
回転寿司チェーンのスシローは、醤油の差し口や湯飲みをなめ回した少年に対して6700万円の損害賠償請求をしました。
“子どものいたずら”に対して常識外れの金額を請求したことを見ても、スシロー(株式会社あきんどスシロー)は倫理観のない企業だということがわかります。
スシローは不祥事のデパートです。
2021年9月、スシローは「新物!濃厚うに包み」などの商品を広告してキャンペーンを行いましたが、9割を越える店舗で広告の商品が品切れとなっても広告を打ち切りませんでした。同年11月には、「冬の味覚!豪華かにづくし」というキャンペーン商品についても、品切れになった店舗があるにもかかわらず広告を続けました。消費者庁から景品表示法違反(おとり広告)に当たるとしてあきんどスシローに再発防止を求める措置命令が出され、同社は謝罪しました。
2022年7月には、生ビール半額イベントを実施前にもかかわらず一部店舗で告知し、その告知を見て生ビールを注文した客に対して正規の料金を請求しました。誤った告知をした店舗は101店舗に及んだということです。さらに、イベント期間中に生ビールが売り切れる店が続出し、客が席につくまでそのことがわからないということもありました。
同年8月には、メバチマグロを使っているとされる商品にキハダマグロが使われていると週刊誌が報道し、同社はそれを認めて謝罪しました。
スシローの不祥事は、単なる不手際ではなく意図的なもので、悪質です。
当然、ネットではスシローは強烈なバッシングに見舞われました。
そうしたところ、今年の1月にペロペロ事件が起こったわけです。
ネットには少年を批判する声とともに、「もうスシローには行きたくない」といった声も多く、スシローの株価も急落しました。
そうするとスシローへの同情も強まり、スシローは少年に損害賠償請求するべきだという声が高まりました。
スシローとしては、これまでネットではバッシングされる一方だったのに、初めて味方する人々が出てきて舞い上がってしまったのかもしれません。
今回の損害賠償請求もその流れでしょう。
スシローの損害賠償請求が報じられたことで再びネットで少年へのバッシングが起きています。
スシローが吹いた犬笛で踊るのは恥ずかしくないのでしょうか。
少年のペロペロ動画が拡散したことでスシローが損害を受けたのは事実です。
しかし、少年の行為は一店舗に迷惑をかけただけです。このような行為は全国でいっぱい行われているはずです。誰かが言っていましたが、少年に罰で皿洗いをさせればすむ程度のことです。
問題は動画を拡散させた人間にあります。少年とその友だちはSNSで仲間と共有して楽しむことが目的でした。
少年側の弁護士が大阪地裁に提出した答弁書によると、動画を拡散させたのは「某有名インフルエンサー」だということです。
拡散の最初のきっかけの人間はいたかもしれませんが、すべてをその人間のせいにするのも違います。拡散というのは多数の人間の共同作業です。
スシローの客離れと株価下落を引き起こしたのは動画を拡散させたすべての人間の責任です。
ただ、そうなるとあまりにも人間の数が多すぎて、責任追及は事実上不可能です。拡散させた人間もそれがわかってやっています。「みんなで拡散させれば怖くない」です。
結局、スシローは訴えやすい相手だけ訴えているわけです。
少年はすでに高校を退学したということですし、家は普通の家庭のようですから、もちろん6700万円を支払えるわけがありません。
もともと17歳の少年に社会的影響力などありませんから、少年が反省しようが反省しまいが世の中は変わりません。
こんな訴訟は弱い者いじめと同じです。
賠償金額が多いと抑止効果があるという意見もありますが、こうした事件を起こす人は思いつきでやっていて、計算などしていませんし、ニュースもあまり見ていないでしょう。
「こんな動画をインターネットにアップすれば騒ぎになるのは当然だ」と言う人もいますが、誰もがインターネットの怖さを知っているわけではありません。SNSを友だちとつながるツールと思っている人も多いでしょう。
この少年に限らずこのところ騒ぎとなる飲食店の迷惑行為は、たとえば共用のガリを直箸で食べたり、使った爪楊枝を元の場所に戻したりといったことで、なんの利益にもならないことをおもしろがってやっているだけです。
「なんの利益にもならないことをおもしろがってやる」というのは、子どものいたずらと同じです。
「いい年をして子どもみたいなことをするな」と言って怒る人が多いでしょうが、おとなになっても子どもみたいなことをする人というのは、子どものころに十分に遊ばせてもらえなかったので、おとなになってから取り戻そうとしているのでしょう。
「子どものころに十分に遊ばせてもらえなかった」というのは、今の時代を理解するための重要なキー概念です。
公園で遊ぶ子どもの声がうるさいとか、保育園の子どもの声がうるさいとかクレームをつける人がいますが、こういう人は子どものころ「うるさい」とか「おとなしくしなさい」とか言われて、十分に遊べなかったのでしょう。
そのため遊んでいる子どもに怒りを向けてしまうのです。
飲食店の迷惑行為に怒る人も同じです。
子どもであれおとなであれ、遊ぶことはたいせつです。遊びは創造性にもつながっています。
スシローの巨額損害賠償請求が悪い前例となって同じような訴訟が相次げば、遊び心も創造性もないつまらない社会になってしまいます。

コメント