村田基の逆転日記

進化倫理学の威力を試すブログ

タグ:PCR検査

3392436_s

近くの駅前広場の植え込みに、サツキの花が盛りになっています。
天気もよくて、美しい光景のはずですが、見てもあまり美しいと感じません。
緊急事態宣言で、花を見て楽しむ心の余裕がなくなっているようです。

東日本大震災のあとも似たような感じでした。
あのときは大きな余震がしょっちゅうあって、原発事故もまだ収束していないので、心がずっと緊張状態でした(私は東京在住です)。
緊急事態宣言によって、あのころに引き戻された感じです。


緊急事態宣言以降、国民は緊張状態にあるのではないでしょうか。
飲食店はアルコール提供夜7時まで、営業夜8時までということになりました。居酒屋がこんな要請を守っていては商売にならないので、要請を無視するところがけっこうあるのではないかと思ったら、ほとんどの店が8時で閉めています。
休業する飲食店も多くあります。ということは、要請以上のことをしているわけです。
営業している飲食店にも客はあまり入っていないので、国民も十分に要請に応えています。
休業しないパチンコ店が問題になるのも、ほかの業種はみな要請に応えているからでしょう。
企業も出勤者をへらし、通勤電車はかなり空いています。
地元の商店街やスーパーが混雑するという問題はありますが、緊急事態宣言は想像以上にうまくいっています。

ところが、緊急事態宣言は1か月程度延長されることになりそうです。
確かに感染者はそれほど減少していません。
今のやり方では不十分なのです。なにが不十分かということは、専門家会議が指摘しています。
『「通勤続く限り、8割減無理」 専門家会議がデータ公開』という記事にはこう書かれています。

 また、端末所有者の居住地域別では、神奈川・千葉・埼玉の3県と、東京都との間の接触頻度の減少率は昼間、35~41%と小さかった。大阪を中心とする関西圏でも同様の傾向がみられた。これは東京と大阪のオフィス街への他府県からの移動を反映しているとみられ、提言は「都心等への通勤を続ける限り、生産年齢人口の接触頻度の減少度合いは少ない」と結論した。西浦教授は会見で、「都心との通勤を続ける限りは、(強制ではなく)自粛要請のレベルでは限界があることがデータからわかった」などと述べた。

企業は通勤者をへらしていますが、まだ不十分だということです。

政府はこれまで隠してきましたが、クラスターがいちばん多く生まれている場所は企業です。
「ITmediaビジネスONLINE」4月21日の『新型コロナが複数判明した場所、企業などの「事業所」が医療施設と並び最多――クラスター源か』という記事によると、『SNSの投稿データ分析などを手掛けるJX通信社(東京・千代田)が、公的情報を元に複数人の感染事例が判明している施設の数を集計したところ、「医療施設」と並んで「事業所」が感染者数トップになった』ということです。
事業所クラスター

ですから、人との接触機会8割削減という目標を達成するには、生活インフラを維持する以外の企業活動を停止すること、つまり欧米並みのロックダウンをするしかありません。
専門家会議の指摘を受け止めると、そういうことになります。


では、政府は強力なロックダウンに踏み切るのかというと、そんなことはありません。
安倍首相は4月30日、記者団に対して「5月7日からかつての日常に戻ることは困難だ。ある程度の持久戦を覚悟しなければならない」と語りました。
どうやら今のやり方を続けるつもりのようです。
いや、西村新型コロナ担当相は、経済活動の自粛を緩和し、経済活動再開の手順を検討していることを明らかにしました。

専門家会議の目指す方向と西村大臣の目指す方向が逆で、安倍首相はどちらを目指してるのかよくわかりません。
日本は針路の定まらない船みたいなものです。

欧米並みのロックダウンをすると経済がひどい打撃を受け、かといって安易に緩和すると、北海道のように第二波に襲われます。
その中間の道を行くと、安倍首相の言う「持久戦」になりますが、これとても長くは続けられません。
完全にジレンマです。


このジレンマから脱出する道があります。
それは韓国のやり方を学ぶことです。
だいたい日本人は欧米ばかり見ているので、ロックダウンか否かという発想になってしまいます。
韓国はロックダウンせずにウイルス対策を成功させ、最近では1日の感染者が10人前後に抑えられ、4月30日には感染者ゼロを記録しました。

韓国のやり方は、「徹底した検査と徹底した隔離」というものです。
たとえば大邱市では、新興宗教団体の集会で大規模なクラスターが発生しましたが、市当局は信者約1万人全員の検査を1か月以内に終わらせ、検査件数は約10万件に達しました。最終的に市全体で7000人近い感染者が出ましたが、軽症者用の生活治療センターをつくって隔離し、今では感染は抑え込まれ、市の中心部にある西門市場は買い物客でごった返しているということです。

現時点で日本の感染者数は1万4000人程度で、100万人越えのアメリカは別にして、スペイン、イタリア、イギリスは20万人前後ですから、まだまだ少ない数字です。感染者を徹底的に明らかにするという韓国方式はまだ可能なはずです。

「人との接触機会8割削減」という目標は、市中のどこに感染者がいるかわからないという状況が前提です。感染者が特定され、隔離されれば、外出自粛など必要なくなります。


ただ、日本ではPCR検査数がきわめて少ないという問題があります。
日本はオリンピックのためやら医療崩壊を防ぐためやらでPCR検査数を抑えるという初期対応をとり、検査を受けたいのに受けられないという状況が報道されても、安倍応援団は「検査をふやすと医療崩壊が起きる」「陽性とわかっても治療法がないので意味がない」などと言い、韓国がPCR検査数をふやしてドライブスルー方式を考案したりするのをずっとバカにしてきました。

今はさすがにPCR検査数をふやすべきでないという人はいないでしょう。
安倍首相も「PCR検査体制を1日2万件に増やす」と表明しています。

ところが、安倍首相の表明にもかかわらず、PCR検査数の伸びは遅々としたものです。
4月28日時点の数字ですが、OECD36か国において、人口1000人当たり何人がPCR検査を受けたかという数字で、日本は下から2番目です。

oecd
https://www.oecd.org/coronavirus/policy-responses/testing-for-covid-19-a-way-to-lift-confinement-restrictions/

安倍首相が検査数をふやすと言ってもふえないのは、厚労省、国立感染症研究所、専門家会議などの人間が無能だからです(まさか悪質なサボタージュをしているということはないでしょう)。
そして、安倍首相や自民党は、官僚や専門家が無能なとき、なすすべを知りません。

原発事故のとき、菅直人首相は官僚や専門家が全員無能なことを知ると、どなりまくり、外部の専門家を呼んで、なんとか対処しました。
そこが安倍首相と菅首相の決定的な違いです。

安倍首相は無能の乗組員を従えた無能の船長です。
新型コロナウイルスの海を日本丸は漂うだけです。


安倍首相会見

記者会見の安倍首相(首相官邸HPより)

安倍首相は3月14日、新型コロナウイルス感染症に関する特別措置法の改正案が成立したことを受けて記者会見を開きましたが、これがまったくの無内容でした。
なにか新しい対策を打ち出すということもありませんし、今の一斉休校やイベント自粛がいつまで続くのかについて目途を示すということもありません。
一斉休校が続くと、4月の新学期も始まらないということが懸念されます。

安倍首相は新型コロナウイルス感染症対策の現場をまったく把握していません。
たとえばPCR検査の件数が少ないという問題について、このように語りました。

 PCR検査については、各種の取組により、現時点で、前回会見したときよりも50パーセント多い、1日当たり6,000件を超える確かな検査を行うことが可能となっています。短時間で検査ができる簡易検査機器の開発も順調に進んでおり、一部については、今月中に利用を開始できる見込みとなりました。民間検査機関における設備導入を支援することで、一層の能力増強にも努めます。
 こうした取組を通じて、今月中には、1日当たり8,000件まで検査能力が増強できる見込みです。

検査能力については、加藤厚労相が「一日最大6000件の検査能力がある」と言っていたにもかかわらず、1日に多くて千件余り、少ないと百数十件しか検査が行われていないということが問題になっていました。
なぜ検査数がふえないのかについて国民はいろいろ議論していますが、安倍首相はこの問題を完全にスルーしました。
安倍応援団は、政府は医療崩壊を招かないために検査件数をわざと抑えているので、これは正しいやり方だと言って擁護していましたが、安倍応援団も梯子を外されました。

安倍首相は検査件数が少ないという問題を理解していないか、なにかを隠ぺいしているのでしょう。


安倍首相は新型コロナウイルス問題を理解していないためか、自分で対策を考えることができません。

北海道の鈴木直道知事が2月26日、緊急会見を開き、全道の小中学校について1週間の休校要請をしましたが、これは英断だと評価する声が多数でした。
するとその翌日、安倍首相は全国の小中高などに3月2日から休校にするよう要請したのです。完全にパクリで、かつ思いつきです。専門家会議のメンバーも、会議で議論していないし、相談もされていないと言っています。

それから安倍首相が打ち出した対策は、安倍支持者が求めていた中国韓国からの入国禁止措置です。
安倍首相は最初、習近平主席の国賓としての訪日を意識したためか中国からの入国制限をせず、ようやく2月1日になって湖北省からの入国拒否を決め、本格的に中国と韓国からの入国拒否を始めたのは3月9日からです。
こうした入国拒否は安倍応援団には評価されたようですが、これらの政策はあくまでウイルスの侵入を防ぐ水際対策ですから、すでに国内に感染が広がっている段階では意味がありません。

安倍首相が思いつきと支持者向けの政策しかできないのは、政府内の専門家がまともな政策を出せないからです。
政府内の専門家とは国立感染症研究所のことです。
自民党は長期政権によって政府と一体化しているので、安倍首相もこうした組織を批判することができませんし、マスコミも批判しません。
そのためほとんどの国民もどこに問題があるのかわかりません。
原発事故のとき、原子力安全委員会、原子力安全・保安院、東電本社などをマスコミはほとんど批判しませんでしたが、それと同じことが起こっています。

そうした中で、「選択」3月号が国立感染症研究所についての記事を書いていました。PCR検査の問題についても言及されています。
3月1日発売号なので最近の事情には触れられていませんが、国立感染症研究所を批判的に書いた記事は貴重なので、前半だけ紹介しておきます。


1
2
 2.1
4
5
6


国立感染症研究所

WHOのテドロス事務局長は3月11日、新型コロナウイルスの感染拡大についてパンデミックを宣言しました。

12日昼のTBS系「ひるおび!」によると、世界の感染者数は、イタリアが1万2000人余り、韓国が7000人余り、フランスとスペインが2000人余り、ドイツが1500人余り、アメリカが1000人余り、イランが約9000人ということです。

それに対して日本は、クルーズ船を含めて1330人です。
日本では感染者の発生が早かったのに、それほどふえていません。
他国で感染者数が爆発的に増加しているのを見ると、日本の感染者数の少なさが不思議に思えます。

これについては、日本の感染対策がひじょうにうまくいっているのだという考え方があります。
3月9日に新型コロナウイルス対策の専門家会議が「日本の状況は、爆発的な感染拡大には進んでおらず、一定程度持ちこたえている」という見解を発表したのは、その立場です。
それに対して、日本で感染者数が少ないのはPCR検査の件数を意図的に抑えているからで、実際の感染者数はかなりのものだという考え方もあります。
どちらが正しいかはともかく、日本のPCR検査の件数がひじょうに少ないのは事実です。

9日の時点で日本の累計の検査件数は8700件余りです。対して8日の時点で韓国は18万件余り、イタリアは4万件余りです。
https://lite-ra.com/2020/03/post-5302.html


日本の検査数が少ないのは、東京オリンピック開催のために感染者数を少なく見せたいからだという説がありました。つまり安倍政権の意向だということです。
しかし、安倍首相もこれはコントロールできていないようです。
安倍首相は2月29日の記者会見で「かかりつけ医など身近な医者が必要と考える場合は、全ての患者が検査を受けられる十分な能力を確保する」と語りましたが、3月3日の参院予算委員会の答弁では、PCR検査を希望者全員が受けられるかどうかについて「今すぐにできるということは全く申し上げていない」と述べ、姿勢を後退させました。
加藤厚労相は「一日最大6000件の検査能力がある」と言っていますが、今のところ、検査に保険が適用された初日の6日に1200件余りあったのが最高です。
PCR検査数を低く抑えているのは厚生労働省や国立感染症研究所で、これについては安倍首相や加藤厚労相もアンタッチャブルのようです。
テレビに出ている感染症の専門家もたいていは国立感染症研究所の出身者なので、このあたりのことについてはほとんど語りません。


なぜ厚労省や国立感染症研究所はPCR検査数を低く抑えているのかというと、国立感染症研究所の利権がからんでいるからだという説もありますが、単純に彼らは日本の医療崩壊を恐れているのではないかと思います。
武漢では患者が病院に殺到して、ベッド数が足らず、医師や看護師にも感染者が続出するという事態になりました。そうした事態を避けたいのです。

日本ではPCR検査を受けるには、「37.5度以上の発熱が4日以上」などの条件が設けられ、保健所を通すことでさらに道は狭められ、新型コロナウイルス感染の恐れのある人は病院にこさせない政策がとられてきました。
これは現在も同じで、テレビの政府広報でも風邪の症状のある人は「外出を控え、自宅で静養してください」という呼びかけをしています。

スクリーンショット (14)

風邪の症状の人が検査を求めて病院に押しかけると、中には新型コロナウイルスに感染している人もいるでしょうから、病院を通じて感染が拡大し、医療関係者にも感染します。
感染者でも8割は軽い症状で治るということですから、重い症状の人だけ検査して治療すればいいという方針です。

専門家会議が「持ちこたえている」と言ったのは、違和感のある表現でした。なにが持ちこたえているのかよくわかりません。
これは正確には、「日本の医療体制は崩壊に至らずに持ちこたえている」という意味でしょう。
専門家の頭にあるのは、国民の命と健康ではなく、日本の医療体制ことばかりです。


ただ、検査数を抑えて医療崩壊を防ぐことは結局日本人の命と健康を守ることになるという考え方もあります。
こういう考え方の人は、イタリアは検査しすぎたからパニックになったと言って、検査数の少ない日本を擁護しています。

ソフトバンクグループの孫正義会長は、新型コロナウイルス感染を調べる簡易PCR検査を100万人に無償提供する計画を発表しました。これは個人の家に検査キットが送られてきて、検査機関に送り返し、病院を通さずに検査結果が知らされるというシステムで、病院に負担はかかりませんが、反対の声が強くて、孫会長は計画撤回を表明しました。
日本のやり方はなんでもいいと盲信する人が多いようです。


もちろん検査数を抑えるのがいいという理屈はありません。

安倍首相は2月26日に「2週間程度のイベント自粛」を要請し、3月10日に「今後10日程度のイベント自粛継続」を要請しました。
「2週間程度」といい「10日程度」といい、根拠がありませんし、いつ自粛解除になるのかもわかりません。
新規の感染者数が十分に少なくなれば、感染の終息宣言を出して、イベント自粛は解除できるはずですが、日本では感染者の数がもともと少ないので、どこまで少なくなれば終息宣言が出せるのかよくわかりません。
これから検査数が増えていくと、実際の感染者はへっているのに検査で判明した感染者は増えるという事態も起こりえます。
つまり日ごろからちゃんと検査をしていないと、終息宣言も出せないのです。
終息宣言が出せないと、東京オリンピック開催もできません。

それから、検査数をへらして医療崩壊を防ぐというやり方は、いずれ暖かくなればウイルスの感染力は弱くなるだろうという楽観的シナリオに支えられています。
この楽観的シナリオは正しいとは限りません。
もし正しくなければ、検査しないために目に見えない感染がどんどん拡大していき、最終的により大規模な医療崩壊が起こることになります。

真実を隠しておくほうがいいなどということはありません。

このページのトップヘ