない」「検疫所の方と一緒に歩いていて、ヒュッと患者さんとすれ違ったりするわけです。『あ!いま、患者さんとすれ違っちゃう!』と、笑顔で検疫所の職員が言っている」「訊いたら、そもそも常駐してるプロの感染対策の専門家が一人もいない」などと語り、やっと納得がいきました。


問題は、このあとです。
政府は対策の不備を認めて、改善に努めるという方向に行くのではなく、岩田教授の主張を否定する方向に行きました。
橋本岳厚労副大臣は、岩田教授がグリーンゾーンとレッドゾーンが区別されていないと言ったのを否定するために、「不潔コース」と「清潔コース」という表示のある船内写真をツイッターに投稿し(すぐに削除)、菅官房長官は「船内管理は専門家が常駐し、ゾーニング(区画設定)も行っていた。隔離は有効に行われた」と、やはり岩田教授の主張を否定しました。

これまで安倍政権は、モリカケ問題でも桜を見る会問題でも、徹底して嘘をつき通すという作戦でやってきました。
それが成功体験になって、ますます嘘や印象操作に力を入れるようになっています。
ダイヤモンド・プリンセス号の問題でも嘘をつき通すという作戦に出ました。
そうして嘘をついているうちに、自分で嘘をほんとうのことと思ってしまったようです。


こういうことはときどきあります。大本営発表を軍部が信じてしまうこともありました。
1944年10月、いわゆる台湾沖航空戦において大本営は敵空母11隻撃沈、敵戦艦2隻撃沈などの“大戦果”を発表し、国民は歓喜にわき返りました。これはまるっきりの嘘ではなく、未熟な飛行士が悪天候下で戦果を過大評価して報告し、それを単純に足し算して、海軍自身が事実と思い込んだのです。ただ、数日後に無傷の敵艦隊が発見されて、間違いとわかりました。しかし、海軍はそのことを陸軍に知らせず、そのため陸軍は勝利のチャンスととらえて、フィリピンのルソン島に陣地を築いて米軍を待ち構える作戦から、軍をレイテ島に移して米軍の上陸を迎え撃つ作戦に転じましたが、移動中の船が米軍に沈められ、助かった兵士も装備も兵器もない状態で、まともに戦うこともできずに大敗を喫しました。


ともかく、安倍政権は、ダイヤモンド・プリンセス号内ではゾーニングができて正しい隔離がされていたという“大本営発表”をしたために、それに合わせて乗客を下船させました。
チャーター機で乗客を帰国させたアメリカ、オーストラリア、カナダ、イスラエル、香港などでは、帰国してから2週間の隔離期間を設けていて、対応がまったく違います。
現にアメリカ、カナダ、オーストラリア、イスラエルなどの帰国した乗客の中から陽性反応を示す人が出ています。
日本でも、19日に下船して栃木県の自宅に戻った60代女性が発熱し陽性と判定されたという報道がありました。
安倍政権は、自分がついた嘘にだまされて感染を拡大させているのです。

なお、ダイヤモンド・プリンセス号にはこれまで90人を越える厚生労働省の職員が入って作業してきて、その中から4人の感染者が出ています。しかし、それ以外の者はウイルスの検査をせずに職場復帰しているそうです。
これも感染拡大につながります。


感染拡大が防げないと、東京オリンピック中止が現実味を帯びてきます。安倍政権はそれだけは阻止したいようです。
しかし、感染拡大防止のために適切な手を打つという方向には行かず、印象操作ないしは自己満足のほうに行っています。

新型肺炎対応「WHOも評価」 安倍首相
 安倍晋三首相は21日夜、自民党の稲田朋美幹事長代行、山口泰明組織運動本部長らと東京都内の中国料理店で会食した。
 新型コロナウイルスの感染拡大への対応に関し、首相は「きちっとやっている。世界保健機関(WHO)も評価している」と強調した。会食後、山口氏が記者団に明らかにした。 
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200221-00000166-jij-pol
今「きちっとやっている」という認識ですから、これ以上のことをやろうとしないのは当然です。
菅官房長官も同じです。

官房長官 東京五輪パラ「準備を着実に進めたい」 
菅官房長官は閣議のあとの記者会見で、東京オリンピック・パラリンピックについて「IOC=国際オリンピック委員会からは『新型コロナウイルス感染症に関して日本は適切に対応しているという信頼感を抱いている』という評価をもらっている。政府としても、IOC、組織委員会、東京都との間で緊密に連携を取りながら、アスリートにとって安心安全な大会となるよう準備を着実に進めていきたい」と述べました。
(後略)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200221/k10012295041000.html
人間はひとつ嘘をつくと、それと辻褄を合わせるためにさらに嘘をつかねばならなくなります。安倍政権はあまりにもたくさんの嘘をついたために、安倍首相や菅官房長官の頭のキャパシティは嘘を維持することでいっぱいになってしまって、新型コロナウイルス対策について考えることができなくなっているのかもしれません。


厚生労働省は20日に、イベントの開催について「現時点で政府として一律の自粛要請を行うものではありません」という発表をしました。
もしイベント開催の自粛要請をすると、最大のイベントである東京オリンピックも自粛しなければならなくなることを恐れたのでしょう。
しかし、イベントを自粛しないと感染が拡大し、結果的にオリンピック開催が不可能になりかねません。
つまりここでも感染拡大を推進するようなことをやっています。

真の脅威は、新型コロナウイルスよりも嘘と印象操作ばかりの安倍政権です。

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