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色彩が人間の心理に影響を与えることは知られていて、いろいろなことに応用されていますが、刑務所の部屋をピンク色にすると、囚人の攻撃性が低下し、おとなしくなるという心理学研究が発表されました。

「牢屋の壁をピンクに塗ると囚人の攻撃性が下がる」画期的なはずのアイディアがなぜか物議に

この記事から一部を引用します。

この「沈静のピンク」はスイスの10の刑務所で採用され、4年後には刑務官らによって囚人に特筆すべき暴力性の低減が見られたことが報告されました。Späth博士は同時により早いリラックス効果もあることを指摘しています。

この「沈静のピンク」はスイスを飛び出してドイツの複数の刑務所でも採用されているとのこと。Späth博士は空港のセキュリティエリアや学校、精神病院でも採用すべきだと提案しています。

ただ、スイスの元受刑者は「まるで『小さな女の子の寝室』のような牢屋に入れられるのは極めて屈辱的だった」と語ったということで、受刑者にとっていいことなのかという疑問が記事には書かれています。

私が感じた疑問は、刑務所にいる間は攻撃性が低下しても、刑務所を出たら元に戻るのではないかということです。そうであれば、看守がちょっと楽ができるだけのことで、たいした意味はありません。

ピンク色が人間の攻撃性を低下させるなら、むしろ刑務所以外での活用が本線でしょう。
記事には、空港のセキュリティエリア、学校、精神病院が例として挙げられていますが、方向性が間違っています。
とくに学校と精神病院を並べているところなど、この心理学博士の思想が心配です。
ミシェル・フーコーが刑務所、学校、病院、兵営、工場を一望監視施設として管理主義の観点から論じたことが想起されます。

攻撃性を低下させる必要のある人間は誰かというと、刑務所や学校の中にはいません。いるのはたとえばホワイトハウスです。
ホワイトハウスをピンクハウスにするべきです。建物の外観だけでなく内装もピンク色にします。
ロシアのクレムリンとか中国の国務院とかも同じです。
国家の指導者のいる場所をピンク色にすると、世界がより平和になります。

日本の場合は、国会議事堂内部が暗く古色蒼然とした雰囲気で、しかも絨毯が鬱血を想像させるような赤黒さで、議員の心理にも悪影響があるに違いありません。
内装をピンク色にするだけでなく、ガラス張りの明るい雰囲気で、中庭の緑が眺められるような建物にすれば、日本の政治もよくなるのではないでしょうか。

また、政治家などが使う公用車もたいていは黒塗りですが、これもピンク色にするべきです。

暴力的な映画は年齢制限がかけられて、子どもは見れないようになっていますが、これも方向性が違います。
暴力的な映画は政治家や国家の指導者にこそ見せないようにするべきです。
戦争映画はたいてい、主人公の側の軍隊が敵兵をバタバタと倒して勝利することになっていますが、国の指導者がこんなものを見て勘違いすると危険です。

ユネスコ憲章の前文には、「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」とありますが、ユネスコは教育の機関でもあるので、これは子どもの心に平和のとりでを築くという意味だと理解されています。
しかし、これも方向性が違います。子どもはおとなを手本にして成長するので、おとなを変えずに子どもだけ変えようとしてもうまくいきません。おとなを変えるべきです。


とはいえ、おとなを変えるのもたいへんなことです。
ホワイトハウスをピンクハウスにするのは、ネズミがネコの首に鈴をつけるのに似ています。
しかし、正しい方向性さえ認識していれば、少しずつでも世界をよくしていくことができます。