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東京地検特捜部は12月25日、統合型リゾート(IR)担当の副大臣などを努めた秋元司衆議院議員を収賄の疑いで逮捕しましたが、なぜこんなところに特捜は突っ込んでいったのか、ひじょうに不可解です。

これまで検察は、モリカケ問題のような安倍政権の中枢の問題に手を出さないのはもちろん、自民党の国会議員に手を出すこともありませんでした。
たとえば、小渕優子議員は公選法違反の嫌疑がかけられ、パソコンのハードディスクをドリルで破壊するなどで話題になりましたが、結局不起訴で、秘書が在宅起訴されただけでしたし、甘利明議員は建設会社の依頼で都市再生機構(UR)へ移転補償金の値上げを「口利き」したとの嫌疑がかけられ、URは家宅捜索され、贈賄側の証言もあったのに、結局不起訴となりました。
森友学園問題では、政権側はすべて不起訴でしたが、籠池夫妻は逮捕、起訴され、長期に拘留されました。
つまり検察は完全に安倍政権の忠犬になり果てたかと思われました。

ところが、突然の自民党議員の逮捕です。
最初は、モリカケ問題をスルーしたことで検察への国民の不満が高まっていたので、そのガス抜きかとも思いました。
しかし、秋元容疑者は政権の中枢とは言えなくても、この逮捕は安倍政権への大きなダメージです。それに、政権が強力に推進してきたIRやカジノへの逆風にもなります。

今のところ秋元容疑者の容疑は、中国企業から現金300万円を受け取ったことと70万円相当の旅行の供与を受けたことで、これは特捜が扱う案件としては金額が小さすぎるのではないかと言われています。
それに、秋元容疑者は逮捕前に、「不正はいっさいない」「資金が私に渡ったんじゃないかということもいっさいありません」と、やけにきっぱりと語っていました。受け取ったのは秘書で、本人は知らなかった可能性もありそうです。
にもかかわらず特捜は、白須賀貴樹衆院議員や勝沼栄明前衆院議員の事務所にも家宅捜索に入って、イケイケドンドンの状態です。
「中国企業の接待を受けた国会議員12人のリストがある」という一部の報道もあって、もしかすると安倍政権の屋台骨を揺るがす事態になるかもしれません。

とすると、忠犬が飼い主の手をかんだわけです。
不可解な豹変です。

そうしたところ、「選択」1月号に載っていた次の記事を読んで、一気に見方が変わりました。

サイパンのカジノに中国の影
トランプ大統領の指示でFBIが操作
米連邦捜査局(FBI)の捜査員が2019年11月に、サイパン島のラルフ・トレス知事のオフィスを家宅捜索し、同知事の身辺を捜査していることが分かった。同島にあるカジノ場経営者から大量の賄賂を受けた容疑だが、そのカジノ経営者は台湾系の華人で、中国共産党中央の幹部ともつながりがあることをFBIは重視したものとみられる。サイパンのカジノは好調で、年間の稼ぎは320億ドルとマカオを上回っているという。
また、この稼ぎの一部が中国大陸に流れているという情報があることから、トランプ政権がFBIに捜査を命じたようだ。カジノを所有する企業の主要株主の台湾人は16年、当時のオバマ大統領に会見し、米民主党とのつながりも強いとされる。このため、トランプ氏は大統領選を前に民主党スキャンダルの一つとしても狙っているとも言われる。

カジノ、中国、賄賂と、日本の事件と構図が似ています。
政権が捜査当局を動かしていることもわかります。
日本でも、トランプ政権の指示で検察特捜部が動いたのかもしれません。
日本の法務当局とアメリカは密接な関係にあり、特定秘密保護法や司法取引制度などは日本の制度をアメリカナイズしたものです。
アメリカがバックにいれば、特捜は恐れることなく安倍政権の中枢にまで手を伸ばすことができます。

日本のIRを巡っては、アメリカの企業も参入しようとしています。アメリカ企業を有利にするためにトランプ政権が検察を動かそうとしたのかもしれません。
ただ、それはスケールの小さい話ですし、検察としてもそんな露骨な売国はできないでしょう。
なにかの大義名分は必要です。

安倍政権はかつては中国包囲網づくりに熱心でしたが、最近は親中国路線に舵を切り、来年春には習近平主席を国賓待遇で日本に招くことになっています。大きな外交路線の転換です。
これを主導しているのは今井尚哉首相補佐官だとされます。
親中路線といっても、あくまで日米安保体制の枠内のことですが、徹底した親米派からしたらおもしろくありません。
徹底した親米勢力と、中国ともうまくやっていきたいという勢力との路線対立が安倍政権内で起きています。
親米派がアメリカの力を借りてこの事件を仕掛けたというのはありそうです。


秋元容疑者に賄賂を渡したとされるのは「500ドットコム」という中国企業です。
チャイナマネーが日本の政界に入り込み、政治を動かそうとしたのです。
建設業者などが政治家に賄賂を贈ったというこれまでの汚職事件とはまったく違い、国家主権が脅かされる事態です。
「中国はけしからん」という声がわき上がっても不思議ではありません。

今のところそうなっていないのは、マスコミがまだ安倍政権批判に踏み切れないからです。
反中国の世論が高まり、安倍政権の親中路線が批判され、習近平主席の国賓としての訪日が中止となり、従来の親米路線に戻るというのが、この事件を仕掛けた勢力の狙いでしょう。

ともかく、背後に米中対立があると考えると、安倍政権に従順だった検察がこの事件に限って強気なことが納得いきます。