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韓国・ソウル・景福宮の興礼門

近ごろのマスコミは韓国ネタばかりで、“嫌韓フィーバー”とか“嫌韓バブル”といえる状況です。
おかげでいろんなバカがあぶり出されています。

中でもいちばんのおバカは、ワイドショーのコメンテーターの武田邦彦中部大学教授でしょう。
8月27日のTBS系「ゴゴスマ」において、ソウルを旅行中の日本人女性が韓国人男性に暴行された事件に関連して、大阪で韓国人観光客が激減という話題になると、「そりゃあ日本男子も韓国女性が入ってきたら暴行しなけりゃいかんからね」と発言して非難が集中、3日後に番組は「ゴゴスマとしては、ヘイトや犯罪の助長を容認することは出来ません。番組をご覧になって不快な思いをされた方々にお詫び致しますと」と謝罪しました。

同じく「ゴゴスマ」において29日に、東国原英夫氏がゲストである韓国人の金慶珠東海大学教授に対して、金教授が「あの……」と話をさえぎろうとした瞬間、「黙って、お前は! 黙っとけ!この野郎。喋りすぎだよ、お前!」と暴言を吐きました。

そして、「週刊ポスト」(9月13日号)は『「嫌韓」ではなく「断韓」だ 厄介な隣人にサヨウナラ 韓国なんて要らない』という特集をし、その中に『「10人に1人は治療が必要」(大韓神経精神医学会)──怒りを抑制できない「韓国人という病理」』などもあり、ヘイトスピーチそのものと批判が集中しました。

「N国」の丸山穂高議員は、韓国の国会議員団が竹島に上陸したことに関して、こりずにツイッターに「戦争で取り返すしかないんじゃないですか?」と投稿しました。

こうした動きの背後に安倍政権の扇動があるのは明らかです。
河野太郎外務大臣は、7月19日、徴用工訴訟をめぐって南官杓駐日韓国大使を外務省に呼び出したとき、カメラの前で儀礼的な対面をする場面で、大使の発言をさえぎって、「ちょっと待ってください。韓国側の提案はまったく受け入れられるものでない。極めて無礼でございます」と、きわめて無礼なふるまいをしました。ちょうど日本は参院選の最中で、選挙目当てのパフォーマンスでしたが、誰もそのことは指摘しませんでした。


こういうおバカな発言を羅列してもきりがないので、その背後にあるものをさぐってみます。

たとえば丸山議員の「戦争で取り返す」発言ですが、同じことを北方領土に関して言ったときは大きな批判が起こりましたが、竹島に関してはそれほどでもありません。
もちろん二度目だということもありますが、ロシアと韓国の違いも大きいと思います。
ロシアと日本は、いまだに平和条約が締結されず、冷戦時代は互いに仮想敵国でしたから、「戦争」という言葉に敏感にならざるをえません。しかし、韓国と日本は、アメリカをはさんで準同盟関係にあるので、戦争が起こることはまずありえません。
つまり日韓はいくら仲が悪くなっても戦争にならないという安心感が、嫌韓の歯止めをなくしているのです。

それから、GDPで韓国は日本の三分の一程度です。両国が経済戦争のようなことになっても、日本が圧倒的に有利です。そうした安心感もあると思われます。

自分は安全な位置にいて、弱い相手にいやがらせをするというのが今の日本の嫌韓派の人たちで、卑劣というしかありません。
いや、もしかすると自己評価が低くて、日本を韓国と同格と見ているのかもしれません。
自己評価が低くなるのは、安倍外交のせいです。
安倍外交は、アメリカには徹底的に従属し、ロシアとはまともな交渉はできず、中国には中国包囲網づくりは諦めてすり寄り、北朝鮮にもトランプ大統領の方針に従って対話路線になっています。
とすると、日本が強硬な態度を取れるのは韓国だけということになり、他国に卑屈になる分、韓国に威丈高になります。


それから、根本的なことはやはり歴史認識の問題です。
韓国に対する植民地支配を反省するのか否かを、日本の保守派や右翼はごまかし続けてきました。

たとえば保守派は、日本の戦争のおかげで東南アジアは欧米の殖民地支配から解放されたと言いながら、中国や朝鮮への植民地支配は正当化するという二枚舌を使います。
日本を悪者として裁いた東京裁判史観はけしからんと主張しますが、この主張は日本国内だけで、外国に対して発信することはありません。

保守派は「何度謝っても許してもらえない」と言いますが、こういう人に限って一度も謝っていません。
村山談話の村山富市元首相や河野談話の河野洋平元官房長官に対して、韓国人などが「もっと謝れ」と言うことはありません。一度きちんと謝ったからです。
一度も謝らない人や口先だけで謝る人がいるので、いつまでも「謝れ」と言われてしまいます。

中でも悪質なのが、安倍首相です。
安倍首相は村山談話や河野談話を継承すると言いながら、その中にある「お詫びと反省の気持ち」は口にしません。
安倍首相は日韓合意において、「お詫びと反省の気持ち」を表明しましたが、これは当時の岸田文雄外相が読み上げただけで、安倍首相の口から語られたわけではありません。
安倍首相個人のこういう姑息なごまかしが日韓関係悪化の根本原因です。

つけ加えると、安倍首相は徴用工問題について「国と国との約束を守ってもらいたい」と繰り返していますが、徴用工問題は韓国人個人が韓国内の日本企業に対して補償を求めた訴訟ですから、問題をすり替えています。

そして、このような歴史認識の根本問題は、日本が欧米の植民地支配に対してなんの抗議もしないことにあります。
日本の植民地主義は欧米の植民地主義をまねただけなのですから、日本だけが謝罪するのはおかしなことです。
まず欧米がみずからの植民地主義を謝罪すれば、日本も素直な気持ちで謝罪ができるはずです。

ところが、日本の保守派は欧米コンプレックスが強すぎるためか、欧米に対して植民地主義を謝罪しろと言いません。
その代わりに韓国や中国に対して謝罪しないという横柄な態度を取り、関係がこじれます。

日本が植民地主義をグローバルな観点からとらえることができれば、「嫌韓バカ」から脱出することもできるはずです。
それには日本が欧米コンプレックスから抜け出し、欧米と対等の立場に立たなければなりません。