5月3日は憲法記念日だったので、改憲についてのさまざまな議論がありました。
しかし、改憲派のやっていることは支離滅裂なので、改憲の可能性はうんと遠のいたと思います。
 
たとえば、朝日新聞の世論調査によると、憲法9条に関してはこういう結果になっています。
 
憲法記念日を前に朝日新聞社は憲法に関する全国郵送世論調査を実施し、有権者の意識を探った。
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◆以下は、憲法第9条の条文です。(憲法9条条文は省略)憲法第9条を変える方がよいと思いますか。変えない方がよいと思いますか。
 
 変える方がよい 29
 変えない方がよい 63
 
◆憲法第9条を変えて、自衛隊を正式な軍隊である国防軍にすることに賛成ですか。反対ですか。
 
 賛成 23
 反対 69
 
 
このアンケートも、改憲案の条文は示していません。改憲案が具体的な条文となって出てくれば、もっと反対が多くなるはずです。
 
改憲派は、「現行憲法はアメリカの押しつけだから、自主憲法を制定したい」と主張して、自立した国を目指しているようですが、現実にやっているのは解釈改憲で自衛隊をますますアメリカのために用立てることです。こんな矛盾したことをやっていては、改憲はますます困難になります。
 
改憲派の矛盾は、憲法前文の「日本国民は……平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」という部分を批判することにも現れています。
つまり他国は信頼できないというわけですが、一方で改憲派は同盟国たるアメリカは信頼して、とりわけ日本が核攻撃されたらアメリカは報復してくれるという“核の傘”を信頼しているわけです。
これも矛盾というしかありません。
 
実際のところは、誰が考えても“核の傘”ほど信頼できないものはありません。アメリカが自国が核攻撃されることを覚悟して日本のために報復してくれるとは到底思えないからです。
 
日本はアメリカと自由と民主主義という価値観を共有しているとしても、日本が中国と対立するときは自由と民主主義という価値観を巡って対立するわけではありません。領土問題や歴史認識問題や経済問題で対立するわけです。そういうときアメリカはどちらにも肩入れしたくないはずです。
そして、中国がアメリカに「どうしても日本を許せないので核ミサイルを一発撃ち込むが、アメリカはなにもしないでくれ」と通告して日本に核ミサイルを撃ち込んだ場合、アメリカは中国に核ミサイルを撃ち返すかというと、そんなことはしないでしょう。
 
「平和を愛する諸国民の公正と信義」は信頼できないが、アメリカの“核の傘”は信頼するというのは、どう考えても矛盾です(というか、アメリカの“核の傘”よりは「諸国民の公正と信義」のほうがまだ信頼できると思われます)
 
アメリカの“核の傘”という信頼できないものをなんとか信頼できるものにしようと思って、安倍首相らはひたすらアメリカに忠義を尽くそうとしているのでしょう。
日本がアメリカにとってのイギリスぐらいの存在になれば、それは可能かもしれませんが、日本とイギリスは歴史が違うのですから、所詮不可能なことです。
 
日本人はアメリカに対して、平和や民主主義や食糧をもたらしてくれたことに感謝する一方で、戦争に負けたという敗北感や屈辱感を持っています。
こうした矛盾した心情が改憲問題にも現れているわけです。
ですから、改憲問題を考えるには、日米関係から考えていかないといけないことになります。