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第26回参院選が6月22日に公示されました。

選挙において若者の投票率が低いので、「若者は投票に行くべきだ」とか「若者はもっと政治に関心を持つべきだ」という呼びかけが行われますが、こういう発想は根本的に間違っています。
若者の活字離れやテレビ離れに対して、「若者はもっと本を読むべきだ」とか「若者はもっとテレビを見るべきだ」と呼びかけるのと同じで、なんの解決にもなりません。

投票率を上げたいなら、政治をおもしろくすることです。
手っ取り早いのがエンターテインメントの要素を入れることです。

れいわ新選組はそのへんをうまくやっています。
「れいわ景気爆上げダンスパーティ」と称して、バンド演奏と、やぐらを組んだ上での盆踊りで駅前に人を集め、山本太郎候補も浴衣姿で演説しています。

自分の主張が正しいと思うなら、それを世に広めるために工夫をするのは当然のことです。
自由民権運動のときは、川上音二郎が「オッペケペー節」に乗せて自由民権の主張をしました。

NHK党も暴露系YouTuberを比例区に立候補させて、政見放送のときになにか暴露するのではないかという期待を集めていますし、黒川敦彦幹事長はNHKの「日曜討論」において、「安倍晋三元首相は統一教会の集会に参加していたし、高市早苗氏も統一教会に関与していた」「自民党はCIAから資金をもらっていた。これはアメリカの公文書ではっきりしている」と発言し、これはマスコミにはほとんど取り上げられませんでしたが、ネットでは盛り上がりました。


れいわ新選組もNHK党も新興政党で弱小政党です。こういう政党は有権者にアピールするのに必死です。
れいわ新選組の「消費税廃止」という公約は、疑問に思う人も多いでしょうが、エッジが立っていてアピールするのは確かです。
NHK党の「NHK受信料を払わない国民を守る」という主張は、親元を離れて一人暮らしを始めた若者にとってNHK受信料は切実な問題ですから、これも若者には大いにアピールしているのでしょう。

既成政党の旧態依然としたやり方が日本の政治を沈滞させて、若者の政治離れを招いているのです。


日本の政治を活性化させて、若者の関心を引くようにするには、れいわ新選組やNHK党みたいなベンチャー政党がどんどん出てくるようにすればいいのです。
ところが、日本では逆の方向に進んできました。
二大政党制を目指してきたのです。
中選挙区制を廃止し、ドイツ式の比例代表制を併用しつつも基本はアメリカやイギリスのような小選挙区制にしました。
「小選挙区制にすれば二大政党制になる」という理屈なのですが、そんなはずがありません。

アメリカやイギリスが二大政党制になるのは、おそらく一神教の二元論的な世界観が国民に根付いているからでしょう。
日本のような国が小選挙区制にすれば、みんなが「寄らば大樹の陰」と思うので、「一大政党制」になってしまいます。
いったんそうなれば、政権担当経験のない弱小野党に政権は任せられないので、「一大政党制」が「一党独裁」になってしまいます(今そうなりつつあります)。


今は「多様性(ダイバーシティ)」のたいせつさが言われる時代です。
日本は逆の方向に進んできたわけです。
日本人は米英を民主主義国のお手本と思っていて、真似すればいいと思ったのでしょう。
それと、ピラミッド型の中央集権国家を理想と思う人が多かったのでしょう。

中央集権国家か多様性のある国家か――というのは、大きな価値観の対立です。

これは現代思想ではドゥルーズとガタリが『千のプラトー』で述べたことですが、「ツリーかリゾームか」という言葉で知られてきました。
これまでの西欧の価値観は、中心のあるツリー型を理想としてきたが、これからは中心のないリゾーム(地下茎)型を目指すべきだというのがドゥルーズとガタリの思想です。
中央集権国家が有利なのは戦争のときぐらいです。多様性のある国家のほうが時代の変化に対応しやすく、経済力、文化力、科学技術力のどれにおいても有利なはずです。


ともかく、日本の政治は多様性を排除する方向に進んできました。
政党交付金の対象となる政党は、所属国会議員が5人以上で、全国の得票率が2%以上とされるので(政党要件)、小さな政党がだんだん大きくなっていくというのが困難です。
また、立候補の供託金が、1人当たり小選挙区で300万円、比例区で600万円と巨額で、得票数が少ないと没収されてしまうので、この点でも新興政党や新人候補はきわめて出にくくなっています。
公職選挙法による選挙運動の制約もきわめて複雑で、経験のある人に仕切ってもらわないで選挙運動をするのは困難です。

要するに既成政党と現職議員が新興政党と新人候補を排除するために選挙制度を変えてきたのです。
その結果、既成政党と現職議員が現状にあぐらをかいて(野党議員もそれなりに恵まれています)、日本の政治はつまらなくなったのです。
若い人が興味を持たないのは当然といえます。

若い人を啓蒙して政治に興味を持たせようというのは方向性が違っていて、選挙制度を変えるのが正しいやり方です。
しかし、現職議員たちは既得権益を守るために変えたがらないでしょうから、これはむずかしい問題です。

ただ、最近選挙権年齢が18歳以上に引き下げられました。これはよい変化です。
引き下げられたのは選挙権だけで、被選挙権はそのままで、衆議院25歳以上、参議院30歳以上です。これは中途半端な変え方です。
ここは被選挙権も18歳以上に引き下げるべきです。
18歳の候補者が選挙に出れば、若い世代のための政策が出てくるでしょうし、若者も政治に興味を持つようになるはずです。
世代間の考えの違いというのは意外と大きいので、若い世代が政治に参加すると議論が活発化するのは確実ですし、日本の政治もよい方向に変わるに違いありません。


なお、私の考えは、選挙権の年齢制限をなくし、0歳から選挙権も被選挙権も持てるようにするというものです。
そうすれば、ネットの有名人である少年革命家ゆたぼん(13歳)さんも選挙に出られますし、中学生が地方議会の議員になって、校則やら給食やらについて議論するということも起こりえます。若者はたいてい戦争反対ですから、安全保障政策も変わるはずです。

老人国家になった日本を若返らせるいちばんいい方法です。