村田基の逆転日記

進化倫理学の威力を試すブログ

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スクリーンショット (16)
首相官邸HPより

安倍首相は5月4日、緊急事態宣言の延長を発表する記者会見を行いました。
安倍首相の両側にはプロンプターが配置されています。
安倍首相はプロンプターの読み方が上達して、しっかりと言葉をかみしめるように発声するのが板についてきましたが、聞いているとむなしくなってきます。言葉に心がないからです。

安倍首相の記者会見の動画と書き起こし文は、官邸ホームページのこちらで見られます。

「新型コロナウイルス感染症に関する安倍内閣総理大臣記者会見」

ウイルス対策のあり方についてはこれまでも書いてきたので、今回は安倍首相の言葉づかいと、その背後にある発想に注目してみました。


安倍首相は緊急事態を1か月延長する決断をすることは「断腸の思い」だと言いましたが、私はこの言葉に違和感を覚えました。
普通は「苦渋の決断」とか「忸怩たる思い」と言うところです。

「断腸の思い」という言葉は、子猿を人間に奪われた母猿が百里余りも子猿を追いかけてきて死に、母猿の腹を裂いてみると腸がずたずたに断ち切れていたという故事に由来し、はらわたがちぎれるほどの耐え難い悲しみをいいます。
国語辞典には「駅伝のメンバーを決める時に、断腸の思いで故障がちなキャプテンを外す決断をした」という例文が載っています。

安倍首相に「断腸の思い」なんてあるのかと思いましたが、一応こういう文脈の中で使われています。

 当初予定していた1か月で緊急事態宣言を終えることができなかったことについては、国民の皆様におわび申し上げたいと思います。
 感染症の影響が長引く中で、我が国の雇用の7割を支える中小・小規模事業者の皆さんが、現在、休業などによって売上げがゼロになるような、これまでになく厳しい経営環境に置かれている。その苦しみは痛いほど分かっています。こうした中で、緊急事態を更に1か月続ける判断をしなければならなかったことは、断腸の思いです。

こういう意味なら「断腸の思い」という言葉は正しく使われています。
しかし、安倍首相は中小・小規模事業者を助けようと思えば助けられる立場です。ほんとうに「断腸の思い」がするなら、十分な補償をするはずです。
現実にはろくな補償をしていないので、「断腸の思い」という言葉にはやはり心がこもっていないということになります。

なお、安倍首相は「当初予定していた1か月で緊急事態宣言を終えることができなかったことについては、国民の皆様におわび申し上げたい」と言っていますが、なにが悪かったかを言っていません。
ここは「甘い見通しで5月6日と言ったことをおわび申し上げたい」と言うところです。
こういうことをごまかすので、「おわび」の言葉に心がこもりません。

安倍首相は「今から10日後の5月14日を目途に(中略)、地域ごとの感染者数の動向、医療提供体制のひっ迫状況などを詳細に分析いただいて、可能であると判断すれば、期間満了を待つことなく、緊急事態を解除する考えであります」と語りましたが、解除の基準を示していないことが批判されています。
「国民にとってはきびしい内容ばかりなので、少し甘いことも言っておこう」みたいなことで言ったのでしょう。
前に「5月6日まで」と言ったのと同じです。反省しないので進歩がありません。

安倍首相は、PCR検査を1日2万件可能にすると言ったのに実現できていないという問題を質疑応答で追及されましたが、ここでも「人的な目詰まりがあった」などとわけのわからない言葉でごまかして、自分の非を認めませんでした。


それから、安倍首相の言葉で気になるのが、「感謝」や「御礼」という言葉を連発するところです。
そういう部分を集めてみました。

協力してくださった全ての国民の皆様に心から感謝申し上げます。

子供たちには、長期にわたって学校が休みとなり、友達とも会えない。外で十分に遊べない。いろいろと辛抱してもらっています。心から感謝いたします。

緊急事態の下でも、スーパーや薬局で働いている皆さん、物流を支えている皆さん、介護施設や保育所の職員の方々など、社会や生活を様々な場所で支えてくださっている皆さん、そうした皆さんがいて、私たちの暮らしが成り立っています。改めて、心から感謝申し上げます。

今年は、大型連休中も不要不急の外出を避け、自宅での時間を過ごしてくださっている皆さんに、改めて、衷心より御礼を申し上げます。

例年、ゴールデンウィークには実家に帰省するなど、家族で旅行していた皆さんも多いと思いますが、今年はオンライン帰省などのお願いをしております。そうすることで皆さんの、そして愛する家族の命を守ることができます。御協力に感謝いたします。

また、国の権限強化等についてでありますが、今、言わば強制力を伴わない中におきましても、例えば夜の繁華街等についても営業しているのは1割以下の地域が多いわけでありまして、大変な御協力を頂いている。本当に感謝申し上げたいと、こう思っています。

そもそも罰則がない中でそこまでいただいている、協力を頂いていることに感謝を申し上げたいと思いますが、

国民は努力し、苦しさに耐えていますが、それは安倍首相に対してやっているわけではないので、安倍首相から感謝されてもとまどうだけです。
安倍首相は、「自分が要請したから国民は努力したり耐えたりしている」と勘違いしているようです。

勘違いは、次のようなところにも表れています。

 感染のおそれを感じながら、様々な行動制約の下での生活は緊張を強いられるものです。目に見えないウイルスに強い恐怖を感じる。これは私も皆さんと同じです。しかし、そうした不安な気持ちが、他の人への差別や、誰かを排斥しようとする行動につながることを強く恐れます。それは、ウイルスよりももっと大きな悪影響を私たちの社会に与えかねません。誰にでも感染リスクはあります。ですから、感染者やその家族に偏見を持つのではなく、どうか支え合いの気持ちを持っていただきたいと思います。

差別や偏見ではなく支え合いの気持ちを持つべき――というのは要するに道徳です。
首相が国民に対して道徳を説教しているわけです。
首相は国民よりも精神的な高みに立っていることになります。


道徳を重視するのは自民党の党是です。
自民党は一貫して道徳教育の推進を主張してきて、とうとう道徳の教科化を実現させました。
多くの国民は、「道徳を説かれるのは子どもだけで、自分が説かれるわけではない」と思って、道徳教育を容認してきました。
しかし、安倍首相は新型コロナ騒ぎに乗じて、子どもだけではなく国民に対しても道徳を説くようになったわけです。

安倍首相は国会答弁で何度も「私は立法府の長」と発言し、さらには「私は総理大臣ですから、森羅万象すべてを担当しております」と言ったこともあります。
森友学園問題や加計学園問題や桜を見る会問題などのスキャンダルを嘘と文書改ざんなどで乗り越え、新安保法制や特定秘密保護法などで支持率が落ちてもその都度回復し、そうした経験から万能感を持つにいたったのかもしれません。

ですから、新型コロナ問題も、適当に対応していればやがて解決し、支持率も回復するだろうという認識なのでしょう。
そうとでも考えなければ、こんないい加減なやり方を続けていられるわけがありません。
長期政権の弊害がきわまった感じです。

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近くの駅前広場の植え込みに、サツキの花が盛りになっています。
天気もよくて、美しい光景のはずですが、見てもあまり美しいと感じません。
緊急事態宣言で、花を見て楽しむ心の余裕がなくなっているようです。

東日本大震災のあとも似たような感じでした。
あのときは大きな余震がしょっちゅうあって、原発事故もまだ収束していないので、心がずっと緊張状態でした(私は東京在住です)。
緊急事態宣言によって、あのころに引き戻された感じです。


緊急事態宣言以降、国民は緊張状態にあるのではないでしょうか。
飲食店はアルコール提供夜7時まで、営業夜8時までということになりました。居酒屋がこんな要請を守っていては商売にならないので、要請を無視するところがけっこうあるのではないかと思ったら、ほとんどの店が8時で閉めています。
休業する飲食店も多くあります。ということは、要請以上のことをしているわけです。
営業している飲食店にも客はあまり入っていないので、国民も十分に要請に応えています。
休業しないパチンコ店が問題になるのも、ほかの業種はみな要請に応えているからでしょう。
企業も出勤者をへらし、通勤電車はかなり空いています。
地元の商店街やスーパーが混雑するという問題はありますが、緊急事態宣言は想像以上にうまくいっています。

ところが、緊急事態宣言は1か月程度延長されることになりそうです。
確かに感染者はそれほど減少していません。
今のやり方では不十分なのです。なにが不十分かということは、専門家会議が指摘しています。
『「通勤続く限り、8割減無理」 専門家会議がデータ公開』という記事にはこう書かれています。

 また、端末所有者の居住地域別では、神奈川・千葉・埼玉の3県と、東京都との間の接触頻度の減少率は昼間、35~41%と小さかった。大阪を中心とする関西圏でも同様の傾向がみられた。これは東京と大阪のオフィス街への他府県からの移動を反映しているとみられ、提言は「都心等への通勤を続ける限り、生産年齢人口の接触頻度の減少度合いは少ない」と結論した。西浦教授は会見で、「都心との通勤を続ける限りは、(強制ではなく)自粛要請のレベルでは限界があることがデータからわかった」などと述べた。

企業は通勤者をへらしていますが、まだ不十分だということです。

政府はこれまで隠してきましたが、クラスターがいちばん多く生まれている場所は企業です。
「ITmediaビジネスONLINE」4月21日の『新型コロナが複数判明した場所、企業などの「事業所」が医療施設と並び最多――クラスター源か』という記事によると、『SNSの投稿データ分析などを手掛けるJX通信社(東京・千代田)が、公的情報を元に複数人の感染事例が判明している施設の数を集計したところ、「医療施設」と並んで「事業所」が感染者数トップになった』ということです。
事業所クラスター

ですから、人との接触機会8割削減という目標を達成するには、生活インフラを維持する以外の企業活動を停止すること、つまり欧米並みのロックダウンをするしかありません。
専門家会議の指摘を受け止めると、そういうことになります。


では、政府は強力なロックダウンに踏み切るのかというと、そんなことはありません。
安倍首相は4月30日、記者団に対して「5月7日からかつての日常に戻ることは困難だ。ある程度の持久戦を覚悟しなければならない」と語りました。
どうやら今のやり方を続けるつもりのようです。
いや、西村新型コロナ担当相は、経済活動の自粛を緩和し、経済活動再開の手順を検討していることを明らかにしました。

専門家会議の目指す方向と西村大臣の目指す方向が逆で、安倍首相はどちらを目指してるのかよくわかりません。
日本は針路の定まらない船みたいなものです。

欧米並みのロックダウンをすると経済がひどい打撃を受け、かといって安易に緩和すると、北海道のように第二波に襲われます。
その中間の道を行くと、安倍首相の言う「持久戦」になりますが、これとても長くは続けられません。
完全にジレンマです。


このジレンマから脱出する道があります。
それは韓国のやり方を学ぶことです。
だいたい日本人は欧米ばかり見ているので、ロックダウンか否かという発想になってしまいます。
韓国はロックダウンせずにウイルス対策を成功させ、最近では1日の感染者が10人前後に抑えられ、4月30日には感染者ゼロを記録しました。

韓国のやり方は、「徹底した検査と徹底した隔離」というものです。
たとえば大邱市では、新興宗教団体の集会で大規模なクラスターが発生しましたが、市当局は信者約1万人全員の検査を1か月以内に終わらせ、検査件数は約10万件に達しました。最終的に市全体で7000人近い感染者が出ましたが、軽症者用の生活治療センターをつくって隔離し、今では感染は抑え込まれ、市の中心部にある西門市場は買い物客でごった返しているということです。

現時点で日本の感染者数は1万4000人程度で、100万人越えのアメリカは別にして、スペイン、イタリア、イギリスは20万人前後ですから、まだまだ少ない数字です。感染者を徹底的に明らかにするという韓国方式はまだ可能なはずです。

「人との接触機会8割削減」という目標は、市中のどこに感染者がいるかわからないという状況が前提です。感染者が特定され、隔離されれば、外出自粛など必要なくなります。


ただ、日本ではPCR検査数がきわめて少ないという問題があります。
日本はオリンピックのためやら医療崩壊を防ぐためやらでPCR検査数を抑えるという初期対応をとり、検査を受けたいのに受けられないという状況が報道されても、安倍応援団は「検査をふやすと医療崩壊が起きる」「陽性とわかっても治療法がないので意味がない」などと言い、韓国がPCR検査数をふやしてドライブスルー方式を考案したりするのをずっとバカにしてきました。

今はさすがにPCR検査数をふやすべきでないという人はいないでしょう。
安倍首相も「PCR検査体制を1日2万件に増やす」と表明しています。

ところが、安倍首相の表明にもかかわらず、PCR検査数の伸びは遅々としたものです。
4月28日時点の数字ですが、OECD36か国において、人口1000人当たり何人がPCR検査を受けたかという数字で、日本は下から2番目です。

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https://www.oecd.org/coronavirus/policy-responses/testing-for-covid-19-a-way-to-lift-confinement-restrictions/

安倍首相が検査数をふやすと言ってもふえないのは、厚労省、国立感染症研究所、専門家会議などの人間が無能だからです(まさか悪質なサボタージュをしているということはないでしょう)。
そして、安倍首相や自民党は、官僚や専門家が無能なとき、なすすべを知りません。

原発事故のとき、菅直人首相は官僚や専門家が全員無能なことを知ると、どなりまくり、外部の専門家を呼んで、なんとか対処しました。
そこが安倍首相と菅首相の決定的な違いです。

安倍首相は無能の乗組員を従えた無能の船長です。
新型コロナウイルスの海を日本丸は漂うだけです。

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5月6日に緊急事態宣言を解除するか否かが焦点になってきました。
これを判断するには、とりあえず外国の状況を把握しておく必要があります。

世界でいちばん新型コロナウイルス対策に失敗している国はアメリカです。
現時点でアメリカの感染者数は約98万人、死亡者数は約5万5000人です。
その次がスペインで、感染者数は約22万人、死亡者数は約2万3000人ですから、アメリカの悪さは際立っています。

アメリカはいち早く2月2日に緊急事態宣言を発令し、中国からの入国を全面的に禁止しました。
アメリカのCDC(疾病予防管理センター)はきわめて強力な組織であるとされ、日本もそれを手本に同じような組織をつくるべきだとよくいわれます。
それでいてこの惨状です。

一方、新型コロナウイルス発祥の国である中国は、現時点で感染者数は約8万8000人、死亡者数は約4600人ですが、最近の感染者数は1日数十人です。
武漢でもロックダウンは解除され、全国的に経済活動も復活しつつあります。

アメリカ対中国でいえば、中国の完全な勝利です。
中国はすべて手探りで対策をしてきて成功し、アメリカは中国のやり方を見ていながら失敗しました。
トランプ大統領は“アメリカワースト”というべき状況にブチ切れて、中国やWHOに当たり散らしています。

もっとも、グローバルな視野で見ると、アメリカばかりが失敗しているとはいえません。
感染者数が多い順にいうと、アメリカのあとはスペイン、イタリア、フランス、ドイツ、イギリスと、ヨーロッパの主要国です。
WHOの調べでは、死亡者の約9割が米欧に集中しているということです。


中国周辺の国はどうかというと、韓国、台湾、ベトナム、モンゴルは感染の抑え込みに成功しています。
韓国はロックダウンせずに感染を抑え込み、今では飲食店も普通に営業しています。台湾は無観客ながらプロ野球が開幕しました。ベトナムはいまだに死者0人ですし、モンゴルの感染者は100人以下です(北朝鮮は0人?)。

ということは、「新型コロナウイルスは欧米で猛威をふるっているが、東アジアではほぼ抑え込まれた」ということです。

これはどういうことかというと、BCG接種で新型コロナウイルスにある程度免疫ができるので、BCG接種を実施している国ではあまり感染が広がらないのだという仮説があります。
その仮説もありそうなのですが、もうひとつの仮説として、東アジアではCOVID-19に似たコロナウイルスによる病気(インフルエンザや風邪など)が流行したことがあり、そのため東アジアではCOVID-19に対する集団免疫がある程度できているのだという考え方もあります。
「週刊現代」5月2・9日合併号で経済産業研究所上席研究員の藤和彦氏もこの説を述べています。
ユーラシア大陸では、東から西に行くほどCOVID-19が猛威をふるうという傾向があるので、この仮説も有力だと思われます(とすると、今後南米やアフリカで猛威をふるうことになります)。


そうすると、日本は東アジアで唯一、感染対策に失敗した国ということになります。
その理由は簡単です。日本は東京オリンピック開催のために感染者を少なく見せようとし、PCR検査数を少なくしたからです。クラスターを追跡するという方針は間違っていないと思いますが、検査数が少ないために見逃したクラスターがあって、クラスターといえない個人から個人への感染もあって、市中感染が拡大し、それがここにきて表面化してきたわけです。

とはいえ、まだ日本の感染者数は約1万3000人、死亡者数は約400人です。
東アジアでは劣等生ですが、欧米と比べると優等生です。

最近、日本は医療崩壊の瀬戸際だと言われますが、おそらく勘違いです。
たとえばニューヨーク州(人口約1900万人)の感染者数は約28万8000人、死亡者数は1万7000人です。
東京都(人口約1400万人)の感染者数は約3900人、死亡者数は約100人です。
ニューヨークは医療崩壊の瀬戸際だと言われますが、今のところ持ちこたえています。
2ケタ少ない東京都で医療崩壊が起きたら、世界の物笑いです。
今、医療崩壊が言われるのは、医師会などが利権のためにあおっているのではないでしょうか。


日本は緊急事態宣言以来、欧米のやり方を真似て“準ロックダウン”ともいうべき状態にあります。
しかし、感染者数、死亡者数を見れば、日本は欧米とはぜんぜん違います。
ちょっと前の韓国と同じような状態です。

日本人は明治維新以来、欧米を崇拝し、アジアを軽蔑し、もっぱら欧米から学んできましたが、こと新型コロナウイルスで参考になるのは、韓国や台湾のやり方です。
“準ロックダウン”みたいなことはやめて、経済活動を続けながら、徹底した検査と徹底した隔離で感染を阻止できるのではないでしょうか。

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(外出自粛中の猫)

緊急事態宣言を受けて、休業要請する範囲について国と都が合意しましたが、その内容がきわめて不可解です。

たとえば百貨店です。
当初、東京都は百貨店にも休業要請する方針と伝えられていましたが、国と都の合意では百貨店は除外されました。
すでにいくつかの百貨店は全面休業を決めていましたが、合意成立によりデパ地下の食料品売場だけ営業再開するところがありました。
百貨店はどこも閑古鳥が鳴いていて、客よりも店員のほうが多いのではないかと思えるぐらいですが、デパ地下の食料品売場は人気で、いつも人がいっぱいです。いちばん感染リスクの高いところを営業するわけです。デパ地下で売られているのは高級品ばかりで、生活必需品ともいえません。

どういうことかと思ったら、朝日新聞の『「なんて勝手」国が百貨店を非難 デパ地下休業で板挟み』という記事にこんなことが書かれていました。

 宣言が出る前の6日夜に公表された東京都の対応案で、要請範囲に百貨店が含まれていたこともあり、百貨店大手は7日に早々と当面の臨時休業を相次ぎ発表した。食料品フロアを含めて全面的に休むところも出た。
 これに、政府側がすぐさま反応した。「なんて勝手なことをしてくれるんだ」。宣言が出た7日夜、大手4社のトップが東京・霞が関の経済産業省の庁舎に呼ばれ、宣言前に当面の休業を決めたことをそう非難された。関係者によると、経産省がこだわっていたのは食料品を売る「デパ地下」だ。

 緊急事態宣言では、各知事が使用制限を要請できる施設に百貨店も含まれている。ただ、食品や医薬品といった生活必需品は除外されており、政府は「『デパ地下』は営業を続けてほしい」(経産省幹部)との立場だった。都心にはタワーマンションに住んでいる人も多くなり、「都心回帰が進み、デパ地下をスーパーのかわりに使う人も多い」(同)との理由からだ。 
https://digital.asahi.com/articles/ASN4B64C6N4BULFA033.html?pn=9

「デパ地下をスーパーのかわりに使う人」とはまさに“上級国民”です。
安倍政権は感染防止よりも上級国民への配慮を優先させていたのです。


居酒屋についても、都は休業要請の対象にしようとしましたが、国は居酒屋の定義があいまいなどとして難色を示し、結局、居酒屋に限らずすべての飲食店は朝5時から夜8時までの営業、アルコールの提供は夜7時までということで合意しました。
まさに足して二で割るという典型的な妥協案です。

飲食店は人と人が接触しやすい場なので、全面的に休業にするか、営業するなら席と席の間隔を開けるとか、店舗の広さに合わせて人数を制限するといった対策が考えられます。
営業時間やアルコール提供の規制は、ウイルスにはまったく関係ないので、意味不明です。

夜8時までというのは、「夜遊びはやめましょう」ということでしょう。
これは「感染防止」ではなくて「道徳」です。


今回の休業要請先リストを見ていると、「遊び」を標的にしていることが見てとれます。
普通の喫茶店は営業できるのに(夜8時まで)、マンガ喫茶とネットカフェは休業要請の対象です。
普通の喫茶店では客同士がしゃべることがありますが、マンガ喫茶やネットカフェでは、客は静かにマンガやネットを見ているだけですから、規制は逆であってもいいはずです。なぜマンガ喫茶やネットカフェが規制の対象になったかというと、マンガやネットという「遊び」があるからとしか考えられません。

ゲームセンターも休業要請されますが、ダンスをしたり太鼓をたたいたりするゲームさえ休止すれば、たいていのゲームは指先だけでやりますから、たいして感染リスクがあるとは思えません。パチンコも同じです。要するに「遊び」だから規制されるのでしょう。

キャバレー、ナイトクラブ、バーも休業要請の対象です。
安倍首相は11日、新型コロナウイルス感染症対策本部で、「夜の繁華街の接客を伴う飲食店の利用自粛」を全国に広げることを表明しましたが、「夜の繁華街」というのもウイルスと関係のないことで、要するに「夜遊び」だからいけないのでしょう。


全国的に青少年健全育成条例というのがあって、夜遊びする青少年はこの条例を根拠に補導されますが、今回の休業要請はそれに似ています。
おとなの夜遊びを取り締まろうというのです。

前から政府の専門家会議が「若者は感染しても気づかないまま動き回って感染を広げている可能性がある」と言って、若者に対して行動を抑制するように求めていましたが、動き回れば感染を広げるのは中高年も同じです。
専門家会議も「感染防止」の中に「青少年健全化」を紛れ込ませています。


要するに政府も専門家も「健康」と「健全」の区別がついていないのです。
そのため「夜遊び」や「若者」を取り締まるほうに行って、肝心の「人と人の接触をへらす」という目的が見えにくくなっています。

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4月7日に緊急事態宣言が出されたものの、休業要請の対象に百貨店、理髪店、ホームセンター、居酒屋などを含めるかどうかで国と都が対立し、発表は10日以降にずれ込みそうです。
これでは「緊急」の意味がありませんし、国民の緊張感もなくなってしまいます。

緊急事態宣言が出された翌日、都心のターミナルはさすがに人出は少なかったようですが、私の地元の商店街(東京都内)はいつもと同じくらいの人出でした。
安倍首相は「人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減」という目標を掲げましたが、とうていむりです。

小池都知事や吉村大阪府知事、日本医師会などは政府に対して早く緊急事態宣言を出すように求めていましたが、彼らは緊急事態宣言を出せば魔法の呪文のように効果があると勘違いしていたのではないでしょうか。

日本人は長期戦とか持久戦が苦手で、短期決戦を好みます。
たぶん国土が狭くて山の多い地形が関係しているのでしょう。国土の広いロシア人とか中国人は持久戦が得意です。
また、日本海海戦と奉天会戦で決着した日露戦争の成功体験も影響しているかもしれません。
太平洋戦争でも日本軍はやたら決戦の機会を求め、すぐにバンザイ突撃をして玉砕しました。

安倍首相は記者会見で「ゴールデンウイークが終わる5月6日までの1か月に限定して」外出自粛をお願いすると言いました。そのため、5月6日に緊急事態宣言が終わると思っている人がいるかもしれません。
しかし、安倍首相はそのあとに「この緊急事態を1か月で脱出するためには、人と人との接触を7割から8割削減することが前提です。これは並大抵のことではありません」と言っています。
つまり目標を達成できなければ、あるいは感染者の増加が止まらなければ、緊急事態宣言は継続されるわけです(いったん解除されてもまたすぐ復活するはずです)。

そういう長期戦を想定すれば、休業要請で国と都が対立しているのは、国に分があります。理髪店やホームセンターの休業を主張する都は、短期決戦で勝利できると思っているのです。


武漢市は4月8日、都市封鎖が解除されました。1月23日から2か月半ぶりです。
徹底した外出禁止、企業活動の全面的停止という最強の都市封鎖をしてもこれだけの時間がかかりました。
しかも、封鎖解除といっても、もとに戻れたわけではありません。今でも外出規制は続いて、街にはあまり人影がありません。

イタリアも強力な外出禁止を1か月続けて、最近ようやく新規感染者数が横ばいになり、ピークに達したといわれています。
しかし、これで終わったわけではなく、これからまだまだ都市封鎖は続くことになります。

中国は感染の封じ込めに成功したようですが、そう単純なことではありません。
山中伸弥教授にインタビューした日経新聞の「コロナ禍はいつ収まるのか 京大・山中氏が出した答え」という記事によると、中国の最近の感染者の状況は次のようなものです。

(中国では)ピーク時は1日に1000人以上の新規感染者が発生していましたが、3月中旬から100人未満となり、下旬には1日の新規感染者数が10人から20人台の日が続いていました。ところが、3月末から再び100人を超える日が増えてきたのです。
中国政府は人民に対して厳しい外出規制を課してきましたが、3月に入ってから状況に応じて都市ごとに規制を緩めました。その結果、週末になると商業施設や観光施設が混雑するようになりました。感染の第2波がやってくるリスクが、ひたひたと高まっているのです。
世界保健機関(WHO)の基準ではウイルスの潜伏期間の2倍の期間、感染者が新たに発生しなければ終息宣言となります。新型コロナウイルスの潜伏期間は2週間とみられていることから、少なくとも4週間、感染者数がゼロにならない限り、ウイルスとの闘いは終わりません。
独裁的な中国共産党をもってしても、感染者数をゼロにするのは至難の業です。21世紀の世界では、人の往来を完全にシャットアウトすることは誰にもできません。
つまり緊急事態宣言を出して感染拡大の第1波を乗り越えられたとしても、新型コロナウイルスを完全に封じ込めるには相当長い期間がかかるのは(残念ながら)間違いありません。山中教授が「1年は続く」と指摘したのは、感染力の極めて高い新型コロナウイルスの本質を見抜いているからです。
もちろん、バイオテクノロジーを駆使すれば、効果的なワクチンや治療薬も開発できるでしょう。ただ、その未来がやってくるには年単位の時間がかかります。それまでの間、私たちは医療崩壊を防ぎながら、何とかしのいでいくしかありません。山中教授は、ウイルスとの闘いをマラソンに例えました。もはや、長期戦で臨むことを覚悟するしかありません。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57816670Y0A400C2000000/
北海道ではいち早く独自に緊急事態宣言を出して、一時は感染を抑え込みましたが、9日の発表では過去最高の18人の感染者が出たということで、またぶり返しています。


私は今の新型インフルエンザ等対策特別措置法による緊急事態宣言では外出自粛要請しかできないので、法律を改正して罰則つきの外出禁止命令を出せるようにするべきだと考えていましたが、そうしたところで長期戦になります。苦しい戦いが長く続くのはたいへんです。
長期戦が可能なようにゆるいやり方をするのが賢明です
ただ、そうすると感染者は増えていきます。


現時点で日本における新型コロナウイルス感染者の数は約5500人です。
日本の人口を計算しやすいように1億1000万人とすると、10万人に5人がかかる病気です。
死亡者は100人をちょっと越えたところで、死亡率は約2%ですから、今のところ10万人に0.1人が死ぬ病気です。
今後、この数字が10倍、さらには100倍になったところで、それほど恐れることはないのではないでしょうか。

ちなみに日本では2018年に9万4654人が肺炎で亡くなっています。


テレビの解説で、「緊急事態宣言をした以上、対策を小出しにするという戦力の逐次投入はやめるべきだ」と語っている人がいました。
短期決戦の勝利があると思っているのです。
小池都知事や安倍首相もそうかもしれません。
“休業補償なき休業”も短期決戦を前提としています。

しかし、この戦いに早い勝利はありません。
長期戦、持久戦に持ち込んで、医療崩壊を防ぎながら特効薬かワクチンの開発を待つというのが正しい戦略です。

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このところ新型コロナウイルス感染者数が増大し、「緊急事態宣言」が出される雲行きです。

しかし、感染者率のもっとも高い東京でも、感染者は1000人をちょっと越えたところです。東京の人口が1千万人強であることを考えると、1万人に1人の割合です。死亡率は数パーセントですから、私自身はまったく脅威に感じません。
脆弱な医療システムに合わせた緊急事態宣言かなと思います。

ただ、感染者数が正確に把握できているかという問題があります。
感染者数の増大は、3月24日にオリンピック延期が決まってから始まったという印象があります。意図的にPCR検査数を増やしたということはないでしょうか。

「新型コロナウイルス国内感染の状況」というサイトから、毎日の新規感染者数のグラフ(約2か月間)と、毎日のPCR検査実施数のグラフ(1か月間)を引用します。

感染者数新規

検査人数

PCR検査数はバラツキが大きくてわかりにくいですが、増大する傾向にはあるものの、オリンピック延期決定後にとくに増えたとはいえないようです。
一方、日々の感染者数は着実に増えているので、「感染が拡大している」ということはいえます(オリンピック延長決定後に急に感染者が増えたような印象があるのは、安倍首相や小池都知事の態度が変わったためかもしれません)。

むしろ問題は、検査数がまだ低い水準にあることです。
世界各国と比べても低すぎます。

正確な感染者数を把握しないまま緊急事態宣言を出すと、困ったことになります。
普通は新規感染者数がへってくれば宣言を解除することになりますが、もともと感染者数を低く抑えていると、ほんとうにへったかどうかわかりません。
つまり緊急事態宣言を出す以上は、感染者数をある程度正しく把握していないといけないのです。

これからしばらくは検査要求に対してキャパいっぱいに応えて検査し、できる限り正しい感染者数を出して、緊急事態宣言はそのあとにするべきだと思います。


緊急事態宣言を出すとどうなるのでしょうか。
都市封鎖、ロックダウンという言葉があります。武漢市では都市封鎖が行われ、その直前には多数の人が武漢市から脱出するという事態がありましたし、イタリア北部からも多数の人が駅に詰めかけ、南部に脱出しようとしました。
一部の都市が汚染された場合は、こうした文字通りの都市封鎖をしなければなりませんが、今の日本は東京だけというわけではないので、文字通りの都市封鎖は無意味です。

もうひとつの都市封鎖の意味は、強力な外出禁止措置です。
たとえばフランスでは、1日1度の買い物や運動や犬の散歩のため以外の外出は禁止され、街角に警官が立っていて、違反者は罰金刑です。

感染防止には人と人が接触する機会をできる限りへらすことですから、外出禁止がいちばん有効です。
多くの商店や飲食店も休業です。武漢では企業活動も停止しましたが、ヨーロッパでは企業はある程度営業をしているようです。生活必需品の物流とライフラインの維持はされます。

しかし、日本の非常事態宣言では法的に外出禁止をすることはできません。
ということは、これまで行われてきた外出自粛要請が続くだけです。
要するにいちばん肝心のことができないのです。
ザル法という言葉がありますが、ザルの真ん中に大きな穴が空いているという法律です。
武漢市で強力な外出禁止措置がとられているのを横目で見ながら、日本の国会では外出禁止のできない欠陥法をつくっていたのです。


ただ、緊急事態宣言が出ると、「政府が法律に基づく緊急事態宣言を出した」という緊張感から、しばらくは外出自粛が広く行われるでしょう。
しかし、長期化すると気がゆるんできて、外出する人が増えてきます。
最初は自粛している人は自粛しない人を非難するでしょう。人は不公平だと思うと、不公平なことをする人に“正義の怒り”を覚えるからです。
しかし、自粛しない人がある程度まで増えると、今度は自分が自粛をやめることで不公平を解消しようとし、“自粛体制”が一気に崩壊するということが考えられます。

これまで自粛要請に素直に従うというのが日本人の“美徳”でしたが、アリの一穴で、これをきっかけに日本人のモラルハザードが進むかもしれません。


国会は新型インフルエンザ等対策特別措置法が欠陥法であることを認めて、緊急事態宣言を出す前に、罰則つきの外出禁止命令が出せるように法律を改正するべきです。

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東京オリンピック延期が決まってから、「安心モード」から「危機モード」へがらりと転換しました。
安倍首相や小池都知事が記者会見して、新型コロナウイルスへの危機感をあおっています。
しかし、現時点で日本の感染者数は2000人弱で、死亡者数は54人です(クルーズ船を除く)。
とても「瀬戸際」だの「緊急事態宣言」だのというレベルではありません。


最近、日本人の危機感が高まっているのは、イタリア、フランス、イギリス、ニューヨークなどで都市封鎖が行われているという海外のニュースに影響されているからでしょう。
たとえばイタリアでは全土で外出規制措置が取られ、生活必需品の買い物と通院の場合だけ外出が認められ、外出理由を書いた自己申告書を携行し、不要の外出と見なされた場合は罰金、逮捕もあるということです。買い物は一人で行かなければなりません。二人、三人がいっしょだと、それだけ感染の可能性が高いからです。店は入店制限されているので、行列しなければなりませんし、レジ前には床にテープが貼られて、人と人が接近しないようになっています。
フランス、イギリスも似たような外出規制が行われています。

こうしたニュースに毎日接していると、日本もそうなるのではないかという危機感を持っても不思議ではありません。
しかし、それらの国の感染者数は日本とまったく違います。

「個人投資家ニュース」というサイトに、世界各国の最新の感染者数、死亡者数が一覧となって出ています。
それによると、最近感染が沈静化している中国を別にすると、現時点(3月31日)で感染者数のトップ10はこのようになっています。

アメリカ  143,836人
 イタリア  97,689人
 スペイン  85,195人
 ドイツ  63,929人
 イラン  41,495人
 フランス  40,751人
 イギリス  22,141人
 スイス  15,526人
 ベルギー  11,899人
 オランダ  11,814人
 
日本の感染者数は2000人ほどですから、ほとんどヒトケタ以上違います。

それから、これらの国は、イランを除くとすべて“西側先進国”です。
どうしてこのような偏りが生じるのかというと、BCGワクチンの接種によるという説があります。日本や韓国、ソ連東欧圏ではずっとBCG接種が行われていましたが、結核のリスクがほとんどなくなった西欧ではBCG接種があまり行われていなかったそうです。
結核菌に対する免疫が新型コロナウイルスに対してもある程度有効だということです。

この説は今のところ主にネットで言われているので、いまいち信ぴょう性がありませんが、「Bloomberg」も「BCGワクチン、豪州で治験-新型コロナへの有効性を検証」という記事を書いていて、けっこう有力かもしれません。
もしBCGが有効なら、日本では感染爆発は起こりにくいことになります。

BCGのことはともかく、日本人にとって西欧諸国は大きな存在です。日本人が「国際社会」というとき、それはほとんど西欧諸国のことです。
とりわけアメリカ、イギリス、フランス、ドイツのことは大きく報道されるので、大きな影響を受けがちです。
冷静に考えれば、それらの国と日本では感染者数がヒトケタ以上違うので、日本が同じように都市封鎖するのは愚かなことです。

ちなみにインドは3月25日、13億人を対象に21日間の外出禁止令を出して全土を封鎖しました。ニュースで警官が違反者を棒で叩いたり、罰としてスクワットをさせたりする映像を見た人もいるでしょう。
ところが、このときインドでの感染者数は500人余りでしたし、現時点でも1000人ちょっとです。
おそらくイギリスなどの影響を受けすぎて、パニックになって都市封鎖の判断をしてしまったものと思われます。

今、日本が「緊急事態宣言」の議論をしているのも同じようなものです。

「緊急事態宣言」というと、なにかすごいことが起こりそうですが、日本の「緊急事態宣言」では罰則のある外出禁止令は出せません。ですから、今までと同じ外出自粛要請とイベント自粛要請が続くだけです(強制的な土地収用や物資の保管命令などはできるようになります)。

日本が欧米の真似をするのも、インドの真似をするのも愚かなことです。

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