
アメリカはベネズエラを武力攻撃し、マドゥロ大統領を拉致し、アメリカの法廷に引き出しました。
トランプ大統領は「今後はベネズエラをアメリカが運営する」と言っています。
明白な国際法違反ですが、各国の対応はさまざまです。
高市首相は「G7や地域諸国を含む関係国と緊密に連携しながら、引き続き情勢の安定化に向けた外交努力を進めてまいります」などと語り、批判はしませんでした。
これに対する国内の評価は、「日本はアメリカに守ってもらっているのでしかたがない」というものが多いようです。
しかし、高市首相の言う「世界の真ん中で咲き誇る日本外交」からは程遠いといわねばなりません。
日本がアメリカにものを言えないのはいつものことですが、中国に対してはどうでしょうか。
中国は高市首相の「台湾有事は存立危機事態」発言以来、高市政権批判を強め、最近は「高市政権は軍国主義復活を目指している」という主張を国際的に展開しています。
これは日本の名誉に関することですから、日本としては「高市政権が軍国主義復活を目指していることはない。とんでもない言いがかりだ」などと反論する必要があります。
しかし、政府や自民党からそうした具体的な反論はありません。
なぜ誰も「日本は軍国主義復活を目指していることはない」と反論しないのかというと、はっきり言い切れないからです。
日本の保守派には、無意識かもしれませんが、軍国主義復活を目指す傾向があるのは確かなことです。それは客観的な動きとなって現れています。
「日本には平和憲法があるので軍国主義が復活することはない」と外務省は反論したいところでしょうが、高市首相を含めた保守派はみな九条改憲派ですから、そういうわけにもいきません。
保守派がみなA級戦犯を合祀している靖国神社への参拝を重視していることも、それだけで軍国主義復活だと批判されてもしかたのないことです。
高市首相は個人的に教育勅語を信奉しているということもあります。
日本は防衛費をGDP比1%から2%へと一気に倍増させました(今後3.5%になりそうです)。経済は成長しないのに軍事力を強化するのはまさに軍国主義です。
中国から「軍国主義復活」と批判されても反論できないのでは、日本外交は世界の真ん中で咲き誇るどころではありません。
日本は中国や韓国とつねにぎくしゃくしています。
それは、日本の保守派が侵略と植民地支配について謝罪や反省をしないからです。
日本外交が咲き誇れない大きな原因はそこにあります。
もっとも、欧米列強も今に至るまで植民地支配について謝罪していません。ですから、日本だけが謝罪させられるのは不当な感じもします。
しかし、欧米もいつまでも謝罪しないではいられないでしょう。
たとえばアルジェリア議会は昨年12月24日、フランスによる植民地支配を「犯罪」と断じ、謝罪と賠償を求める法案を全会一致で可決しました。フランスの植民地支配は残虐だったので、アルジェリアの態度は強硬です。
こうした思いは旧植民地国に共通してあるはずです。
今では昔の欧米列強つまり西ヨーロッパとアメリカ合衆国はグローバルノースと呼ばれ、それ以外の東ヨーロッパとアジア、アフリカ、アメリカの国はグローバルサウスと呼ばれています。
昔は自由主義陣営対共産主義陣営の対立でしたが、今ではグローバルノース対グローバルサウスの対立で国際情勢が動いています。
ロシアがウクライナに侵攻して、西側諸国がロシアに経済制裁したとき、ロシアは苦境に陥るだろうといわれましたが、実際にはそんなことはありませんでした。中国やインドなどがロシア側についていたからです。
中国やインドは“トランプ関税”に対しても強気の対応に終始しています。
世界のGDP順位で中国は2位、インドは4位なので、強気に出られるのでしょう(日本は5位)。
欧米で移民排斥運動が起こっているのも、グローバルサウスの勃興にたいする危機感からではないかと私は見ています。
グローバルノースは植民地から収奪した富で豊かな生活をし、グローバルサウスは貧困な生活をしいられてきました。
グローバルノースの豊かな生活が生み出した温室効果ガスによる気候変動の被害はグローバルサウスにも降りかかります。
地球環境問題はグローバルノースとグローバルサウスの不公平を顕在化させました。
日本人は西側だけを見ていて、それが世界だと思っています。
マスコミはBRICSや上海機構のことをほとんど報道しないので、そうなってしまいます。
たとえば中国のGDPは日本の4倍以上ですが、そういうこともあまり知られていません。
日本経済は中国依存をへらすべきだという声がありますが、中国のマーケットや中国の工場に代わるものはなかなか見つけられません。
世界の中心がグローバルノースからグローバルサウスに移行しつつあります。
そのためアメリカの思い通りにはならなくなっています。
トランプ政権はベネズエラの大統領を拉致し、さらにコロンビアへの武力行使をちらつかせ、グリーンランドへの領土的野心もむき出しにしています。
トランプ政権は昨年11月に国家安全保障戦略(NSS)を発表し、グローバル覇権を目指さず、西半球の覇権を目指すとしました。その方針に基づいています。
トランプ大統領は西半球の帝王になるつもりのようです。
しかし、そんなことはできないでしょう。西半球と東半球に分ける前に世界はグローバルノースとグローバルサウスに分かれているからです。
グローバルサウスは互いに連携して対抗することができます。
日本はG7の中で唯一の非白人国です。
なぜ日本がG7に選ばれたかというと、経済大国であっただけでなく、自己主張しない国だからです。
今では中国やインドが経済大国になっていますが、G7には入れてもらえません。中国やインドは西側の価値観に合わないことを主張するに違いないからです。
日本は“名誉白人”国としてグローバルノースの椅子に座っていますが、周りの国とお互い言いたいことを言い合うような信頼関係はありません。
かといって、アジアの周りの国とも信頼関係は築けていません。
世界の真ん中で咲き誇るのとは真逆です。
実は日本は世界の中で外交的にきわめて有利な立場にあります。
アジアの一員でありながら、列強と同じ植民地支配の経験もしているからです。
つまりグローバルノースとグローバルサウスの結節点、つまり世界の真ん中にいます。
そして、村山富市首相の「村山談話」によって、日本は侵略と植民地支配について謝罪しました(その前に細川護熙首相も国会答弁で侵略と植民地支配を認めています)。
つまり日本は世界で唯一植民地支配を謝罪した国なのです。
これによって日本は、グローバルサウスの支持を得るとともに、グローバルノースに対して優位に立つことができます。
ところが、安倍政権や高市政権は村山談話をないがしろにして、むしろ日本はアジアに対して悪いことはしなかったという逆の立場をとってきました。
そのために日本は味方してくれる国がない国になっています。
トランプ政権によってグローバルノースは自壊しつつあります。
日本はグローバルサウスに立脚した外交に転換することで世界に貢献できます。

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