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外交や戦争が同盟関係に大きく左右されるのは当然ですが、日本人はそのことを忘れてしまう傾向があるようです。

明治時代の日本人は、極東の三流国だった日本が当時の覇権国だったイギリスと日英同盟を結んだことに舞い上がってしまって、イギリスの期待に応えようと日露戦争に突き進みました。結果はよかったものの、大国ロシアとの戦争は危険な賭けでした。
日本人は日本が自発的に日露戦争をやったように思っていますが、実際のところは老獪なイギリスに未熟な日本があやつられていたのです。

第一次世界大戦に日本は参戦しましたが、これも日英同盟が背景にあったからです。

日本がアメリカと戦争したことについても、日米の国力を比較して無謀な戦争だったなどといいますが、日本には日独伊三国同盟があったわけです。真珠湾攻撃の当時は、ドイツ軍がモスクワを包囲していて、日本政府は独ソ戦はドイツが勝利すると予想しました。そうなると、アメリカとイギリスが孤立する格好となり、アメリカは講和に応じるだろうというもくろみでした。
英米が孤立したからといって講和ができるとも思えませんが、独ソ戦がソ連優勢になってはなんの展望もなくなってしまいました。
つまり日本は単独でアメリカと戦争しているつもりはなくて、ドイツとイタリアの勝利に便乗するつもりだったのです。
ところが、現在の真珠湾攻撃を巡る議論がほとんど欧州情勢を抜きにして行われているのを見ると、視野が狭小なことに驚かされます。


同盟関係がその国の行動を強く規定するのは当然です。
韓国はベトナム戦争に派兵して、今もそのことがトラウマになっていますが、同盟関係にあるアメリカの要請があったから、しかたなく派兵したのです。
オーストラリアはベトナム戦争、アフガン戦争、イラク戦争に派兵して、どれもがトラウマになっています。
NATO諸国もイラクとアフガンに派兵しました。

ちなみに独ソ戦には、枢軸側にイタリアのほかにルーマニア、ハンガリー、フィンランドなども派兵していました。

同盟関係といっても対等なものではありませんし、力のあるほうから「わが国の若者が命をかけて戦っているのに、お前たちはなにもしないのか」と言って強い圧力を加えられると、断り切れないのでしょう。

わが国は平和憲法を盾にアメリカの要請を断り続けてきましたが、とうとう断り切れなくなり、アフガン戦争では洋上給油活動をし、イラク戦争ではサマワに自衛隊を派遣しました。
今となってはアフガン戦争もイラク戦争も無意味な戦争であることが明らかとなり、日本人が命を落とさなかったのは幸いでした。


さて、岸田政権は防衛費GDP比2%と敵基地攻撃能力保持を打ち出していますが、日本とアメリカの力関係を思えば、これがアメリカの要請によるものであることは明らかでしょう。
防衛費GDP比2%というのはNATO基準なのですが、日本がみずからNATO基準を採用するわけがありません。日本は島国なのですから、違って当然です。

防衛費GDP比2%は、昨年10月の衆院選で自民党が選挙公約として打ち出したものです。これまで1%だったものを倍増するとは冗談かと思いましたが、次期駐日大使に指名されたラーム・エマニュエル氏がすかさず米上院外交委員会の公聴会において自民党の選挙公約を評価する発言をしたので、自民党とアメリカが交渉の末合意したものと思われました。

中国の軍拡に対抗するためという名分になっていますが、中国は経済成長に合わせて軍拡をしています。ほとんど経済成長しない日本が軍拡だけするのは財政破綻への道です。

防衛費を増加させてなにに使うかというと、とりあえず「敵基地攻撃能力」のためです。

敵基地攻撃能力というのは、最初のころは、「敵国がミサイルなどを発射する準備をしているのを察知した場合、発射する前にこちらから攻撃する」というような説明をしていました。
しかし、「敵国の発射の準備が正確に察知できるのか。実質はこちらの先制攻撃ではないか」という反論があったためか、最近は「反撃能力」と言い換えて、「敵の第一撃があった場合、敵の攻撃基地をたたいて第二撃を阻止する」という説明に変わっています。

説明の変わるのがあやしいところですが、どちらの説明でも敵国と日本との関係しかいっていません。
超大国である同盟国アメリカ抜きの議論など無意味です。

敵国というのはたぶん中国のことですが、自衛隊の力だけで中国の攻撃力を無力化できるはずがありませんし、自衛隊の情報収集能力で敵国の攻撃準備を察知できるとも思えません。
つまり敵国の情報収集をするのはアメリカで、攻撃の決定をするのもアメリカです。自衛隊の攻撃能力はアメリカの攻撃能力を補うだけです。

そもそも中国や北朝鮮が日本を先制攻撃するとは考えられません。
それよりも考えられるのは、台湾や朝鮮でアメリカが戦争をすることです。そのとき、自衛隊の攻撃能力を利用しようというのがアメリカの狙いです。

日本が攻撃されていないのに自衛隊が他国を攻撃することは法的に可能かというと、日本政府は可能と考えています。
国際法学会のサイトに田中佐代子法政大学法学部准教授がエキスパートコメントとして「敵基地攻撃能力と国際法上の自衛権」という文章を書いていて、そこにはこうあります。
本コメントでは基本的に、他国によるミサイルを手段とした武力攻撃が日本に対して発生し、日本が個別的自衛権の行使として敵基地攻撃を行うという状況を仮定して検討してきました。日本政府の説明によれば、敵基地攻撃能力についての考え方は、集団的自衛権が根拠となる場合にも変わりません。例えば米国に対するミサイル攻撃が(例えばグアムを標的として)発生した場合、それが日本の存立危機事態に該当することも含め諸条件を満たせば、集団的自衛権の行使として敵基地攻撃を行うことが法理的には可能(ただし現状では実行は想定していない)という立場と理解できます。

安倍政権が新安保法制をごり押しで通したのも、こうした場合に備えるためだったわけです。

もともと日米安保体制では、日本はあくまで専守防衛で、敵基地攻撃はアメリカの役割でした。
日本が攻撃能力を持つということは、アメリカの負担の一部を肩代わりするか、アメリカの能力を補強するということです。
日本が一国で攻撃能力を行使することなどありえません。


野党やマスコミは「専守防衛に反する」と言って批判していますが、それよりもこれはカネの問題であり、アメリカが負担するか日本が負担するかという問題です。
アメリカは経済が好調で、財政赤字もGDP比で日本の半分ぐらいしかありません。
いくら同盟国のアメリカから求められたとはいえ、毎年1%ぐらいしか経済成長せず、財政赤字がふくらみ続ける国が防衛費をふやすのはあまりにも愚かです。