朝日新聞の渡辺雅隆社長は12月26日、慰安婦報道を検証する第三者委員会による報告書提出を受けて記者会見し、「社会の役に立つメディアとして、再び信頼していただけるよう、改革に取り組みます」などとする社長見解を示しました。
また、朝日新聞は社外の4人の有識者を招いて「信頼回復と再生のための委員会」を発足させています。
どうやら朝日新聞は「信頼回復」ということを目標にしているようです。
私は朝日新聞が「信頼回復」という言葉を繰り返すのを見ていると、「よらしむべし、知らしむべからず」という言葉を思い出します。
信頼するか否かというのは読者の内面の問題です。
朝日新聞にできるのは、たとえば間違いのない情報を届けるといったことです。読者の内面の問題を目標にするのは間違っています。
読者のほうも新聞を信頼したいとは思っていないでしょう。むしろメディア・リテラシーを高めたいと思っているはずです。
「信頼回復」という言葉には、読者を導こうという意識がすけて見えます。
新聞というのは、基本的に読者に情報を届けるサービス業だと思います。
新聞社の意見や主張も書かれますが、社説がほとんど読まれないように、読者はそういうものは求めていません。
そのため新聞社はどこも、報道のしかたや記事の大小で読者を導くわけで、これが問題です。
中でも朝日新聞はとりわけ“上から目線”で読者を導こうとする姿勢があって、慰安婦誤報問題があれだけの大騒ぎになったのは、そうした姿勢ゆえではないでしょうか。
ですから、これを機会に、朝日新聞は「信頼回復」を目指すのではなく、「サービス業宣言」をして、もっぱら読者のニーズに応える新聞を目指すべきです。
もっとも、朝日新聞社員のエリート意識がじゃまをして、なかなかできないでしょうが。
