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統一教会と自民党のずぶずぶの関係に対して国民の怒りの声がわき上がっていますが、この問題を追及するメディアと追及しないメディアとがはっきり分かれています。

テレビでは、日本テレビとTBSが熱心に追及していますが、NHK、フジテレビ、テレビ朝日はまったくといっていいほど統一教会問題を取り上げません。
週刊誌はどこも熱心に追及していますが、新聞はどこも不熱心です。

どうしてこういう違いが出るのかというと、安倍長期政権の呪縛にいまだにとらわれたメディアがある一方、呪縛から逃れたメディアが出てきたからです。


第二次安倍政権は、長く続くうちに政権を安定させるシステムを構築しました。
早い話がマスコミと警察、検察をコントロールできる体制をつくったのです。

テレビ局は、放送法に「政治的に公平であること」という規定があるので、もともと政府がコントロールしやすく、菅義偉前首相や高市早苗自民党政調会長がテレビ局を脅すのを得意としていたので、ほぼ政権批判を封じ込めました。
新聞は、もとからたいした政権批判はしていませんでしたが、2019年10月の消費税増税のときに新聞業界は軽減税率適用の恩恵を受けたので、さらに政権批判ができなくなりました。政権はいつでも「軽減税率の適用をやめるぞ」と脅すことができるからです。
新聞は論説などで政権批判はしますが、政権の痛いところはつきません。
政権の痛いところをつけるのは、「週刊文春」と「しんぶん赤旗」ぐらいです。

そして、安倍政権は警察と検察もコントロールすることに成功しました。
伊藤詩織さんをレイプした山口敬之氏に逮捕状が発行されたとき、警視庁の中村格刑事部長が逮捕直前に逮捕をやめさせたのが典型的な例です。山口氏は『総理』という安倍ヨイショ本を書いて安倍首相とべったりでした。この経緯は週刊誌が書きましたが、中村刑事部長は出世して、現在は警察庁長官です。つまり安倍政権は政権の言いなりになる警察官僚を引き立ててきたのです。
モリカケ桜では警察も検察も動きませんでした(籠池夫妻だけが逮捕、起訴されました)。
ですから、安倍首相は野党からいくら追及されても、見え見えの嘘をつき続けることで逃げきれたのです(野党も世論を喚起するような追及ができなかったという問題があります)。

独裁政権は必ずマスコミ、警察、検察、裁判所をコントロールしています。プーチン政権や習近平政権を見ればわかります。
安倍政権も独裁政権と同じシステムを構築したわけです。
ほんとうの独裁政権は、政敵を逮捕、投獄しますが、安倍政権はそこまでやらないので、ソフト独裁システムというところです。

このソフト独裁システムはきわめて有効だったので、安倍政権はどこまでも続きそうでしたが、コロナウイルスと安倍首相の大腸には有効でなかったので、安倍政権は崩壊しました。


安倍政権から菅政権に代わっても、政権がマスコミ、警察、検察をコントロールするシステムはそのままでした。安倍政権下で菅官房長官と安倍首相は一心同体でしたから、当然です。

菅政権は日本学術会議の6人の会員を任命拒否し、問題となりましたが、この6人は政権批判をしていた人たちです。人事権を行使することで政権批判の学者を黙らせようとしたわけです。ただ、このやり方は官僚には有効ですが、学者にはあまり効かないので、こじれました。



問題は、岸田政権になってどう変わったかです。
岸田首相はリベラルですから、独裁政権みたいなことはしたくないかもしれません。
しかし、マスコミ、警察、検察をコントロールするシステムがあるなら、そのまま使いたいと思っても不思議ではありません。
今のところ岸田首相がどうするつものなのか、よくわからないという状況です。

それに、安倍政権がつくり上げた独裁システムは、安倍元首相が亡くなった今も機能するのかという問題があります。
安倍元首相は首相の座を去るとすぐに元気を取り戻し、その発言は影響力を持ちました。いずれ第三次安倍政権ができるかもしれないという空気もありました。そういう状況では独裁システムは機能していたでしょう。
しかし、安倍元首相が亡くなると、カリスマ性も求心力もなくなりました。
官僚に対しては慣例にない左遷人事を行って恐怖支配をし、マスコミに対しては報復をにおわせて恫喝をするということが独裁システムの基本ですが、それを行える非情な人間がいるのかという問題があります(菅前首相は行えますが、カリスマ性がありません)。

ですから、今は独裁システムが機能しているのか機能していないのかわからなくて、みんな手探りしている状況です。


日本テレビの「ミヤネ屋」は大阪の読売テレビが制作していて、TBSの「ゴゴスマ」は名古屋のCBCテレビが制作しています。政権の圧力がかかりにくいということがあるかもしれません。
「モーニングショー」はテレビ朝日の制作です。最初のころは積極的に統一教会問題を取り上げていましたが、あるときに政権から圧力がかかって、それからまったく取り上げなくなったと言われています。
日本テレビとTBSは、「ミヤネ屋」と「ゴゴスマ」を先頭に押し立てて、今ではニュース番組全般で統一教会問題を積極的に取り上げています。
独裁システムに確実にほころびが見えてきました。


この背景にはネットの論調の変化もあると思われます。
これまではネットではネトウヨがかなりの力を持っていました。
ところが、統一教会は「韓国はアダム国、日本はエバ国」などというとんでもない反日教義を有する韓国の宗教なのに、ネトウヨは統一教会をまったく批判しません。これによってネトウヨは愛国者でないことがバレバレになって、その主張にまったく力がなくなりました。
安倍元首相殺害以降、ネトウヨが存在感を示したのは、朝日新聞が国葬批判の川柳を多数掲載したことに抗議したときくらいです。
ネトウヨに限らず産経新聞や右翼雑誌に寄稿しているような保守論客も統一教会批判をほとんどしていないので、信用を失っています。
日本テレビとTBSが統一教会問題を積極的に取り上げているのも、ネットの後押しがあるからでしょう。


今後、安倍政権時代に築かれた独裁システムがどうなるかが最重要問題です。
岸田首相がカギを握っていますが、今のところ態度がはっきりしません。おそらく統一教会問題が騒がれることで清和会(安倍派)が弱体化することを期待して、静観しているのでしょう。
中村格警察庁長官は、安倍元首相殺害事件を防げなかった責任をとって辞任する見通しと報じられています。
岸田首相が独裁システムを使う気がなければ、独裁システムは解体され、日本の政治は正常化されます。
岸田首相を動かすようなネットの世論が必要です。