村田基の逆転日記

親子関係から国際関係までを把握する統一理論がここに

2022年09月

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東京都教育委員会は9月22日、2023年度の都立高入試で英語のスピーキングテストを導入すると正式決定しました。
もっとも、立憲民主党はスピーキングテストの結果を入試に反映させないようにする条例案を提出しているので、最終決定とはいえません。
スピーキングテストそのものは都内の公立中学の3年生全員を対象に11月27日に実施されることが決まっています。その結果が入試に反映されるかされないかがわからないという状況です。

そもそもスピーキングテストで「英語を話す力」が客観的に評価できるのかという疑問があります。
AIが採点するのではなく、人間が採点するのですから、採点者の主観が入る可能性が排除できません。
それに、これにはベネッセコーポレーションが東京都教育委員会と共同で開発した「ESAT-J(English Speaking Achievement Test for Junior High School Students)」というテストが使われるのですが、一民間企業が関係するということにも疑問を感じます。

文部科学省は英語の「読む・聞く・話す・書く」の技能の習得がたいせつだとして、大学入学共通テストに2020年度から英語民間試験を導入しようとしたことがありました。そのときは受験生の費用負担が大きくて、地域による不公平もあるということで反対論が高まり、そこに萩生田光一文科相が「身の丈に合わせてがんばって」と発言したことが炎上して、民間試験活用は見送られました。
東京都教育委員会は文科省が大学入試でやろうとして失敗したことの高校入試版をやるわけです。


どういうテストかと調べたら、東京都教育庁の「中学校英語スピーキングテスト(ESAT-J)」というサイトにテストの見本がありました。

テストのときは、テスト専用のタブレット端末・イヤホンマイク・防音用イヤーマフの3点が渡されます。受験生はタブレットに表示された問題を見て、答えを発声して録音し、その録音に基づいて採点が行われます。

テストはAからDまで四つのパートに分かれています。

パートAは、示された英文(4~5行ぐらい)を声に出して読むというものです。
英文を読むだけですから、発音が評価されることになりそうです。

日本人のほとんどは長年英語を勉強してきたのに英会話が苦手というコンプレックスを持っています。私は、スピーキングテストなどをすると、受験生が発音の正確さにこだわって、ますます会話が苦手になるのではないかと懸念していましたが、その懸念が的中したかと思いました。
しかし、それはパートAだけで、そのあとのパートは違いました。

パートBは、画面に出たイラストや文字を見て、それについての英語の質問に英語で答えるというものです(一部、こちらが英語で質問するというのもあります)。これは「聞く力」と「話す力」の両方が問われるものです。比較的やさしい問題ですが、ブロークンでも話さなければ点数にならないので、話す力はつくかもしれません。

パートCは、四コママンガを見て、その内容を英語で伝えるというものです。これはなかなかむずかしいと思いました。
その四コママンガを示しておきます。
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パートDは、比較的長い英文の質問を聞いて、自分の意見を述べ、そう考える理由も説明するというものです。
これは質問のキーワードが理解できないとまったく答えられないという悲惨なことになる場合があります。

名前は「スピーキングテスト」ですが、パートBとパートDは半分「ヒアリングテスト」でもあります。文科省の「読む・聞く・話す・書く」の習得がたいせつだとする方針に従ったもののようです。


このテストはそれなりに意味のあるものですが、受験生にとってはそうとうな負担になります。
たとえば、自分の発声がちゃんと録音されているか心配だとか(最初に録音されていることを確認する作業があるのですが)、しばらく考える時間があって、「ピッ」という合図があってからしゃべりだすのですが、あせるといきなりしゃべってしまうかもしれません。
ですから、受験者は過去問をやって準備しておくことが必須です。
それになによりも、採点者の主観が入ってしまうことの不安はぬぐえないでしょう。


そのためアンケート調査では反対の声が圧倒的です。
ある教育業界ニュースサイトが実施したアンケートでは、有効回答111ではありますが、保護者の9割が反対で、教員免許保有者でも8割が反対という結果が出ています。
反対理由には「採点基準が不明確」「導入の経緯が不透明」「教育現場を混乱させる」「採点内容が非公開のため学習にも生かせないし異議申し立ても出来ない」というものがあります。

なぜこのように反対が多いかというと、東京都教育委員会が保護者や受験生の意見をまったく聞かずにことを進めてきたからです。
とりわけ当事者である受験生の意見を聞くことは欠かせません。
東京都教育委員会も文科省も、生徒の意見を聞かずに受験制度改革や教育改革を進めてきたのは、生徒の人権(意見表明権)侵害です。

それから、今は翻訳ソフトが進歩して、専用の翻訳機もありますし、スマホの翻訳アプリもあります。
「話す・聞く」を重視する今のやり方は時代遅れかもしれません。
時代に合った英語力はなにかというのはむずかしい問題ですが、いちばん真剣に考えているのは若い人ですから、やはり若い人の意見を聞くことがたいせつです。


「英語を話す力」のような客観的評価のむずかしいことを入試に取り入れたのは、文科省や東京都教育委員会が生徒に「英語を話す力」を身につけさせたいからです(おそらく日本人の英会話コンプレックスからきています)。
入試で見るのは客観的評価のできる基礎学力だけにするべきです。
「話す・聞く」のような部分は各自の判断で身につけていけばいいことです。


教師が生徒に勉強させたいときに言う魔法の言葉は「ここテストに出るぞ」です。
これを言われると生徒はみな必死でノートをとります。

今の入試改革は、要するに「ここテストに出るぞ」です。
「入試にスピーキングテストがあるぞ」と言って、生徒にスピーキングの勉強をさせ、「英語を話す力」を身につけさせようというのです。
たぶんその効果はあって、生徒はある程度「英語を話す力」を身につけるでしょう。

しかし、勉強はテストのためにするものではありません。
今の日本は、国を挙げて勉強の目的を見失っています。

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9月11日の沖縄県知事選で、米軍普天間基地の辺野古移設反対を訴えていた玉城デニー候補が当選しましたが、当選したからといって辺野古移設が止まるわけではなく、たぶん今まで通り進んでいくでしょう。

しかし、辺野古新基地建設には軟弱地盤の問題などがあり、いくら費用がかかるかわかりません。
2013年の防衛省の見積もりでは2310億円でしたが、2020年時点では9300億円かかると試算され、沖縄県は2018年の時点で総工事費2.5兆円にのぼると試算しています。
完成時期も2030年以降と見られ、米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)は2020年11月の報告書で軟弱地盤の問題から「完成する可能性は低い」と指摘しています。

米軍基地を日本の金でつくり、自然破壊をし、沖縄の基地負担軽減にはほとんどならず、最初の目的だった普天間基地の危険性除去も何年先になるかわからないというおかしなことになっています。
辺野古移設に向かって突き進む日本政府は、まるでインパール作戦に突き進む日本軍みたいです。
これは根本から考え直さなければなりません。


そもそもは普天間基地は住宅地がすぐ近くにあって、その危険性が問題になっていたところに、沖縄米兵少女暴行事件がきっかけで基地の縮小を要求する声が高まりました。
橋本龍太郎首相が基地問題の解決に乗り出し、対米交渉をしました。そして、成果を得たかに見えました。
「米軍普天間飛行場の移設問題はもう26年、なぜこんなにこじれたのか 歴代政権のキーパーソンを訪ね歩いて分かったこと」という記事にはこう書かれています。
 1996年4月12日、首相官邸で駐日米大使モンデールと共に記者会見に臨んだ首相橋本龍太郎は、満面の笑みを浮かべてこう述べた。「沖縄の皆さんの期待に可能な限り応えた」「最良の選択ができた」。日米両政府による米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)返還合意は、文字通りのサプライズ発表だった。

 しかし、あれから約26年。返還はいまだに実現せず、当時の高揚感との落差は大きい。その後の政権は同県名護市辺野古の代替施設建設を巡り、誤算と迷走を重ねた。米国の意向を優先するあまり、反対を貫く沖縄との溝は深まる一方だ。
このとき橋本首相は「満面の笑み」を浮かべていたのです。交渉を成功させたつもりだったのでしょう。
それがどうしてこじれてしまったのでしょうか。


橋本首相は通産相時代にきびしい日米通商交渉を経験して、こちらが筋の通った主張をすればある程度アメリカも理解してくれるという見通しを持っていて、それで普天間基地問題の交渉にも乗り出したのかと思われます。
しかし、通商交渉と基地問題の交渉はまったく違いました。通商交渉は通産省の管轄ですが、基地問題は外務省と防衛省(当時は防衛庁)の管轄です。
具体的なことは1995年11月に日米間で設置されたSACO(沖縄に関する特別移動行動委員会)という組織で議論されました。

モンデール大使との共同記者会見から5か月後、橋本首相は沖縄で講演した際、海上基地建設検討を表明しました。
代替基地建設は最初から決まっていたことですが、たぶん橋本首相はそれほど重大なことと思っていなくて、それで「満面の笑み」になったと思われますが、ここにきて代替基地問題の困難に直面したのかもしれません。

1996年12月にSACO最終報告がまとめられ、「海上施設の建設を追求」と明記されました。
しかし、ここからも迷走します。
海上施設は高くつくことから、埋め立てではどうかとか、陸上でいいのではないかとか、さらにはこれでは沖縄の基地負担軽減にならないので県外ではどうかとか議論されました。

もちろんこうした議論は軍事的な面を押さえておかなければなりません。しかし、軍事の専門家というのはしばしばアメリカ軍や防衛省の代弁者なので、信用できません。
私が唯一信用していたのが軍事ジャーナリストの神浦元彰氏です。神浦氏は沖縄やグアムを取材し、沖縄県民の心情に寄り添った解説はわかりやすく、新聞を読んでいるだけではわからないことがわかりました。神浦氏は、沖縄米軍の主力はグアムにシフトしているので、広大な嘉手納弾薬庫地区に弾薬はほとんどなく、ここに新基地を建設すればいいという説でした。2016年に亡くなったのは残念でなりません。


辺野古移設の議論が迷走したのは、革新の大田昌秀沖縄県知事が政府の方針に従わなかったからだというように、これを日本政府対沖縄県の問題としてとらえることが今にいたるも行われています。
しかし、これは日本政府対アメリカ政府の問題でもあります。

アメリカ政府が、広い、使い勝手のいい基地を日本につくらせようとするのは当然です。
では、日本側が、狭い、安価な基地をつくろうとして交渉したかというと、必ずしもそうではありません。広い、高価な基地をつくってもうけようという建設業者や利権政治家がいたからです。

さらに外務省や防衛省もアメリカの要求に応えようとしました。これが通産省などとまったく違うところです。
外務省や防衛省は米軍にできるだけ沖縄にいてほしいのです。
モンデール大使ものちにこのように語りました。

海兵隊の沖縄駐留「日本が要望」元駐日米大使
【平安名純代・米国特約記者】米元副大統領で、クリントン政権下で駐日米大使を務めたウォルター・モンデール氏が1995年当時、米軍普天間飛行場の返還交渉で、日本側が在沖縄米海兵隊の駐留継続を望んでいたと述べていたことが12日までに分かった。同年に発生した少女暴行事件の重大性を米側が認識し、海兵隊の撤退も視野に検討していたが、日本側が拒否し、県内移設を前提に交渉を進めていたことになる。

 モンデール氏の発言は米国務省付属機関が2004年4月27日にインタビューした口述記録に記載。1995年の少女暴行事件について「県民の怒りは当然で私も共有していた」と述べ、「数日のうちに、問題は事件だけではなく、米兵は沖縄から撤退すべきかどうか、少なくともプレゼンスを大幅削減すべきかどうか、米兵の起訴に関するガイドラインを変更すべきかどうかといったものにまで及んでいった」と回顧している。

 その上で「彼ら(日本政府)はわれわれ(在沖海兵隊)を沖縄から追い出したくなかった」と指摘し、沖縄の海兵隊を維持することを前提に協議し、「日本政府の希望通りの結果となった」と交渉過程を振り返った。交渉相手として橋本龍太郎首相(当時)と河野洋平外相(同)の名前を挙げているが、両氏の具体的な発言は入っていない。
(後略)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/44046

海兵隊員は荒くれ者ぞろいでよく事件を起こすので、沖縄では「海兵隊は出ていけ」という声が高まっていましたが、日本政府は沖縄の要望と真逆のことをしていたのです。

日本人は、安保条約があるとはいえ、「アメリカはほんとうに日本を守ってくれるのか」という不安を持っています。これは日本政府も同じです。
日本に駐留米軍がいる限り、日本が外国から攻められたときアメリカも応戦せざるをえません。しかし、駐留米軍が少なくなると、短期間に撤収することが可能になりますし、場合によっては駐留米軍を見捨てる判断もあるかもしれません。
そうならないように日本政府はできるだけ多くの米軍に駐留してもらいたいので、普天間の代替基地もむしろ大きいものにしたいわけです。
沖縄は中国に近すぎるので、アメリカは沖縄米軍の主力をグアムに移転する戦略でしたが、日本は駐留米軍の経費負担を増額して、移転を最小限のものにしてもらっています。

日本の米軍駐留経費負担は、金額でも比率でも他国と比べて突出しています。

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日本政府は駐留米軍が縮小されるのを望んでいないということを理解していなかった鳩山由紀夫首相は「代替基地は国外、最低でも県外」と言って、官僚に背後から撃たれて倒れました。


辺野古に新基地建設をするのはあまりにもばかばかしいということで、日本政府が「普天間基地を返還してもらうが、代替基地はつくらない」とアメリカに表明すればどうなるでしょうか。
アメリカ軍としてはそれほど困らないはずですが、アメリカ政府は「飼い犬に手をかまれた」と思って怒り、同盟関係は破綻するかもしれません。
少なくともアメリカ政府は日本の国土に自由に基地を設置する権利を失いたくないので、なかなか日本の言い分を認めないでしょう。
ですから、日本は「同盟離脱」カード、あるいは「安保廃棄」カードを切る用意がなければ交渉できません。
もちろんブラフではだめで、実際に日米同盟を離脱する覚悟が必要です。

野党が主張する「日米地位協定の見直し」も同じことです。「同盟離脱」カードを持って交渉することです(立憲民主党の公約は「日米地位協定の改定を提起します」という後退した表現になっていました)。



ここで考えなければならないのは、日本は日米同盟なしでは生きていけないのかということです。
もちろんそんなことはありません。
日本は世界第5位の軍事力を有し、島国ですから、自衛隊の力だけで十分に国は守れます(自衛隊の意識改革と装備改革は必要です)。日本が中国軍やロシア軍に占領されるなどありえないことです。

ただ、ここでひとつの問題があります。
日本が日米同盟を離脱して、すべての国と等距離になると、どの国がいちばん脅威かというと、アメリカです。アメリカは世界最強の軍隊を持ち、世界のどの国にも侵攻する力があり、戦後になってからも数えきれないくらい他国に侵攻してきました。
もし日本がアメリカと戦争すれば、第二次大戦で回避した「本土決戦」をやることになります。
いや、その前にアメリカの核攻撃を受けるでしょう。
アメリカは日本に原爆を2発落としているので、3発目を落とすハードルはかなり低いはずです。

敗戦がトラウマになっている日本人は、アメリカをなにより恐れています。ですから、日本は「窮鳥懐に入れば猟師も殺さず」を期待してアメリカの懐に飛び込む作戦をとってきました。
それが長期化して、今ではアメリカの懐から出ることが考えられなくなったのです。

しかし、アメリカもそんなにひどいことはしません。これまでの戦争も、内戦に介入したとか、よほどひどい独裁体制の国に侵攻したとかです。
日本が平和、人権、民主主義をたいせつにする国として国際社会から評価されていれば、アメリカを恐れることはありません。

世界を見回しても、日本のようにアメリカに依存している国はありません。
一人一人の日本人が心理的アメリカ依存を脱することが、沖縄の基地問題解決の第一歩です。

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統一教会の活動の特徴のひとつは「正体を隠す」ことです。

自分は信者だと言わないし、所属する団体名も言わないで相手に接近し、セミナーに誘ったり集会に呼んだりして人間関係をつくってから、信者に勧誘します(こうしたやり方は「信教の自由」を侵害しているという判例もあります)。
いったん信者になると、マインドコントロールされてなかなか抜けられなくなり、多額の献金をしたり、詐欺的な活動に従事させられたりします。

統一教会が政治家に接近するときも「正体を隠す」ということをしているようです。
統一教会の人間がボランティアとして選挙運動の手伝いをしたいといって政治家の事務所に出入りし、さらには政治家の秘書になるという手口です。
もっとも、政治家事務所の人間が統一教会の人間を見抜けないわけがなく、「選挙活動に統一教会の人間が関わっていたかどうかわからない」などと言う政治家は信用できません。


それからもうひとつ、「教義を隠す」ということもあります。

統一教会は韓国人の文鮮明が創始したものなので、その教義はまったく韓国本位のものです。
教義によれば、韓国はアダム国で、日本はエバ国です。韓国がアダム国である理由は、神に選ばれた民族の国であり、メシア(文鮮明)の生まれた国であるからで、日本がエバ国である理由は、韓国を植民地にして人々を苦しめたからです。日本はまた、サタンの国でもあります。日本は罪をつぐなうために韓国と世界の統一教会に対してすべてを捧げなければならないとされます。
文鮮明は「エバ国家日本をアダム国家韓国の植民地にすること」「天皇を自分にひれ伏させること」などとも発言しています。

あからさまな反日教義です。布教のときにこれが隠されたのは当然です。
ただ、マスコミが報道してこなかったのは不思議です。霊感商法や合同結婚式がワイドショーで騒がれたときも、こうしたことは報道されませんでした。

ですから、反日教義のことを知らない政治家もいるでしょう。
そういう政治家が「統一教会が今も被害者を生むようなことをしているとは知らなかったので、統一教会と関係を持つのが悪いこととは思わなかった」と言い訳するのはわからないでもありません。

問題は、安倍晋三元首相や萩生田光一政調会長のように統一教会と深く関わってきた政治家が反日教義のことを知っていたのかどうかです。
反日教義を知りながら統一教会とつきあっていたとすれば、売国政治家と言われてもしかたありません。

ただ、いつ知ったのかという問題はあります。
最初は知らないでつきあって、ズブズブの関係になってから知って、そのときにはもう抜けられなくなっていた――とすれば、多少同情できなくもありません。


ところが、統一教会の反日教義は決して隠されていたわけではありませんでした。
1978年に共産党議員が国会で取り上げていました。

安倍元首相が賛意を示した旧統一教会の「仰天教義」保守系支持者らはなぜダンマリ?
「私たちの友好団体が主催する行事に安倍元首相がメッセージなどを送られたことはございます。(統一教会教祖の)ハン・ハクチャ総裁が主導されている世界平和運動に対して、賛意を表明してくださっていた」

 安倍晋三元首相の銃撃事件を受け、11日に都内で会見を開いた「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)・日本教会会長の田中富広氏。殺人容疑で送検された山上徹也容疑者(41)の母親が教会員だと明らかにした上で、安倍元首相と旧統一教会の間につながりがあったことも認めた。

 安倍氏が教祖に「賛意」まで表明していた統一教会の教義とは一体、どういうものなのか。

 1978年6月1日の衆院地方行政委員会で、共産党議員が教義である「原理講論」や関連書籍など読み上げている。内容はこうだ。

「韓国語の原本によりますと(略)こういうことが書いてあるのです。有史以来、全世界にわたって発達してきた宗教と科学、即ち、精神文明と物質文明とは韓国を中心として、みな一つの真理のもとに吸収融合され、神が望まれる理想世界のものとして結実しなければならないのである(略)人類の父母となられたイエスが韓国に再臨されることが事実であるならば、その方は間違いなく韓国語を使われるであろうから、韓国語はまさに祖国語となるであろう。したがってすべての民族はこの祖国語を使用せざるをえなくなるであろう。こう言っているのです」
「男性韓国が、真理の国ということができるとすれば、女性日本は産業の国といえるのではなかろうか。深遠な真理をもって語りかけてくる男性に、女性は何をもって返答をするであろうか。婚姻の約束が成った後は、仲人を立て、調度品を将来の夫のもとに納める習いがあるではないか。日本は、二十年間の驚異的な産業の発展を有している。この産業・経済を男性韓国へ結納として収める歴史的必然性がある」
(後略)
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/308325

このように国会でも議論されていたのですから、安倍元首相らが知らないはずはありません。
ということは、自民党と統一教会は祖父の岸信介の代からズブズブの関係で、安倍元首相らはそれを引き継いだのでしょう。


では、統一教会を日本に呼び込んだ岸信介は、そのときから統一教会の教義を知っていたのでしょうか。
統一教会が日本で宗教法人として認定されたのが1964年で、国際勝共連合が設立されたのが1968年です。
岸信介は統一教会の反共主義を利用したのだと言われます。
日本の右翼勢力は、神道系はありますが、キリスト教系はほとんどなく、統一教会は未開地に広がることができました。
それに既成右翼は過激なので、大衆運動ができません。左翼に対抗できる大衆運動ができるのは勝共連合だけでした。
ちなみに新安保法制が国会で議論されているころ、左派系の学生団体SEALDsが注目されましたが、それに対抗して結成されたUNITEは勝共連合の学生がつくったものです。

岸信介は統一教会を日本に引き入れる以上、公安からも情報を得ていたでしょうから、反日教義についても知っていた可能性があります。

既成右翼は自民党の言う通りには動いてくれませんが、統一教会や勝共連合は自民党の言う通りに動いてくれて、選挙運動もしてくれます。自民党にとってこれほどありがたい存在はありません。
そして、統一教会としては行き過ぎた布教活動や霊感商法などをしても警察は見逃してくれるという利益を得ました。
お互いに利益のある関係が築けて、そこにおいては反日教義のことなどどうでもいいことになりました。


その結果、日本の政界の真ん中に反日教義を持つ韓国系のカルト教団が居座ってしまったのです。

政界だけではありません。右翼論壇の中にも統一教会や勝共連合は重きをなしました。
そのため、統一教会の反日教義が明らかになった今でも、右翼論壇やネトウヨから統一教会を批判する声はまったく上がりません。


ここでもう一度、岸信介の時代に戻ると、「反共」という大義名分はあったにしても、反日教義を持つ外国の宗教団体と手を結ぶというのは、右翼や愛国者としてはもちろん、日本の政治家としてあってはならないことでした。
その結果、霊感商法や合同結婚式や高額献金の問題が起こりました。これらはみな反日教義が具現化して、日本人が韓国人に収奪されたものです。
そして、反日教義を持つ宗教団体とつながっていたことを理由に安倍元首相が日本人に銃撃されました。

やはり外国勢力は日本の政界から排除しなければなりません。

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9月1日は「子どもの自殺の特異日」だということで、子どもに対して自殺を思いとどまるように、親などに対して配慮するようにと、マスメディアやSNSなどで呼びかけが行われました。

夏休みの宿題ができていない子どもは、9月1日に登校するのはつらいでしょう。それが自殺の最後の引き金になるかもしれません。
いつも学校でいじめられている子どもも、9月1日に死にたくなるかもしれません。

しかし、「特異日」に合わせた呼びかけにどれほどの意味があるでしょうか。
そもそも子どもの自殺の原因は学校だけにあるのではありません。

文部科学省の調査によると、2020年度に全国の小学校、中学校、高校の児童生徒の自殺は415人と、19年度の317人と比べて31%の大幅な増加となりました。
コロナ禍で休校やリモート授業がふえて、子どもは学校から確実に解放されているはずですが、その結果自殺がふえたのです。

子どもの生活の場は、単純にいって家庭と学校のふたつです。
休校がふえたことで子どもの自殺がふえたということは、家庭には学校以上のストレスがあるということです。
いや、コロナ禍で生活不安や健康不安が増大したということもあるので、そう単純にはいえませんが、子どもにとって家庭と学校のどちらがたいせつかと考えれば、学校よりも家庭に決まっています。


2019年版『自殺対策白書』によると、10代の子どもの自殺の原因は次のようになっています。

自殺原因
「毎日新聞」2019年7月16日 夕刊より

一見すると、「家庭」より「学校」のほうが自殺原因として多いようですが、「学校」の内訳を見てみると、「学業不振」「進路の悩み」「入試の悩み」と成績に関する悩みの多いことがわかります。
子どもが成績が悪いだけのことで自殺するとは思えません。親からよい成績をとってよい学校に進学しろと強い圧力をかけられているのが自殺の原因でしょう。とすると、これは「家庭」に分類してもいいはずです。

つまり子どもにとっては、家庭には自殺にいたるような強いストレスがあるのです。
どんなストレスかというと、親に虐待されるストレスです。

子どもが親から虐待されることは自殺の大きな原因になりますが、子どもは自分が虐待されているとなかなか認識することができません。
暴力などの身体的虐待はまだ認識しやすいですが、心理的虐待はほとんど認識できず、自分がなにを悩んでいるのかすらわかりません。
ある程度年齢がいくと、「自分の親は毒親だった」という認識を持つことも可能になりますが、十代ではまずむりです。

ですから、子どもの自殺を防ぐには、「特異日」の呼びかけも無意味とはいいませんが、虐待されている子どもに届く言葉が必要です。


ところが、世の中やマスコミは普通の家庭で子どもが虐待されているという事実を認めようとしません。

たとえば8月20日、東京都渋谷区の路上で中学3年の少女(15歳)が53歳の母親と19歳の娘を包丁で刺し、重傷を負わせ、逮捕されるという事件がありました。
少女は最初、「死刑になりたくて、たまたま見つけた2人を刺した」と供述したということが伝えられ、さらに「自分の母親と弟を殺すための練習だった」とか「母親の性格に自分が似てきたのが嫌になり、母親を殺そうと思った。残される弟も可哀そうなので、一緒に殺そうと考えていた」などの供述も伝えられました。
少女は母親と弟の3人家族です。不登校気味で、学校に行っても保健室ですごしていましたが、塾には通っていたそうです。

以上のことから、なにが少女を凶行に駆り立てたかと考えると、母親から虐待されていたとしか考えられません。
そのことはマスコミもわかっているはずですが、それでも「家庭でトラブルがあったわけではない」とか「友人関係が犯行につながった可能性も否定できない」とか書いて、家庭内の虐待から目をそらそうとしています。

「死刑になりたかった」というのは自殺願望です。このケースは傷害事件を起こしたために世間の目にふれることになりましたが、親から虐待されて自殺して、世間の目にふれないというケースはいっぱいあるはずです。


そうした自殺を防ぐにはどうすればいいかというと、子どもの虐待をなくすことですが、家庭内のことだけに手の打ちようがないのが実情です。
ですから、虐待されている子どもはみずから家庭から逃げ出す必要があります。家庭内で煮詰まったときは、とりあえず家を出ることです。

家を出てどうするかというと、少女の場合は「神待ち」ということをします。
家出した少女がSNSなどで自分を泊めてくれる人物を探すことが「神待ち」です。
ただ単に泊めてくれる場合もありますが、性行為を要求される場合もあり、犯罪に巻き込まれる可能性もあります。
普通の家庭で虐待が行われているということを世の中が認めないために、こんな危険なことをするしかないのです。


DV被害にあっている女性のために“駆け込み寺”といわれるDVシェルターがあるように、子どものための“駆け込み寺”が必要です。

いや、そういうものがまったくないわけではありません。
一般社団法人Colabo(代表仁藤夢乃)という組織が十代の少女を救うための相談、食事提供、シェルターでの宿泊支援、シェアハウスの運営などの活動をしています。

ところが、私はColaboの活動を紹介する記事を何度か読んだことがありますが、ほとんどは「家出した少女が性被害などにあうのを防ぐ活動」というふうに紹介されています。
間違いではありませんが、活動の基本は「家庭で虐待されている少女の支援」です。
それはColaboのホームページの次の言葉を見てもわかります。

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要するに家庭で虐待された子どもが家を出てさまざまな被害にあうのですから、根底の問題は家庭内の虐待です。
ところが、マスコミや世間は根底の問題を認識しようとしないので、家出や性被害の報道はひじょうにわかりにくいものになります。

家出少女の問題はこのようにある程度可視化されていますが、家出少年のほうはどうでしょうか。
家出少年は不良グループに入って、犯罪への道を歩んでいく可能性が高いと思われます。


Colaboは組織だからいいのですが、個人で同じようなことをすると犯罪扱いされてしまいます。
たとえば、こんな事件がありました。

【驚き】“家出”女子高生を自宅に住まわせた夫婦を逮捕 容疑は「誘拐」現金3万円受け取る コレは「駆け込み寺」?
家出した女子高校生を自宅に住まわせた疑いで、30代の夫婦が逮捕された。家出少女の駆け込み寺のような存在だったのか。ただ、この夫婦の逮捕容疑は「誘拐」だった。

会社員の山口良太容疑者(34)と妻の明子容疑者(38)は、今月5日から11日にかけて、家出した17歳の女子高生を、東京・葛飾区亀有の自宅に住まわせたとされる。警視庁亀有署の発表によると、甘言を用いて誘惑し、誘拐した疑いが持たれている。要は「甘い言葉でだまして、自宅に連れ込んだ」ということだ。

この日、被害者の女子高生は、些細なことで母親とケンカをして、家を飛び出したそうだ。そして、友人A子に相談したところ、山口容疑者夫婦を紹介されたという。実は、A子も、かつて、家出をした際に、容疑者夫婦の自宅に泊めてもらったことがあったとのこと。

被害者の女子高生は、この日から7日間に渡って、容疑者夫婦宅で生活することになる。容疑者夫婦からは「親が悪いね」と声をかけられていたという。驚いたことに、女子高生は、交際相手の”彼氏”から工面してもらった現金およそ3万円を、生活費として、2人に渡していたそうだ。
8月11日になり、心配した母親が、亀有署管内の交番に届け出たことで、事件が発覚。亀有署が捜査を開始したところ、その日のうちに、A子にたどり着いた。A子が、容疑者夫婦を紹介したことを打ち明けたため、あっという間に、”誘拐”事件は解決へ。

明子容疑者が逮捕されたのは、11日午後11時すぎ。翌12日午前7時前には、良太容疑者も逮捕された。容疑は、未成年者誘拐だった。保護された女子高生は、ケガなどはしておらず、衰弱した様子もなかったという。

被害者の女子高生が、軟禁状態だったのか、連れ回されていたのかなど、7日間の生活実態については分かっていない。これまでの調べに対して、良太容疑者は「17歳の女の子を自宅にかくまって誘拐したことに間違いない」と容疑を認めている。
一方、明子容疑者は、「誘拐はしていない。女の子をかくまっていただけ」などと否認しているとのこと。A子の証言により、2人が、他の未成年者についても、同様に、自宅に住まわせていた可能性があることが判明。亀有署は、今後、余罪も捜査する方針だ。

容疑者夫婦宅は、家出少女の”駆け込み寺”のような存在だったのか。ところで「本人が望んで、容疑者夫婦宅に住んでいても、誘拐事件に当たるのか」などと疑問に思う人がいるかもしれない。

被害者は、小中学生ではなく、17歳の高校2年生だ。しかし、未成年者略取・誘拐罪では、保護者の監護権を侵害したことになるため、親が訴え出れば犯罪となる。親の同意なく、勝手に連れ出したり、連れ回したら、住まわせたら、それだけで「略取・誘拐」に当たるとされる。
近年、少年少女を、連れ回したり、自宅に住まわせるなどして事件となるケースが、増加している。警察庁によると、略取・誘拐事件(未成年以外も含む)の認知件数は、2011年に153件だったのに対して、去年は389件にのぼった。この10年で2倍以上も増えた。

SNSの普及により、悪意のある大人が、少女らに接触しやすい”環境”が整ったのが要因とされる。被害者がわいせつ事件に巻き込まれたり、長期間の監禁や殺人などに発展することもある。一方で、「誘拐」の自覚のないまま、家出を手助けしているケースも少なくない。”無責任な大人”の行動が、重大事件を引き起こす恐れもある。
https://www.fnn.jp/articles/-/403715

記事には「些細なことで母親とケンカをして」と書かれていますが、そんなことで長期の家出をするはずがなく、家庭内で虐待されていたと思われます。
ですから、もしどうしても誰かを逮捕するなら、女子高生の母親のほうです(父親のことは不明)。
女子高生を善意でかくまった夫婦が逮捕されたのは理不尽です。

これは「神待ち」に善意で対応する人がいるという例ですが、ただ、個人でやると犯罪と区別がつかなくなります。
ある程度組織化して、公的機関とも連携した形でやるべきでした。


「子ども食堂」というのがあって、貧困家庭の子どもや孤食を余儀なくされている子どもに食事を提供する活動が行われています。
これは単に栄養補給するだけでなく、子どもに愛情の補給をするという意味でも価値ある活動です。

同様のやり方で「子ども宿泊所」というのをつくって、子どもがいつでも泊まれる場を提供する活動ができないだろうかと思います。
そういう場があれば救われる子どもがいっぱいいますし、もちろん自殺防止にもなります。

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