村田基の逆転日記

進化倫理学の威力を試すブログ

タグ:酒類提供禁止

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西村やすとしオフィシャルサイトより

東京五輪開催目前にして菅政権の迷走ぶりがきわだっています。
東京都はまん延防止等重点措置の継続かと思ったら緊急事態宣言になり、五輪は有観客になるのかと思ったら無観客になり、その挙句に出てきたのが、酒類提供をやめない飲食店に対して「金融機関からも働きかけてもらう」という西村康稔経済再生担当相の発言です。
この発言は大批判されましたが、決して西村大臣の思いつきではありません。むしろ菅政権の重要政策です。

西村大臣は7月8日の記者会見で、酒類提供停止の要請に応じない店舗の情報を金融機関に提供し、金融機関から働きかけてもらうと述べました。
店舗に働きかけるのは行政の仕事です。金融機関にさせる法的根拠がありませんし、金融機関を使って店舗に圧力をかけようという発想は卑劣です(独占禁止法が禁じる「優越的地位の濫用」に当るとも指摘されています)。

この発言が批判されても西村大臣は翌9日午前の記者会見で、「真面目に取り組んでいる事業者との不公平感の解消のためだ」と釈明して、発言は撤回しませんでした。
加藤勝信官房長官も9日午前の記者会見で、西村発言について「金融機関に感染防止策の徹底を呼び掛けていただきたいという趣旨だ」と説明し、発言に問題はないとしていました。

しかし、批判がやまないために、加藤官房長官は9日午後の記者会見で「金融機関などへの働きかけは行わないことにしたと西村担当相から連絡を受けた」と述べて、西村発言は事実上撤回されました。


しかし、西村大臣がやろうとしたのは、金融機関を通じての働きかけだけではありません。
西村大臣は8日の記者会見で、酒類卸業者に対して、酒類提供停止の要請に応じない店舗とは取引を停止するよう要請したと述べました。
つまり酒類提供停止の要請に応じない店舗には、酒類卸業者と金融機関の両方から圧力を加えようとしていたのです。

酒類卸業者への要請は、国税庁からの文書として8日付ですでに出されていて、「酒類販売業者におかれては、飲食店が要請に応じていないことを把握した場合には、当該飲食店との酒類の取引を停止するようお願いします」と書かれています。

2021-07-11
ANNnewsより

酒類卸業者は国税庁の免許が必要な業種ですから、国税庁からの要請は相当な圧力になります。
ただ、これは独禁法違反のような問題はなく、すでに文書化されていたためか、いまだに撤回されていません。

東京都はまん延防止等重点措置から緊急事態宣言に変わりましたが、中身はほとんど変わらず、唯一変わったのが、飲食店の酒類提供が午後7時まで許されていたのが全面禁止になったことです。
ですから、飲食店が禁止の要請に従わず従来通り酒類提供を続ければ、緊急事態宣言の効果はないことになり、感染者の増加も変わらないことになります。
そうするとオリンピック期間中、毎日新規感染者数の増加がニュースになり、オリンピックムードに水を差すことは必定です。

現在、酒類提供は午後7時までという要請を無視して営業を続ける飲食店が増えています。こういう店には緊急事態宣言もあまり効果がないでしょう。緊急事態宣言下でも要請を無視する店は増えてくるかもしれません。
どうして飲食店に酒類提供をやめさせるかということは政府内で議論されたはずです。
そうして出てきたのが、飲食店に卸業者と金融機関のふたつのルートから圧力をかけるという方法です。
裏から手を回すというヤクザみたいな手口で、しかも効果にも疑問がありますが、なんとか飲食店に言うことを聞かせたいという必死さは感じられます。

緊急事態宣言と、飲食店にふたつのルートから圧力をかけるという政策は、一体のものとして実施されました。
当然、菅首相がこの政策を知らないはずありません。
いや、むしろ菅首相の発案ではないかと思われます。
菅首相の得意のやり方だからです。


菅政権は4月ごろからワクチン接種を強力にプッシュし、7月末までに高齢者への接種を完了させるように各自治体に圧力をかけました。
このとき、普通は厚労省が動きそうなものですが、総務省からも働きかけがありました。

群馬県太田市の清水聖義市長のところには総務省の地方交付税課長から電話があり、市長は地方交付税増額の話でもあるのかと期待したら、7月末までにワクチン接種を完了させるようにという話だったということです。市長はこのことを市の広報誌に書いたので、広く知られるところとなりました。

厚労省から言われるより、地方交付税を差配する総務省から言われたほうが、自治体としては重く受け止めざるをえません。
中日新聞の『「7月完了」政権ごり押し 高齢者ワクチン接種、市区町村86%「可能」』という記事によると、これが太田市だけでないことがわかります。
「妙な電話が来ている」。四月二十八日の千葉県内の会合。ワクチン行政を担う厚生労働省ではなく総務省から、首長を指名し、接種完了の前倒しを求めてくることが話題になった。同じ時期、宮城県の自治体職員は「完了が八月以降のところが狙い撃ちされている」と取材に話した。中国地方の県関係者は電話口で「厚労省でなく、うちが動いている意味合いは分かりますね」と言われた。
 関東地方の市長の元にも、総務省の複数の職員から電話が来た。最初、体よく断ると、次には局長から「自治体はわれわれのパートナーだと思っています」と前倒しへの同調を求められた。首長は「まずワクチンを供給して」と、やり返した。

総務省を使って自治体に働きかけるというやり方が、金融機関や酒類卸業者を使って飲食店に働きかけるやり方と同じです。

人の弱みをつく巧妙なやり方ですが、言い換えれば陰湿なやり方です。
こんなことをしていれば、日本全体がモラルのない国になります。


そもそも菅政権の目玉政策であった携帯料金値下げも、総務省が携帯会社に圧力をかけて値下げさせるというものでした。
総務省にも政府にも携帯会社に値下げさせる権限はありません。
携帯料金が不当に高いのであれば、料金表示をわかりやすくするなどして公正な競争を促進する以外に方法はなく、政府が携帯会社に値下げを迫るのは違法行為か、少なくとも不当な圧力です。
こんなやり方をしたのでは、日本の携帯業界は価格決定権が会社ではなく政府にあるということになって、新規参入してくる業者がなくなり、業界の衰退を招きます。

ところが、このやり方がマスコミからも有識者からもほとんど批判されませんでした。
そのため菅首相は勘違いして、やり方をエスカレートさせて、今回の金融機関と酒類卸業者を使って飲食店に不当な圧力をかけるということにいたったのではないかと思われます。


いずれにせよ、飲食店に酒類提供をやめさせることは重要な問題であり、菅首相が関与していないはずはありません。
ところが、菅首相は9日朝、記者から「優越的地位の濫用につながらないか」と問われた際、「西村大臣というのは、そうした主旨での発言というのは絶対にしないと私は思っている」と答えましたが、今のところ菅首相のこの件に関する発言はこれだけです。

西村大臣は各方面からの猛批判にさらされ、辞任、更迭、議員辞職を求める声も上がっています。
しかし、この批判は的外れです。
政治家の失言の場合は、このように個人が批判されますが、今回は政府の政策の問題なので、批判されるのは西村大臣ではなく政府です(西村大臣は記者会見で発表する役回りだっただけです)。
もちろん政府の最終責任は首相にあります。
西村大臣の後ろに隠れている菅首相こそ批判されるべきです。

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菅義偉首相は5月7日の記者会見で、11日までの予定だった緊急事態宣言を31日まで延長すると表明しました。
菅首相は「短期集中」という言葉がお気に入りだったようですが、短期だから集中できるというものでもありません。
そもそも感染減少が目的なのですから、1日の新規感染者数何人以下とか病床使用率何%以下という目標を決めて、それを達成すれば解除とするべきなのに、そうした目標や基準はなにもなく、解除の日付けだけ決めるというのが根本的に間違っています。

今回、31日まで延長と決まりましたが、この日付けも無意味です。
したがって、今後の展開は、感染状況を見て各自が判断しなければなりません。


まん延防止等重点措置が4月5日から大阪・兵庫・宮城で始まり、12日から東京・京都・沖縄に拡大され、25日からは非常事態宣言が東京・大阪・京都・兵庫に発令されて現在に至りますが、感染は抑制されるどころか、逆に拡大する傾向が見られます。
連休の反動ということも考えなければいけませんが、新規感染者数は8日が7244人、9日が6492人と、第4波が始まって一番目、二番目に大きい数字となっています。

緊急事態宣言下で感染が拡大するというのは深刻な事態です。
これはイギリス型変異ウイルスのせいでしょう。

イギリスでは、昨年3月に1回目のロックダウンをし、夏ごろにはかなり感染を抑え込んだのですが、9月ごろから急拡大して、11月から再びロックダウンになりました。
ただ、現在は感染は減少し、ロックダウンは段階的に緩和されつつあります。
強力なロックダウンに加えて、ワクチン接種が急速に進んだからです。

日本には強力なロックダウンもありませんし、ワクチン接種も進んでいません。

なお、「テレ朝ニュース」の「抑え込んでいたのに…モンゴルで感染急拡大」という記事によると、モンゴルでもイギリス型変異ウイルスのために感染が急拡大し、インド以上に深刻な状況になっているそうです。

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東アジアには“ファクターX”があって、ヨーロッパみたいに深刻にならないという説がありましたが、モンゴルの状況を見ると、その説は捨て去らなければならないようです。

日本でもイギリス型が大阪から東京へと広がっています。
このままでは、5月31日の宣言解除はもちろん、東京五輪開催も不可能です。

コロナとの戦いは長期戦を覚悟しなければなりません。

そうすると、飲食業界などはますます苦境に陥ります。休業補償金や協力金を税金から出しつづけるのもたいへんです。
なにかいい方法はないでしょうか。



現在、緊急事態宣言下では、飲食店は20時までの時短営業に加え酒類の提供禁止となっています。
酒類提供禁止のために居酒屋などは実質営業不可能ですし、一般の飲食店の経営にも響きます。

私は夕食時にはいくらかの酒を飲むのが習慣なので、レストランなどで夕食をとるときに酒がないと困惑します。
一杯のビールかハイボールかグラスワインがあるだけで、食事の楽しさが断然違います。
割増料金を払えばお酒が飲めるという制度にすれば、いくらまでなら払うかと考えました。
どうせビール一杯だけなので、2割増し、3割増しぐらいは平気ですし、2倍でも払うかもしれません。

かりにレストランで酒類の価格を2倍にして、従来の半分の注文があったとすれば、店の売り上げは同じで、原価が少ない分、利益は増大します。
そして、酔っぱらって大声で話すような人もへりますから、感染防止にもなります。

居酒屋でも同じやり方が可能です。

たとえば東京都は、飲食店に対する時短営業要請も酒類提供禁止もやめて、酒類価格を2倍にするという要請だけします。
そうすれば、客数はへり、酒類の消費もへるので、感染リスクは下がりますが、店の収益はある程度維持できます。
酒類の消費があまりへらなければ、酒類の価格を3倍にすればいいわけです。

つまり、価格メカニズムを利用して入店の人数と酒類の消費を抑制し、感染防止をしつつ、店の収益も維持しようということです。

不当値上げだと怒る客がいるかもしれませんが、酒類提供禁止よりはましです。
それに、払ったお金は苦境にある飲食店のためになるので、払い甲斐もあるはずです。


価格メカニズムを使うことはイベント関係でも可能です。

イベント関係では入場者の制限が行われています。
あるコンサートの入場者を半分にするなら、ファンの数は同じでチケット数はへるのですから、チケット価格は上がって当然です。
これまでは人数制限は一時的なことだと考えられてきたので、料金に手はつけられませんでしたが、これが長期化するなら、チケット代を値上げして収益を確保するのは当然のことです。
チケット価格を従来より高く設定すれば、自然と入場者がへるので人数制限をしたのと同じことになり、それでいて収益はあまりへりません。

それにしても、人を動かすのに価格メカニズムを利用するということに頭が回らない人も多いようです。
緊急事態宣言下、国と東京都は首都圏の鉄道各社に運行本数をへらすように要請しましたが、実際に本数がへると車内が混雑して不満が噴出し、結局通常の本数に戻しました。
電車の本数がへれば人流もへると思ったのでしょうが、まったくバカな考えです。
こういうときこそ価格メカニズムを利用するべきです。
人流をへらしたいなら運賃を高くすればいいのです。そうすれば確実に利用者はへります(定期券を持っている人が多いので、実際にはむずかしいでしょうが)。


価格メカニズムによる行動は合理的なものなので、「短期集中」だの「気のゆるみ」だのといった精神論による不快感がありません。
「コロナ割増料金」という考え方が広く世の中に受け入れられれば、飲食店やイベント関係業者が救われます。

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