9月19日未明、参院本会議で安保法案が可決され、成立しました。
国民の理解が得られないまま採決したのはなぜかというと、議論すればするほど反対が増えるので、早いほうがいいからです。
それに、安倍首相は今年4月の米議会での演説で、安保法案を「この夏までに、成就させます」と明言しました。
また、共産党が暴露した文書によると、河野克俊統合幕僚長は昨年末に訪米した際に米軍首脳に対して、安保法制は「来年夏までには終了する」と言っていました。
要するに国民よりもアメリカのほうを向いているのです。
しかし、どうやら日本ではこういうのは「売国」とは認められないようです。
たとえば、安保法案審議のさなかにこんなことがありました。
山本太郎氏「売国条約」不適切発言で怒られ訂正
生活の党と山本太郎となかまたちの山本太郎共同代表が、14日の参院特別委員会で、安倍晋三首相に質問した際の発言の一部内容が不適切だとして、鴻池祥肇委員長から直接、怒られるひと幕があった。
山本氏はこの日、日米地位協定などに関して質問。その中で「売国条約」「利権」などのフレーズを入れ込んだ。
これに対し、鴻池氏は「私も(かつて)相当、暴言を発言してきたが、『売国条約』は不適切だ」といさめた。その上で、「私のような、過去に不適切発言をしてきた人間が、不適切だと思う」と、説得力ある? 注意をした上で、今後の委員会の理事会で山本氏の発言について議事録を精査する考えも示した。
山本氏の発言に強く抗議する与党側に対し、さすがの野党側も、民主党の福山哲郎議員が山本氏に注意を促し、たしなめた。山本氏もその後の答弁で、「売国は訂正します」と述べた。
「利権」に関しては、質問を受けた首相自ら、「その言葉は取り消していただきたい」と、強い口調で反論した。
山本氏はこのほかにも、沖縄県の米軍普天間飛行場の移設問題に関し、移設先の辺野古地区で座り込みを続ける女性が首相にあてたという手紙の原本を、委員会の場で首相に手渡したいと述べたり、それを委員長に拒否されると、朗読を要請。これも拒否された。
質問の最後は「委員長、失礼いたしました」と、謝罪で締めくくった。
つまりアメリカへの売国は売国と認められないのです。
ウィキリークスが明らかにしたところによると、鳩山政権が辺野古問題でアメリカと交渉していたとき、外務官僚がアメリカ側に対して「妥協すべきでない」「早期に柔軟さを見せるべきではない」と助言していたそうです。まさに売国官僚というしかありません。しかし、このときも外務官僚を批判する声はほとんど上がりませんでした。
日本人の大勢は、アメリカへの売国は売国でないと思っているのでしょう。
ですから、安倍首相としては、今は多少世論の逆風はあっても、そのうち沈静化するとたかをくくっているのでしょう。
安保法案に賛成する人たちは、中国の台頭を理由に挙げます。
安倍首相も同じだと思いますが、こういう人たちの考えを、私は「よき家来」戦略と呼んでいます。
つまり、中国が台頭してきて、日本はアメリカに頼りたいが、アメリカはそれに応えてくれるかわからない。そこで、アメリカの「よき家来」になって、アメリカの寵愛を得ようという戦略です。
しかし、この戦略が成功するのは、アメリカが「よき殿様」である場合だけです。
アメリカが「悪しき殿様」だと、日本がいくら「よき家来」になっても、なにもしてくれません。それどころか、日本は殿様といっしょになって悪事に手を染めることになってしまいます。
そもそもこの戦略は、中国が台頭してきたからアメリカに頼ろうというところからしてだめです。
一国で中国に立ち向かう覚悟がない国は、アメリカから利用されるだけです。
所詮は売国思想なのです。

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