村田基の逆転日記

親子関係から国際関係までを把握する統一理論がここに

タグ:潰瘍性大腸炎

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権力者が権力の座を下りると、それまで隠されていた真実が次々と明るみに出て、かつての権力者は罪人となる――というのはよくあることですし、韓国の政治などは完全にそのパターンです。
安倍首相もそうなるだろうと漠然と思っていたら、どうやら様子が違います。

共同通信社が全国緊急電話世論調査を実施したのですが、「今月29、30両日の調査によると、内閣支持率は56.9%。1週間前の22、23両日の調査より20.9ポイント増加した」ということです。

首相退任が決まった内閣の支持率を調査するというのも妙なものですが、20ポイント超も上昇したのにはびっくりです。
病気を理由にした辞任に国民の同情が集まったのでしょうか。

田崎史郎氏はテレビコメンテーター界における安倍応援団の筆頭格です。こういう人は「安倍とともに去りぬ」になるのかと思ったら、このところテレビに出ずっぱりです。
ということは、安倍首相中心の支配構造は変わらないとテレビ局は認識しているのでしょう。


今後のことで安倍首相にとって困るのは、石破茂元幹事長が総裁選で勝利することです。
石破氏はこれまで安倍首相に迫害されてきましたから、安倍首相は石破氏に復讐され、それこそ罪人にされてしまうかもしれません。
しかし、今のところ明らかに菅義偉官房長官が有利な情勢になっています。
党員投票をやらない方向なのも、“石破つぶし”のためです。
ここまでは安倍首相が辞任を決めたときからのシナリオでしょう。

つまり安倍首相はキングメーカーになって、院政を敷くということになりそうです。


安倍首相は辞任の作戦が巧妙でした。
“難病”のイメージを徹底的に利用しました。
「病気で辞めるのならしかたがない」というだけでなく、「難病で辞めるのはかわいそう」というところまで持っていきました。

実際のところは、国会議員は辞めないのですから、病気であることもあやしいものです。
安倍首相はトランプ大統領やプーチン大統領と電話会談をしたりして、首相の仕事もちゃんとやっています。


安倍首相の「難病利用」によっていちばん迷惑をこうむっているのは、潰瘍性大腸炎の患者でしょう。
潰瘍性大腸炎になると治らない、仕事ができないというイメージになってしまいました。
それから、慶応大学病院にとっても迷惑です。処方した薬が効果を上げているのに首相を辞任されて、「慶応大学病院には治せなかった」というイメージになってしまいました。
実際のところは、潰瘍性大腸炎の治療法は進歩して、深刻化するケースは少なくなっているということです。

そもそも安倍首相は潰瘍性大腸炎を理由に第一次政権を投げ出し、その後、2012年の総裁選に出馬したときは、体調を不安視する周囲に対して、アサコールという特効薬が効いたとして「今はまったく問題がなくなった」と主張していました。
結局、また潰瘍性大腸炎を理由にして辞任するとは、どういう神経をしているのでしょうか。


安倍首相の場合、6月の定期健診で「再発の兆候」が認められ、8月に「再発が確認」されたということです。
なぜこの時期に再発したかというと、政権運営が行き詰まったストレスからでしょう。
ですから、今回の辞任は「政権投げ出し」だといえます。

しかし、よく考えると、「逃げの投げ出し」ではなく「攻めの投げ出し」であったようです。

普通、選挙は議員にとって大仕事ですから、衆院の解散は議員任期が残り少なくなってから行われるとしたものです。しかし、安倍首相はつねに野党の選挙準備が整わないうちに早めに解散総選挙を仕掛け、勝利してきました。
安倍首相は今回もその勝利の方程式に従い、「早めの辞任」を仕掛けたのでしょう。
ということは、菅総理大臣が誕生すると、早期に解散総選挙があるということが考えられます。
“安倍院政”なら当然そうなります。

いや、もっと長期的な戦略があるのかもしれません。
安倍首相は65歳、菅官房長官は71歳です。
自民党の総裁は3期までと決まっていますが、いったん辞めたあと再任を禁止する規定はないので、菅総裁のあと、また安倍氏が総裁になり、第三次安倍政権を発足させるということも可能です。

「難病利用の辞任」はあってはならず、安倍首相の潰瘍性大腸炎の症状はどの程度のものなのか明らかにされるべきです。

スクリーンショット (29)
辞任記者会見の安倍首相(官邸ホームページより)

安倍首相は8月28日、記者会見で辞意を表明しました。
第一次安倍政権のときに続いて二度目の唐突な「政権投げ出し」です。

潰瘍性大腸炎はストレスも症状悪化の原因です。
安倍首相は会見で「一議員として仕事をしていきたい」と言って、議員辞職は否定しました。
首相は務まらないが、議員としては務まるということです。
ということは、体の問題ではなく、「首相の重責」に耐えられないという心の問題ですから、「政権投げ出し」というしかありません。

ところが、マスコミは「政権投げ出し」という批判はほとんどしていません。
安倍首相のイメージ戦略に乗せられたようです。


安倍首相はこのところ「病気」というイメージを強く打ち出ししていました。

甘利明議員は、テレビ番組で安倍首相の「疲労蓄積」を心配し、「責任感が強く、自分が休むことは罪だとの意識まで持っている」と語り、麻生太郎財務相は「147日間休まず働いたら、普通だったら体調としては、おかしくなるんじゃないの」と語り、働きすぎが原因で体調を崩しているというイメージを広げました。
そして、8月17日、24日と続けて慶応大学病院に行ったときも、あらかじめマスコミに伝えました。そのためマスコミはずっと病院前に張り付いて、診察時間が「7時間半」と「4時間」だったと報じ、また病院に車で出入りする映像もニュース番組で流れました。
こうして「首相病気」のイメージを国民に植え付けたのです。

しかし、これはあくまでイメージです。
記者会見の言葉を聞いていると、辞任するほどの症状とは思えません。
首相官邸ホームページの「令和2年8月28日 安倍内閣総理大臣記者会見」から書き起こしてみます。
この8年近くの間、しっかりと持病をコントロールしながら、なんら支障なく、総理大臣の仕事に毎日、日々全力投球することができました。
しかし、本年6月の定期健診で再発の兆候が見られると指摘を受けました。その後も薬を使いながら全力で職務に当たってまいりましたが、先月中ごろから体調に異変が生じ、体力をかなり消耗する状況となりました。そして、8月上旬には潰瘍性大腸炎の再発が確認されました。
今後の治療として、現在の薬に加えまして、さらに新しい薬の投与を行うことといたしました。今週初めの再検診においては、投薬の効果があるということが確認されたものの、この投薬はある程度継続的な処方が必要であり、予断は許しません。
政治においては、もっともだいじなことは結果を出すことである。私は政権発足以来、そう申し上げ、この7年8か月、結果を出すために全身全霊を傾けてまいりました。病気と治療をかかえ、体力が万全でないということの中、たいせつな政治判断を誤ること、結果を出せないことがあってはなりません。国民のみなさまの負託に自信をもって応えられる状態でなくなる以上、なくなった以上、総理大臣の地位にあり続けるべきではないと判断いたしました。
総理大臣の職を辞することといたします。

投薬の効果が確認されたのに辞任するのは不可解です。

質疑応答において記者も「治療を続けながら執務を続行するという選択肢はなかったのか」と質問していますが、安倍首相は「間違いなくよくなっていく保証はない」「コロナ禍の中において政治的空白を出さないようにするにはこのタイミングで辞任するしかないと判断した」と答えています。

さらに、次期首相が決まるまで首相の座にあることに関して、「もちろんこの任にある限りですね、コロナ対策、責任をもって全力をあげていきたい。幸いにも新しい薬が効いてますので、しっかりと努めていきたいとそう思っております」と言っています。
つまりしばらく首相を続けていけるというのです。

では、なぜ今辞めたのかというと、
①改憲が不可能になって、この先やりたいことがなくなった。
②やり続けても経済も外交も改善の見込みがない。
ということからではないかと思われます。

やはり「投げ出し」です。
前回は追い詰められてギリギリで投げ出したのですが、今回は早めに投げ出したわけです。

いや、「早め」というのは間違いです。
ほんとうはもっと早く投げ出しているべきでした。
たとえば対ロシアの北方領土返還交渉について、今では二島返還すら不可能な状況になっています。これは外交の大失策として首相のクビが飛んで当然です。
ところが、マスコミの追及が甘いので、平気な顔で首相を続けてきました。
モリカケや桜を見る会でも安倍首相は辞任して当然でした。

本来は死んでいるはずの体を集中治療室に入れてさまざまな延命措置を施してきたものの、本人が長すぎる延命に嫌気が差して、今回安楽死ならぬ“安楽辞任”を選択したというところです。

もちろん“安楽辞任”などということはあってはならず、今後、安倍首相の外交や経済政策をきびしく検証し、モリカケ、桜を見る会の疑惑を徹底追及するべきです。

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