
5月14・15日の米中首脳会談において、習近平主席は夕食会のあいさつで「中国は5000年の歴史と14億人の人口、アメリカは250年の歴史と3億人の人口」と対比させて、中国の優越性を誇示しました。
それに対してトランプ大統領はアメリカの優越性を誇示することはなく、会談の冒頭で「あなたは偉大な指導者だ」という言葉を二度繰り返しました。
会談後、トランプ氏は険しい表情を見せることが多かったのに、習近平氏は平然とした表情をしていました。
こうしたことから、覇権がアメリカから中国に移りつつある現実が誰の目にも明らかになりました。
もっとも、日本は長年アメリカ依存でやってきたので、アメリカの衰退という現実をすぐには認められない人もいるでしょう。
そこで、改めてアメリカの「国力」を検証してみました。
まずは経済力と軍事力です。


経済力では中国がかなりアメリカに迫っていますが、軍事力(軍事費)ではアメリカがまだ圧倒的な力を持っています。
しかし、アメリカには味方する国がありません。
トランプ氏は同盟国にきびしく当たってきたので、イラン戦争では一国もアメリカを支援する国がありませんでした。
トランプ氏が中国に対抗するつもりなら、同盟国をたいせつにし、同盟国とともに中国包囲網をつくらなければなりません。
しかし、トランプ氏はそういう戦略的思考はできず、とりあえず同盟国に対してアメリカファーストのディールを仕掛けたので、味方がなくなりました。
中国はアジア、アフリカ、中南米に味方を増やす外交をしています。
トランプ氏はまた、アメリカ国内でリベラル対保守の対立をあおってきました。そのため、国内でトランプ氏を支持するのは半分以下です。
これではトランプ氏が習近平氏と対等にふるまえないのは当然です。
アメリカ経済は好調ですが、これは主に金融とITが牽引しているからです。製造業は衰退しています。
そのため、ウクライナ戦争が起こったとき、アメリカは砲弾の増産ができなかったので、ウクライナは苦境に陥りました(ロシアは砲弾の増産ができました)。
この問題は今も続いています。
イラン戦争でアメリカはミサイルとドローンを大量に消費したので、在庫の回復に何年もかかるといわれています。
砲弾やミサイルを増産するには、工場をつくり、技術者と労働者を集めなければなりませんが、アメリカではそれが容易ではないのです。
世界でもっとも短期間に増産体制をつくれるのは中国です。中国はこの能力によって一気に製品を送り出して市場を支配し、「世界の工場」といわれるようになりました。
アメリカ軍は、空母や戦闘機やミサイルが高性能で、軍事力としては強力ですが、長期戦に耐えるだけの砲弾やミサイルの備蓄や増産能力がありません。
つまりアメリカ軍の強さは表面的なところに偏っています。
アメリカ社会も、表面的にはまともでも、深いところに問題があります。
人口学者で家族人類学者のエマニュエル・トッド氏が社会のあり方で重要視するのは乳幼児死亡率だそうです。乳幼児死亡率は社会のもっとも弱い者に対する社会のあり方を表しているからです。
アメリカの乳幼児死亡率は1000人当たり5.4人です。
ロシアは4.4人、中国は4人、日本は1.8人です。
医療体制が不十分な途上国で乳幼児死亡率が高いのはわかりますが、もっとも先進的なアメリカで乳幼児死亡率が高いのは、社会のあり方に問題があるからでしょう。
平均寿命はどうでしょうか。
男女平均寿命の国際比較(2025年版)で、日本は84.5歳で世界一ですが、アメリカは76.4歳で44位、34位の中国よりも下です。
自殺率はどうでしょうか。
10万人当たりの自殺者数(2019年版)は、アメリカは16.1人で、世界183か国中23位です。
中国は8.1人で、81位です。
自殺者の数は、社会の健全さのバロメーターになるのではないでしょうか。
ちなみに日本は15.3人で25位、アメリカとそれほど変わりません。
犯罪の多さも社会の健全さのバロメーターになるでしょう。
犯罪というと幅が広いので、殺人事件に限ることにします。
しかし、殺人件数は圧倒的に中南米、カリブ海、南部アフリカが多くて、アメリカが出てきません。そこで、OECD38か国に限ることにしました。
10万人当たりの殺人事件被害者数のランキング上位はこうなっています。
1位:メキシコ 28〜30人
2位:コロンビア 23〜25人
3位:コスタリカ 12〜14人
4位:アメリカ 6〜7人
5位:チリ 4〜5人
アメリカの影響力の強い国が上位を占めています。
日本は0.2〜0.3人で最下位です。
治安状況は地球規模で偏っています。
ヨーロッパとアジアは概して殺人は少なく、治安がよい傾向にあります。
麻薬汚染はどうでしょうか。
麻薬といってもいろいろな種類があり、国によって合法だったり非合法だったりします。麻薬依存症患者の数か麻薬犯罪で逮捕された者の数かという問題もあります。
そこで薬物使用による死者数で比較しました。
「レート」というのは、10万人当たりの薬物使用で死亡した人の数です。

アメリカは突出した多さです。
ここにアメリカの病理が集中的に表れています。
なぜアメリカに薬物依存症が多いのかというと、ひとつには格差社会のせいでしょう。
貧困から抜け出せないと絶望した人間は薬物に逃避することになります。
それからPTSDも薬物依存の原因になります。
PTSDの原因はさまざまですが、アメリカ人にだけPTSDが多いとすれば、なにが考えられるでしょうか。
ベトナム戦争のころは戦争体験がPTSDの原因になった人が多くいましたが、最近は戦争が原因でPTSDになったという人はそんなにいないでしょう。
とすると、幼児期に親から虐待されるとか、親が離婚したとか、親が薬物やアルコールの依存症になるとか、親と死別するとかの「逆境的小児期体験(ACEs)」 がPTSDの原因になったのではないかと考えられます。
女性差別撤廃条約は、締約国が189か国に及び、未締約国は数か国だけですが、アメリカはそのひとつです
子どもの権利条約は、国連加盟国で締約していないのはアメリカだけです。
つまりアメリカは女性と子どもの人権が認められていない国です。
そのため家庭内で男が妻と子どもを不当に支配・抑圧し、しばしば暴力をふるっています。
人間は誰で家庭内で愛情を学びますが、アメリカの家庭では本来あるべき愛情が少なく、権力や暴力で家族が結びついています。
このことが自殺、犯罪、麻薬依存の大きな原因になっています。
トランプ政権の閣僚はマッチョな大男がそろっています。
第二次トランプ政権は第一次政権よりも女性閣僚が多いといわれましたが、これまでに辞任あるいは解任された閣僚4人はすべて女性でした。
クリスティ・ノーム(国土安全保障長官)
パム・ボンディ(司法長官)
ロリ・チャベス=デレマー(労働長官)
トゥルシー・ギャバード(国家情報長官)
マッチョな男は子どもの権利も無視します。
アメリカの学校図書館からは子どもに“有害”とされる図書が追放され、SNS使用は子どもにとって“有害”だとされて規制されつつあります。
マッチョな男は妻と子どもについて気に入らないことがあると殴ってかたをつけます。
トランプ政権もベネズエラやイランが気に入らないので殴ってかたをつけようとしました。
外交のやり方が家庭内暴力と同じです。
世界はこのやり方を見すかしているので、トランプのアメリカはますます弱い立場になっています。











