
衆議院の東京15区、島根1区、長崎3区の三つの補欠選挙が4月16日に公示されましたが、東京15区には9人が立候補し、自民党が独自候補の擁立を見送ったために、野党同士のにぎやかな戦いになりました。
やはり候補者(政党)が多いという多様性はたいせつです。それだけで盛り上がります。
自民党は裏金問題などで支持率が下がっていますが、かといって野党にも期待できないという声があります。
では、野党はどうすればいいのかということを、この選挙を通して考えました。
東京15区補選の候補者は以下の通りです(届け出順)。
・諸派「NHKから国民を守る党」新人の弁護士福永活也氏(43)・無所属新人でファーストの会副代表の乙武洋匡氏(48)=国民民主、ファーストの会推薦・参政党新人の看護師吉川里奈氏(36)・無所属元職の元環境副大臣秋元司氏(52)・日本維新の会新人の元江崎グリコ社員金沢結衣氏(33)=教育無償化を実現する会推薦・諸派「つばさの党」新人でIT会社経営の根本良輔氏(29)・立憲民主党新人で共産、社民党の支援を受ける元江東区議の酒井菜摘氏(37)・諸派「日本保守党」新人で麗沢大客員教授の飯山陽氏(48)・無所属新人の元総合格闘家須藤元気氏(46)
序盤の世論調査では、立憲民主党の酒井菜摘候補がリードしているようです。
立民党は野党第一党のために反自民票の受け皿になりやすく、酒井候補は昨年12月の江東区長選に立候補して惜敗したので、地元有権者への知名度もあります。
しかし、16日に行われた候補者のネット討論会には、酒井候補だけ出席しませんでした。リードしている立場としての選挙戦術なのでしょうが、政策面などで訴えることがあれば出席してもよかったはずです。
野党第一党というポジションにあぐらをかいている感じがします。
都民ファーストの会は乙武洋匡氏を擁立しました。著名人だけに有利ではないかと思われましたが、いろいろと逆風が吹いています。
自民党が推薦するという話がありましたが、結局自民党の推薦はなくなり、都民ファーストの会と国民民主党の推薦となりました。
小池百合子都知事の学歴詐称問題が蒸し返されたのもマイナスです。
そして、なによりも乙武候補の過去の女性問題が蒸し返されています。
2016年、自民党が参院選に乙武氏を擁立しようとしましたが、週刊新潮が乙武氏は過去に5人の女性と不倫していたと報じて、結局選挙出馬はなくなりました。このときは、奥さんに介助してもらいながら不倫するとはけしからんというのが世論の大勢でした。
2022年7月の参院選に乙武氏は無所属で立候補し、落選しましたが、このときは不倫はほとんど問題にされませんでした。
そして今回の立候補では、また昔の不倫が蒸し返されています。2022年には問題にならなかったのに、どうして今回は問題になるのでしょうか。
2022年の参院選は無所属での立候補でしたから、あまり当選の可能性はないと見られていました。しかし、今回は都民ファーストの会の推薦で、ほかに有力候補もいないことから当選の可能性は高そうでした。
多くの人は身体障害者に同情的ですが、それは自分より下の人間と見ているからです。身体障害者が自分と対等の人間として自己主張してくるのは許せません。私はこのことを、車椅子の人が映画館の一般席で鑑賞しようとしたためにトラブルになったことを「車椅子ユーザーはなぜ炎上するのか」という記事に書いたときに感じました。
乙武候補の女性問題が取り上げられる背景には障害者への差別意識があるのではないでしょうか。
日本維新の会は金沢結衣候補を立てました。
維新の馬場伸幸代表は応援演説において「立憲の国会議員を何人増やしても一緒、立憲には投票しないで」と語りました。また、国会での記者会見では「立憲民主党は、叩き潰す必要がやっぱりある」と語りました。
馬場代表は昨年7月のネット番組で、自民党と維新の関係について「第一自民党と第二自民党でいい」
と語っています。
今回の選挙に自民党の候補がいないから立憲民主党を攻撃しているわけではなくて、もともと自民党よりも立憲民主党を主要な敵と見ているわけです。
馬場代表はまた、「共産党はなくなったらいい」とも言っていて、反共主義です。
国民民主党もまた反共主義です。玉木雄一郎代表は「立民が共産と組むなら候補者調整や選挙協力はできない」と言っています。
与野党対決よりも野党同士の対決のほうが優先されています。これでは自民党を追い詰めることはできません。
日本保守党は飯山陽候補を擁立しました。
日本保守党は、自分では第二自民党とは言っていませんが、実態は第二自民党です。安倍首相を支持していた保守層が自民党に愛想を尽かしてつくった政党です。
ですから、野党共闘などは最初から考えていないでしょう。
世論調査によると急速に支持を伸ばしているそうです。
代表の百田尚樹氏は68歳で、つい最近も腎臓ガンの手術をしたばかりです。今のところ個人政党みたいなものですから、全国的な政党に育てていく気力と体力があるかが問題です。
もし飯山候補が当選はむりでも、次点ぐらいになったら、次の総選挙で自民党から立候補しようと考えていた人たちが保守党の看板のもとに集まってきて、自民党票を食って、自民党が大幅に議席をへらすという展開も考えられます。
案外これが政権交代の近道かもしれません。
野党がまったくまとまらないのは、政権を獲ってやろうという気概がないからです。野党の立場に安住しています。55年体制の社会党みたいなものです。
立民の泉健太代表は昨年11月に「5年で政権交代を考えている」と言ったことがあります(批判されて、のちに「次の衆院選で政権交代」と言いましたが)。
野党は野党の立場に安住し、与党は与党の立場に安住する中で、日本は長く停滞し、挙句には裏金問題などが起こってきました。
野党の中ではれいわ新選組だけが、小党ではありますが、政権をねらう迫力を感じさせますが、この補選には関わっていません。
今回の選挙では政策論議も低調です。
各政党の政策を比較する「Japan・choice」というサイトを参考にすると、各政党にそれほどの対立点がありません。
各党が力を入れて主張しているのは、国民への保障や給付を増やし、負担は少なくという当たり前のことです。あえて対立点を探すと、一律給付か所得制限付き給付かということぐらです。
消費税についても、与党は現状維持ですが、野党はすべて引き下げないし廃止です。
改憲問題については各党で意見が違います。しかし、選挙ではほとんど議論になっていません。有権者の関心がないのでしょう。敵基地攻撃能力を保有することになったので、改憲してもしなくてもいっしょということもあります。
外交問題についての議論も低調です。日本の国力が低下して、国民も各政党も外交力に自信を失っているからでしょうか。
与野党対決の選挙においては、野党は与党の政策の間違いを攻撃し、正しい政策を提示することです。それしかありません。
ところが、今はそういう対立点がない状況です。
与党が理想的な政治を行っていれば別ですが、対立点がないはずがありません。
対立点がないのは、野党の腰が引けているからです。
たとえば普天間基地の辺野古移設については、与党は移設続行ですが、野党はすべて再交渉ないし移設中止です。
日米地位協定についても、与党は現状維持ですが、野党はすべて見直しないし改定です。
つまり与野党の対立点が明白です。
ところが、野党はこの対立点をアピールすることはしません。
日米地位協定について与党が現状維持なのは、アメリカが改定に応じないことがわかっているからです。
立民党も鳩山政権のときに経験して、ある程度わかっています。つまり立民党が公約に「日米地位協定の改定」を掲げているのは見せかけで、本気ではないのです。
「ドイツやイタリアはアメリカとの地位協定を改定して不利な点を改善しているのに、日本はなぜできないのか」と言われますが、別に日本政府が怠慢なわけではなくて、それがアメリカ政府の方針なのでしょう。
おそらくアメリカ政府はドイツ人やイタリア人よりも日本人を差別しているのでしょう(リメンバー・パールハーバーという感情もあるでしょう)。
ですから、政権交代しても同じことです。
もっとも、地位協定改定がまったく不可能なわけではありません。
日本政府が日米同盟離脱カードを用意して交渉すればいいのです。
それには中国やロシアとの外交も関係しますし、なによりも日本国民の心理的な対米依存を克服しなければなりません。
野党は国民意識を変えると考えただけで腰が引けるのでしょう。
しかし、それをやらないと日本再生はありません。
日米関係は経済の問題でもあります。これまで日本は日米自動車摩擦や日米半導体戦争などで負け続けて経済大国の地位を失ってきたのです。
国民も日本外交があまりにも対米従属的であることは感じているはずです。
対米依存を続けてもなにもいいことはないと国民を説得することは不可能ではありません。
それから、野党は教育改革を争点にするべきでしょう。
日本の学校教育は悪化の一途をたどっています。
小中高校と特別支援学校における2022年度のいじめの認知件数は、前年度から1割増の68万1948件に上り、過去最多となりました。
小中学校における2022年度の不登校児童生徒数は29万9048人となり、前年度から22.1%増加しました。
文部科学省の調査によると、小中高校における2022年度の自殺者は計411人で、21年度の368人から43人増加しました(過去最多は20年度の415人)。
ほかにブラック校則の問題もあります。ブラック校則はほとんど改善されないか、むしろ悪化している感じすらあります。
誰がどう見ても、日本の学校教育は大失敗です。
野党がここを追及しないのは不思議です。
子どもには選挙権がないですし、おとなには体罰賛成、管理教育賛成という人も多いので、追及しても得はないと思っているのでしょうか。
しかし、「日本をよくする」ということを考えれば、教育をよくすることは欠かせません。
あと、家族の問題もあります。
自民党は夫婦別姓に反対する理由に「家族の絆が壊れる」ということを挙げています。
ですから、家族の問題も政治の争点になりえます。
もっとも、「政治が家庭に介入する」ということを嫌う人もいるので、それなりの理論構築をしなければなりません。
野党はもっと自民党の家族観を追及するべきです。
対米関係、学校教育、家族関係を与野党の争点にすると、政治は盛り上がるはずです。
なお、つばさの党の根本良輔候補は、自分の選挙活動そっちのけでほかの候補の選挙活動を妨害して、数々のトラブルを起こしています。立候補者に警察は手を出しにくいということを利用した悪質な行為です。こうした行為には対策が講じられるべきです。
今回の選挙に自民党の候補がいないから立憲民主党を攻撃しているわけではなくて、もともと自民党よりも立憲民主党を主要な敵と見ているわけです。
馬場代表はまた、「共産党はなくなったらいい」とも言っていて、反共主義です。
国民民主党もまた反共主義です。玉木雄一郎代表は「立民が共産と組むなら候補者調整や選挙協力はできない」と言っています。
与野党対決よりも野党同士の対決のほうが優先されています。これでは自民党を追い詰めることはできません。
日本保守党は飯山陽候補を擁立しました。
日本保守党は、自分では第二自民党とは言っていませんが、実態は第二自民党です。安倍首相を支持していた保守層が自民党に愛想を尽かしてつくった政党です。
ですから、野党共闘などは最初から考えていないでしょう。
世論調査によると急速に支持を伸ばしているそうです。
代表の百田尚樹氏は68歳で、つい最近も腎臓ガンの手術をしたばかりです。今のところ個人政党みたいなものですから、全国的な政党に育てていく気力と体力があるかが問題です。
もし飯山候補が当選はむりでも、次点ぐらいになったら、次の総選挙で自民党から立候補しようと考えていた人たちが保守党の看板のもとに集まってきて、自民党票を食って、自民党が大幅に議席をへらすという展開も考えられます。
案外これが政権交代の近道かもしれません。
野党がまったくまとまらないのは、政権を獲ってやろうという気概がないからです。野党の立場に安住しています。55年体制の社会党みたいなものです。
立民の泉健太代表は昨年11月に「5年で政権交代を考えている」と言ったことがあります(批判されて、のちに「次の衆院選で政権交代」と言いましたが)。
野党は野党の立場に安住し、与党は与党の立場に安住する中で、日本は長く停滞し、挙句には裏金問題などが起こってきました。
野党の中ではれいわ新選組だけが、小党ではありますが、政権をねらう迫力を感じさせますが、この補選には関わっていません。
今回の選挙では政策論議も低調です。
各政党の政策を比較する「Japan・choice」というサイトを参考にすると、各政党にそれほどの対立点がありません。
各党が力を入れて主張しているのは、国民への保障や給付を増やし、負担は少なくという当たり前のことです。あえて対立点を探すと、一律給付か所得制限付き給付かということぐらです。
消費税についても、与党は現状維持ですが、野党はすべて引き下げないし廃止です。
改憲問題については各党で意見が違います。しかし、選挙ではほとんど議論になっていません。有権者の関心がないのでしょう。敵基地攻撃能力を保有することになったので、改憲してもしなくてもいっしょということもあります。
外交問題についての議論も低調です。日本の国力が低下して、国民も各政党も外交力に自信を失っているからでしょうか。
与野党対決の選挙においては、野党は与党の政策の間違いを攻撃し、正しい政策を提示することです。それしかありません。
ところが、今はそういう対立点がない状況です。
与党が理想的な政治を行っていれば別ですが、対立点がないはずがありません。
対立点がないのは、野党の腰が引けているからです。
たとえば普天間基地の辺野古移設については、与党は移設続行ですが、野党はすべて再交渉ないし移設中止です。
日米地位協定についても、与党は現状維持ですが、野党はすべて見直しないし改定です。
つまり与野党の対立点が明白です。
ところが、野党はこの対立点をアピールすることはしません。
日米地位協定について与党が現状維持なのは、アメリカが改定に応じないことがわかっているからです。
立民党も鳩山政権のときに経験して、ある程度わかっています。つまり立民党が公約に「日米地位協定の改定」を掲げているのは見せかけで、本気ではないのです。
「ドイツやイタリアはアメリカとの地位協定を改定して不利な点を改善しているのに、日本はなぜできないのか」と言われますが、別に日本政府が怠慢なわけではなくて、それがアメリカ政府の方針なのでしょう。
おそらくアメリカ政府はドイツ人やイタリア人よりも日本人を差別しているのでしょう(リメンバー・パールハーバーという感情もあるでしょう)。
ですから、政権交代しても同じことです。
もっとも、地位協定改定がまったく不可能なわけではありません。
日本政府が日米同盟離脱カードを用意して交渉すればいいのです。
それには中国やロシアとの外交も関係しますし、なによりも日本国民の心理的な対米依存を克服しなければなりません。
野党は国民意識を変えると考えただけで腰が引けるのでしょう。
しかし、それをやらないと日本再生はありません。
日米関係は経済の問題でもあります。これまで日本は日米自動車摩擦や日米半導体戦争などで負け続けて経済大国の地位を失ってきたのです。
国民も日本外交があまりにも対米従属的であることは感じているはずです。
対米依存を続けてもなにもいいことはないと国民を説得することは不可能ではありません。
それから、野党は教育改革を争点にするべきでしょう。
日本の学校教育は悪化の一途をたどっています。
小中高校と特別支援学校における2022年度のいじめの認知件数は、前年度から1割増の68万1948件に上り、過去最多となりました。
小中学校における2022年度の不登校児童生徒数は29万9048人となり、前年度から22.1%増加しました。
文部科学省の調査によると、小中高校における2022年度の自殺者は計411人で、21年度の368人から43人増加しました(過去最多は20年度の415人)。
ほかにブラック校則の問題もあります。ブラック校則はほとんど改善されないか、むしろ悪化している感じすらあります。
誰がどう見ても、日本の学校教育は大失敗です。
野党がここを追及しないのは不思議です。
子どもには選挙権がないですし、おとなには体罰賛成、管理教育賛成という人も多いので、追及しても得はないと思っているのでしょうか。
しかし、「日本をよくする」ということを考えれば、教育をよくすることは欠かせません。
あと、家族の問題もあります。
自民党は夫婦別姓に反対する理由に「家族の絆が壊れる」ということを挙げています。
ですから、家族の問題も政治の争点になりえます。
もっとも、「政治が家庭に介入する」ということを嫌う人もいるので、それなりの理論構築をしなければなりません。
野党はもっと自民党の家族観を追及するべきです。
対米関係、学校教育、家族関係を与野党の争点にすると、政治は盛り上がるはずです。
なお、つばさの党の根本良輔候補は、自分の選挙活動そっちのけでほかの候補の選挙活動を妨害して、数々のトラブルを起こしています。立候補者に警察は手を出しにくいということを利用した悪質な行為です。こうした行為には対策が講じられるべきです。