村田基の逆転日記

進化倫理学の威力を試すブログ

タグ:食事のマナー

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1年ほど前、天ぷら屋で天ぷらの衣をはがして食べている客を店主が追い出したということがあり、ネットで客が悪いのか店主が悪いのかという議論が起きました。
その前には、とんかつの衣をはがして食べる食通がいて、とんかつ屋の店主が激怒したという話もありました。

この話が“進化”して、今回は唐揚げ屋で唐揚げの衣をはがして食べる人がいたということがネットで話題になっています。

なぜ? 唐揚げ店で「衣」をはがして食べる女性客に店主も困惑…迷惑客を追い出せるのか
外食業界はコロナ禍で大きな経済的ダメージを受けているが、「唐揚げ店」は比較的好調のようだ。近年の唐揚げブームを追い風に、各地で新規出店が続いている。

様々な唐揚げ店に行って、味の比較を楽しむ人もいるだろう。都内の出版社に勤めるコウヘイ(30代)さんもそんな一人だ。しかし、このほど同僚とランチで行った唐揚げ店で気になることがあったという。

「一緒に行った同僚の女性が唐揚げの衣をはがして食べ始めたんです。唐揚げ店に来てるのに、唐揚げの衣を食べない人がいることに驚きました」

女性に剥がす理由を聞くと、「衣をとった唐揚げの味が好き。鶏肉でタンパク質はとりたいから、定期的に来ている」と悪びれず答えたそうだ。

「『だったら唐揚げ店以外に行けばよかった』と思いましたし、案の定、店主の人もカウンターの向こうで明らかに不愉快な顔をしていたので、追い出されたりしないかとハラハラしました」(コウヘイさん)
(後略)

ここでの問題はふたつあって、ひとつはこれはマナーとしてどうなのかということ、もうひとつは店がこのような客を追い出すことは法的に可能かということです。

この記事は「弁護士ドットコム」のもので、法的なことは弁護士が回答しています。詳しくはリンク先を読めばわかりますが、ルールに従わない客は退店していただきますといった張り紙を店があらかじめしていない限り、客を追い出すことはできないということです。

マナー違反かどうかということですが、衣をはがすにはそれなりの理由があるのですし、誰に迷惑をかけるわけでもないので、マナー違反とは言えないと思います。ましてや批判されることではありません。

天ぷら屋で衣をはがして追い出された客というのは、合コンに参加した女性でした。つまり自分で選んで天ぷら屋に来たわけではないのです。しかたなく衣をはがしていたら追い出されたというのは気の毒です。

揚げ物の衣をはがす理由としては、カロリーをへらすためということがありますし、最近は糖質制限のためということもあります。また、安い揚げ物は古い酸化した油を使っているに違いないので、健康のためということもあるようです。アレルギーやその他の理由もあるかもしれません。
つまりちゃんとした理由があってやっているので、店の人がいやがらせでやっていると思ったとすれば勘違いです。


「見ていて不愉快だ」ということを理由にする人もいますが、そういう人は「揚げ物はそのまま食べるもの」という思い込みが強くて、かつ他者への想像力が欠けています。
単純に言って偏見です。


とくに食事のマナーに関する偏見は強くて、たとえば人の箸の持ち方にクレームをつける人がよくいます。
箸の持ち方は誰でも幼少期に親からしつけられます。そのときのことがトラウマになっているからではないかということを、このブログで『「箸の持ち方にうるさい人」はなにがだめなのか』という記事に書いたことがあります。

ただ、「揚げ物はそのまま食べるべき」というしつけをうけた人はいないでしょうから、これは単なる思い込みです。
考え方を柔軟にし、自分の感情が合理的か否かを判断すれば片付く問題です。

ところが、食に対して柔軟な考え方のできる人は少ないようです。
食は人間にとって根源的なものだからでしょう。
そのため「お袋の味」にこだわって、妻のつくる料理が気にいらないとか、海外旅行にいって現地の料理が口に合わなくて苦労するといったことも起こります。


そういう意味では、性も同様に根源的です。
そのため、性に対する自分の感情が不合理だと頭で理解しても、表層的な理解にとどまってしまい、LGBTに対する差別意識がなかなかなくなりません。

しかし、「食や性に対する偏見はなくなりにくい」ということをあらかじめ知っていれば、対処のしようがあります。
唐揚げの衣をはがして食べている人を見てイラッとしても、それが自分の偏見からくるものかもしれないと思えば、自分の感情が合理的なものか否かを冷静に判断して、その人を非難するようなことはしなくてすみます。
しかし、自分の偏見に気づかないと、マナー違反だ、失礼だ、食べ物を粗末にしているなどと“正義”の怒りをその人に向けてしまいます。

こうした偏見は世の中の平和を乱します。
唐揚げの衣をはがして食べる問題も世界とつながっています。

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食事におけるマナーはたいせつです。
スープを音を立ててすすったり、ナイフやフォークを必要以上にカチャカチャさせたりするのは、周りの人を不快にさせます。

では、箸の持ち方がおかしいというのはどうでしょうか。
音を立てたり唾を飛ばしたりするのと違って、どんな箸の持ち方をしても人の迷惑になることはありません。
箸の持ち方がおかしいと食べにくいということはあるでしょうが、それは本人の問題です。

ところが、世の中には「お箸の持ち方がおかしい」と言ってクレームをつける人がかなりいます。


不登校のYouTuber、“少年革命家ゆたぼん”の父親が、ゆたぼんがお寿司を食べる写真をツイートしたところ、「お箸の持ち方がおかしい」というクレームが殺到したそうです。

ゆたぽん
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中村幸也@ゆたぼんのパパ」のツイートより



ゆたぼんさんが批判されているのを見て、ダルビッシュ有選手が「ゆたぼんさんのお箸の持ち方どうこうってあんなん俺からしたら上手く持ててるからな」とツイートして、自分の箸の持ち方の動画を投稿しました。

ダルビッシュ有
https://twitter.com/faridyu/status/1224426899981520896

ダルビッシュ選手は前に箸の持ち方でバッシングされたことがあり、それ以来、この問題にはこだわりがあるようです。ツイッターのプロフィールには「箸が箸であればどんな使われ方をされても愛せ。そして箸を使う人すべてを愛せ」という言葉を書いています。


私が思うに、「機能的で、見た目にも美しい箸の持ち方」というのはあるでしょうし、それを目指すのはいいことです。しかし、我流の持ち方をしたからといって非難される筋合いはありません。
ダルビッシュ選手も、「鉛筆の持ち方が変だからといって叩かれないし、歩き方や走り方が変だからといって叩かれない。なぜお箸の持ち方だけ叩かれるのか」という主旨の主張をしています。

問題は、へんな箸の持ち方をする人にあるのではなく、箸の持ち方が悪いと非難する人のほうにあります。
それは、「発言小町」に投稿された次の悩みを読めばわかるはずです。

箸の持ち方を直してほしい
こぶた  2013年7月31日 21:46
33歳会社員です。
お付き合いしている彼に箸の持ち方を直してほしいのですが
何と言うのがよいでしょうか。
付き合い始めくらいに、直してほしいと一度言ったことがあります。
彼は自分でもおかしな持ち方をしているのは自覚していて、
「上司と一緒の時やきちんとした席では直しているから大丈夫」みたいな言い訳をされました。それ以来は気なりつつ口に出していません。
その前にお付き合いした彼もきちんと箸を持てない人で指摘をすると、誰にも迷惑をかけていないし、誰がそんなルールを決めたんだ?という風に逆切れ気味に言い返されたこともあり、直してほしいけど何と言えば気持ちよく直してくれるのか悩んでいます。
私としては、マナーとして当然と思っており、できないことは恥ずかしく思います。また、それをどうでもいいと思っている人は根本的な所で価値観が合わないかもとすら思います。
皆さんなら、パートナーの箸の持ち方がおかしい時はどうしますか?
https://komachi.yomiuri.co.jp/t/2013/0731/608705.htm

この悩み相談に対して、「別れればよい」という回答が多数です。
こうした回答は無責任です。

稼ぎのない男、暴力をふるう男、自分勝手な男、浮気をする男などとは別れたほうが賢明です。
しかし、「箸の持ち方が悪い男」と別れるのは愚かです。そんなことは欠点のうちに入りません。男選びの基準が間違っています。
箸の持ち方を異常に気にするこの女性に問題があるのは明らかです。

ゆたぼんさんやダルビッシュ選手の箸の持ち方をたたく人は、この女性と同じ精神構造と思われます。

どうしてこのような精神構造になってしまったのか、それもこの女性の次の書き込みから推測できます。

こぶた  2013年8月7日 21:30
私が持ち方を直してほしいと彼に言おうと思ったきっかけは、
お正月には両親に彼を紹介しようと思ったからです。
(遠方で年に一度しか帰省しません。)
私の価値観ができあがったように、当然両親は箸の持ち方を見る人です。
口には出さないでしょうか、内心よく思わないでしょう。
その前に直してほしかったのです。
https://komachi.yomiuri.co.jp/t/2013/0731/608705.htm?o=2&g=04&rj=1

基本的に子どもの箸の持ち方は親がしつけます。子どもは当然、箸がうまく使えません。そのときに強引なしつけ方をすると、それが子どものトラウマになります。この女性とか、ゆたぼんやダルビッシュ選手をたたいている人たちは、そうしたトラウマがあるのでしょう。

幼児虐待で逮捕された親はたいてい「しつけのためにやった」と言います。
こういう親は決して特別ではなくて、虐待の程度の軽い親はいっぱいいて、軽いトラウマを受けた子どももいっぱいいて、そうした子どもがおとなになると、ゆたぼんさんやダルビッシュ選手の箸の持ち方をたたくようになります。
こういう人は、自分のしつけのされ方を振り返るといいと思います。

食事のマナーはたいせつです。
箸の持ち方のような細かいことにこだわらず、楽しく食事することが最大のマナーです。

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