村田基の逆転日記

親子関係から国際関係までを把握する統一理論がここに

2026年01月

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昨年7月の参院選で参政党の「日本人ファースト」が有権者に刺さったことから、今回の総選挙でも各党が外国人政策を公約に入れています。
いや、政党の公約以前に、すでに高市政権がさまざまな外国人政策を打ち出しています。
これが大いに問題です。
この政策によって外国人犯罪が増える可能性があります。

どんな外国人政策があるのか、AIにまとめてもらいました。
すでに実施された政策は次のようなものです。

■  内閣官房に 「外国人との秩序ある共生社会推進室」 を設置(2025年)
■ 在留管理の強化(実態確認の厳格化)
- 不法滞在・制度悪用への取り締まり強化
- 留学生・受け入れ企業への監督強化
- 在留目的と実態(就労・居住・納税)の整合性を重視
■ 外国人の医療費未払い・国保滞納の把握強化
■ 外国人による土地・不動産取得の実態調査


政府が方針として決定して、近く実施されるのは次のようなものです。

■ 永住許可の要件強化
- 日本語能力の追加
- 収入基準の明確化
- 税・保険料の滞納がある場合は更新拒否も視野
■ 国籍取得(帰化)の要件強化
- 居住期間を 5年以上 → 原則10年以上 に引き上げ
■ 在留カードとマイナンバーカードの一体化(2026〜2027)
- 税・保険料・医療費の未納状況を一元管理
- 未納がある場合、入国・更新を認めない措置も検討
■ 外国人向け「法制度・文化学習プログラム」の義務化検討
- 永住許可や在留資格審査時に受講を義務づける案
■ 留学生のアルバイト管理の厳格化
- 入国時の一括許可を廃止し、勤務時間などを厳密に管理


一言でいえば「外国人にきびしい」政策です。
こういう政策を喜ぶ人が多いので、そういう人たちに迎合しているのです。まさにポピュリズムです。

しかし、「外国人をへらす」という方針は示されていません。基本は「共生社会推進」です。
自民党も「外国人をへらす」とは言っていません。
参政党は外国人にきびしそうですが、実際は「外国人、移民の受け入れ総量規制」を掲げています。
「総量」がどのくらいかということは示されていないようですが、神谷宗幣代表は昨年8月28日の配信番組で「緩やかに外国人を受け入れていくのは10%以下ではないか、との概算をわれわれはしている」と述べました。
日本維新の会は、在留外国人数に数値目標を設ける「量的マネジメント」を掲げていますが、「量的」の内容がわかりません。ただ、日本維新の会が昨年9月に公表した「移民問題」に関する政策提言で「10%を超えると地域社会でさまざまな社会問題が顕在化し、緊張が高まることは明白だ」としています。
「10%」という数字は、鈴木馨祐前法相が昨年7月の講演で「15年後の2040年ごろには外国人比率が10%まで上昇する可能性がある」と言ったことを踏まえているのかもしれません。
つまり政府と財界でそういう見通しを立てているのでしょう。
なお、現在の外国人の数は日本の人口の約3%ですから、3倍以上に増えるわけです。


外国人にきびしい声が高まっているのは、外国人犯罪がSNSなどでずいぶんと騒がれたからです。
実際のところ、外国人犯罪の実態はどうなのでしょうか。

昨年11月、警察庁が「昨年の外国人の犯罪率は日本人の1.72倍だった」という数字を参院内閣委員会で発表しました。
これについては「多い」「少ない」と意見が交錯しましたが、「弁護士JPニュース」が『「外国人の犯罪率は日本人の1.72倍」は本当か? 性別・年齢を考慮して統計を分析すると…』という記事を書いていて、それによると、犯罪率は若い男性が高く、外国人には若い男性が多いので、年齢・性別で調整すると「刑法犯の外国人の犯罪率(検挙人口比)は日本人の1.36倍」となるということです。
1.36倍が多いか少ないかといえば、もともと日本人の犯罪率が世界的にひじょうに低く、日本社会に帰属意識の薄い外国人であることを考えると、かなり低いといえるのではないでしょうか。
それに、外国人の数は増え続けているのに、外国人犯罪は減少傾向にあります。
SNSで言われる「外国人犯罪は深刻」というのは間違いです。

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ヨーロッパでは移民のせいで治安が悪化したと右翼政党が主張していますし、日本の保守派も主張しています。
実際に移民のせいで治安が悪化したかどうかは検討する必要があります。


パリ在住の元フジテレビアナウンサーの中村江里子氏が18年前に窃盗にあったということで、その体験が『中村江里子 パリの自宅でプロの窃盗犯の被害に遭った過去、フランス人からの「あなたが悪い」に反省』という記事に書かれていました。
自宅でベビーシッターの女性に開けっ放しにしていたバッグの中の財布からお金を盗まれたそうです。あとでわかったのですが、家の中からいろんなものがなくなっていました。その女性は半年後に警察に捕まりましたが、「いろんなフランス人から“他人が家に入るのに目立つところにバッグを置いてたあなたが悪い”と言われたの」ということです。

記事には書いてありませんが、ベビーシッターの女性はアフリカか中東あたりからきた移民でしょう。
多くのフランス人は移民は物を盗むのが当たり前と思っているわけです。
中村江里子氏は移民に対する特別な認識がなく、普通に人間として信頼していました。

ここで問題なのは、移民が犯罪をするからフランス人は移民を信用しないのか、それとも、フランス人が移民を信用しないから移民は犯罪をするのか、ということです。
日本に来る外国人の犯罪率が低いことを考えると、原因はフランス人の側にあると見るべきでしょう。
フランスに来た移民も、母国にいたときはそんなに犯罪はしていなかったはずです。フランスに来て、差別され、不信の目で見られ、不当な貧富の差を感じたことで犯罪をするようになったのです。
ヨーロッパの白人は根深い人種差別の感情を持っていますし、アフリカ、アジア、アメリカを植民地支配してきたことの反省もしていません。移民はそうした白人の傲慢さに反発しています。


「われわれは労働力を呼んだが、やってきたのは人間だった」という有名な言葉があります(スイス人の作家マックス・フリッシュの言葉です)。
この言葉は「労働力」は「人間」ではないという認識を表現しています。
「人間でない労働力」があるのかというと、ありました。「奴隷」です。
ローマ帝国は多数の奴隷を連れてきて労働させ、市民は楽をしていました。。
ヨーロッパ人はいまだにその感覚を引きずっているのです。
人間扱いされない移民が不満を募らせるのは当然です。窃盗ぐらいは「やられたらやり返す」という正義の感覚でしょう。


日本は植民地支配はしましたが、日本人に人種差別の感情はあまりないので、これまで外国人の犯罪率は低く抑えられてきました。
ヨーロッパは日本のやり方を学ぶべきです。
ところが、逆に日本がヨーロッパのやり方を学ぼうとしています。
政府の方針には「取り締まり強化」「管理強化」「要件強化」「義務化」といった言葉が並んでいます。
外国人は日本に来てこういうきびしい扱いを受けると、自分は歓迎されていない、差別されているという思いになります。そういう思いは犯罪のハードルを下げます。

なぜ日本がヨーロッパの真似をするかというと、日本の保守派が欧米のマイナス面を日本に持ち込んでいるからです。
保守派の多くはトランプ支持です。
日本保守党は、自民党がLGBT理解増進法を成立させたことに百田尚樹氏がブチ切れて結成した政党ですが、LGBT差別は日本の伝統になく、キリスト教的なものです。
最近はモスク建設に反対する声がけっこうあります。キリスト教会建設反対の声はありません。
そして、保守派は外国人(移民)差別を持ち込みました。SNSで外国人犯罪が増加しているとか、外国人が奈良公園の鹿を蹴っているといったデマが拡散しました。参政党の「日本人ファースト」は「外国人差別」を言い換えたものです。
こうした外国人差別が高市政権の政策に影響しました。


高市政権が外国人差別の政策を行うなら、当然日本にいる外国人の数もへらすべきです。それなら一貫していますし、差別政策の弊害もあまりないでしょう。
しかし、今は外国人差別の政策を行いつつ外国人の数を増やすという矛盾したことをしています。
高市政権が保守派にも経済界にもいい顔をしたいからです。
その結果、日本で差別された外国人が増えます。そうすると治安が悪化します。
それは決して外国人のせいではありません。日本政府の差別政策のせいです。

もちろん「共生社会」を実現する方向に行けば、治安が悪化することはありません。


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テレビで高市首相の姿を見ると、いつも笑顔です。
首相官邸に歩いて入るときのような、なんでもない場面でも笑顔で、それも過剰な笑顔です。
高市首相は首相になったころから過剰な笑顔を見せるようになりました。
首相になれば愛想笑いなど必要なく、重々しい表情をしていたほうがふさわしいと思うのですが。
高市首相はなぜこんなに笑顔になるのでしょうか。

人が意識的に笑顔になるのは、自分に敵意がないことを示して、相手から好意を得たいと思うからです。
女性が男性よりも笑顔が多いのは、立場が弱いからです。
そうすると、高市首相の笑顔が過剰なのは、内面の弱さを意味しているのでしょうか。

高市首相は「台湾有事は存立危機事態」発言が中国から非難されても、かたくなに撤回しません。
経済安全保障相だった2023年、放送法の政治的公平に関する文書を「怪文書の類」と言い、総務省の行政文書であることが明らかになると、今度は「捏造」と言い、最後まで撤回しませんでした。
こういう態度を見ると、高市首相は強そうです。

トランプ大統領は関税をかけると言明しても、反発が強かったり、株価が下がったりすると、関税を撤回するということを何度もしてい.るので、こういう態度をTACO(タコ)といいます。TACOとは「Trump Always Chickens Out」の略です。
しかし、だからといってトランプ大統領が弱いとはいえないでしょう。むしろ強いから平気で撤回できるのだともいえます。
高市首相がかたくなに発言を撤回しないのは、弱さを隠すためだともいえるでしょう。


高市首相はタカ派で、言葉も力強いので、強い人間のように見えますが、私が疑問を持ったのは、半身不随で車椅子生活の夫(山本拓氏)を首相になってからも介護していると知ったからです(これは「高市首相の信じられない介護生活」という記事で書きました)。
いくらなんでも首相の激務をしながら夫の介護はむりです。いや、できたとしても、するべきではありません。
なぜ介護を続けているかというと、夫から要求されているからでしょう。この夫は「こだわり」のある人で、高市首相は「絶対に介護保険を使わないとか、訳のわからないことを言っているものですから、公的な支援が受けられない」と語っています。

高市首相は年末に赤坂議員宿舎から首相公邸に引っ越した10日ほどあとにXにこのような投稿をしています。
私達の公邸への転居に関する報道を目にした夫は、落ち込んでいる様子でした。
それは、大手報道機関も含めて、「転居を前に公邸はバリアフリー対応の改修も実施された」という誤った報道を目にしたからです。
「僕のせいで、多額の公金が使われたのか」と。

仮に貴重な税金を使って改修工事をする必要があるのであれば、私達は公邸に引っ越しませんでした。

念のため、公邸の管理をしている官邸事務所に確認いたしました。

そうしましたところ、やはり、石破総理がお住まいになられていた時期から私の転居までの間に行われた作業は、室内清掃など、居住者が替わることに伴う通常の修繕であり、バリアフリー工事は一切含まれていないということでした。

夫にも伝えて、明るくリハビリに励んで全快して欲しいなと願っています。早く調理師資格を持つ夫の得意料理も食べたいし・・・。
午後8:32 · 2026年1月9日
かりに公費でバリアフリーの工事がされたとしても、なぜそんなに落ち込むのか理解できません。
自民党は「自助・共助・公助」というのが基本理念ですが、夫は「公助」に強い拒否感があるのでしょう。
ということは、介護なども全部「自助」つまり家族でやるべきだと考えて、それで夫は高市首相に介護を求めているのでしょう。
しかし、夫に介護を求められても、高市首相が「首相をしながら介護はむりだから、施設に入ってちょうだい」と言えばいいだけのことです。

なぜ高市首相は夫の介護要求を断らないのでしょうか。
それは保守思想のゆえと思われます。


保守思想というのは、「男尊女卑」「夫唱婦随」「良妻賢母」という言葉に表されるように、男女平等ではなく、男性を上、女性を下に見るものです。
杉田水脈元衆院議員はかつて衆院本会議場で「男女平等は反道徳の妄想です」と言ったことがありますが、自民党は今回の総選挙で杉田元議員を公認しました。

そういう思想の高市首相は、家庭内のことについては夫に従わざるをえません。
もっとも、夫も「公的な支援」を拒否しながら、首相という公人中の公人に自分の介護をさせようというのですから、論理が破綻しています。
普通は周りの人間が夫をいさめるものですが、周りの人間もみな保守思想の持ち主なので、「家族の介護は嫁がするもの」でこり固まっているのでしょう。

「保守派の女性首相」というのは、その存在自体が矛盾しています。
たとえば高市首相は女性天皇に反対していますが(正確には女系天皇に反対しているそうです)、女性首相が女性天皇を否定するという矛盾したことになっています。

そんな「男尊女卑」思想の高市首相が男の中でここまで出世してこられたのは、自分より大きな存在の男を後ろ盾にしてきたからです。ずっと安倍氏を後ろ盾にし、安倍氏の死後は麻生太郎氏に乗り換えました。

しかし、高市首相は基本的に女性である自分を卑下しているので、その自信のなさが過剰な笑顔になって現れるのでしょう。


高市首相の外交力はどうでしょうか。
高市首相は昨年10月にマレーシアで行われたASEAN首脳会議に出席し、笑顔で首脳たちとふれ合う姿が報じられて、コミュニケーション能力が高いと評価されました。
これは「日本家の嫁」として近所づき合いをうまくやったということです。

アメリカは日本にとって“本家”のようなものなので、高市首相はやはり「日本家の嫁」としてうまくふるまいました。
トランプ大統領のようなマッチョな男に従うのは高市首相の得意とするところなので、米空母の艦上でトランプ大統領の横で水を得た魚のように飛び跳ねました。

習近平主席もやはりマッチョな男ですが、ここは高市首相は対等の立場で交渉しなければなりません。それは高市首相が苦手とするところです。
高市首相が「台湾有事は存立危機事態」という失言をしてしまったのはしかたがないとして、そのあとが問題です。
高市首相は早い段階で「撤回しない」と言ったきりなにもしませんが、中国は訪日観光自粛、水産物輸入規制、レアアース輸出規制と続けてカードを切ってきました。
高市首相は「個別の案件について申し上げたのは軽率だったので、もう言いません」と自分の間違いを認めているのですから、水面下で「発言を撤回すればレアアース輸出規制を撤回してくれるか」といった交渉もできますし、表立って習近平主席との首脳会談を申し込むという手もあるでしょう。
日中関係は重要なので、なにか手を打たなければなりません。
ところが、高市首相はフリーズしたままです。
習近平のような、マッチョというか、男らしい男と対等の交渉をすることができないのです。

高市首相は「日本家の嫁」としての笑顔のふるまいが日本国民には人気ですが、笑顔だけでは外交はできません。

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1月21日、安倍晋三元首相を殺害した山上徹也被告の裁判員裁判で、求刑通り無期懲役の判決が下されました。
この裁判では、被告の生い立ちの問題、宗教二世の問題、統一教会と安倍元首相の問題が注目されました。どの問題をとっても被告の罪を軽減する要因ですが、判決ではほとんど考慮されませんでした。
科学に背を向けた“暗黒裁判”です。

アメリカで2001年に出版されたジョナサン・H・ピンカス著『脳が殺す』によると、約150人の殺人犯を調査した結果、大多数に前頭葉に神経学的損傷が疑われる形跡のあったことがわかりました。また、ほとんどに幼児期に被虐待体験がありました。「訳者あとがき」には「本書で紹介されている多くの殺人者の例を見るかぎり――彼らが等しく語るその被虐待体験のすさまじさを読むかぎり、犯した罪は罪として、訳者は彼らひとりひとりに同情を禁じえなかった」と書かれています。
その後、被虐待体験が脳の萎縮・変形を生むことがわかりました。今では日本の厚労省のホームページにも「厳しい体罰で、前頭前野が萎縮」「暴言で聴覚野が変形」などとはっきり書かれています。

このような脳科学や心理学の研究結果がある以上、法学や裁判のあり方も変わらなければなりませんが、裁判はいまだに旧態依然です。
脳に異常がある可能性のある被告を「責任能力がある」と認定し、「残忍」とか「身勝手」とか「人間性のかけらもない」などと評価して裁いています。

最近は被虐待体験だけでなく、もっと幅広くとらえた「逆境的小児期体験(ACE)」という概念が使われています。
被虐待体験というと、身体的虐待、心理的虐待、性的虐待などに限られますが、逆境的小児期体験は親の離婚、親との離別、母親への暴力、家族の自殺、家族に薬物やアルコール依存者がいる、家族に収監者がいる、自身が養護施設などに収容されたことがあるなどが含まれます。こうした体験でも脳の萎縮・変形が起こる可能性があり、PTSDやうつ病の原因になります。
それだけでなく逆境的小児期体験は糖尿病、狭心症・心筋梗塞、肺炎・気管支炎、脳卒中、ぜん息、アトピー性皮膚炎、慢性腎臓病、慢性肝臓病、がんなどのリスクを高めます。
また、ACEスコアが高い人ほど社会経済的に厳しい状況にあり、未婚・離別の経験者が多く、社会的に孤立し、子どもを虐待する傾向にあることもわかりました。


山上被告の生い立ちはどのようなものだったでしょうか。
『山上容疑者を凶行に駆り立てた一族の「壮絶歴史」』という記事と1月22日付朝日新聞の記事を参考にまとめてみました。

山上被告の母方の祖父は建設会社を経営していて、父親はその会社で働いていました。
1981年、母方の祖母が白血病で急死し、その3年後、山上被告が4歳のときに父親が自殺しました。
山上被告の兄は生まれてすぐにリンパ腫であることが判明、抗がん剤の副作用で片目を失明しました。
母親は1991年に統一教会に入信し、父親の生命保険金6000万円を3回ぐらいに分けてすべて献金しました。
祖父は献金をやめさせようと母親と争い、包丁を持ち出すこともあったようです。その祖父も山上被告が高校3年のときに病死し、母親の献金はさらにエスカレートしました。
山上被告は高校の卒業アルバムに将来の夢は「石ころ」と書きました。「ろくなことがないだろうということです」と説明しました。
母親は自己破産し、山上被告は大学進学を諦めて自衛隊に入り、そこで自殺未遂をします。
兄は統一教会を信仰する母親に怒りを持ち、たびたび家庭内でトラブルを起こしていましたが、山上被告が35歳のときに自殺しました。

悲惨な人生です。4歳のときに父親が自殺していますが、そのころから家庭内の空気はずっとひどいものだったでしょう。
私の想像ですが、祖父が強権的に家族を支配していて、母親もその被害者だったのではないかと思います。

ともかく、ひどいレベルの逆境的小児期体験です。「親ガチャ」でいえば大外れです。
山上被告の犯行時の年齢は41歳なので、いつまでも幼児期の体験のせいにしてはいけないという意見もあるでしょうが、幼児期の体験はいつまでもあとを引きます。
愛情をいっぱい受けて育ち、努力したことが報われるという体験を繰り返した人は、人生街道をのぼっていけますが、悲惨な環境で育った人は、努力するということすら困難です。
努力しない人に対しては、非難するのではなく、支援することが必要です。本人も自分の過去を振り返ることで、人生を立て直すことは可能です。


今回の裁判は、弁護側は宗教二世の問題と安倍元首相と統一教会の問題を強く訴えたようで、生い立ちの問題は軽視されていた感じがします。しかし、弁護側が生い立ちの問題を強調したとしても、判決は変わらなかったでしょう。
朝日新聞の「判決要旨」から一部を引用します。
幼少期から青年期にかけての各種体験が、人格や思考などに一定の影響を与え、犯行の背景や遠因になったことは否定できない。
しかし、教団や関係者に激しい怒りの感情などを抱いたとしても、殺人行為を決意して実行したことには大きな飛躍があると言わざるを得ない。
安倍氏を襲撃対象としたのは、経済状況が逼迫し、教団幹部の襲撃をこれ以上待てないという自己の都合を優先させたものだ。安倍氏に殺害を正当化できるような落ち度は見当たらず、このような短絡的で自己中心的な意思決定過程についても、生い立ちの大きな影響は認められない。

「大きな飛躍がある」と書かれていますが、なぜ大きな飛躍があるのかは説明されていません。
「短絡的で自己中心的な意思決定過程」とも書かれていますが、なぜ短絡的で自己中心的になったのかも説明されていません。
なぜ説明されていないかというと、ここには「自由意志」が想定されているのです。
「自由意志」とはなにかというと、まるでトランプのジョーカーみたいに、人間は好きに意思決定できるという考え方です。
つまり「犯意」を持つことも持たないことも自由にできるということで、それを前提に刑事裁判は行われています。
しかし、人間の意志決定も自然法則に従っていて、原因と結果の連鎖の中にあります。
自由意志の存在は科学的にも否定されています。

中世の人間は、うじ虫やボウフラはなにもないところから“わく”と信じていたそうです。司法関係者は今も、人間の頭の中に自由意志が“わく”と信じているのです。


今の裁判はすべての罪を被告に背負わせ、被告が罪を犯すに至った大きな原因である逆境的小児期体験から目をそむけさせるものです。
凶悪犯罪の原因には逆境的小児期体験があることを社会全体が認識し、世の中から逆境的小児期体験をなくすことに社会全体で取り組んでいかなければなりません。

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1月19日に高市首相の解散表明会見がありましたが、今なぜ解散するのかがまったくわかりません。
30分たっぷりとしゃべりましたが、空疎な言葉ばかりでした。
そのあとの質疑応答も大した内容がありません。あらかじめ当てられる記者とその質疑の内容が決まっていたようです。
怪しい宗教団体からの多額の献金とか、韓国で明らかになってきた統一教会と自民党や高市首相との関係とか、「台湾有事は存立危機事態」発言の撤回はないのかとか、聞いてもらいたかったところです。

高市首相は会見の冒頭でこのように語りました。
国民の皆様、私は、本日、内閣総理大臣として、1月23日に、衆議院を解散する決断をいたしました。
 なぜ、今なのか。
 高市早苗が、内閣総理大臣で良いのかどうか、今、主権者たる国民の皆様に決めていただく、それしかない。そのように考えたからでございます。
これが高市首相の語る解散の理由です。新聞各紙も「高市早苗が首相で良いかどうか決めてもらう」ことが解散の理由だと報じています。
しかし、高市内閣は各種世論調査で70%前後の高い支持率を得ています。国民は高市氏が総理大臣でいいと思っているわけです。わざわざ解散するまでもありません。ましてや600億円だかの費用をかけ、政治空白を生んでの選挙です。

しかし、周りの人間にはわからなくても、高市首相自身にはちゃんと解散する理由があるはずです。それはなんでしょうか。

麻生太郎副総裁は「支持率が高いときに解散するのは当然の常識だ」と言いました。
ということは、今後支持率は下がっていくと見越しているのです。
支持率が下がる理由はいくつもあります。
円安、債券安、物価高など経済政策がうまくいかないことがだんだんと明らかになってくる可能性があります。
統一教会と自民党や高市首相との関係が明らかになるとか、高市首相個人のスキャンダルが明らかになる可能性もあります。
しかし、それらはかりに選挙で自民党が大勝しても基本的に変わりません。
解散する理由としては弱いでしょう。

では、解散する理由はなにかというと外交問題です。
国際情勢は激変しています。
トランプ政権はプーチン大統領や習近平主席と仲良くし、同盟国をないがしろにしています。
日本は今まで通り「日米同盟基軸」路線でいいのかと考えなければなりません。

それから大問題なのは日中関係です。
高市首相の「台湾有事は存立危機事態」発言によって日中関係は最悪の状態になっています。
おそらくこれこそが、高市首相が解散に踏み切った最大の理由です。

習近平政権は高市首相の失言以来、日本に対して訪日観光の自粛と水産物輸入規制をしましたが、この段階ではオーバーツーリズムが軽減されて都合がいいというような声もありました。しかし、軍民共用のレアアース輸出規制を発表すると、衝撃が走りました。これが本格的に発動されると日本経済に大打撃です。
習近平政権は「反日」ではなく「反高市」のプロパガンダをしています。メディアは高市首相の風刺画を多数出して、中国の王毅外相は国連や欧州の国などに対して「高市政権は軍国主義復活を目指している」と言って回りました。高市首相の退陣をねらっているようです。

今の段階では国内では高市批判の声はそれほどありませんが、日本経済に悪影響が出てくると、高市首相に批判が向かうようになるでしょう。「発言を撤回すればすむことなのに、なにを意地になっているのか」という声が上がるようになれば、高市首相としては苦しくなります。

しかし、国民が圧倒的に高市首相を支持していることが示されれば、習近平政権も高市首相を引きずり下ろすことは諦めるでしょう。
つまり高市首相の狙いは「習近平の攻撃をはね返すのに国民の力を貸してくれ」ということなのです。
高市首相は会見で「高市総理、そうでなければ野田総理か、斉藤総理か、別の方か」と言いましたが、実は「高市総理か習近平主席か」を問いかけたのです。
この二者択一なら国民は確実に高市総理を選ぶはずです。

そのことをはっきり言うと習近平政権と公然と敵対することになるので言えません。
あくまで国民に察してくれということです。

しかし、国民はあまり察してくれていません。
国民も中国と表立って対立はしたくないのでしょう。
ここは高市首相の誤算ではないかと思います。


高市首相のもうひとつの誤算は、トランプ大統領が自分に加勢してくれると思っていたら、トランプ大統領はむしろ習近平主席の味方をしたことです。
GDPで日本は中国の5分の1ぐらいしかありません。保守派やネトウヨが中国相手に勇ましいことが言えるのは(といって国内で言っているだけですが)、アメリカが日本についていると思うからです。
ところが、トランプ大統領は同盟国にきびしく当たる人ですし、高市首相のことも利用しやすい相手程度に思っていたようです。

日本は安全保障についてはアメリカに全面的に依存しています。この依存は心理的なレベルに達しているので、自立しようとしてもなかなか自立できません。
トランプ大統領が同盟国にきびしいことがはっきりした以上、「日米同盟基軸」路線を見直さなければなりませんが、与野党もマスコミも国民からもそういう声はほとんど上がりません。
そのため今回の選挙でも外交がまったくテーマになりません。

対米依存のために、日本は防衛費もアメリカの言いなりに増額しています。
消費減税などが議論になるたびに「財源はどうする」と言われますが、防衛費は聖域になっていて、手がつけられません。


今回の解散理由がわからないといわれるのは、日本人が外交について考えようとしないからです。
高市首相が習近平政権から攻撃されていることを考えれば、わかるはずです。
もっとも、これは高市首相が妙な意地を張らずに発言を撤回すれば簡単に解決できることですが。

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保守派は性別役割分業を重視します。高市首相も同じです。
しかし、高市首相は首相になった今、ワークライフバランスの前に性別役割分業という言葉を捨てるべきでしょう。

高市首相の夫である山本拓氏は昨年2月に脳梗塞を発症し、右半身不随になり、今も車椅子生活のようです。

『高市早苗が漏らした夫の介護の苦労「帰ってきたら、食べこぼしがいっぱいあって…」』という記事から引用します。
そんな山本氏の介護について高市氏は講演で赤裸々に語ったのだ。

「帰ってきたら、食べこぼしがいっぱいあって、それを掃除してから入浴介助。これが一番身体にこたえます。私よりはるかに身長の高い家族を背中に担ぎながら、風呂場に行って頭から身体のすみずみまで洗って…」

調理師免許を持ち、料理担当だった山本氏に代わり、3食作りながら介護する日々。さらに山本氏には「こだわり」があるようで…。

「絶対に介護保険を使わないとか、訳のわからないことを言っているものですから、公的な支援が受けられない」(高市氏)

これは昨年6月の記事で、首相になる前のことです。
夫婦がどんな生活をしようと、外からとやかく言うことではありません。
しかし、首相になった今、首相の働き方について国民として意見したくなるのは当然です。


高市首相は首相に就任してすぐに「ワークライフバランスという言葉を捨てます」と言いました。
私はこの言葉は、夫を施設に入れるか介護を誰かに全面的に任せるという意味だと思いました。首相の仕事と介護は両立しないと思ったからです。

高市首相は年末に総理公邸に引っ越しました。そのときの様子について1月4日にXに長文の投稿をしました。そこから3か所を引用します。

昨年12月29日(月)の総理公邸への引っ越し後は、段ボール箱の谷間で生活しながら、外出時に必要な物(バッグやアクセサリー)が入った箱を探し出す日々でしたが、今日1月4日(日)の明け方に、ついに段ボールの開封と片付けを終了しました。

27日(土)と28日(日)に衆議院赤坂宿舎で段ボール箱の組み立てとパッキングを始めて以来、重い箱の運搬と積み上げなど、ひたすら力仕事続きでしたから、手足は切り傷とアザだらけや…。

(中略)

1月1日(木)午前は、皇居に上がり、新年祝賀の儀で、天皇皇后両陛下と皇族の皆様に、内閣を代表して新年御挨拶を申し上げるという幸せで光栄な時を過ごしました。
午後は、ようやく荷解きに着手しましたが、途中でダンナさんの食事の仕度や食器洗いなどもあり、荷解きは台所や風呂場やトイレの用品など生存に必要な数箱で断念。

(中略)

3日(土)は、米軍によるベネズエラ領内への攻撃とマドゥーロ大統領拘束事案が発生し、100名を超える邦人の安否確認や保護の指示を出しました。その後、今朝4日まで徹夜で荷解きと収納と洗濯に励みました。朝から北朝鮮の対応もありましたが、午前10時過ぎにはベネズエラ在住の邦人の方々の安全確認の報告も受け、ホッとしました。今もダンナさんが空腹に耐えている様子なので、これから遅めの朝昼兼ねた食事の仕度をします。

引っ越しの荷造りと荷ほどきを高市首相がやっています。
引っ越し業者が荷造りと荷ほどきを全部やってくれるサービスがあります。もしかしてセキュリティ面からそれが利用できないということがあるのでしょうか。もしそうなら、秘書や役人がやればいいのです。首相が自分で荷造りと荷ほどきをやるというのは信じられません。

それだけではなく、高市首相は洗濯も食事の支度もしています。
もっとも、これは年末年始のことです。普段は夫は施設に入っているかもしれないと思いましたが、そうではありませんでした。

「<1分で解説>高市首相はワーキングケアラー? 夫の介護が課題」という記事にはこう書かれています。
Q 高市氏の家族にはどんなことがあったの?

A 夫の山本拓元衆院議員は昨年2月に脳梗塞(こうそく)を発症し、車椅子が必要な生活になりました。高市氏が介護を担っています。

Q 高市氏はどんなふうに介護しているの?

A 高市氏は、朝は夫の介護をし、夜は国会答弁の準備や政策の勉強をしています。どの程度の介護かは明らかではありませんが、家事も普通にこなしているそうです。

Q 「ワーキングケアラー」ってなんだっけ。

A ワーキングケアラーとは、仕事をしながら家族の介護もしている人のことです。高市氏のような立場の人には、状況に応じた支援策が必要だと専門家は指摘しています。

専門家の指摘を待つまでもなく、首相の仕事をしながら夫の介護をして、家事もしているというのはあってはいけないことです。
高市首相が「働いて働いて働いて働いて、働いてまいります」と言ったのは、介護も家事もするという意味だったようです。

夫を施設に入れないのは、「こだわり」のある夫がそれを望まないからでしょう。
しかし、ここは高市首相は“鉄の女”になって、「わがままを言わないで」と言って押し切るべきです。

家事はもっぱら妻がやっているという家庭はいっぱいありますが、今では「男だから、女だから」ではなくて、「おれが稼いでいるんだから、お前が家事をするのは当然だ」という論理でしょう。
つまり性別分業でなくて仕事と収入による分業だという理屈です。
ところが、高市家ではいまだに性別役割分業なので、妻が首相になっても変わらないわけです。
古典的な保守派というしかありません。


問題は、周りの人間はどうしているのかです。
山本拓氏には前妻との子どもが3人います。長男の山本建氏は福井県議で、次期衆院選に立候補する意向を固めたというニュースがありました。
山本健氏はほかの子どもといっしょになって、父親に「早苗さんに迷惑をかけてはいけないから施設に入るべきだ」と説得するか、自分たちで父親の介護をするべきです。高市首相に介護を任せているのは信じられません。

官房長官や自民党幹事長など政界関係者も、首相がワーキングケアラーであることを放置しています。
「家事・介護は(首相であっても)妻がやるべき」という古典的保守派ばかりなのでしょうか。

「Hanada」や「WiLL」に寄稿しているような保守派論客も、この問題についてとくに言及していないようです。
首相に家事や介護をさせて平気なのが日本の保守派です。

高市首相は夜の飲み会にまったく出ていないと報道されています。飲み会が嫌いだというだけでなく、早く帰って夫の介護をしなければならないということもあるのでしょう。

最近高市首相がやせてきているという報道もあります。

妻が首相になっても妻に介護を求める夫(たぶんそうでしょう)。
それを断れない妻。
首相がワーキングケアラーであることを容認している周りの人。
首相がワーキングケアラーであることをまったく気にせず首相を支持している国民。
この国は根本のところから正さなければなりません。


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トランプ政権はベネズエラのマドゥロ大統領を拉致し、その後、トランプ大統領はコロンビアへの軍事行動を示唆し、さらにグリーンランド領有への意欲を見せています。
ロシアはウクライナの占領を目指していますし、中国は台湾周辺や東シナ海での軍事活動を活発化させています。
こうしたことから「世界は再び帝国主義の時代になった」「大国が世界を分割する」といった声が上がっています。
しかし、こうした見方は途上国や小国をあまりにも軽視しています。どんな国であれ、大国の思惑通りに植民地化されたり属国化されたりすることはありません。


1941年にアメリカとイギリスが共同で発表した「大西洋憲章」には「民族自決権」がうたわれました。
第二次大戦が終わると、世界中の植民地が次々と独立していきました。宗主国も、独立を求める民衆を力で抑え込んでも得にならないと判断しました。
インドネシアの場合は、オランダが力で抑え込もうとしたために1945年から1949年まで独立戦争が行われました。
ベトナムの場合は、1945年9月に独立宣言がなされましたが、フランスが植民地支配を再開しようとしたために1946年から1954年までインドシナ戦争が行われ、その後アメリカが南部にベトナム共和国を樹立したために1975年にサイゴンが陥落するまで戦争が続きました。
こういうことを考えると、今から植民地化はありえないことがわかるでしょう。

アメリカは2001年にアフガニスタンに侵攻し、タリバン政権を倒し、親米政権を樹立しました。選挙のある民主主義政権でしたが、タリバンは選挙に参加しませんでした。アメリカ軍と多国籍軍は20年間にわたって駐留しましたが、アメリカ軍と多国籍軍が撤退すると、あっという間にタリバンが首都カブールに入り、親米政権は崩壊し、タリバン政権が復活しました。軍事力によって統治してもなんの意味もなかったのです。

アメリカはイラク戦争によってフセイン政権を倒し、親米政権を樹立しました。その後もアメリカ軍は武装勢力の抵抗に悩まされ、一時はIS(イスラム国)が勢力を拡大しました。今の政権は一応親米路線であるようです。ただ、イラクに侵攻した当初は、アメリカはイラクの石油を売った利益で戦費はまかなえるというような話がありましたが、現実には石油を売った利益をアメリカが手にすることはありませんでした。ただ、石油開発関係でアメリカ企業が利益を得て、石油がドル建てで取引されていることによる利益もあるようです。

アフガンでもイラクでも、戦争に勝つことは比較的容易でも、そのあとの統治が容易ではありません。
アメリカ国民もそのことは身に染みてわかっているので、今回のマドゥロ大統領拉致についても賛否は拮抗しています。

ベネズエラはハイパーインフレで経済はガタガタで、長年の独裁で政府組織は腐敗しています。アメリカがこれを統治して立て直すのはたいへんです。おそらくトランプ政権もそこまでは考えていないでしょう。そうすると、ベネズエラの石油利権を手にするのもむずかしそうです。

グリーンランドの人口は5万人余りなので、アメリカが統治するのは容易でしょうが、今のデンマーク自治領のままで問題はなく、アメリカが領有する大義名分がありません。トランプ氏はおそらく不動産屋の感覚で、安く買える土地だと思っているのでしょう。


前回の「世界は東西ではなく南北に分かれている」という記事で、日本人はグローバルサウスのことをあまりにも軽視しているということを書きました。今回はその補足みたいなものです。

途上国の人にも感情があり、意志があります。大国によって植民地化され、自国の資源などが奪われることに抵抗するのは当然です。
マドゥロ大統領拉致作戦があまりにも鮮やかに決まったために、アメリカがその気になればなんでもできると錯覚した人が多いようですが、この拉致作戦はきわめて限定された場面での成功にすぎません。
アメリカがベネズエラを支配できることにはなりません。

ロシアがウクライナ戦争に勝利すれば、これからほかの国にも手を出すだろうという声もありますが、ロシアがウクライナに侵攻してもう4年です。現時点でプーチン大統領もロシア国民もこんな戦争はやるべきでなかったと思っているでしょう。それに、ロシア系住民の多い地域は統治できるかもしれませんが、ウクライナ全土の統治はうまくいくかどうかわかりません。


時代が変わり、人々の意識が変わったので、帝国主義も植民地化もありえません。
帝国主義が復活するなどという人は、途上国や中小国の人々を見下して、それらの人々の意志や主体性を無視しています。
外国人排斥を主張する人も、排斥される外国人の気持ちを無視していますし、排斥される外国人の母国であるベトナムやタイやトルコなどの国民の気持ちも無視しています。

つけ加えると、子どもにピアノや水泳などの習い事をさせ、一流校への進学を勧める教育熱心な親が子どもの気持ちをまったく考えていないということがありますし、夫が毎日顔を合わせている妻の気持ちをまったく考えていないということもあります。
これらも子どもや妻を見下しているからそうなるのです。
家族関係も国際関係も同じようなものです。

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アメリカはベネズエラを武力攻撃し、マドゥロ大統領を拉致し、アメリカの法廷に引き出しました。
トランプ大統領は「今後はベネズエラをアメリカが運営する」と言っています。

明白な国際法違反ですが、各国の対応はさまざまです。
高市首相は「G7や地域諸国を含む関係国と緊密に連携しながら、引き続き情勢の安定化に向けた外交努力を進めてまいります」などと語り、批判はしませんでした。
これに対する国内の評価は、「日本はアメリカに守ってもらっているのでしかたがない」というものが多いようです。
しかし、高市首相の言う「世界の真ん中で咲き誇る日本外交」からは程遠いといわねばなりません。


日本がアメリカにものを言えないのはいつものことですが、中国に対してはどうでしょうか。

中国は高市首相の「台湾有事は存立危機事態」発言以来、高市政権批判を強め、最近は「高市政権は軍国主義復活を目指している」という主張を国際的に展開しています。
これは日本の名誉に関することですから、日本としては「高市政権が軍国主義復活を目指していることはない。とんでもない言いがかりだ」などと反論する必要があります。
しかし、政府や自民党からそうした具体的な反論はありません。

なぜ誰も「日本は軍国主義復活を目指していることはない」と反論しないのかというと、はっきり言い切れないからです。
日本の保守派には、無意識かもしれませんが、軍国主義復活を目指す傾向があるのは確かなことです。それは客観的な動きとなって現れています。

「日本には平和憲法があるので軍国主義が復活することはない」と外務省は反論したいところでしょうが、高市首相を含めた保守派はみな九条改憲派ですから、そういうわけにもいきません。
保守派がみなA級戦犯を合祀している靖国神社への参拝を重視していることも、それだけで軍国主義復活だと批判されてもしかたのないことです。
高市首相は個人的に教育勅語を信奉しているということもあります。
日本は防衛費をGDP比1%から2%へと一気に倍増させました(今後3.5%になりそうです)。経済は成長しないのに軍事力を強化するのはまさに軍国主義です。
中国から「軍国主義復活」と批判されても反論できないのでは、日本外交は世界の真ん中で咲き誇るどころではありません。


日本は中国や韓国とつねにぎくしゃくしています。
それは、日本の保守派が侵略と植民地支配について謝罪や反省をしないからです。
日本外交が咲き誇れない大きな原因はそこにあります。

もっとも、欧米列強も今に至るまで植民地支配について謝罪していません。ですから、日本だけが謝罪させられるのは不当な感じもします。
しかし、欧米もいつまでも謝罪しないではいられないでしょう。
たとえばアルジェリア議会は昨年12月24日、フランスによる植民地支配を「犯罪」と断じ、謝罪と賠償を求める法案を全会一致で可決しました。フランスの植民地支配は残虐だったので、アルジェリアの態度は強硬です。
こうした思いは旧植民地国に共通してあるはずです。

今では昔の欧米列強つまり西ヨーロッパとアメリカ合衆国はグローバルノースと呼ばれ、それ以外の東ヨーロッパとアジア、アフリカ、アメリカの国はグローバルサウスと呼ばれています。
昔は自由主義陣営対共産主義陣営の対立でしたが、今ではグローバルノース対グローバルサウスの対立で国際情勢が動いています。
ロシアがウクライナに侵攻して、西側諸国がロシアに経済制裁したとき、ロシアは苦境に陥るだろうといわれましたが、実際にはそんなことはありませんでした。中国やインドなどがロシア側についていたからです。
中国やインドは“トランプ関税”に対しても強気の対応に終始しています。
世界のGDP順位で中国は2位、インドは4位なので、強気に出られるのでしょう(日本は5位)。
欧米で移民排斥運動が起こっているのも、グローバルサウスの勃興にたいする危機感からではないかと私は見ています。

グローバルノースは植民地から収奪した富で豊かな生活をし、グローバルサウスは貧困な生活をしいられてきました。
グローバルノースの豊かな生活が生み出した温室効果ガスによる気候変動の被害はグローバルサウスにも降りかかります。
地球環境問題はグローバルノースとグローバルサウスの不公平を顕在化させました。


日本人は西側だけを見ていて、それが世界だと思っています。
マスコミはBRICSや上海機構のことをほとんど報道しないので、そうなってしまいます。
たとえば中国のGDPは日本の4倍以上ですが、そういうこともあまり知られていません。
日本経済は中国依存をへらすべきだという声がありますが、中国のマーケットや中国の工場に代わるものはなかなか見つけられません。


世界の中心がグローバルノースからグローバルサウスに移行しつつあります。
そのためアメリカの思い通りにはならなくなっています。
トランプ政権はベネズエラの大統領を拉致し、さらにコロンビアへの武力行使をちらつかせ、グリーンランドへの領土的野心もむき出しにしています。
トランプ政権は昨年11月に国家安全保障戦略(NSS)を発表し、グローバル覇権を目指さず、西半球の覇権を目指すとしました。その方針に基づいています。
トランプ大統領は西半球の帝王になるつもりのようです。
しかし、そんなことはできないでしょう。西半球と東半球に分ける前に世界はグローバルノースとグローバルサウスに分かれているからです。
グローバルサウスは互いに連携して対抗することができます。


日本はG7の中で唯一の非白人国です。
なぜ日本がG7に選ばれたかというと、経済大国であっただけでなく、自己主張しない国だからです。
今では中国やインドが経済大国になっていますが、G7には入れてもらえません。中国やインドは西側の価値観に合わないことを主張するに違いないからです。

日本は“名誉白人”国としてグローバルノースの椅子に座っていますが、周りの国とお互い言いたいことを言い合うような信頼関係はありません。
かといって、アジアの周りの国とも信頼関係は築けていません。
世界の真ん中で咲き誇るのとは真逆です。


実は日本は世界の中で外交的にきわめて有利な立場にあります。
アジアの一員でありながら、列強と同じ植民地支配の経験もしているからです。
つまりグローバルノースとグローバルサウスの結節点、つまり世界の真ん中にいます。
そして、村山富市首相の「村山談話」によって、日本は侵略と植民地支配について謝罪しました(その前に細川護熙首相も国会答弁で侵略と植民地支配を認めています)。
つまり日本は世界で唯一植民地支配を謝罪した国なのです。
これによって日本は、グローバルサウスの支持を得るとともに、グローバルノースに対して優位に立つことができます。
ところが、安倍政権や高市政権は村山談話をないがしろにして、むしろ日本はアジアに対して悪いことはしなかったという逆の立場をとってきました。
そのために日本は味方してくれる国がない国になっています。


トランプ政権によってグローバルノースは自壊しつつあります。
日本はグローバルサウスに立脚した外交に転換することで世界に貢献できます。

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エデンの園でアダムとイブは、神の言いつけに背いて善悪の知識の木から実を食べ、そのために楽園を追放され、その子孫までも苦難の生を強いられることになりました(エデンの園にあったのは「知恵の木」とされることが多いですが、これは意訳で、直訳は「善悪の知識の木」です)。
この寓話はきわめて示唆に富んでいます。
神が人間を善人とか悪人とか判定すれば、人間は受け入れるしかありませんが、人間が判定したのでは納得がいきません。
みんなが他人を善人とか悪人とか判定すれば、それがもとで争いが起きるのは当然です。
しかし、「善悪の知識」を得た人間は善悪の判断をやめることができません。
そうしていたるところで争いが起き、親子、夫婦、兄弟までもが争うようになり、人間は不幸になりました。


トランプ政権はベネズエラ沖で麻薬運搬船と見なした船を攻撃し、すでに100人以上殺害したとされます。
なんの法的根拠もなしにやっていますが、トランプ政権としては、奴らは「悪」だから殺害してもいいと思っているのでしょう。
イスラエルのネタニヤフ政権も、「ハマス殲滅」を掲げてガザ侵攻を始めました。ハマスを「悪」と見なしているのでしょう。
ロシアのプーチン政権もウクライナ政府をネオナチと見なして侵攻しました。
今、中国の習近平政権は高市政権を軍国主義復活を目指していると主張しています。
悪の認定は戦いの正当化につながるので注意しないといけません。

善と悪については、定義はありませんし、客観的な基準もありません。
そのため誰でも勝手に悪を認定できます。

アメリカやイスラエルはイスラム過激派をテロリストすなわち悪と見なしていますが、中東の多くのイスラム教徒はアメリカやイスラエルを悪と見なしています。
安倍元首相を暗殺して裁判中の山上徹也被告は、テロリストとして厳罰に処すべきだという意見もありますが、宗教二世としての不幸な生い立ちと、統一教会と自民党の癒着をあばいたという功績があることから、同情する意見もあります。つまり山上被告の殺人という悪と、安倍元首相と統一教会の悪を天秤にかけたとき、その評価は人さまざまだということです。

夫婦喧嘩はたいてい互いに「お前(あなた)が悪い」と言い合うことで行われますが、これはいくら言い合いをしても絶対に結論は出ません。

いちばん不幸になったのは子どもです。
「善悪の知識」を得た親は、子どものさまざまな行動の中で自分の気に入らないもの、たとえば子どもが大声を出したり、動き回ったり、行儀が悪かったり、好き嫌いを言ったり、親の言いつけに背いたりしたことを悪だとして、子どもを叱ります。一方、子どもは「善悪の知識」を使いこなすだけの言語能力がないので、子どもを叱る親に対抗することができず、幼児虐待が蔓延しました。
ちなみに動物の親は子どもを叱ったりしませんし、未開社会の親も子どもを叱りません。文明社会の親だけが子どもを叱ります。


「善悪の知識」のために世の中は混乱しました。
そこで人間は善悪ではなく法律に従うことにしました。これを「法の支配」ないしは「法治主義」といいます。
法律は善悪と違って客観的な基準になります。
「法の支配」によって社会の秩序は保たれてきました。

善悪はフィクションの中で生きています。
ハリウッド映画では正義のヒーローが法律に基づかずに悪人を派手にやっつけています。法律に基づくと時間と手間がかかり、悪人をやっつける快感が得られないからです。
現実の中で悪人を派手にやっつけてもハッピーエンドにはなりませんが、フィクションの中では可能です。


しかし、最近「法の支配」が崩れてきています。
それはインターネットの普及のせいです。
掲示板やSNSでは誰かを悪と決めつけて攻撃するとインプレッションが稼げます。そのため法の支配はほとんど無視されます。

そうしたところにトランプ氏が登場しました。トランプ氏の言葉は単純でわかりやすく、大衆受けします。その中身のほとんどは、民主党やバイデン氏や移民や犯罪者やテロリスなど“悪いやつ”を攻撃する言葉です。
トランプ氏の登場で「法の支配」から「善悪の知識」へのシフトが加速しました。

「法の支配」が崩れると世界が混乱し、戦争の可能性が高まります。
ですから、「法の支配」のたいせつさを再確認する必要があります。

それに加えて「善悪の知識」がまったく役に立たず、むしろ混乱をつくりだすものだということを知らねばなりません。
「善悪の知識」だけではありません。正義や道徳も同じです。
正義が有効なのはフィクションの中だけですし、道徳教育はいくらやっても道徳的な人間をつくることはできません。

楽園に戻れるかどうかはわかりませんが、人類は「善悪の知識」を頭の中から消去する必要があります。

どうやって「善悪の知識」を頭の中から消去するかについては「道徳観のコペルニクス的転回」を読んでください。

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