村田基の逆転日記

親子関係から国際関係までを把握する統一理論がここに

カテゴリ: トランプ大統領

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5月14・15日の米中首脳会談において、習近平主席は夕食会のあいさつで「中国は5000年の歴史と14億人の人口、アメリカは250年の歴史と3億人の人口」と対比させて、中国の優越性を誇示しました。
それに対してトランプ大統領はアメリカの優越性を誇示することはなく、会談の冒頭で「あなたは偉大な指導者だ」という言葉を二度繰り返しました。
会談後、トランプ氏は険しい表情を見せることが多かったのに、習近平氏は平然とした表情をしていました。
こうしたことから、覇権がアメリカから中国に移りつつある現実が誰の目にも明らかになりました。

もっとも、日本は長年アメリカ依存でやってきたので、アメリカの衰退という現実をすぐには認められない人もいるでしょう。
そこで、改めてアメリカの「国力」を検証してみました。

まずは経済力と軍事力です。

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経済力では中国がかなりアメリカに迫っていますが、軍事力(軍事費)ではアメリカがまだ圧倒的な力を持っています。
しかし、アメリカには味方する国がありません。
トランプ氏は同盟国にきびしく当たってきたので、イラン戦争では一国もアメリカを支援する国がありませんでした。
トランプ氏が中国に対抗するつもりなら、同盟国をたいせつにし、同盟国とともに中国包囲網をつくらなければなりません。
しかし、トランプ氏はそういう戦略的思考はできず、とりあえず同盟国に対してアメリカファーストのディールを仕掛けたので、味方がなくなりました。
中国はアジア、アフリカ、中南米に味方を増やす外交をしています。

トランプ氏はまた、アメリカ国内でリベラル対保守の対立をあおってきました。そのため、国内でトランプ氏を支持するのは半分以下です。
これではトランプ氏が習近平氏と対等にふるまえないのは当然です。


アメリカ経済は好調ですが、これは主に金融とITが牽引しているからです。製造業は衰退しています。
そのため、ウクライナ戦争が起こったとき、アメリカは砲弾の増産ができなかったので、ウクライナは苦境に陥りました(ロシアは砲弾の増産ができました)。
この問題は今も続いています。
イラン戦争でアメリカはミサイルとドローンを大量に消費したので、在庫の回復に何年もかかるといわれています。
砲弾やミサイルを増産するには、工場をつくり、技術者と労働者を集めなければなりませんが、アメリカではそれが容易ではないのです。
世界でもっとも短期間に増産体制をつくれるのは中国です。中国はこの能力によって一気に製品を送り出して市場を支配し、「世界の工場」といわれるようになりました。

アメリカ軍は、空母や戦闘機やミサイルが高性能で、軍事力としては強力ですが、長期戦に耐えるだけの砲弾やミサイルの備蓄や増産能力がありません。
つまりアメリカ軍の強さは表面的なところに偏っています。


アメリカ社会も、表面的にはまともでも、深いところに問題があります。

人口学者で家族人類学者のエマニュエル・トッド氏が社会のあり方で重要視するのは乳幼児死亡率だそうです。乳幼児死亡率は社会のもっとも弱い者に対する社会のあり方を表しているからです。
アメリカの乳幼児死亡率は1000人当たり5.4人です。
ロシアは4.4人、中国は4人、日本は1.8人です。
医療体制が不十分な途上国で乳幼児死亡率が高いのはわかりますが、もっとも先進的なアメリカで乳幼児死亡率が高いのは、社会のあり方に問題があるからでしょう。

平均寿命はどうでしょうか。
男女平均寿命の国際比較(2025年版)で、日本は84.5歳で世界一ですが、アメリカは76.4歳で44位、34位の中国よりも下です。

自殺率はどうでしょうか。
10万人当たりの自殺者数(2019年版)は、アメリカは16.1人で、世界183か国中23位です。
中国は8.1人で、81位です。
自殺者の数は、社会の健全さのバロメーターになるのではないでしょうか。
ちなみに日本は15.3人で25位、アメリカとそれほど変わりません。


犯罪の多さも社会の健全さのバロメーターになるでしょう。
犯罪というと幅が広いので、殺人事件に限ることにします。
しかし、殺人件数は圧倒的に中南米、カリブ海、南部アフリカが多くて、アメリカが出てきません。そこで、OECD38か国に限ることにしました。

10万人当たりの殺人事件被害者数のランキング上位はこうなっています。

1位:メキシコ 28〜30人
2位:コロンビア 23〜25人
3位:コスタリカ 12〜14人
4位:アメリカ 6〜7人
5位:チリ 4〜5人

アメリカの影響力の強い国が上位を占めています。
日本は0.2〜0.3人で最下位です。

治安状況は地球規模で偏っています。
ヨーロッパとアジアは概して殺人は少なく、治安がよい傾向にあります。


麻薬汚染はどうでしょうか。
麻薬といってもいろいろな種類があり、国によって合法だったり非合法だったりします。麻薬依存症患者の数か麻薬犯罪で逮捕された者の数かという問題もあります。

そこで薬物使用による死者数で比較しました。
「レート」というのは、10万人当たりの薬物使用で死亡した人の数です。

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アメリカは突出した多さです。
ここにアメリカの病理が集中的に表れています。

なぜアメリカに薬物依存症が多いのかというと、ひとつには格差社会のせいでしょう。
貧困から抜け出せないと絶望した人間は薬物に逃避することになります。
それからPTSDも薬物依存の原因になります。
PTSDの原因はさまざまですが、アメリカ人にだけPTSDが多いとすれば、なにが考えられるでしょうか。
ベトナム戦争のころは戦争体験がPTSDの原因になった人が多くいましたが、最近は戦争が原因でPTSDになったという人はそんなにいないでしょう。
とすると、幼児期に親から虐待されるとか、親が離婚したとか、親が薬物やアルコールの依存症になるとか、親と死別するとかの「逆境的小児期体験(ACEs)」 がPTSDの原因になったのではないかと考えられます。


女性差別撤廃条約は、締約国が189か国に及び、未締約国は数か国だけですが、アメリカはそのひとつです
子どもの権利条約は、国連加盟国で締約していないのはアメリカだけです。
つまりアメリカは女性と子どもの人権が認められていない国です。
そのため家庭内で男が妻と子どもを不当に支配・抑圧し、しばしば暴力をふるっています。
人間は誰で家庭内で愛情を学びますが、アメリカの家庭では本来あるべき愛情が少なく、権力や暴力で家族が結びついています。
このことが自殺、犯罪、麻薬依存の大きな原因になっています。


トランプ政権の閣僚はマッチョな大男がそろっています。
第二次トランプ政権は第一次政権よりも女性閣僚が多いといわれましたが、これまでに辞任あるいは解任された閣僚4人はすべて女性でした。

クリスティ・ノーム(国土安全保障長官)  
パム・ボンディ(司法長官)  
ロリ・チャベス=デレマー(労働長官)  
トゥルシー・ギャバード(国家情報長官)  

マッチョな男は子どもの権利も無視します。
アメリカの学校図書館からは子どもに“有害”とされる図書が追放され、SNS使用は子どもにとって“有害”だとされて規制されつつあります。

マッチョな男は妻と子どもについて気に入らないことがあると殴ってかたをつけます。
トランプ政権もベネズエラやイランが気に入らないので殴ってかたをつけようとしました。
外交のやり方が家庭内暴力と同じです。
世界はこのやり方を見すかしているので、トランプのアメリカはますます弱い立場になっています。

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日本人はイラン戦争に目を奪われていますが、これは西半球の問題です。日本にとって重要なのは東半球の問題、とりわけ日中関係と日米関係です。
トランプ大統領は今月14日に国賓として中国を訪問して習近平主席と会談する予定です。ここで大きな変化が起きるに違いありません。

トランプ政権は昨年12月に国家安全保障戦略(NSS)において、ドンロー主義として西半球を支配するという構想を打ち出しました。
その前後にトランプ大統領は何度か「G2」という言葉を使っています。
たとえば昨年10月30日に、APEC首脳会談開催中に行なわれた米中首脳会談でトランプ氏は「米中が世界を二分して統治するG2構想」を表明しました。西半球はアメリカ、東半球は中国(とロシア)が支配するということと思われます。
これはアメリカ外交の大転換です。
3月末にトランプ氏は国賓として中国訪問の予定でした。このときに米中は手を握り、世界分割の取り決めをすると思われました。

日本としてはそんなことになるとたいへんですから、高市首相は米中首脳会談の前にトランプ氏と会談するべく3月に日米首脳会談をする段取りをつけました。トランプ氏の真意をただし、日本の要望を伝えたかったのでしょう。
ところが、2月末にイラン戦争が始まって、日本は石油危機と自衛隊をホルムズ湾に派遣するか否かという問題に直面し、「G2」問題は吹っ飛んでしまいました。

しかし、実際に消えたわけではありません。
トランプ氏の国賓としての中国訪問が3月から5月に延期されただけです。
トランプ氏は5月4日、今月半ばに中国を訪れ習近平国家主席と会談することについて「楽しみだ。非常に重要な訪問になる」と述べたので、再度の延期はないでしょう。
トランプ氏はイラン戦争を巡ってNATO諸国や日本や韓国にはきびしいことを言いますが、中国にはなにも言いません。


トランプ政権の対中外交が大きく転換したことを日本人はあまり認識していません。
第一次トランプ政権は中国に強硬でした。トランプ大統領は新型コロナウイルスを“チャイナウイルス”と呼び、巨額の賠償金を支払わせると息巻きました。
バイデン政権も対中強硬路線を引き継いで、国家安全保障戦略において中国を「唯一の競争相手」と位置づけました。
「両雄並び立たず」とか「お山の大将俺一人」という言葉があるように、米中の覇権争いは必然と思われました。

第二次トランプ政権も、最初は中国にトランプ関税をかけ、中国が報復関税をかけると、またさらに報復関税をかけるという報復合戦をし、アメリカは145%、中国は125%の関税をかけるところまでいきました。
最終的に両者は妥協しましたが、エマニュエル・トッド氏は朝日新聞のインタビューで、これを「アメリカの敗北」としました。

トランプ氏はCBSニュースのインタビューでこのように語りました。
「中国と米国となると、とりわけ激しい競争の世界がそこにはある。私たちは常に彼らをウォッチしているし、彼らも常に私たちをウォッチしている。そうこうしている内に、私たちはすっかり仲良くなってしまっているし、まさに彼らをノックアウトしてしまうのではなく、むしろ逆に彼らと協力することによって、私たち(米国)は、より大きく、より良く、そしてより強くなれると私は思う」
アメリカの敗北かどうかはわかりませんが、トランプ氏が中国に勝とうとする気をなくしたのは確かなようです。


高市首相もこれに危機感を持って3月にトランプ氏と会談したわけですが、イラン戦争に気をとられ、いつの間にか危機感を忘れてしまったかもしれません。

高市首相は5月2日、ベトナムを訪問し、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、エネルギー、重要鉱物、AI、半導体などの分野で両国が連携していくことを確認しました。
「自由で開かれたインド太平洋」というのは、中国の「一帯一路」構想に対抗して安倍首相が2016年に打ち出したものです。
「自由で開かれた」というイデオロギーが前面に出ていることで、中国に対抗する狙いのあることがわかります。
高市首相は従来の外交方針を踏襲しました。
しかし、それは「G2」の時代には合いません。
では、日本外交はどうあるべきでしょうか。

トランプ氏の「G2」構想というのは、西半球以外の国が西半球に力を及ぼすことを拒否するということで、当然中国やロシアは排除されます。
しかし、アジアに関しては米中が対等の関係であるということです。そのため日本と韓国にはより以上の防衛負担を求めることなるとしています(遠藤誉氏の解説記事『トランプG2構想「西半球はトランプ、東半球は習近平」に高市政権は耐えられるか? NSSから読み解く』より)。

アメリカの力がなくなった分、日本と韓国は自力で穴埋めしろというのですが、この理屈は少しへんです。
アメリカの力がなくなった分、中国に頼るという選択肢もあるからです。

ちなみにベトナムは共産党一党支配の国で、中国と同じです。
高市首相がベトナムと連携できるなら、中国とも連携できるはずです。
そうしないと日本はアメリカにすがりつくというみっともないことになってしまいます(日本の経済力では中国に対抗できないので)。


しかし、日本が中国に接近するのを妨げるものがあります。それは強い反中国の感情です。
反中感情の起源をたどれば、明治維新以来、日本人は欧米を崇拝する一方でアジアを見下してきたということがあります。
とりわけ朝鮮と中国は日本が植民地化したこともあって、見下し、差別してきました。
2010年に中国はGDPで日本を追い抜きました。
今まで見下していたのが見下される立場になったわけで、これが日本人の反中感情をさらに刺激したかもしれません。
このころ「中国経済は大崩壊する」みたいな本がいっぱい出版されました。

今では中国のGDPは日本の4.5〜5倍になりました。
しかし、日本人はアメリカを後ろ盾にして、依然中国を見下そうとしています。

保守派の反中感情はとりわけ強烈です。
高市首相も当然そうです。そのため自身の台湾有事発言でこじれた日中関係を立て直そうという気はまったくなさそうです。
アメリカと中国という大国の狭間で、日本はアメリカ一国依存を貫いています。

1971年にニクソン政権は金とドルの交換停止を発表し、ニクソン・ショックといわれましたが、この年にはニクソン大統領の中国訪問と毛沢東主席との会談の予定も発表され、これもニクソン・ショックといわれました。
今月半ばの米中首脳会談において米中の固い連携が示されれば、高市政権にとっては“トランプ・ショック”となります。
高市首相に備えはあるでしょうか。

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イラン戦争が行き詰まっていることもあって、このところトランプ大統領の心理状態はきわめて不安定です。

トランプ氏はラスベガスで行われたイベントで演説した中で「私の最初の任期中、わが国史上最高の経済を築き上げた。そして今、さらに成長させている。イランというラブリーな国、ラブリーな場所へのちょっとした気晴らしにもかかわらずだ」と述べました。
イラン戦争を「ちょっとした気晴らし」と言ったわけです。
強がったつもりでしょうが、たくさんの人が死んでいるのです。

トランプ氏にとってはイラン人の命などどうでもいいのでしょう。
トランプ氏は記者から「イランの発電所への攻撃は戦争犯罪にあたらないのか」と質問されたのに対して「彼ら(イランの体制側)は4万5000人もの人々を殺した。それ以上、6万人に上るかもしれない反体制派を殺害した。彼らは動物だ」と答えました。
トランプ氏は体制側と一般国民を混同しています。それに、体制側であろうと誰であろうと、人間を「動物」と言ってはいけません。

トランプ氏はまた「今夜、一つの文明が滅び、二度とよみがえることはないだろう」とSNSに投稿したこともあります。
一応イランを文明国と認めているようですが、それをほろぼすというのですから、イランの文明も国民もどうでもいいと思っているのです。
これはイラン人(ペルシャ人)に対する人種差別とイスラム教に対する宗教差別があるからです。

アメリカはイラク戦争のあと、イラク統治に失敗しましたが、このときも人種差別と宗教差別からイラク国民などどうでもいいと思っていたからです。


このような差別は、トランプ氏個人の問題ではなく、歴史的に形成されたものです。
古代ローマ帝国は広大な植民地を有し、市民よりも多数の奴隷を所有していましたが、強大な権力により秩序を維持していました。
政治学では、これを「ローマの平和(パックス・ロマーナ)」といいます。
要するに「力による平和」のことです。
奴隷や植民地支配される人間は、その状態を「平和」とはいいたくないでしょう。
現代の政治学はローマ時代の価値観を引きずっているようです。

トランプ氏は2月の一般教書演説で「力による平和は非常に有効だ」と述べ、「われわれは地球上で最強の軍隊を持っている」と誇りました。
トランプ氏もローマ時代の価値観です。


「力による平和」は、支配する者と支配される者の存在を前提としています。
世界の政治制度も、支配する者と支配される者を前提につくられています。

たとえば国際連合は、加盟国は平等ではありません。第二次世界大戦の戦勝国であるアメリカ、イギリス、フランス、ソ連(ロシア)、中国が拒否権のある常任理事国となり、その他の国よりも上の立場にあります。
1973年には世界の7大経済大国によってG7(主要国首脳会議)が設立されました。
国連の常任理事国とG7の国がその他の国を支配するという構図になっています。

国連の常任理事国には中国が入り、G7には日本が入っていますが、それ以外の国はすべて欧米の国です。
したがって、欧米の価値観が世界を支配しているともいえます。
これをヨーロッパ中心主義( Eurocentrism)といいます。
その価値観によって非白人や非キリスト教徒は差別的な扱いを受けています。


核兵器不拡散条約(NPT)も、世界の国を差別的に分けるものです。
この条約は、アメリカ、イギリス、フランス、ソ連(ロシア)、中国の5カ国を核保有国とし、それ以外の国は核兵器を持たず、核の平和利用のみとすると決められています。
核保有国は国連常任理事国でもあるので、常任理事国の力をさらに強化する条約です。

トランプ氏はイラン戦争を始めた理由を、最初はイランの体制転換と言っていましたが、今はイランに核兵器を持たせないためだと言っています。これがいちばんもっともらしい理由だからでしょう。
イランはこの条約に加盟していますから、イランが核兵器を持ってはいけないというのはその通りです。
しかし、アメリカは核兵器を持つのが許されて、イランは核兵器を持つのが許されないというのはおかしなことで、これはNPTが差別的な条約だからです。

さらに問題なのはイスラエルです。
NPT非加盟国はインド、パキスタン、イスラエルです。インドとパキスタンはすでに核保有国になっています。
イスラエルは、持っているとも持っていないとも明らかにしないあいまい戦略をとっていますが、今では核保有を疑う人はいません。

南アフリカは、1991年に核保有国であったことを“自白”し、核兵器を廃棄することで非核保有国としてNPTに加盟しました。
南アフリカが秘密裡に核保有国になっていたことには驚きました。
おそらくアメリカは知っていたでしょう。当時南アフリカは“白人国”だったので許容したと思われます。
イスラエルもアメリカと思想的・宗教的に近いので、アメリカは許容しています。

北朝鮮はNPT加盟国でしたが、NPT脱退を宣言して核開発を進め、核爆発実験もしました。
アメリカは核開発を阻止するために、アメリカが北朝鮮に軽水炉を提供し、北朝鮮は核物質などを放棄して核開発をやめるという「米朝枠組み合意」を成立させました。
しかし、アメリカは軽水炉を提供せず(議会が承認しなかった)、北朝鮮は怒って枠組み合意は崩壊し、北朝鮮は核開発に突き進んだわけです。
ただ、このときアメリカは北朝鮮に核開発を諦めさせる代わりに軽水炉を提供するという「取引」をしています。
ところが、イランの核開発については、そういう取引はせず、アメリカは一方的に攻撃をしました。

アメリカは核保有に関して、自国、イスラエル、北朝鮮、イランで対応を変えています。
これではトランプ氏がイランの核保有は許せないと主張してもまったく説得力がありません。


最近は欧米による「力の平和」は終わりつつあります。
今では中国、インド、ブラジルが経済大国になり、それらを排除したG7はほとんど意味がなくなっています(代わってG20の重要性が増しています)。
ウクライナ戦争では欧米はロシアに押されています。
しかも、欧米はトランプ氏の登場によってアメリカとヨーロッパが分断され、ますます力を失っています。
そうすると日本は対米従属から対中従属にシフトしなければいけないのかと考える人がいるかもしれませんが、対米従属も対中従属も同じことです。
世界を民主的で公平なものにすれば、どこにも従属する必要はありません。

国連総会は各国が平等です。今は国連総会よりも安全保障理事会のほうが立場が上ですが、国連総会の権限や権威を強化することで世界を民主的で公平なものにすることが可能です。
核兵器禁止条約は、核兵器を例外なく禁止した条約で、現在の核保有国が核を廃棄するための道筋も規定しています。核拡散防止条約から核兵器禁止条約にシフトすることで世界を民主的で公平なものに変えていくことができます。
日本はその方向を目指すべきです。


日本人は自国中心の発想に加えて欧米中心の発想になっているので、国際情勢を正しく把握することができません。
世界を公平に見る視点を獲得するには「道徳観のコペルニクス的転回」をお読みください。


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パキスタンの仲介でアメリカとイランの協議が行われましたが、バンス副大統領は合意には至らず帰国の途につきました。
しかし、バンス氏は「アメリカの合意案を受け入れるかどうかは、今後見ていくことになる」と語ったので、協議は継続されるようです。

トランプ大統領は「ホルムズ湾閉鎖」という新しい手段を打ち出しましたが、アメリカは戦争を継続してもなんの利益もありませんし、イランも戦争が継続すると損害が増えるだけです。
なにかの理由で戦争を始めても、長期化すると戦争の不利益がのしかかってきます。
朝鮮戦争もベトナム戦争も、交渉は難航しましたが、結局停戦協定が成立しました。

ウクライナ戦争も、ロシアは短期間で勝利できる見通しもなさそうですから、プーチン大統領も停戦したがっているに違いありません。
ですから、ロシアとウクライナが2国で話し合えば停戦に至る可能性は大きいのではないかと思います。
ただ、現実にはここにNATOが関わってきます。戦争の痛みを感じていない国は停戦に真剣でないので、外国が関与するとうまくいきません。
日本でも、「ここで停戦すれば戦争による領土獲得を認めたことになる」などと言う人がいますが、戦争当事者の苦しみを理解しない無責任な意見です。

戦争による利益と不利益は客観的に把握できるので、利害についての話し合いはたいていうまくいきます。
ビジネスにおける話し合いも同様です。


ところが、政治的な話し合いはたいていうまくいきません。
むしろ話し合えば話し合うほど対立が深まります。
インターネットができてからこの傾向が強まりました。ネットでは誰とでもいくらでも話し合うことができるからです。
掲示板の2ちゃんねるができたころ、なにが起こったかというと、在日差別、嫌韓ブーム、生活保護バッシングでした。
SNSができてから右翼と左翼、保守とリベラルの対立が深まりました。
最近は排外主義が高まっています。
こうした分断は世界的現象です。

政治の世界には「熟議」という言葉があります。多くの人が時間をかけて話し合うことで問題を解決していこうというものです。このやり方でうまくいく場合もありますが、うまくいかない場合もあります。
問題なのはうまくいかない場合です。これによって社会の分断が深刻化しているわけです。


なぜ政治の世界では話し合いがうまくいかないのでしょうか。
財政問題や増税問題、給付金問題など経済的な問題なら、話し合いでよい結論が導かれることもありますが、政治の世界の大きなテーマは「悪を排除して世の中をよくする」ということです。
悪とはなにかというと、犯罪者、テロリスト、スパイ、既得権益者、利権政治家、不法外国人などです。
さらに、「悪」のレッテルはなんにでも張れます。財務省、外務省、大企業、生活保護受給者、中国人、イスラム教徒、迷惑行為をする人、マナーの悪い人などに張られています。

右翼からすれば左翼が「悪」で、左翼からすれば右翼が「悪」です。
したがって、右翼と左翼、保守とリベラルの話し合いは、すればするほど対立が深まるのです。

ちなみに夫婦関係においても、相手を「悪」と見なせば、話し合いをすればするほど対立が深まります。
夫婦は話し合う時間がいっぱいあるがゆえに、離婚に至ったり、仮面夫婦になったりします。


なぜこんなことになるかというと、善、悪、正義という道徳上の概念がまったく解明されていないからです。
道徳について研究する学問が倫理学ですが、倫理学はまったく機能していません。存在しないも同然の「空白の学問」です。
そのため、善、悪、正義という基本的な概念の定義がないので、誰もが根拠もなく「悪」のレッテルを張っているのが現状です。

そうすると、誰もがいつ「悪人」とされて処罰されるかわかりません。
これでは安心して暮らせないので、「法の支配」が行われています。
法律は成文化されているので、ごまかしがききません。
「悪人」という概念は使わず、法律に基づく「犯罪者」ないし「容疑者」などをそれに代えます。
「容疑者」などと決めつけるときも警察や検察の逮捕、家宅捜索、事情聴取などの具体的な動きを根拠にします。
新聞、テレビというオールドメディアは「法の支配」を遵守して、社会の混乱を防いできました。

ところが、インターネットというニューメディアは無法状態で、つねに「悪人」のレッテル張りが行われています。誰かが「あいつは悪いやつだ」と犬笛を吹くと、みんなで寄ってたかってバッシングするわけです。犯罪行為だけでなく、迷惑行為をした人間、マナーの悪い人間までもがやり玉に上がります。

そうした中から出てきたのがトランプ大統領です。
トランプ氏は「悪いやつ(bad guy)」という言葉をよく使います。ほかにも根拠なく犯罪者、テロリスト、精神異常者、知的障害者、強姦者などという言葉を使って人をののしります。

ベネズエラのマドゥロ大統領拉致作戦のあと、トランプ氏はインタビューに答えて「私には国際法は必要ない」と言い、自身の権力に限界はあるかとの質問には、「私自身の道徳、私自身の心だ。それが私を止められる唯一のものだ」と答えました。
「法の支配」の無視を公言しています。
それに代わって道徳に従うと言っているので、これを表現すれば「道徳の支配」ということになるでしょう。
つまり「法の支配」から「道徳の支配」ということです。
今、世界は「法の支配」から「道徳の支配」へとシフトしており、これが世界の混乱を生み出しています。

正義のヒーローが活躍するハリウッド映画は「道徳の支配」を表しています。
どの映画も、悪人が善人たちを苦しめているところに正義のヒーローが登場し、悪人をやっつけて、善人たちを救うというストーリーです。
ストーリーが同じですから、悪人をやっつけるところの殺戮と破壊のシーンを派手にすることで観客を引きつけています。
たとえば「ランボー」シリーズは、第一作は原作通りで、心を病んだベトナム帰還兵が周りの者から冷たく扱われたことに怒り、孤独な戦いをするというストーリでしたが、第二作以降は、ランボーはただの殺戮者と化します。しかも作品ごとに超人化が進み、、敵の銃弾はことごとくかわし、自分は機関銃で大量に敵を殺しまくります。ほとんどファンタジーの世界です。
観客はこうした映画を観て、「正義」という名目のもとに暴力、殺戮、破壊を楽しみます。

アメリカのマドゥロ大統領拉致作戦、イランのハメネイ師暗殺作戦は、まさにハリウッド映画的です。トランプ氏はこれでアメリカ国民を喜ばせれば支持率も上がると思ったのでしょう。
しかし、映画には終わりがありますが、現実に終わりはありません。
イラン戦争の終わらせ方を見失ったトランプ氏はかえって支持を失っています。

なお、映画では善人、悪人、正義のヒーローと人間が明確に色分けされていますが、現実の人間は色分けされていません。善人と悪人の見分けはむずかしく、正義のヒーローは悪人かもしれません。
ですから、「道徳の支配」はうまくいかないのです。


しかし、トランプ氏は正義のヒーロー気取りで殺戮と破壊をしています。
ネットの中には、「悪いやつ」をやっつけるための攻撃的で差別的な言説があふれています。
こうした事態を改善するためには、「道徳の支配」から「法の支配」に戻すことです。

しかし、悪いやつをやっつけてなにが悪いと思う人が多いのではないでしょうか。
ハリウッド映画と現実世界の区別がついていないのです。
そういう人に「法の支配」のたいせつさを説いてもあまり効果がないかもしれません。

では、「道徳の支配」がうまくいかないことを説得すればどうでしょうか。
道徳によって世の中はよくならないし、道徳教育で道徳的な人間はつくれないという現実に目を向けさせるのです。
しかし、「それは道徳に従わない人間が悪いからだ」という反論がありそうです。


道徳についての議論は、いつも迷走します。
倫理学が機能していないせいです。
したがって、まともな倫理学ができれば状況は一変するはずです。

私はまともな倫理学の土台をつくりました。
それは「道徳観のコペルニクス的転回」で読むことができます。

画期的な理論ですが、まだあまり認知されていないのが残念です。
世界を平和にし、家庭を幸福にする理論でもあります。
拡散に協力していただければと思います。

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4月7日、アメリカとイランは2週間の停戦とホルムズ海峡開放に合意したと発表しました。

それまでトランプ大統領は「イランのすべての橋と発電所を破壊する」「あらゆる地獄が降り注ぐ」「今夜、一つの文明が滅び、二度と蘇ることはないだろう」などと言葉の限りを尽くしてイランを脅していました。
それが一転して停戦合意ですから、その振れ幅の大きさに驚きます。
トランプ氏はこうしたやり方で交渉相手を翻弄して、ディールを有利にしてきたのでしょう。

今回の戦争でトランプ氏は大いに評価を下げました。
「文明が滅びる」という表現はジェノサイドを意味するとか、核兵器による脅しだとか批判されていますし、放送禁止語を使ってののしったことも顰蹙を買っています。
同盟国を非難したことで同盟国との信頼関係も傷つきました。
トランプ氏は日本に対しても「対イラン軍事作戦を助けてくれなかった」と不満を述べました。

こうしたことはトランプ氏だけの問題ではありません。アメリカ国民の半数近くがトランプ氏を支持しているのですから、次の大統領になっても同じということもありえます。


4月9日付朝日新聞にエマニュエル・トッド氏のインタビューが載っていました。
このところトッド氏は各メディアで引っ張りだこです。ウクライナ戦争以降の世界情勢を的確に言い当てているからでしょう。
インタビューの冒頭部分を引用します。

――イスラエルと米国によるイランへの攻撃で、世界に影響が出ています。


 「歴史家として、大きな構図から考えたいと思います。今回のイランでの戦争は、米国がすでに喫している『二つの巨大な敗北』に続くものです」


 「第一の敗北は、昨年2月のインタビューであなたに話した、ウクライナにおけるロシアに対する米国の事実上の敗北です。製造業が衰えた米国は、支援するウクライナに十分な武器や弾薬を提供できず、米国の産業システムが大規模な戦争を支えられない事実が露呈しました」


 「第二の敗北は、その後で明らかになった、さらに重要な中国に対する敗北です。トランプ米大統領は関税で中国を威嚇しましたが、中国がレアアースの禁輸で脅し返すと、すぐに撤退を余儀なくされました」


 「したがって、彼の現在の行動のすべては、これら重要な敗北から目をそらし、自らも忘れるためのものだと考えると理解できます」


 ――昨年秋の前回来日の際、朝日地球会議ではベネズエラ攻撃の可能性も示唆していましたが、実際に起きてしまいました。


 「そうです。イスラエルと米国によるイランへの攻撃も、同じように始まりました。しかしイランが崩壊せず、事態は収拾がつかなくなり、米国にとって『三つ目の巨大な敗北』になるかもしれません」

トッド氏は、この戦争の根本には米国社会の「宗教ゼロ」の状態があるといいます。かつて社会を統合していた道徳的・精神的な規律や価値観が失われ、破壊や殺戮そのものを楽しむかのような「ニヒリズム」が広がっているというのです。
戦争というのは軍隊同士の戦いだったはずですが、米国とイスラエルがやっているのは国家の指導者を標的にして殺害する「暗殺」です。米国は「虚無的な暗殺国家」になり下がったとトッド氏は批判します。

確かにアメリカの道徳的・精神的な堕落はひどいものです。犯罪と麻薬という重大問題にアメリカは向き合おうとせず、もっぱら他国に責任転嫁しています。


もはやアメリカは信頼できる同盟国ではなく、日本は真剣にアメリカ離れを考えなければいけません。
ただ、そうすると「日本は中国、北朝鮮、ロシアという核保有国に囲まれているので、アメリカの核の傘が必要だ」という声が必ず上がります。
しかし、これは日本人が戦争について合理的な思考ができないからです。

アメリカ、イスラエルは核保有国で、イランは非核保有国です。核兵器を使えば簡単に勝てるはずですが、核兵器は使用されていません。
ロシアとウクライナにおいても同じです。
人類史において核兵器が実戦で使用されたのは日本に対する原爆2発だけです。
それ以降使用されていないのは、核兵器の破壊力がすさまじく、非人道的兵器であることが広く知られたからです。
もし核兵器を使用する国があれば、世界中から激しい非難を浴びせられるのは確実なので、どの国も使用しないのです。
そのようになったのは、被爆体験の悲惨さを世界に向けて発信してきた日本の努力があったからでもあります。

ただ、核兵器が絶対使用されないとはいえません。
プーチン大統領はウクライナ侵攻を始めた当初、核兵器使用をほのめかす発言を何度もしました。
NATOが参戦するのを牽制するためです。もしNATOが本格的に参戦したら、ロシアは存亡の危機に立たされます。国が亡びるかもしれないとなれば、核兵器を使用して世界を巻き込むということもありえます。
北朝鮮が核で先制攻撃をするということはまったく考えられません。しかし、なにかのきっかけで米軍と韓国軍と戦争になり、北朝鮮軍が敗勢になると、自暴自棄で核兵器を使用するということはあるかもしれません。
そのときには核の傘にはなんの意味もありません。

ですから、核保有国を追い詰めるのはひじょうに危険です。
そういう意味では、北朝鮮のような弱小国がアメリカの脅威に対して核兵器を保有しようとするのはしかたがないともいえます。

中国が日本を攻撃するとすれば、核兵器を使うことは考えられません。もしそれをやったら中国は世界中から非難されるからです。
ですから、日本としては通常兵器での戦争に備えればいいわけです。
中国軍を撃退して、深追いしなければ、それで終わりです。核兵器の出番はありません。
核の傘も必要ないことになります。


しかし、ほとんどの日本人はこのようには考えません。
「もし日本が核攻撃されたら」と考えると、そこで思考停止してしまうからです。
ヒロシマ、ナガサキの経験がトラウマになっているのです。
いわば「核恐怖症」です。

現実の戦争はすべて「通常兵器による戦争」であるのに、日本人の頭は「核戦争」に占拠されてしまって、「通常兵器による戦争」について考えることができません。
「中国軍はどのようにして日本に攻めてくるのか。自衛隊はどういう迎撃の準備をすればいいのか」という議論が行われるのを私は一度も見たことがありません。
「核恐怖症」によって思考停止しているからです。

こうしたトラウマは時とともに薄れていくものですが、日本においては被爆体験を反戦運動のバネにするということが行われていて、体験を風化させないようにしてきました。
そのため、反戦平和を叫ぶ人ほど軍事について思考停止しています。
「がんこに平和」という言葉を繰り返す福島瑞穂社民党党首がその典型です。

一方、保守派も国民の「核恐怖症」を利用してアメリカの核の傘に依存させようとしてきたので、たいしてかわりません。


「核恐怖症」を克服すれば、通常兵器による戦争の実態がよく見えてきます。
ウクライナ戦争を見てもイラン戦争を見ても、ミサイルとドローンが大きな役割を果たしています。
したがって、ミサイルやドローンに対する防空システムが重要です。
イスラエルの防空システム「アイアンドーム」はかなり迎撃率が高く、有効に機能しているようです。
それに対してアメリカの防空システムは不十分です。イラン製の自爆ドローンは1機500万円程度なのに対し、アメリカ製の迎撃ミサイル「パトリオット」は1発当たり約6億円とされます。これで迎撃していては割に合いませんし、パトリオットはすぐに打ち尽くしてしまいます。
パトリオットは日本も導入しています。
アメリカ製の攻撃ミサイル「トマホーク」は、日本は1発5億円ぐらいで購入しました(実際はその半値ぐらいのようです)。

アメリカ製の兵器は、ハイテクですが、やたら高価で、実用的でありませんし、量産がききません。
そのためウクライナは戦況が不利になり、自前でドローンと防空システムを開発しています。

3月に熊本県に配備された射程1000キロで中国にも届く長距離ミサイル「25式地対艦誘導弾」は国産です。
なぜ防空システムでなく攻撃用ミサイルを開発したのか不可解です。
小泉防衛相がミサイルを配備する地元で公聴会を開こうとしないのは、説明のしようがないからでしょう。
日本が中国本土に届くミサイルを持っても意味がありません。ただ、アメリカと中国が戦争になったとき、そのミサイルはアメリカ軍を加勢するのに役立ちます。


現実に起こる戦争は「通常兵器による戦争」だということを理解すれば、アメリカに頼る必要のないことがわかります。
アメリカに頼らなければ、中国と対立する必要のないこともわかります。
自衛隊を専守防衛に再編すれば、もっと安くつきます。

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トランプ大統領は4月1日、対イラン軍事作戦について演説しましたが、まったく無内容で、誰もががっかりしました。
その中で「今後2~3週間にわたって容赦なく攻撃し、イランを彼らにふさわしい石器時代に戻す」と言った言葉が注目されました。

「石器時代に戻す」というのは、ベトナム戦争のときにアメリカの空軍参謀総長だったカーチス・ルメイが「北ベトナムを石器時代に戻してやる」と言ったのを踏まえたものでしょう。
カーチス・ルメイは日本への都市無差別爆撃を指揮した人物でもあります。
「真珠湾攻撃」に続いて日本の戦争の過去が蒸し返されます。

イランは人口8900万人、GDP世界39位、かなり文明の進んだ国です。いくら都市を爆撃しても石器時代に戻ることはありません。
日本にしても北ベトナムにしても石器時代には戻っていません。
「石器時代に戻す」という言葉には、原始人、未開人、途上国人への蔑視とともに、文明人としての傲慢さが表れています。

アメリカはこの傲慢さによって戦争するたびに失敗してきました。主な戦争だけでもベトナム、ソマリア、アフガニスタン、イラクなどで、最初は勝利しているようでも最終的には敗北して手を引いています。敵を軽視して戦争を始め、傲慢な態度で民衆の反感を買うからです。


こうした傲慢な態度は文明と深く結びついています。

文明人と非文明人が戦うと文明人が勝ちます。石器しか持たない集団より青銅器を持った集団のほうが強く、鉄器を持った集団はさらに強くなります。大きな集団は小さな集団より強く、組織的に動ける集団はそうでない集団よりも強いので、戦争の強さはほとんど文明の程度に比例します。
戦いに勝った文明人は食料や財産を奪うだけでなく、非文明人を奴隷にし、非文明人の土地を植民地支配することでより大きな利益を得るようになりました。その典型が古代ローマ帝国です。
自分たちと同じ人間だと思うと奴隷にすることはできません。言葉と文化の違う人間をバルバロイ、野蛮人、劣った人間であると見なして奴隷にし、植民地支配をしました。

文明人が非文明人を見下すのはどこでもあることで、中国文明では周辺民族を「南蛮、東夷、西戎、北狄」などと呼んで見下していました。奴隷制もありましたが、古代ギリシャ・ローマ帝国ほど多数の奴隷はいませんでした。

近代国民国家は戦争にひじょうに強いのが特徴で、そのため世界中に植民地と奴隷制を広げました。
ここでも近代文明人は非文明人を見下しました。
植民地を持ったのは西ヨーロッパとアメリカ合衆国なので(あと日本と)、すべて白人の国です。奴隷にされ、植民地支配をされたのはすべて有色人種です。
そのため、非文明人への差別は人種差別という形をとりました。

現在、人種というのは生物学的には意味はないとされ、人種差別は否定されています。
しかし、人種差別のもとには非文明人差別があるのです。
非文明人差別というのは、未開人、途上国人、低学歴者、知的でない人への差別でもあります。
この差別は幅広く、根強く存在しています。
ですから、人種差別をなくすことにはあまり意味はなく、非文明人差別こそなくさなければなりません。


この非文明人差別はあまり認識されていません。
ジャレド・ダイアモンド著『銃・病原菌・鉄』は、ダイアモンドのニューギニア人の友人が言った「なぜヨーロッパ人がニューギニア人を征服し、ニューギニア人がヨーロッパ人を征服することにならなかったのだろう」という疑問をもとに、文明の発展には交通が大きく関わっていること、感染症への免疫も文明人の強さの要因であることなどを論じました。しかし、それだけではニューギニア人の友人の疑問に答えたことにはならないでしょう。友人は「なぜヨーロッパ人は奴隷制や植民地支配などの残忍で非人間的な行為ができたのか」ということも問いかけたはずです。

ヨーロッパ人は残忍で非人間的なので非文明人を奴隷にし植民地支配をした――ということは、ヨーロッパ人は認めたくないでしょう。
むしろ逆の考え方がされています。非文明人は野蛮で残忍だが、文明が進むとともに人間は道徳的に向上し、ヨーロッパ人はその頂点に立っている。したがって、ヨーロッパ人が非文明人を植民地化によって文明化してやるのは彼ら自身のためでもあったというものです。


奴隷制と植民地支配を行ってきた西ヨーロッパとアメリカ合衆国はグローバルノースといわれ、植民地支配をされてきた国はグローバルサウスといわれます。
グローバルノースは、自分たちは文明的にも道徳的にももっとも優れていると考えていて、奴隷制や植民地支配を反省しようとしません。
グローバルサウスは奴隷制と植民地支配を罪深いことと考えていて、グローバルノースに謝罪と補償を求めています。

去る3月25に国連総会は、大西洋をまたぐ奴隷貿易が続いた時代にアフリカの多くの住民が奴隷にされたことを「最も重大な人道に対する罪」と認定する決議案を採択しました。
この決議案は、国連加盟国に対して奴隷貿易についての謝罪を検討し、賠償基金へ拠出するよう呼びかけています。
決議は、賛成123票、反対3票で採択されました。反対した国は、アメリカ、イスラエル、アルゼンチン。日本やイギリス、欧州連合(EU)加盟国など52カ国は棄権しました(『国連総会、奴隷貿易や奴隷制は「最も重大な人道に対する罪」 決議を採択』)。

反対した3か国にアメリカとイスラエルがあることに注目しないわけにいきません。
みずからの罪を認めないとさらに罪を犯してしまうといういい例です。

日本は棄権グループに入っていますが、この決議案が正しいことは明白です。
これまで隠蔽されてきたセクハラや性加害がどんどん告発されてきたように、奴隷制と植民地支配の罪もこれからどんどん告発されていくでしょう。


今やグローバルノース対グローバルサウスの対立が世界を動かしています。
トランプ氏から見れば、イラン人は有色人種で、文明が遅れていて、イスラム教徒でもあり、価値の低い人間なので、いくら殺しても平気です。そうした思いが「石器時代に戻してやる」という言葉に表れました。
これはグローバルサウスの側から見れば腹立たしい限りですが、日本人はグローバルノースの側に立っているので、トランプ氏の罪深さがわからないかもしれません。


文明人は非文明人に対して利己的で残忍にふるまうようになり、道徳的に堕落しました。
ところが、西洋社会ではまったく逆に、文明が進むほど野蛮だった人間が道徳的に向上するとされてきました。
アリストテレス、カント、ヒュームなど代表的な倫理思想家もそう考えていたので、彼らの著作を読むと、ひたすら難解な文章が続いていて、わけがわかりません。

おとなと子どもの関係にも同じことがあります。
おとなは子どもより強いので、子どもに対して利己的で残忍にふるまうようになり、道徳的に堕落しました。
「権力は腐敗する。絶対権力は絶対的に腐敗する」という言葉がありますが、おとなも文明人も権力なので腐敗するのです。
ところが、西洋社会では、子どもは生来わがままなので、おとながしつけて子どもを道徳的に向上させなければならないとされてきました。
今の日本でもそう考えられていて、小中学校では道徳的に堕落した教師が子どもに道徳教育をしていますし、道徳的に堕落した親が子どもにしつけをしています。
そのため子どもはみんな傷ついて、生きづらさをかかえることになります。
このことは前々回の「子どもの自殺をへらす確実な方法」という記事に書きました。


堕落したおとなは子どもを虐待し、堕落した文明人は文明の遅れた人を差別し、虐殺しています。
この事態には倫理学に大きな責任があります。
倫理学がどう間違っているかはだいたいわかっていただけたと思いますが、より詳しく知りたい方は別ブログの「道徳観のコペルニクス的転回」を読んでください。



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トランプ大統領はイラン攻撃を始めたものの思った通りにいかないので、あせりを深めているようです。最近の言動はまともではありません。

3月23日、トランプ氏はテネシー州メンフィスの会合においてピート・ヘグセス国防長官に向かって、対イラン軍事作戦について「ピート、君が最初に声を上げたと思うよ。『彼らに核兵器を持たせるわけにはいかないから、やろう』と言ったのは君だった」と言いました。
イラン攻撃を最終的に決断したのは大統領である自分です。誰が最初に言ったかはどうでもいいことです。
それを言ったということは、トランプ氏はヘグセス長官に責任転嫁したかったのでしょう。
リーダーとして言ってはいけないことです。

トランプ氏はNATO諸国に対して、ホルムズ海峡での船舶護衛のための艦艇派遣を要請しました。「私は助ける必要もないのに(NATO諸国を)助けてきた。今度は彼らが米国を助けるかどうかだ」と言い、協力を拒否した国は「とても悪い未来」に直面すると警告しました。
しかし、どの国からも拒否されたようです。
そうすると言うことがころっと変わり、「われわれはNATOの支援を必要とせず、望んでもいない。最初から必要なかった」「彼らに艦艇派遣を要請したのは、彼らがどう反応するか知りたかったからだ」などと語りました。

断られたのがあまりにもカッコ悪いので、負け惜しみを言ったわけです。
子どもの論理です。

トランプ氏は高市首相に対して、表立ってはイラン戦争への関与を要請しませんでしたが、対談においては要請の話があったようです。それに対して高市首相は日本には法的にできることとできないことがあるとていねいに説明したと言いました。
NATO諸国のように「やらない」と言ったのではなく、「法的にできない」と言ったわけです。
「NOと言えない日本」は今でも健在です。


トランプ氏は原油高にいらだったのか、48時間以内にホルムズ海峡を開放しないとイランの発電所を攻撃する、最初にいちばん大きい発電所をねらうと言ってイランを脅しました。
そうすると一気に原油高、株安が進行したため、トランプ氏は発電所攻撃を5日間延期すると表明し、その後さらに10日間延期すると表明しました。
戦争が激化するとさらに原油高になるということを考えなかったのでしょうか。
それに、生活インフラへの攻撃は戦時国際法違反です。
トランプ氏は思いつきで政策を決め、誰もトランプ氏に意見できないようです。


トランプ氏は原油価格を下げようとしてか、このところイランとの停戦交渉について「きわめて順調」「近く合意」などと前向きな発言を繰り返しています。
イランのほうは交渉の進展に否定的な発言を繰り返していて、実際はどうなのかよくわかりません。
トランプ氏はカーグ島の占拠を計画しているとも言っています。
さらに3月30日には、停戦交渉が合意に至らない場合、イラン国内のすべての発電所や油井、石油輸出拠点であるカーグ島、淡水化プラントを爆破し、壊滅させると警告しました。
どうやらトランプ氏は、交渉を促進させる手段としては“脅し”しか知らないようです。

トランプ氏はトランプ関税を脅しの手段にすることで、経済交渉では一定の成果を得ました。
しかし、脅しの利かない相手、たとえば習近平主席とかプーチン大統領とかには手の打ちようがありません。
そう考えると、トランプ氏が関わってもウクライナの停戦交渉がまったく進展しないのもわかります。ゼレンスキー大統領も国民の命を預かっているので、安易に妥協しないからです。

スペインのサンチェス首相は国内の米軍基地がイラン戦争に使われることを拒否し、トランプ氏は激怒して「スペインとのすべての貿易を断つ」と言いましたが、サンチェス首相はまったく動じないので、そのままになっています。
カナダのカーニー首相も反トランプの立場を鮮明にして、押し通しています。
トランプ氏はビビりそうな相手を脅すのです。強気のリーダーにはなにもしません。イスラエルのネタニヤフ首相や北朝鮮の金正恩委員長もそちら側なのでしょう。
弱い者に対して傲慢になるというのはガキ大将の論理です。


トランプ氏は3月27日、ベネズエラやイラ‌ンでの“戦果”を誇示した上で、「次はキューバだ」と述べました。
おそらくイランと関わっていることがいやになったのでしょう。オモチャに飽きた子どもが新しいオモチャをほしがるみたいなものです。


ウォール・ストリート・ジャーナルは3月30日、トランプ氏はホルムズ海峡が事実上閉鎖された状態のままであってもイランに対する軍事作戦を終了する用意があると側近に述べたということを報じました。
新しいオモチャがなくても今のオモチャを放り出したいようです。

アメリカが手を引けば、イランもホルムズ海峡封鎖を解く可能性があります。
ただ、問題はイスラエルです。イスラエルが攻撃を続行すればそうはなりません。
トランプ氏はネタニヤフ首相を説得するべきですが、トランプ氏は説得するどころか、ネタニヤフ首相にあやつられている感じがあります。


トランプ氏はイラン戦争が行き詰まって思考停止状態になり、老化による思考の硬直化もあって、やることも言うこともでたらめです。
トランプ氏に飛びついてハグした高市首相は世界に恥をさらしました。

しかし、よく観察するとトランプ氏の思考パターンが見えてきます。
“おやじ転がし”のうまい高市首相がトランプ氏をあやつって世界を平和にしたら、高市首相はノーベル平和賞ものですが、残念ながら高市首相には世界を平和にしようという気持ちがなさそうです。

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3月19日の日米首脳会談については、さまざまに評価されています。
その中で、元乃木坂46の松村沙友理氏がTBS系「サンデー・ジャポン」で語ったことが印象に残りました。

会談の冒頭で高市首相は「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけ」とトランプ氏を持ち上げ、トランプ氏は2月の衆院選で大勝した高市首相を「日本の歴史上、選挙で最も大きな成功を収めた」と持ち上げましたが、それについて村松氏はこのように語りました(松村沙友理、日米会談で両首脳ヨイショ合戦に違和感「世界中から見られている中で…」)。
松村は、高市氏とトランプ氏の会談冒頭の様子について「最初結構、高市さんがヨイショして、トランプさんがそれを返してっていう会話が。メディアが入ってる中であえてやっているのがドキドキしたというか」と語り、「2人きりでやってくれているならまだあれなんですけど、メディアが入っているから世界中から見られている中でこういう会話をするっていうのは、どういう意図があって、これはよかったのかどうだったんだろうかって」と、お互いをたたえ合うシーンに違和感を口にした。
多くの人は、互いにヨイショするのは友好的な雰囲気づくりのためだと肯定的に見ているでしょう。
しかし、村松氏は「世界の視点」からどう見られたかを推測しています。
実は今回の日米首脳会談が世界からどう評価されたかについての報道はほとんどありません。
その意味で松村氏の視点は新鮮でした。

今回の日米首脳会談は世界でどのように評価されているのでしょうか。
AIにまとめてもらいました。
それによると、トランプ氏の真珠湾攻撃発言はかなり報道されていて、失礼な発言だという評価でほぼ一致しています。
それから、日本は中東での軍事的役割を拡大するのかということに関心が集まっています。
会談が成功だったか失敗だったかというような評価はほとんどありません。
ただ、「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけ」という発言は、欧州、中国、韓国で“過度な持ち上げ”として批判的に報道されました。
ですから、村松氏の懸念は当たっていたといえます。

「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけ」という言葉は、トランプ氏に和平への努力をうながしているとも理解できますが、トランプ氏を賞賛していることは間違いありませんし、トランプ氏もそのように理解したでしょう。
国際法違反の戦争を始めたトランプ氏を賞賛するなどあってはならないことです。


そもそも世界はトランプ氏をどう見ているでしょうか。
「アメリカファースト」を掲げる人間を他国の人間が支持するはずありません(欧州の極右や日本の保守派は別ですが)。
関税を武器にアメリカの国益追求をごり押ししてくるトランプ氏に世界中が辟易しています。
日本も80兆円余りの対米投資を約束させられました。
そこにベネズエラの大統領拉致作戦、イラン攻撃と国際法違反の武力行使がありました。
これは中東、アフリカ、中南米の国にとっては他人事ではありません。いつアメリカが自国に牙をむいてくるかわからないからです。
各国政府はアメリカに配慮してあまり批判しませんが、どの国であれ国民の圧倒的多数は反トランプです。

トランプ氏はアメリカ国内でも支持率より不支持率が上回っており、世界中から総すかんを食っている状態です。
そんなトランプ氏と、外交的な儀礼を越えて仲良くするところを世界に見せるとは、まさに国辱ものです。


ところが、国内では高市首相の対米外交が高く評価されています。
読売新聞の世論調査では、今回の日米首脳会談を「評価する」と回答した人は69%にのぼり、「評価しない」は19%でした。
これまで日本の首相はアメリカ大統領と個人的に親密な関係を築けば成功とされてきました。
高市首相はトランプ氏のことを「ドナルド」と呼び、親密さをアピールしました(トランプ氏は高市首相のことを「サナエ」とは呼びませんでした。名前を覚えていないのだろうといわれています)。
そうしたことが評価されたのでしょう。
マスコミや有識者も高市首相がトランプ氏と親密さを演出したことを賞賛しています。
松村氏のような見方は少数派です。

しかし、親密さが評価されるのはアメリカ大統領がまともな人物である場合です。
トランプ氏に限っては、「信頼関係」などというものは存在しません。トランプ氏の人間関係は「利用するか利用されるか」です。
日本政府は今回の会談に合わせて約11兆円の投資プロジェクトを発表しましたが、それに対する見返りはありません。
見返りがないどころか、高市首相はトランプ氏に一方的に利用されています。


トランプ氏は高市首相をなにをしてもいい相手と見なしたのでしょう。
それはホワイトハウスの公式サイトにアップされた写真を見てもわかります。

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これは晩餐会の写真です。
一人で踊っているのが不可解です。もしかするとトランプ氏が得意の“トランプダンス”をしていて、写真は切り取られたものではないかと想像したりします。
この写真にキャプションをつけるとすれば「偉大なトランプ大統領に拝謁して歓喜の踊りを踊る日本の首相」というところでしょう。
香港紙「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」は、この写真が中国のSNS上で「嘲笑の嵐を巻き起こした」と報じています。

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これはバイデン前大統領の写真(オートペンの写真)を見て、笑っているところです。
日本の首相としては笑ってはいけないところですが、トランプ氏におもねったのでしょう。
高市首相の立場に配慮すればこの写真は公表しないはずですが、なんでも政治利用するのがトランプ流です。


安保条約があるとはいえ、日本人はアメリカがほんとうに日本を守ってくれるのだろうかと不安に思っています。
そのために日米関係を信頼できるものにしようと努力してきました。
しかし、国と国の間にそのような信頼関係を築くのはもともとむりなのです。
トランプ大統領の出現を機会に日本は対米自立をはかるべきです。

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高市首相は訪米する直前の国会答弁で「したたかで国益第一の外交を展開する」と述べました。
ほんとにそんなことができるのかなと思っていると、高市首相は3月19日、トランプ大統領との会談の冒頭で「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけだと思う」と発言し、これはホワイトハウスのXでも取り上げられ、世界にも発信されました。
高市首相にとっては、トランプ氏の歓心を買うことが「国益第一」だったのです。

しかし、今はそんなことをしている場合ではありません。
アメリカとイスラエルによるイラン攻撃を止めて中東が平和になることを世界の人々は願っています。
高市首相はトランプ氏にイラン攻撃を止めるように言うべきです。
少なくともアメリカとイスラエルによるイラン攻撃は支持しないと言うべきです。
トランプ氏はNATO諸国から支援が得られない現実に怒りをぶちまけていました。NATO諸国に続いて日本からの支持も得られないとなったら、トランプ氏も少しは考えを改めたかもしれません。
ところが、高市首相はトランプ氏を元気づけるようなことを言ってしまったので、平和が遠のいてしまいました。

イラン戦争を止めることが「世界益」です。
高市首相は「国益」を追求したために「世界益」を棄損しました。
いや、イラン戦争が続けば日本に中東から原油が入ってこないのですから、「国益」も毀損しています。


会談の冒頭で、日本人記者が「なぜイラン攻撃前に同盟国に戦争を知らせなかったんですか?」と質問すると、トランプ氏は「動きを知られたくなかったというのが一つだ。侵攻したとき奇襲を狙っていたので、誰にもそのことを教えなかった。奇襲について日本より詳しい国はないだろう。なぜ真珠湾攻撃をアメリカに教えなかったんだ?」と言い、会場に笑いが起きました。
そのとき高市首相は目を見開いて驚いた顔をしていました。

「奇襲といえば真珠湾」というのは、アメリカ人にとっては常識です。
ただ、アメリカの大統領が日本の首相の前で言うとなると話は別です。アメリカでも高市首相に失礼ではないかという声があります。

ただ、なにも言えなかった高市首相も問題です。
「これでアメリカも日本と同罪ね」ぐらいのことは言ってほしいものです。


日本の場合、歴史認識というと中国や朝鮮に対しての侵略と植民地支配のことばかりが問題になりますが、アメリカとのことも忘れてはいけません。
広島、長崎への原爆投下と、都市への無差別爆撃という非人道的行為がまったく放置されています。
しかし、日本人がこのことを持ち出すと、アメリカ人は必ず真珠湾攻撃は卑怯なだまし討ちだったと反論してきます。
ですから、真珠湾攻撃の清算も欠かせません。

真珠湾攻撃の際、宣戦布告の通告が攻撃開始から1時間余り遅れました。アメリカ人のタイピストが使えないためタイピングが遅れたのだとされていますが、外務省は今にいたるも自分たちの失態だったと認めないので、日本政府もごまかし続けています。
それに、かりに攻撃開始前に宣戦布告をしていたとしても、結果は同じです。つまり「だまし討ち」ということでは大して変わりません。
そういうこともあって、うやむやにしてきました。

第一次世界大戦後、パリ不戦条約ができて、戦争は違法行為となりました。ですから、日本は満州「事変」などと称して、「戦争」という言葉は使いませんでした。ナチスドイツもポーランド侵攻のときは、ポーランドが先に攻撃してきたという名目をつけました。ただ、それに対してフランスやイギリスはドイツに対して「宣戦布告」をしたので、パリ不戦条約は無視された格好になりました。さらにドイツは相互不可侵条約を無視してソ連に攻め込んだので、世界は無法状態になりました。
ですから、日本は宣戦布告をする必要はなかったともいえます。

しかし、法的な問題は別にして、先に戦争を仕掛けたほうが倫理的には間違っているので、ここは日本が謝罪しなければなりません。
ただ、もっと広い視野から見ると、欧米列強がアジア、アフリカ、アメリカを植民地化していたことに対して、日本が一矢報いたということもいえます。
ただし、日本もアジアを植民地化していたので、その意味では欧米列強と同罪です。
ここは複雑に糸がからまっているので、日本としてはまず朝鮮、中国との関係から清算していかなければなりません。
幸い「村山談話」というのがあって、日本政府はアジアへの侵略と植民地支配を認め、「反省」と「お詫び」を表明していますし、高市首相も村山談話を引き継ぐと言明しています。
しかし、高市首相など保守派は、腹の中ではアジアに謝罪したくないので、ここで行き詰まっています。

さらにいうと、保守派は日本が東京裁判で裁かれたことは不当で、戦後憲法はアメリカから押しつけられたもので、軍国主義への反省も占領軍による洗脳計画(WGIP)によって植えつけられたものだと思っていて、A級戦犯を合祀した靖国神社への参拝を重視しています。
つまり頭の中は軍国主義のままです。
冷戦時代は、「共産主義に対抗するために対米従属はしかたがない」という理屈でしたが、冷戦が終わっても対米従属は続いています。自立心を失ったのでしょうか。
つまり「理由なき対米従属」です。
ただ、それでは都合が悪いので、かつては「北朝鮮の脅威」が理由とされ、最近は「中国の軍拡」が理由とされています。

ともかく、高市首相はほんとうは靖国参拝をしたい人です。
ですから、いくら親米になっても、そこには偽りがあります。
しかし、高市首相はそういう自覚がないでしょう。
高市首相だけではありません。日本の保守派のほとんどはそうです。
つまり「偽りの親米」「偽りの対米従属」です。
そのため、偽りを糊塗しようとして、際限なく親米に深入りしていきます。


今回の日米首脳会談で、日本の保守派の限界が露呈しました。
アメリカ、イスラエルによるイラン攻撃という世界的な問題が起きているときに、高市首相は「国益」だけを考えてトランプ氏を喜ばせました。
トランプ氏はNATO諸国の協力が得られなくて孤立感を深めているところでしたが、高市首相はトランプ氏を助け起こしてしまったのです。
そのため平和実現が遠のいたと思われます。

それから、トランプ氏が「真珠湾攻撃」をジョークにしたとき、高市首相はなにも言えずに、日米関係に溝があることを見せてしまいました。
ここは、さっきも書いたように「これでアメリカも日本と同罪ね」と言うのが一案です。
それから、「あのころの日本は戦争ばかりしていたのよ。今のアメリカは違うでしょうけど」と言うのもよさそうです。
このように高市首相が自分の国をジョークにできれば一流の政治家です。

しかし、保守派はナショナリズムや愛国主義を基調としているので、こういう自国を客観視する発想はできないでしょう。
ナショナリズムや愛国主義は戦争のもとでもあるので、保守派は自分のあり方を見直してほしいものです。

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高市首相は3月19日にトランプ大統領と会談する予定です。
前からの予定とはいえ、この時期に会うのは最悪です。

昔から日本の首相がアメリカ大統領に会うときは“手土産”を持っていくことになっています。
今回は日本からアメリカへ80兆円あまり投資するうち、人工ダイヤやガス火力発電所などへの投資が発表されました。
また、アラスカ州から原油を輸入するということも表明するようです。
アラスカ産原油は中東産原油よりも割高なので、これまで日本は輸入してこなかったものです。
こうした外交のやり方を「朝貢外交」と言いますが、高市首相は別段恥とは思っていないようです。

とくに今回は、トランプ氏が日本などに対してホルムズ湾への護衛艦艇派遣を要請しているという問題があります。
もちろん日本としては断るしかないのですが、高市首相に断る勇気があるかどうかです。
高市首相は国会で「日本政府として必要な対応を行う方法を現在検討中だ」と言いました。
情報収集目的の自衛艦派遣が浮上しているそうです。


ここまで書いたところで、『米大統領、日本の支援「不要」 対イラン、艦艇派遣要請を撤回』というニュースがありました。
トランプ氏はNATOの大半の国からアメリカの戦争に関与したくないとの通告を受けたためにキレたらしく、「われわれはNATOの支援を必要とせず、望んでもいない。最初から必要なかった。日本、オーストラリア、韓国についても同様だ」とSNSで表明しました。
トランプ氏は言っていることがころころ変わります。
まともに対応しているとバカらしくなります。

自衛艦派遣はなくなっても、トランプ氏は高市首相になんらかの貢献を求めてくるでしょう。
くみしやすい相手だと見なして、そうとうむりな要求をしてくるかもしれないので、対処法を考えておかねばなりません。


そもそも高市首相は出発点が間違っています。
アメリカとイスラエルによるイラン攻撃は明らかに国際法違反ですが、高市首相は「わが国として法的評価をすることは差し控える」と言いました。
この時点でアメリカに大幅に譲歩したことになります。
ここから話し合ってもうまくいきません。
「アメリカとイスラエルによる国際法違反の戦争により、わが国は多大な損失をこうむっている。本来なら損害賠償請求をしたいところだ」と言うところから交渉を始めなければなりません。

トランプ氏の外交交渉はディールなのですから、高市首相もディールをしなければなりません。
「ここで譲歩しておけばそのうち見返りがあるだろう」というような期待は禁物です。
トランプ氏には「お互いさま」という意識がまったくありません。
今回の艦艇派遣でも、トランプ氏が「アメリカでは対応しきれないから助けてくれ」というふうに下手に出ていれば各国の反応も違ったかもしれませんが、トランプ氏は「彼らは喜んで協力するべきだ」とか「彼らに艦艇派遣を要請したのは、必要だからではなく、彼らがどう反応するか知りたいからだ」などと上から目線の言葉を連発しました。
こういう態度の人を助けても、感謝されることはありませんし、見返りもありません。
トランプ氏は自分から同盟関係をぶち壊したのです。

ですから、高市首相がトランプ氏に会ったときにどうすればいいかというと、トランプ氏の信頼を得ようとするのはまったく無意味です。信頼を得てもなにもいいことはありません。
逆にトランプ氏の不興を買ったからといって不利益もありません。
ゼレンスキー大統領はトランプ氏との初対面で激しい口論をしましたが、その後はまともに交渉しています。
カナダのカーニー首相もトランプ氏と激しいやり取りをしていますが、国内では高い支持率を誇っています。対米貿易の減少分を補うべく中国などアジア外交に力を入れています。
中国はトランプ政権に対して報復関税、レアアース輸出規制、大豆など農産物の輸入規制などのカードを駆使して、トランプ関税の引き下げに成功しました。トランプ氏と習近平主席との関係は良好なものとなっています。
ですから、高市首相もトランプ氏と激しいやり取りをするぐらいがいいと思われます。
とりあえずイラン攻撃の中止を要請し、同盟国をたいせつにするように進言すれば、自然と激しいやり取りになるでしょう。

最悪なのは、トランプ氏と仲良くして、「信頼の絆が深まった」などと言い、ともに笑顔で写真に収まることです。
これはトランプ氏のイメージアップに利用されるだけで、高市首相と日本のイメージダウンになります。


日米首脳会談があるたびに、日本政府は「日米の信頼の絆が深まった」と喧伝してきましたが、これ以上に絆を深める必要はありません。
むしろこれからはアメリカ以外との絆を深めるべきです。
いちばんたいせつなのは中国です。
高市首相はすぐにでも習近平主席と会って、「台湾有事は存立危機事態」発言を撤回して謝罪し、レアアース輸出規制を撤廃してもらうべきです。
そもそも日本が防衛費を増やしているのも、中国が脅威だからです。中国と友好関係を深めれば、防衛費増額は必要ありません。

「世界の真ん中で咲き誇る日本外交」は高市首相の得意のフレーズですが、今はアメリカに向かって咲いているだけです。中国やその他の国に向かっても咲かなければ「世界の真ん中で咲き誇る日本外交」になりません。


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