村田基の逆転日記

親子関係から国際関係までを把握する統一理論がここに

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トランプ大統領は国連総会で演説し、「アメリカと同盟国を守らなければならないとき、北朝鮮を完全に壊滅するほか選択肢はない」と語りましたが、この手の過激表現はトランプ大統領のいつもの通りです。
それよりも安倍首相の演説にびっくりです。
 
北朝鮮制裁、全加盟国が行動を 安倍首相国連演説<要旨>
 
安倍首相は北朝鮮のことを「史上最も確信的な破壊者」と呼び、「対話による問題解決の試みは一再ならず、無に帰した」「必要なのは対話ではなく圧力だ」と軍事力行使をにおわせました。
 
それにしても、演説内容がでたらめです。「我々が営々続けてきた軍縮の努力を、北朝鮮は一笑に付そうとしている」と言っていますが、安倍政権は軍縮どころか軍拡を営々と続けてきて、核兵器禁止条約も無視しています。
正しい表現は「我々が営々続けてきた軍縮させる努力」です。自分は軍拡して、向こうは軍縮させようというのですから、うまくいくわけありません。
 
安倍首相は演説の最後にこう言っています。
 
北朝鮮はアジア・太平洋の成長圏に隣接し、立地条件に恵まれている。勤勉な労働力、地下資源を活用するなら、経済を飛躍的に伸ばし、民生を改善する道があり得る。そこにこそ、北朝鮮の明るい未来はある。
 
まるで北朝鮮のことを思いやっているようですが、北朝鮮がいちばん求めている安全保障のことを無視しています。これで北朝鮮が核放棄するわけがありません。
 
安倍首相はまた、「すべての加盟国による行動」や「国際社会の連帯」を訴えていますが、肝心の韓国との連帯ができていません。
韓国の文在寅大統領はやはり国連総会の演説で、「突発的な軍事衝突で平和が破壊されないよう、『安定した方法』で対処する必要がある」と訴え、「北朝鮮の崩壊を望まない」とも言いました。
安倍首相はまず文在寅大統領と会って意思統一をはかるべきですが、なにもやっていません。
 
北朝鮮の核問題の最大の当事者は北朝鮮であり、その次は韓国です。
安倍首相はこの二国の意向をまったく無視して北朝鮮の核問題を語っているのです。
 
やはりここには、慰安婦問題を見てもわかるように、安倍首相に限らず日本の保守派がおしなべて持っている韓国人・朝鮮人に対する差別意識があると思います。
安倍首相は、朝鮮半島で戦争が起こって人々が悲惨な状況になることをまったく気にしていないのです。
 
一方、安倍首相はアメリカのことは過度に気にして、トランプ大統領の意向を忖度してふるまっています。
いや、言葉は過激でも腰の定まっていないトランプ大統領を安倍首相が戦争へと引っ張っているような気もします。
 
メルケル首相やマクロン大統領が外交交渉による解決を訴えているのと比べても、安倍首相の態度は異様です。
 
日本はノドンの射程内にあり、北朝鮮は核兵器を小型化してノドンに搭載可能にしたとされています。
安倍首相は、アメリカに頼ってさえいれば日本は攻撃されないと信じているのでしょうか。 

北朝鮮がICBMの発射に成功してから、日本はずっと大騒ぎです。
しかし、ICBMは日本の上を飛び越えていくものですから、日本にとっては脅威ではありません。
日米の一体化があまりにも進みすぎて、日本人はアメリカへの脅威と日本への脅威が区別できなくなっているのでしょうか。
 
安倍首相はプーチン大統領に会って、北朝鮮への制裁に協力してくれるように頼みましたが、プーチン大統領は協力する気はなさそうです。
その理由についてプーチン大統領は、BRICS首脳会議後の9月5日の記者会見で「我々を北朝鮮と同じリストに入れた後、制裁への支援を求めるのはばかげている」と述べました。
つまりアメリカはウクライナ問題でロシアに経済制裁を行っているのに北朝鮮への制裁で協力を求めるのはばかげているというのです。
 
日本もアメリカに要請されてロシアに経済制裁を行っています。それでいて北方領土返還交渉をしているのですから、これもばかげています。
 
北朝鮮のICBMはアメリカを標的にしたものですから、アメリカ以外の国にとってはどうでもいいことです。ロシアも中国も表面的にアメリカに合わせているだけです。
 
ですから、北朝鮮への制裁が功を奏するはずはありません。
 
結局、アメリカは北朝鮮の核搭載ICBMの配備を認めることになるはずです(今はまだ技術的に完成していませんが、時間の問題です)
そうなったからといって、アメリカにとってはロシア、中国に北朝鮮が加わるだけのことです。
 
日本にとっても同じです。
というか、すでに日本は北朝鮮の核搭載ミサイルの脅威にさらされているのでした。
 
北朝鮮がノドンを試射して日本が騒いでいたころは、北朝鮮はまだ核爆弾の小型化に成功していませんでした。しかし、現在は小型化に成功しているとされます。
 
 
「ノドンは核弾頭搭載可能」 韓国統一相
ソウル=牧野愛博 20172142003
 韓国の洪容杓(ホンヨンピョ)統一相は14日の国会答弁で、北朝鮮の中距離弾道ミサイル「ノドン」(射程1300キロ)の核搭載能力について「可能だと考えている」と語った。ノドンは日本のほぼ全域を射程に収める。韓国は国防白書などで「核兵器の小型化能力は相当な水準に達している」としていた。
(後略)
 
 
北、核兵器13~30個保有か 「ノドン」搭載レベルに弾頭小型化 米研究機関が分析 
2017.4.2919:00
【ワシントン=黒瀬悦成】米政策研究機関「科学国際安全保障研究所」(ISIS)は28日、北朝鮮が核兵器を13~30個保有している可能性があるとの分析結果を発表した。このうちプルトニウムを原料に製造された核兵器数発が日本を射程に収める中距離弾道ミサイル「ノドン」に搭載できるほど小型化されたとみられるとしている。
(後略)
 
 
ですから日本としては、これらの記事が出たときに、北朝鮮の核ミサイルの脅威にさらされたとして騒がなければならなかったのですが、なんのイベントもなかったので騒ぐきっかけがなく、スルーしてしまいました。
 
ともかく、日本はすでに北朝鮮の核ミサイルの脅威に直面しているのですから、ICBMの発射に騒ぐのはますますおかしいことになります。
 
もちろん北朝鮮の核保有は好ましいことではありませんが、北朝鮮も自分を守る権利を持っています。
そういう世界に生きているということを認識して、世界を根本的に平和なものに変えていくしかありません。 

9月3日、北朝鮮が地下核実験をしました。北朝鮮はICBM搭載可能な水素爆弾の実験に成功したと発表しています。
 
北朝鮮が核実験やミサイル発射をするたびに、日本では「挑発」だといって騒ぎになりますが、北朝鮮は「挑発」をしているつもりはないでしょう。ただミサイルと核兵器の実験をしているだけです。
そして、その目的はなにかというと、核抑止力を持つこと、つまり核の傘をつくることです。
 
北朝鮮のような貧しい国が自力で核の傘をつくろうとするのは愚かなことですし、他国にとっては好ましくありませんから、国際的に非難されるのは当然です。
しかし、アメリカと日本には北朝鮮を批判する資格はありません。
アメリカと日本は、自分は核の傘に守られていて、北朝鮮が同じことをしようとすると非難しているわけですから、あまりにも自分勝手です。
 
北朝鮮非難の国連決議はアメリカ主導でできますが、中国やロシアはもちろん、ヨーロッパやアジアの国の多くも、内心はアメリカと日本の自分勝手な主張にうんざりしているはずです。
 
日本では北朝鮮関係の報道は、北朝鮮の報道機関などの極端に過激な言葉ばかりが取り上げられるので、北朝鮮は頭のおかしな国というイメージになっていますが、安全保障についてはまともな戦略を持っています。
 
アメリカは強大な軍事力があるので、いつでも北朝鮮を攻撃できます。
それに対して北朝鮮は、長距離砲とロケット砲でソウルを「火の海」にする能力をもって抑止力としてきましたが、それでは不十分なので、アメリカ本土に届く核搭載ICBMを保有することで安全保障をしようとしているのです。
これは合理的な行動なので、やめさせる理屈がありません。
 
双方が相手を致命的に破壊できる核攻撃力を持つことで戦争を抑止できるというのが核抑止理論です。
今は、いつアメリカが北朝鮮を攻撃するかわからないので、平和とはいえません。朝鮮半島で戦争が起これば、日本も大きな被害を受けます。
北朝鮮が核ICBMを保有すればアメリカの攻撃は封じられ、世界は“平和”になります。
これは日本としても歓迎するべきことかもしれません。
 
 
以上に述べたことは核抑止理論を前提としています。
私は核抑止理論を信じているわけではありませんが、アメリカの核の傘を頼る日本政府は核抑止理論を信じているわけですから、北朝鮮を非難するのは理屈に合いません。
 
それにしても、日本政府は北朝鮮に対して制裁と圧力ばかり言っていますが、そんなことで北朝鮮が核を放棄すると思っているとすれば、甘すぎます。
北朝鮮とすれば、一度でも圧力に屈したら、次々と無理難題を突きつけてくると思っているので、絶対に圧力に屈することはありません。
北朝鮮に核放棄させようとするなら、アメリカなり国連なりが北朝鮮の安全を保障する以外にないというのは、わかりきった理屈です。
 

北朝鮮が8月29日に弾道ミサイルを発射し、日本ではJアラートが鳴って大騒ぎでした。
しかし、北朝鮮の脅威を圧倒的に感じているのは韓国です。戦争になればソウルは北朝鮮の長距離砲とロケット砲で「火の海」になります。
ですから、対北朝鮮政策をどうするかは韓国が中心になって決めるのが当然です。
 
韓国の文在寅大統領は8月15日の光復節の演説でこう語りました。
「朝鮮半島での軍事行動は大韓民国だけが決めることができ、誰も大韓民国の同意なく軍事行動を決定できません。政府はすべてを賭けて戦争だけは防ぎます」
 
韓国にとっては当然のことですが、アメリカにとっては困ったことかもしれません。こうはっきり言われると、アメリカが北朝鮮を攻撃することはできないからです。
 
戦争は国連憲章で禁じられています。例外は、自衛権と集団的自衛権の発動の場合だけです。韓国を守るという名目がないと、アメリカは北朝鮮と戦争できない理屈です。
 
考えてみると、少なくとも文在寅大統領のこの演説以降、トランプ大統領は「すべての選択肢がテーブルの上にある」という決まり文句を言っていません。先制攻撃という選択肢がなくなったからでしょう。
 
そうしたところ、安倍首相は8月29日、30日と続けてトランプ大統領と電話会談をしました。
河野外務大臣も29日、ティラーソン国務長官と電話会談をしました。
そして、トランプ大統領は29日、「すべての選択肢がテーブルの上にある」と久しぶりに得意のセリフを言いました。
 
考えるに、アメリカが北朝鮮を先制攻撃する場合は、日本を守るという名目でやるということで、日米両国は話をつけたのではないでしょうか。
29日のミサイル発射で日本が大騒ぎしたのもその一環と考えれば、話がつながります。
 
 
以上はあくまで私の想像ですが、ひたすらアメリカに追随する安倍政権ならありそうなことです。
 
今のところトランプ政権は北朝鮮を攻撃することはないと思いますが、絶対ないとは言いきれません。
日本はアメリカに追随するのではなくむしろ韓国に追随して、戦争回避に努めるのが正しい方向です。
 

お笑いコンビ・ウーマンラッシュアワーの村本大輔氏が終戦記念日に「僕は国よりも自分のことが好きなので絶対に戦争が起きても行きません」とツイートしたことが話題になっています。
 
そもそもは村本氏が811日の「朝まで生テレビ!」に初出演し、司会の田原総一朗氏が「国民には国を守る義務があると思う」と発言したことに対し、村本氏が「絶対に戦争に行くことがない年寄りに言われてもピンともこないわけですよ」と反論する場面があり、それを踏まえてのツイートです。そのときよりも考えを深めたものと思われます。
 
「国より自分が好きなので戦争に行きません」というのは最強の論理です。「好き嫌い」を言う人間を論理的に説得することはできないからです。
「好き」を「愛する」に換えて「国より自分を愛しているので戦争に行きません」と言えば、「愛国心」にも勝てます。
「国を守る義務はある」と言われても、「義務より自分の命のほうがたいせつです」と言えばいいわけです。
 
 
しかし、戦争主義者にとってはこんな言い分が通ると都合が悪いので、いろいろ反論がなされています。「なぜ『戦場へ行く』という発想になるのか。今住んでいる町が戦場になると思わないのか」とか「家族や故郷を守ろうと思わないのか」といった具合です。
 
しかし、こんなことを言う人の戦争のイメージはどんなものでしょうか。イラクの民兵組織みたいなことを考えているのでしょうか。
弥生時代には外敵を防ぐ環濠集落があって、そのころなら家族や共同体のために戦いました。しかし、武士の時代になると、武士は自分の領地のために戦ったので、郷里や共同体のために戦ったのではありません。西洋の騎士も同じで、戦争は基本的に傭兵がするものでした。
近代国民国家では、国民は国家のために戦います。自衛隊に入っても、自分の故郷防衛の任務につくなんてことは、奇跡でもない限りありません。むしろ家族を置いてどこかへ行くわけで、しかも死んでしまう可能性があるので、家族を守りたければ自衛隊に入ってはだめです。
 
戦争に負ければ家族が守れないから戦争に行くべきだという意見もあります。
しかし、1人の人間が軍隊に入っても、たとえば10万人の軍隊であれば、10万分の1の戦力強化にしかなりません。いや、今の自衛隊ならイージス艦や戦闘機の性能などが戦力の大きい要素を占め、上層部の作戦指揮能力も重要ですから、1兵卒の戦力が勝敗を左右するなどということはほとんどありません。
 
つまり自分と家族の幸せを考えれば、軍隊に入って戦争に行くという選択肢はありません。
 
 
したがって、個人が戦争に行くには非合理的な理由が必要です。
昔の日本は天皇を神格化して、天皇のために戦うという理由をつけました。
今の日本は、国旗国歌、靖国神社、教育勅語などを活用して、国家そのものを神格化しようとしています。
 
誰であれ自分の生き方としては、戦争に行くという選択肢はありません。
しかし、国家規模で考えると、他人を戦争に行かして自分は戦勝国の国民として利益を得るという選択肢があります。冒頭の田原氏の主張がそうです。安倍首相などもそう考えているに違いありません。
戦いは国と国だけではなく、国内の個人と個人でも行われているということを認識して、だまされないようにしないといけません。
 
 
ところで、村本氏は「ファンの女の子に手を出した」というような自分のゲスぶりをさらして笑いを取るという特殊な芸風で、さまざまな問題発言をするので“炎上芸”とも言われています。
「国より自分が好きなので戦争に行きません」というのも炎上覚悟の勇気ある発言です。
平和主義者は戦いを好まないので、「憲法9条を守れ」というような守りの姿勢になりがちですが、平和を守るにはこのように戦う姿勢も必要です。
 

堀江貴文氏がヒトラーの絵が描かれたTシャツを着てNHKの番組「ごごナマ」に出演し、騒ぎになっています。
 
その日、たまたま私はめったに見ない「ごごナマ」にチャンネルを合わせ、ホリエモンが出ているなと思い、それよりも船越英一郎氏がなにごともなさそうな顔で司会をしているのに驚きました。そして、ホリエモンが着ているTシャツに、どう見てもヒトラーとしか思えない絵が描かれているのが気になりました。
ただ、その絵の横になにやら文字が見えます。しかし、Tシャツがよじれて、ホリエモンの腹も出ているので、なんと書かれているのか読めません。ヒトラーの顔が描かれただけのTシャツなら、さすがにNHKのスタッフが止めるはずです。なんという文字が書かれているのか気になりましたが、そのときは確かめる前にチャンネルを変えてしまいました。
 
その後、このTシャツのことが騒ぎになり、ヒトラーが「NO WAR」と叫んでいる絵だということがわかりました。
 
そのTシャツの写真入りの記事はこちら。
 
ホリエモンがヒトラーTシャツ着用でNHKが謝罪⇒堀江氏は「頭悪いな」 船越英一郎司会の「ごごナマ」出演
 
NHKは謝罪しましたが、ホリエモンは謝罪していません。
ホリエモンは、このTシャツは反戦のメッセージだと主張しています。この主張は正当でしょうか。
 
 
まず言えるのは、絵と文字では、絵のほうがメッセージ性が強いということです。誰でも「NO WAR」の文字よりもヒトラーの顔のほうが印象づけられます。
 
それから、ヒトラーは実際に「平和」や「戦争は望まない」ということを叫んでいました。
そもそもどんな国の指導者も「戦争を望む」とは言いません。
そのことは、このサイトにも書いてあります。
 
戦争において、国家は必ず国民に嘘を付く
ヒトラーの演説でも「平和」を連呼していた
 
ですから、「NO WARと叫ぶヒトラー」の絵は、実際のヒトラーを描いているだけなので、反戦メッセージにはなりません。
 
その絵にメッセージ性を持たせようとしたら、「NO WARと叫ぶやつを信用するな」といった言葉をつけなければなりません。
あるいは、「NO WARと叫ぶヒトラー」の絵と「積極的平和主義と叫ぶ安倍首相」の絵を並べるという手もあります。
 
ホリエモンはツイッターで「どっからどう見ても平和を祈念しているメッセージTシャツにしか見えないだろこれ笑」と書いていますが、平和を祈念する人はヒトラーの絵は使いません。
ガンジーがNO WARと叫んでいる絵なら平和のメッセージになりますが、ヒトラーの言葉では信用できません(ホリエモンは信用できるのでしょうか)。
このTシャツを着たホリエモンは、「ヒトラーは平和を望むよい人間だった」と訴えようとしているヒトラー崇拝者だと思われるでしょう。
 
実際のところはどうかというと、ホリエモンは新自由主義的で、弱肉強食を肯定するような発言を繰り返しています。
それに、2015年に「我が闘争」(幻冬舎刊)という本を出しています。
やっぱりホリエモンはヒトラー崇拝者でした。
 

ヒアリが5月に神戸港で見つかって以降、各地の港だけでなく内陸部でも見つかり、女王アリも3匹見つかっています。水際での撃退は失敗に終わるかもしれません。
 
ヒアリは毒性が強いとされますが、毎日新聞の記事によると、「被害が深刻な米国では年間1000万人以上が刺される。このうち8万人が、体が毒に過剰反応し呼吸困難や血圧低下などが急速に表れるアナフィラキシーショックを引き起こす。年間約100人が死亡しているとのデータもある」ということです。
 
年間100人の死亡というとたいへんなようですが、1000万人以上が刺されているので10万人に1人という致死率ですから、たいしたことはないとも言えます。
 
外来種に対しては、最初のうち過剰な危機感を抱きがちです。1995年に大阪府でセアカゴケグモが発見され、危険な毒グモがやってきたということでけっこう騒がれました。しかし、たいした被害もなくて、現在では42都道府県で確認されているのですが、ほとんど忘れられています。
 
環境省や国土交通省はこれからも水際での対策を強化する方針ですが、失敗に終わると、否応なくヒアリと共存していかなければなりません。
これまで駆除を目指していたのが受容へと180度転換するのですから、発想の切り替えがたいへんです。
 
 
自然界が相手だと、受け入れざるをえませんが、人間界のことだとなかなか納得がいきません。
たとえば北朝鮮の核兵器とミサイルです。
今となっては、北朝鮮が核ミサイル開発を諦めるということは、まったくありそうにありません。
かといって、アメリカが武力行使をして北の体制を転覆させるとなると、韓国や日本がたいへんな被害を受けますし、アメリカ軍も損害を受けます。それに、「北が核開発をやめないから攻撃したと」という理屈を国際社会が受け入れるかという問題もあります。
 
北の核兵器の“駆除”に失敗したのですから、受け入れて共存を目指すしかありません。
しかし、今は日本もアメリカも納得がいかなくて、ジタバタしている状況です。
 
 
対テロ戦争でも同じようなことが言えます。
どう考えても、今の状況はテロの“駆除”に失敗しています。
ISという“巣”をひとつつぶすことはできるかもしれませんが、それでテロがなくなるわけではありません。
 
北朝鮮の核といい、イスラム系のテロといい、アメリカの戦略は根本的に間違っています。
おそらくアメリカは、アメリカ先住民を“駆除”したという成功体験から、“駆除”一本やりの戦略から転換できなくなっているのでしょう。
 
人類は毒虫とも共存していかなければなりませんし、北朝鮮のような独裁体制ともイスラム過激派とも共存していかなければなりません。当たり前のことです。
 

 【追記】
「アメリカで年間100人以上死亡」というのは環境省のパンフレットにも載っているのですが、海外での死亡例は確認できなかったとして、この記述は削除されました。山本公一環境相が7月18日の会見で明らかにしました。

さまざまな問題を引き起こしている稲田朋美防衛相が今度は、九州北部の豪雨で自衛隊が捜索救助活動に当たっているときに政務で約1時間防衛省を離れたことで、また問題を引き起こしています。
反安倍派が批判するのは当然ですが、今回は読売新聞、産経新聞などの保守派からもきびしく批判されています。
 
実際のところは、稲田防衛相がその場にいなかったところでとくに問題はないでしょう。しかし、戦における指揮官はその存在感がだいじです。戦いが劣勢になったり、思いがけない事態が起こったりしたとき、大将が本陣の真ん中にどっしり構えて、動じない姿勢を見せることもひとつの役割です。
稲田防衛相は「15分程度で戻れるところにいた」とか「食事せずに戻った」とか弁解をしていますが、そういう問題ではありません。
軍事を重視する保守派からすれば、稲田防衛相は指揮官の資質がないとして批判するのは当然です。
 
 
では、安倍首相はどうでしょうか。
安倍首相は都議選の最終日に秋葉原の街頭で演説しましたが、聴衆から「安倍辞めろ」や「帰れ」コールが起こったのにキレて、聴衆を指さして「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と叫びました。
 
国民を「こんな人たち」呼ばわりするのはけしからんという批判もありますが、「帰れ」コールの聴衆はしばき隊などの「プロの活動家」だから、安倍首相が「こんな人たち」と言ったのは当然だという声もあります。
 
秋葉原街頭といえば、かつては安倍人気で聴衆があふれたこともあります。しかし、今回は安倍首相の演説を盛り上げるのは自民党青年局などの、それこそ「プロの活動家」ぐらいでした。その人気の凋落が根本の問題で、「帰れ」コールをしたのが誰かということは問題ではありません。
 
安倍首相は大将として敵の城の本丸を攻めなければならないときに、出城から出てきた少人数の雑兵をむきになって攻撃したみたいなものです。
当然、指揮官としての資質が疑われます。安倍首相の指揮下の人たちは、これでは勝てないと思ったでしょう。
 
しかし、自民党内から少しは批判の声が上がっていますが、広がりはありません。菅官房長官は安倍首相の発言を擁護していますし、産経新聞はあの聴衆の中にしばき隊が入っていたということを強調しています。
稲田防衛相は批判できても、安倍首相は批判できないということでしょうか。
 
そのため安倍首相はまったく反省していません。
安倍首相は、あの聴衆を「選挙妨害の左翼活動家」とバッシングするフェイスブックに「いいね!」を押していましたし、昭恵夫人も聴衆を「プロの妨害」と表現したフェイスブックに「いいね!」を押していました。
 
ほんとうは安倍首相を応援する人こそ安倍首相に苦言を呈さなければならないのですが、どうやらそういう人は遠ざけられて、周りはイエスマンばかりになっているようです。
 

北朝鮮が7月4日に発射したミサイルはICBMとわかりました。
これまで北朝鮮がミサイルを発射するたびに、挑発だとか牽制だとか、その意図についていろいろな解説が行われてきましたが、実際はなんの意図もなく、ただミサイル開発を続けてきただけなのでしょう。
そのうちさらに長い射程のICBMもでき、搭載可能な小型の核弾頭もできるはずです。
 
こういう事態を倫理学的に考えるとどうなるでしょうか。
 
北朝鮮のような貧しい国が核ミサイルを開発するというのは愚かなことですが、北朝鮮にも自衛権があって、核武装する権利もあります。北朝鮮は核拡散防止条約を脱退しており、法的にやめさせることはできません。国連は非難決議をしますが、国連にも国家の自衛権を侵すことはできないはずです。
 
アメリカや日本は北朝鮮の核開発を非難しますが、これは「俺たちは核武装するが、お前が核武装するのは許さん」という理屈で、これが間違った理屈であることは、子どもでもわかります。
というか、子どものほうがよくわかります。おとなはおかしな理屈をいっぱい知っているので、かえってわからないのです。
 
北朝鮮を非難する人が、安倍政権の防衛費増大やトランプ政権の国防費増大を非難しないのもおかしなことです。両方非難するならわかりますが。
 
ともかく、アメリカや日本が自分勝手な理屈を主張している限り、世界が平和になることはありません。
 
 
とはいえ、各国の国家主権を尊重し、核武装も国家の権利であるとすると、核武装国がどんどんふえていき、最終的に筒井康隆氏の「アフリカの爆弾」みたいなことになるかもしれません。
ちなみに「アフリカの爆弾」というのは、アフリカの原始的な部族までがギガトン級の核爆弾を持ってしまった未来社会を描いたドタバタ小説です。
 
そうなってはいけないということは誰でもわかるので、国連によって国家主権を制限し、核兵器を含む軍備も管理して、最終的に国連軍が各国の安全を保障するという体制に向うことになるはずです(もともとそのために国連はつくられたのです)
 
実際にそうなるかはわかりませんが、「俺たちは核武装するが、お前が核武装するのは許さん」というアメリカや日本の自分勝手な理屈がだめなことは明白です。

アメリカがシリアの空軍施設をトマホークで攻撃したのは、アサド政権が化学兵器を使用したというのが理由です。
朝日新聞は化学兵器で被害にあった民間人の様子をやけに詳しく報道していますが、こういう報道を見ると、逆にあやしく思えてきます。アメリカが戦争を始めるときに謀略はつきもので、メディアもあやつられている可能性があるからです。
 
アサド政権が化学兵器を使ったのが事実だとしても、それがそれほどの“悪”かという問題があります。
大量破壊兵器とされるものには、核兵器と生物化学兵器の2種類があります。生物化学兵器は国際条約で禁止されていますが、核兵器は禁止されていません。核兵器禁止条約案が国連に提出されていますが、アメリカや日本が反対していて、採択のめどが立っていません。
 
化学兵器は容易につくれて大量殺人が可能なことから「貧者の核兵器」とも言われます。先進国は自分たちだけ核兵器を持って、途上国が「貧者の核兵器」を持つのは許さないわけです。
アメリカはアサド政権が化学兵器を使ったのはけしからんと言いながら、自分は核兵器を先に使う権利があると主張しています。
 
 
そもそも国際法というのは先進国に有利にできています。
 
残酷な兵器ということで最初に禁止が議論されたのはダムダム弾です。
ダムダム弾というのは、銃弾の先端に鉛を露出させたもので、体内で銃弾が砕けてダメージを大きくする効果があります。インドのダムダム兵工廠でつくられたのでこの名前があるそうです。最初はイギリス軍が植民地の反乱を鎮圧するために使いましたが、すぐに反乱軍も使うようになります。銃弾の先端に刻みを入れるだけでダムダム弾になるからです。

これは不必要な苦痛を与えるということで、1899年に採択されたハーグ陸戦条約で禁止されました。殺傷力の強い兵器はいっぱいあるのに、なぜこんな原始的なものが禁止されたかというと、これもまた“貧者の兵器”であるからです。
イギリスなど先進国の軍隊は機関銃や大砲などがありますが、植民地の反乱軍にはライフル銃ぐらいしかありません。ダムダム弾の禁止は先進国に有利です。
 
私の父親は元海軍士官で、やたら戦史に詳しい人でした。私は父親から「イギリス軍はダムダム弾に苦しめられたので禁止兵器にした」という話を聞いたことがあります。今回、ネットで調べてみると、「不必要な苦痛を与えるので禁止された」という記述があるだけで、先進国と後進国の関係に言及したものは見つかりませんでしたが、ダムダム弾禁止が先進国に有利な規定であることはまぎれもない事実です。
 
なお、ハーグ陸戦条約には、捕虜としての扱いを受けるには、遠くからでもわかりやすい特殊徽章をつけていなければならない(つまり実質軍服を着ていなければならない)という規定があり、必然的にゲリラやレジスタンスなどは除外されます。これも先進国に有利な規定です。
 
日本のメディアなどは、アサド政権が化学兵器を使用したと鬼の首を取ったように騒いでいます。しかし、シリア人権監視団によると、2011年3月から2016年9月までの内戦による死者の数は約30万人になり、今回のアサド政権軍による化学兵器攻撃による死者は100人程度です。
また、アメリカはハイテク兵器を駆使して多数の戦闘員と民間人を殺していて、ドローンを使った攻撃のように、自分は絶対安全地帯にいて敵だけ殺すということも行われています。これは非難されなくて、化学兵器攻撃だけ非難されるのは果たして公平でしょうか。
 
化学兵器使用は国際法違反だと非難されていますが、今の国際法こそがテロや内戦を生む元凶かもしれません。

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