村田基の逆転日記

進化倫理学の威力を試すブログ

タグ:炎上

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またしてもバイトテロ騒動です。

「カレーハウスCoCo壱番屋」の福岡県内の店舗で若い男性店員が愚かな行為をする動画がインスタグラムに投稿され、それが拡散して炎上し、CoCo壱番屋の本社が公式サイトで謝罪するはめになりました。
どういう愚かな行為をしたかというと、ヤフーニュースに載った記事から引用します。
 12日には福岡県内の「カレーハウスCoCo壱番屋」の店舗内の休憩室で、男性店員がまかないのカレーを不衛生に扱う様子をバイト仲間が撮影。それがツイッターに流出し、大騒ぎになっている。

 問題の動画は、店員が黄色の半ズボンの中に左手を突っ込んでいる場面から始まる。まかないのカレーを食べていた撮影者が「何してるんですか?」と声を掛けると、店員は再びズボンの中に手を入れて何かを引っこ抜き、カレーの上に放り投げた。店員は「スパイスを振りかけました」とおどけ、「スパイス、スパイス」と口ずさみながら踊り出す。カメラがアップで捉えたカレーライスの上には、黒い陰毛らしきものがのっていた。
https://news.yahoo.co.jp/articles/2bcc104760bf65a5e2e786d2f820fd56b38a0fbd

先ほど「バイトテロ」という言葉を使いましたが、「テロ」はおそろしい犯罪です。果たしてこれはおそろしい犯罪でしょうか。

記事に「まかないのカレー」という言葉があるように、お客さんに出すカレーではありません。動画を見ると、食べ残しの皿であるようです。つまりこれから捨てる残飯の上に陰毛を載せたということです。
食べ物の上に陰毛を載せるという行為は、感覚的に不快ですが、実害はありません。残飯を捨てて、手を洗えば、不衛生なこともありません。

無意味で、バカらしいことではありますが、若者にはありがちなことです。


この動画はインスタグラムに、フォロワー以外は見ることができない「鍵付きアカウント」として、しかも24時間で消える「ストーリー」として投稿されました。つまり非公開で、すぐに消えるものでした。仲間内だけで見るつもりだったと思われます。
しかし、フォロワーの中に、これを公開してやろうという人がいたのでしょう。ツイッターに動画がアップされ、拡散し、炎上したわけです。

この動画が拡散することはCoCo壱番屋にとってはイメージダウンです。
そのため、その行為をして最初の動画をアップしたバイト店員が「バイトテロ」として非難されていますが、実はイメージダウンを招いたのは、動画を拡散させた人たちです。

拡散させた人たちは、正義のつもりでバイト店員を攻撃したのかもしれません。しかし、バイト店員は仲間内で悪ふざけをしただけで、放っておけばなんの問題もありませんでした。
バイト店員への攻撃は、人を不幸にしてやろうという悪意に基づくものです。
しかも、その行為はCoCo壱番屋のイメージダウンになります。
CoCo壱番屋のような大企業を困らせることを楽しんでいる可能性がありますし、そうでなくても、CoCo壱番屋に対する配慮がないのは明らかです。

このケースは、非公開のものを最初に公開した人間がいちばん悪く、それを拡散させた人間が次に悪いわけです。
6月15日のフジテレビ系「バイキングMORE」を見ていたら、弁護士も「“鍵垢”での公開のものを一般に公開した人が業務妨害罪に当たる可能性が高い」と指摘していました。
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ところが、MCの坂上忍氏やブラックマヨネーズなどのコメンテーターはこの指摘に納得せず、バイト店員がいちばん悪いと主張していました。
世の中にもそういう認識の人が多いのではないでしょうか。

そうした間違った認識が生まれるのは、「バイトテロ」という言葉も原因です。
この言葉をつくったのは、ネットで拡散させている人たち、つまり悪い人たちです。
悪い人たちがつくった言葉が間違ったものであるのは当然です。

これまで「バイトテロ」と呼ばれる出来事は数々ありましたが、そのほとんどはスルーしておけばなんの問題もないことでした。
最初に騒がれた事件は、ローソンの店舗でアイスクリームなどを入れる冷凍ケースの中で男性が寝そべった写真が拡散したことです。これは不衛生だと非難されましたが、アイスクリームなどは包装されているので、それほどのことはなかったでしょう。
バーガーキングの店舗では、床の上の大量のバンズの上に店員が寝転がっている写真が拡散しましたが、バンズは誤発注のために廃棄する予定のものでした。
ほっともっとの店舗では、冷蔵庫に入った店員の写真が「今日暑くね?」というコメントとともにツイッターに投稿されました。

確かに愚かな行為ではあります。

「バカッター」という言葉があります。ツイッター上でバカな行為をさらす人のことです。これは割と適切なネーミングかと思います。
「バイトテロ」も同じような行為を指す言葉ですが、「バカな行為」と「テロ行為」は根本的に違います。

「バイトテロ」は企業に大きな損害をもたらす場合がありますが、これはバイト店員のせいではなく、拡散させ炎上させた人たちのせいです。
ですから、これは「炎上テロ」と呼ぶのが正解です。

炎上させる人間は、バイト店員を不幸にし、企業に損害を与えることを意図しているので、悪質です。


若者は、悪ふざけなどさまざまな愚かな行為をおもしろがってするものです。
それによって経験値を上げ、そこから創造的な発想が生まれることもあります。

最近の日本は、赤ん坊の泣き声がうるさいとか、公園で子どもの遊ぶ声がうるさいというように、子どもに不寛容な社会になっていますが、若者の愚行を「バイトテロ」と呼んで攻撃するのもその流れです。

CoCo壱番屋のバイト店員は身元が特定され、巨額の損害賠償請求される可能性があるといったネット記事を見かけます。
こうしたことがあると、若者は無難なことしかしなくなります。

元気な若者がいない社会に未来はありません。

企業の広告がジェンダーの観点から炎上するということがよくあります。

東洋水産のインスタントラーメン「マルちゃん正麺」の公式ツイッターが公開したプロモーション漫画に、夫と子どもが食べたあとの食器を妻が洗うシーンがあって、「ほのぼのした漫画が最後のシーンで台無しだ」などの批判が殺到し、炎上しました。
しかし、「こんなささいなことでたたくのは行き過ぎ」と擁護する声もあります。

実際の漫画がこれです。

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マルちゃん正麺公式ツイッターより


この漫画の炎上を伝えるのが次の記事です(タイトルに「カップ麺」とありますが、正しくは袋麺です)。

「最後の場面で台無し」「妻にやらせるな」カップ麺のPR漫画に批判
東洋水産の人気インスタントラーメン「マルちゃん正麺」の公式ツイッターが公開したプロモーション漫画が、物議を醸している。

 問題となっているのは、11日に公式ツイッター上にアップされた全8ページの漫画。(中略)「親子正麺」というタイトルがつけられている。漫画の中では、父が幼い子どもの昼食のためにマルちゃん正麺を作って食べており、子どもが「とんこつラーメン」を「ぽんこつらーめん」と言い間違えるという可愛らしい場面もあった。

夜になって母が帰宅すると、子どもと父はそれぞれ「しろいちゅるちゅるめんめんたべた」「ぽんこつらーめん」と報告し、母は一瞬疑問に思うものの、台所に置かれたマルちゃん正麺の袋を見て、「ああ ぽんこつラーメンね」と納得。最後のコマでは、母が台所に置かれたままだった昼食の器と鍋を洗い、その隣で夫がお皿を拭いているという場面が描かれていた。

 しかし、この漫画についてマルちゃん正麺の公式ツイッターには、「途中まではほっこり読めたのに最後の場面で台無しになった」「食べてもないものの片付けを妻にやらせるなよ…」「ご飯作って“くれた”、子どもにご飯食べさせて“くれた”っていうやつ?」といった批判が集まってしまっていた。

 批判の一方では、「フィクションに怒らなくても…」「夫も一緒にお皿拭いてるし問題ない」という擁護も集まっていたものの、男性が家事をすることが当たり前になっている今、帰宅した妻に後片付けをやらせる夫の描写に残念がるネットユーザーが多くいたようだった。
https://www.excite.co.jp/news/article/Real_Live_200071136/?es=true

私の感想を言えば、お昼に使った食器を洗わずに流し台に放置していた夫は批判されて当然です。
リモートワークをやっていた様子もないので、洗う時間は十分にあったはずです。
妻といっしょに食器を拭いているからいいというものではありません。

こんなささいなことを批判するべきではないという意見もあります。
確かにこれ一件はささいなことですが、こういうことが日常的に繰り返されると、ちりも積もれば山となります。

ただ、この漫画は続きものの一編でした。
この夫婦が主人公の「夫婦正麺」という漫画が12話あって、「子どもができました」という会話で終わります。
そして、その夫婦に子どもが加わった「親子正麺」という新シリーズが始まって、これがその第1話なのです。
ですから、シリーズの全体を知った上で評価しなければなりません。

「夫婦正麺」12話はすべてこちらで読めます。

そのページに『「夫婦正麺」並びに「親子正麺」の原作は弊社責任の元に制作し、作画のみ作画者の方に依頼しております』と記載されています。

この夫婦はそんなに仲がいいとは言えません。
第3話には、夫の浮気を疑わせるような会話が出てきます。
妻「マルちゃん正麺ができる3分の間に聞きたいんだけど、みゆきって誰?」
夫「それは3分では説明できないな~」
夫「お、1分たった。ひっくり返さないと」
(この日の3分間は永遠のように感じられた)
第5話では、「妻とケンカした」という言葉が出てきて、夫婦ともに顔を腫らしているので、暴力沙汰があったと想像されます。

第6話では、「世の中には二種類の夫婦しかいない。仮面夫婦と正麺夫婦だ」という言葉が出てきます。
この夫婦は、マルちゃん正麺がなければ仮面夫婦になっていそうです。


つまりこの夫婦は、仮面夫婦になりかねない、ちょっと問題のある夫婦です。
しかし、だからといって、「旦那が浮気しているのはけしからん」とか「顔を殴り合うケンカをするような夫婦なんか出すな」とかの批判が殺到して炎上したということはなかったわけです。
おそらく「夫婦に問題があるのは当たり前」といった認識が世の中にあるからでしょう。

この原作者は、理想的な夫婦よりもちょっと問題のある夫婦を描いたほうがリアルで、共感してもらえると思ったのでしょう。
実際、狙い通りになっていたと思います。


しかし、この夫婦に子どもができて、親子3人を描く漫画になったとたんに炎上しました。

夫は子どもの世話をちゃんとやっていて、問題はありません。
夫が食器を洗わなかったために妻が洗うというシーンはありましたが、もともとこういうことのありそうな夫婦でした。

世の中の価値観として、夫婦に問題があるのは許せても、子どものいる夫婦に問題があるのは許せないということがあるのでしょう。
確かに夫婦二人のときの浮気と、子どもができてからの浮気では、深刻さが違います。

つまり「正麺夫婦」は夫婦漫画、「正麺親子」は家族漫画で、形態が進化したのです(厳密には夫婦も家族ですが)。
家族漫画というと「サザエさん」みたいにほのぼのしたものという固定観念があるため、それに外れるこの漫画は炎上したのかなと思います。

それから、これは新シリーズの第1話なので、前のシリーズを知らない人が多かったことと、最初はツイッターで公開されて拡散しやすかったことも影響したでしょう。


もともと問題のある夫婦だったのですから、子どもができたとたんに仲良し夫婦になるのもおかしなことです。
企業のPR漫画だからといって、理想的な家族を描かなければならないということはありません。
第2話以降に、「なんで私ばっかりがお茶碗を洗ってるの?」ということから夫婦ゲンカが始まって、そこに子どもが起きてきたことでピタッとケンカをやめて、親子3人で仲良くマルちゃん正麺を食べる、というような話があってもいいわけです。


結論を言うと、東洋水産がこの漫画を理想の家族のつもりで出したのなら炎上もしかたありませんが、ちょっと問題のある、ありがちな家族として出したのなら批判されるべきではなく、いずれ問題を回収してくれることを期待したい、というところです。



東洋水産は今のところこの漫画を削除していませんし、マルちゃん正麺公式ツイッターで次のような発表をしています。

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ちょっと問題のある家族を描く漫画として継続していってほしいと思います。

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人間に裏表があるのは当たり前です。
しかし、ネットの世界では裏表の区別もつかない人が多いようです。

ドコモショップの店員から「クソ野郎」とののしられたとして怒っている人がいて、それがきっかけで炎上しています。

「親が支払いしてるクソ野郎」 ドコモ代理店の書類に信じられないメモ書き 受け取った本人に話を聞いた
ドコモショップの書類に残されていた信じられないメモ書きがTwitterで拡散されています。「親が支払いしてるから、お金に無トンチャク」「つまりクソ野郎」と利用客を侮辱したうえで、プランの追加を勧めるよう指示が記されています。
編集部では、メモを受け取ったAさんに取材。あわせてNTTドコモ本社にコメントを求めました。

 以下は編集部がAさんに電話取材した内容です。

「場所は機種変更で訪れた千葉県のドコモショップです。その際、店員からプランの変更を勧められ、ホチキスで綴じられた資料を渡されました」

「やりとりの中で店員がPCを操作し始め、手持無沙汰な時間ができました。それなら変更内容を確認しておこうと資料のページをめくったところ、『クソ野郎』などのメモが書かれていたという経緯です。本来は客に見せない紙が紛れ込んでしまったのだと思います」

「『親が支払いしてる』とありましたが、うちは一家で自営業を営んでおり、父親の名義でまとめて支払うと都合がいいというだけの理由です。顧客情報から勝手に事情を推測して、このような指示を出しているのでしょうか。信じられません」

「メモを発見しすぐに責任者を呼びました。納得できる説明を求めましたが、『すみません』とへらへら謝るばかりで、らちがあきませんでした」

「ドコモ本社に報告したいと申し出ましたが、『コールセンターしかありません』と説明され、直通の電話番号などは教えてもらえませんでした。そのコールセンターも、代理店が用意した番号だったので、ちゃんと本社まで話が通っていたかは分かりません」

「Twitterで話題になってから、ようやく代理店よりお詫びのメールが届きました。何度もなかったかのようにだんまりを決め込んでおいて、事が大きくなって初めて連絡してくるのもおかしな話だと思います」

「インターネット回線もドコモ光の契約を検討していましたが、今回の一件で躊躇(ちゅうちょ)してしまいました」
(後略)
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2001/09/news126.html
NTTドコモはこの事実を認めて、「お客様にご不快な思いをさせてしまったことを大変申し訳ないと考えております」と謝罪しています。


要するに客に見せるべきでないメモを見せてしまったことで生じた問題です。
メモを客に見せたのは店のミスです。
「クソ野郎」などと書いたのはよくありませんが、客が見なければどうでもいいことでした。

客の側も、これが純然たる私的なメモなら、目にしても読まないのがマナーですが、自分のことが書かれているのですから、読むのは当然です。
そこに「クソ野郎」などと書かれていれば、腹が立つのも当然です。
で、文句を言いたくなるのも当然ですが、ここが考えどころでした。

自分は本来読むべきでないものを読んだので、それほど堂々と文句を言える立場ではありません。
それに、文句を言って謝罪させたところで、なにか得をするわけではありません。この人はコールセンターに電話して文句を言ったようですが、まったくの時間のむだです。

店の対応が悪い場合、クレームをつけることで店の対応が改善されることが期待でき、少しは世のため人のためになります。
ところが、この場合は店の対応が悪いわけではないので、クレームをつけてもなにも改善しません。

要するにこれは、人のひそひそ話がたまたま耳に入ってきて、自分の悪口を言っていたので、怒って謝罪を要求したというのと同じです。
そこは、聞いて聞かないふりをするのがおとなというものです。



ただ、この人が腹を立てたのはわかります。
問題は、この人に便乗してネットで炎上させた人たちです。
店の人やドコモを攻撃し、店長の名前や写真をネットにさらしたりしています。
これは世のため人のためにならないばかりか、むしろ逆です。
NTTドコモは「全店舗に対して今まで以上に指導徹底し、再発防止に努めてまいります」と表明していますが、店員同士がやり取りするメモまで監視されるようになると、働きにくくなります(監視する手間もむだです)。
この店員は、「この客は親が料金を払っているので、高いプランを勧めてもうまくいくかもしれない」という業務連絡のメモを書くのに、それだけではつまらないので、「クソ野郎」という言葉を入れたわけです。誰にも迷惑をかけずに、つまらない仕事を少しでもおもしろくしようという工夫です。


いわゆる「バイトテロ」も同じ構図です。
若いバイト店員が悪ふざけをして、SNSに動画や写真をアップして仲間内で楽しんでいると、それを拡散して、攻撃する人が出てくるわけです。バイト店員の悪ふざけは個人的な行為ですし、隠れてやっている限り問題はありません(若者が悪ふざけをするのは自然な姿です)。それを拡散させて攻撃するほうに問題があります。

ところが、拡散させて攻撃するほうは圧倒的多数派で、攻撃されるほうは個人です。そうすると、多数派のほうが正義だという世論が形成されます。


人間に裏表があるのは当たり前で、たまたま裏を見て、「表と違う」と怒るのは愚かです。
こういう問題は、多数派に影響されずに、各個人がしっかりとした倫理の軸をもって判断することがたいせつです。

ただ、最近は炎上させる側を「正義マン」とか「道徳警察」という言葉で批判する傾向も出てきました。
私自身は「道徳という棍棒を持ったサル」という言葉を使っています。

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