
ジャニーズ事務所の名前を変えるべきか否かが議論になっています。
この名前のままではジャニー喜多川氏による性加害が想起され、被害者が傷つくというのです。
しかし、ジャニーズ事務所はジャニー氏がつくったもので、所属タレントもほとんどはジャニー氏が採用して育成したわけですから、全体がジャニー氏の色に染まっています。名前だけ変えてもたいした意味はありません。
世の中には、ツイッター(現X)で「#ジャニーズ事務所を応援します」というハッシュタグが一時トレンド入りするなど、ジャニーズ事務所やその所属タレントを応援する人がたくさんいます。
一方、ジャニー氏の性加害を告発した被害者を誹謗中傷する人もいて、応援する人との区別がつきにくくなっています。
ジャニー氏のしたことをすべて否定するから、こうした混乱が生じるのです。
ジャニー氏のしたことを、よいことと悪いことに区別しないといけません。
ジャニー氏の性加害はもちろん悪いことです。芸能事務所の社長という圧倒的な権力を背景に、12,3歳という若い子も含まれる少年たちを自身の欲望の犠牲にしたわけで、少年の心に深い傷を残したのは確実です。
しかし、その一方で多数の男性アイドルを育てて、「ジャニーズ帝国」と言われるほどの一大勢力を築き上げました。
このように多数の男性アイドルを育てたのはジャニー氏の功績として評価するべきでしょう。
ジャニー氏が巧みだったのは、フォーリーブスを皮切りに、シブがき隊、少年隊などのようにグループとして売り出したことです。
このグループ戦略は、モーニング娘。やAKB48、さらには韓国アイドルにも広がりました。
おそらく芸能界を一人で生き抜いているアイドルは、若いファンには身近に思えないのでしょう。グループ活動をしているアイドルなら、中学生や高校生にとって親しみがあります。
それから、歌と踊りだけでなく、しゃべりの技術を向上させて、バラエティ番組に進出させたのも成功しました。今ではバラエティ番組はジャニーズのタレントだらけです。
そのような売り出し方もだいじですが、やはりいちばんだいじなのはそのアイドル自身の魅力です。
ほとんどはジャニー氏が選んだのでしょうから、その目利きがすごいといえます。
ジャニーズのアイドルはそれぞれ個性的で、多様な人間が集まっていますが、全体として一定の傾向があります。
学校のクラスでいえば、優等生タイプはいません。あまりイケメンでない、ひょうきん者はいます。不良っぽいのもいますが、ほんとうの不良みたいなのはいません。
そしてなによりも、体の大きい筋肉質の男、つまりマッチョはいません。これがなによりの特徴です。
つまり「男くさい」のはいなくて、全員が「少年っぽい」のです。
これはEXILEと比べてみれば歴然とします。EXILEは全員マッチョで、「男くさい」のがそろっています。ジャニーズと好対照です。
なお、不思議なことにジャニーズのアイドルは何歳になっても「少年っぽい」ままで、「貫禄」がつきません。
こうした特徴は、おそらくジャニー氏の好みによるのでしょう。
ジャニー氏は、好みの少年を事務所に入れて、ハーレムを形成しました。ハーレムからその日の気分に合わせて少年を選び出して、夜の相手をさせていたわけです。
ジャニー氏の性癖は、同性愛でかつ小児性愛ということになるでしょう。
同性愛自体は問題ではありませんが、小児性愛は、その欲望を実行に移すと犯罪になってしまいますから、めったに満たされることはありません。
ところが、ジャニー氏は自由にその欲望を満たしていたわけです。
世界広しといえども、現代にこのように欲望を満たしていた人間はほかにいなかったのではないでしょうか。
ジャニーズ事務所のアイドルが芸能界を席巻したことで、世の中の価値観が変わりました。
ジャニーズのアイドルのような「少年っぽい」男がいい男、もてる男ということになりました。
「男くさい」男、マッチョな男は人気がなくなりました。
若い男性は女性にもてるために、ジャニーズのアイドルのような男を目指したので、日本の若い男性全体がジャニー氏のハーレムの方向にシフトしたことになります。
ジャニーズ事務所の社名を変えるより前に、日本はジャニー氏によって変えられていたのです。
もっとも、「男くさい」男から「少年っぽい」男へのシフトは、平和な時代が長く続いたことが主な原因です。ただ、ジャニー氏がその変化を加速したということはいえるでしょう。
この変化がよいか悪いかといえば、私自身はよいと思っています。軟弱な男が増えたということで、それだけ戦争しにくくなるからです。
なお、秋元康氏プロデュースのAKBグループ、坂道グループのアイドルにも一定の傾向があります。
学校のクラスでいえば、不良、ギャル、ヤンキーっぽいのはまったくいなくて、優等生っぽいのばかりです。
おそらくこれは秋元氏の好みなのでしょう。
日本のアイドル文化は、2人の男の個人的な好みによって決定されているのです。
そして、このアイドル文化は日本社会のあり方にも影響を与えているに違いありません。