村田基の逆転日記

親子関係から国際関係までを把握する統一理論がここに

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ハノイでの米朝首脳会談が決裂に終わったことは大きな驚きでした。合意文書まで用意されていたとされるのに最後の段階で決裂するなど、外交の常識ではありえないことです。
 
こんなことになった理由についていろいろ議論されています。
しかし、私の見るところ、理由は実に単純です。
 
そもそも米朝合意を目指そうとするのはトランプ大統領だけであって、ホワイトハウスのスタッフのほぼ全員が反対です。トランプ大統領は金正恩委員長をやたら信頼していますが、スタッフは北朝鮮の核放棄を疑っています。米朝の平和協定や戦争終結宣言に意欲を示しているのもトランプ大統領だけです。米韓合同軍事演習中止を決めたのもトランプ大統領ですし、トランプ大統領は米軍を韓国に駐留させていることも無駄遣いだと思っています。
 
こうしたトランプ大統領の考えに反対するホワイトハウスのスタッフの背後には、アメリカの覇権主義思想があり、そこから利益を得ている軍産複合体の存在があります。
 
ともかく、ホワイトハウスで米朝合意をしたがっているのはトランプ大統領一人と言っても過言ではなく、よく言えばトランプ大統領のリーダーシップによって、悪く言えばトランプ大統領の独裁性によって、米朝合意一歩手前までこぎつけたわけです。
 
そして、2月27日、28日に米朝首脳会談が行われましたが、27日は会談、夕食会が予定通り行われ、トランプ大統領は「あすは忙しくなる。多くのことが解決されると期待している」と語るなど、順調に運んでいました。
ところが、28日になると、通訳だけの一対一の首脳会談は30分で終わり、そのあと予定になかったポンペオ国務長官らを含めた拡大会合になり、そして、昼食会と署名式は中止と発表されました。
 
つまり27日と28日の間になにかがあったのです。
なにがあったかというと、米下院の公聴会でトランプ氏の元顧問弁護士だったマイケル・コーエン氏が証言したことしかありません。
コーエン氏はトランプ氏のことを「人種差別主義者、詐欺師、ペテン師」とののしり、ポルノ女優への口止め料支払いを依頼されたこと、選挙期間中もモスクワにトランプ・タワーを建設しようとしていたこと、納税額を少なくするために資産を過少報告したことなどを証言しました。これはテレビ中継され、アメリカ国民の関心はすごかったようで、朝日新聞の28日付夕刊は一面トップの見出しを「米朝会談よりロシア疑惑一色」としています。
コーエン氏は10年間にわたってトランプ氏の顧問弁護士を務め、「私がトランプ氏の代わりに銃弾を受ける」と語ったというほどの腹心でした。その証言でトランプ氏の弾劾が現実味を帯びてきたと言われます。
 
トランプ氏は27日の夜にハノイのホテルでテレビ中継を見ていたということで、28日の朝の会談冒頭には「終始、疲れた表情を浮かべ」と朝日新聞に書かれています。
コーエン氏の証言内容にショックを受けて、精神的に落ち込んでいたのでしょう。
 
トランプ氏の権力の源泉は、いつでも「お前はクビだ!」と言える動物的迫力です。トランプ氏が精神的に落ち込んで迫力が失われた瞬間に、ポンペオ国務長官らが強引にトランプ氏から主導権を奪い、会談を決裂に持っていったのです。
 
前回の米朝会談のあとの記者会見はトランプ氏が一人で務めましたが、今回の記者会見ではポンペオ氏が横に立ち、二人で質疑に答えるという形になりました。ポンペオ氏はトランプ氏が勝手なことを言わないように抑える役割だったのでしょう。
 
今回の会談の決裂について、北朝鮮が制裁の全面解除を求めたからだとか、アメリカが寧辺の核施設廃棄だけでは満足しなかったからだとか、いろいろ言われていますが、実際はそういう米朝間の問題ではなく、アメリカ内部の問題です。
おそらく合意文書には戦争終結宣言への道筋などが書かれていて、反トランプ派はどうしても阻止したかったのでしょう。
 
 
問題はこれからどうなるかです。
トランプ氏は決裂後の記者会見の質疑応答でこのように言っています。
 
――大統領の決断でこのようになったのか。
 私の決定とは言いたくない。正恩氏と昨夜に話した際、彼はロケットの実験や核実験は行わないと言った。私は彼を信用する。
 
トランプ氏が今回の決定に納得していないことがうかがえます。
今後、トランプ氏が精神的に回復して主導権を取り戻すか否かが焦点です。
 
 
今回のことでトランプ大統領とアメリカ体制派が別物だということがよくわかります。
安倍首相は「安易な合意を見送ったトランプ大統領の決断を全面的に支持する」と語りましたが、アメリカに追随するのか、トランプ大統領に追随するのか、どちらでしょうか。

明けましておめでとうございます。
本年もこのブログをよろしくお願いします。
 
平成最後の年になりました。
天皇陛下は誕生日のお言葉で「平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに,心から安堵しています」とおっしゃいました。
実感だろうと思います。安倍首相はずっと戦争をやりたがっていたからです。
 
安倍首相は南スーダンの治安が悪化しているにもかかわらず自衛隊派遣を継続し、そのために日報隠蔽まで起きました。自衛隊に戦闘をさせたかったのでしょう。一度やれば国民が戦争慣れします。
 
しかし、安倍首相の思惑通りにはいきませんでした。
南スーダンでの機会を逃すと、次の機会は当面なさそうです。
 
考えてみると、世界は平和になっているのかもしれません。
なにかを主張したい人やメディアはつねに人々の危機感をあおろうとするので、それを真に受けると世の中を見誤ります。
たとえば、刑法犯認知件数は2002年をピークにへり続け、2017年にはピーク時の約三分の一になり、戦後最少を更新しました。しかし、この事実はあまり知られていません。
同じようなことが世界の戦争についてもあるかと思って調べてみました。
 
毎年の戦死者数の推移がわかる統計があればいいのですが、そういうものはなさそうです。ただ、ここ数年の傾向はわかります。
 
 
世界の紛争犠牲者15万人 16年、死者数減少
【ロンドン=共同】英国の有力シンクタンク、国際戦略研究所(IISS)は9日、世界全体での武力紛争に関する調査報告を発表した。紛争による2016年の死者数は157千人で、前年と比べて1万人減少した。
(後略)
 
世界のテロ件数、2017年は前年比23%減少 米報告書
【ワシントン=芦塚智子】米国務省は19日、世界のテロの動向に関する2017年版の報告書を発表した。17年に世界で起きたテロの件数は前年に比べ23%減、死者数も27%減った。イラクでのテロが大幅に減ったことが主な理由としている。ただ、ケニアやソマリア、英国などではテロの件数、死者数共に増えた。
(後略)

 
イメージ 1
https://ja.wikipedia.org/wiki/進行中の武力紛争のリスト
 
 
ここ数年については戦死者やテロ犠牲者の数は減少傾向にあります。
もっとも、ひとつ大きな戦争が起こればまったく変わってしまいます。
ただ、大きな戦争を起こせるのはアメリカだけです。
アメリカはこのところ新規の戦争をしていないので、それで世界が平和になってきているようです。
 
アメリカが新規の戦争をしない理由は容易にわかります。アフガン戦争とイラク戦争は、後始末がいまだに終わらず、アメリカにとっては不利益しかなかったからです。
 
それに、トランプ大統領は意外に戦争をやろうとしません。プーチン大統領や金正恩委員長とウマが合いますし、ヨーロッパや韓国の駐留米軍を引き上げたがっています。米中貿易戦争をしかけているのも、武力を行使する気がないからでしょう。
 
 
今、韓国の駆逐艦が自衛隊の哨戒機にレーダー照射をしたとされる問題で日韓が対立しています。
これまで安倍首相は中国の軍拡と北朝鮮の核開発を脅威と見なし、危機感をあおってきましたが、今は韓国との対立をあおっています。
安倍応援団の産経新聞は社説で「極めて危険かつ、敵対的な行為だ。国際社会においては、照射された側が自衛権の行使で直ちに反撃しても問題ないとされるほどの事案である」「韓国の政府と海軍は過ちを正直に認めて責任者を処分し、日本に謝罪すべきである」と強硬に主張しています。
日韓の対立を見た中国と北朝鮮は笑っているでしょう。
 
結局、安倍首相や産経新聞は、国民の危機感をあおるためなら、中国でも北朝鮮でも韓国でもなんでもいいのです。
 
一方、憲法九条を守れという人たちも、「戦争に巻き込まれる脅威」をあおってきました。
そのため、右も左も戦争の脅威を過大評価してきたのです。
 
東西冷戦というイデオロギー対立が終わり、戦争で利益を得ることもほぼ不可能になった今、戦争をする理由がありません。
レーダー照射を巡る日韓の対立は、東アジアが平和であることを証明しているともいえます。

倫理の基本は「人にされていやなことを人にしてはいけない」あるいは「人にしてもらいたいことを人にしなさい」ということだと言われます。
自分だけ特別はいけない、自分も他人も同じルールに従わなければいけないということです。
 
トランプ大統領の言う「アメリカファースト」は自分だけ特別ということです。
一国でもこんな国があったら、国際社会の秩序が成り立ちません。
ところが、アメリカファーストを批判する声がほとんど上がりませんでした。
 
ただ、フランスのマクロン大統領は違います。
第1次世界大戦終結から100年となった1111日、トランプ大統領、プーチン大統領、メルケル首相ら各国首脳が出席する記念式典がパリで開かれ、マクロン大統領は演説で、「ナショナリズムは愛国心に対する裏切りです。自分たちの利益が第一であり、他の国はどうでもいいと言うことは国家が大切にしているもの、国家に命を与えるもの、国家を偉大にするもの、国家にとって本質的なもの、つまり国家の倫理的価値観を消し去ることになります」と語りました。
 
名指しこそしていませんが、「私はナショナリストだ」と公言するトランプ大統領のことを言っているのは明らかです。
 
フランス人は自国の文化、とりわけ哲学に誇りを持っているので、アメリカを批判できる強さがあります。イラク戦争のときもシラク大統領は最後まで戦争に反対したため、アメリカは国連決議なしで開戦しなければなりませんでした。
 
自国第一がだめなのは子どもでもわかる理屈ですが、これをはっきり言えるのはフランスぐらいです。
世界のほとんどの国は、アメリカの力を恐れてアメリカやトランプ大統領に対する批判を控えています。
しかし、アメリカは共通のルールに従うのを嫌って、二国間協議によってルールをつくろうとしています。二国間協議になると、どの国もアメリカの力に押されて、不利なルールを飲まされてしまいます。
 
では、どうすればいいかというと、各国が団結してアメリカに対抗するしかありません。
これも子どもでもわかる理屈です。
 
アメリカ国内では、トランプ派対反トランプ派が激しく争い、トランプ大統領の弾劾の可能性も言われています。
各国が反トランプの動きをすれば、アメリカ国内の反トランプ派と呼応してトランプ大統領を追い詰めることができます。
 
各国が団結するには、呼びかけ人というかリーダーになる国が必要です。
考えられるのはフランスやドイツでしょうか。
イギリスはアメリカに近すぎます。
中国はアメリカと同じ覇権主義の国なので、ふさわしくありません。
インドは冷戦時代は第三世界のリーダーでしたが、最近そういう役割はしていません。
本来なら日本はいいポジションにいるのですが、まったくありえないことです。
 
ともかく、なにもしなければ二国間協議で各個撃破されるだけです。
各国は団結して対抗するしかありません。
 
「万国の国家よ、団結せよ」です。

トランプ政権は、万国郵便条約からの離脱表明に続いて、ロシアとの中距離核戦力(INF)全廃条約からの離脱を表明しました。
トランプ流がますます加速しています。
マティス国防長官の辞任も取り沙汰されています。
マティス長官はトランプ氏の暴走を止める重しとしての役割を期待されていますが、もともとは“狂犬”という異名を持ち、危険な国防長官と見られていました。トランプ政権の陣容がどんどん変化して、かつての“狂犬”が今は穏健派の位置づけになったわけです。
 
そうした中、ペンス副大統領が10月4日にアメリカのシンクタンク、ハドソン研究所で行った演説が注目を集めています。
 
【ペンス副大統領演説:全文翻訳】「中国は米国の民主主義に介入している」:ハドソン研究所にて
 
要するに中国を徹底的に“悪の帝国”か敵性国家と見なした演説です。
これはアメリカが中国に対して覇権争いをするという宣言と理解されています。
トランプ大統領のことですから、ペンス副大統領の言うこととまったく違うことをするということもありそうですが、このところトランプ大統領は中国にきびしい政策をとっているので、これは政権の方針なのでしょう。
 
アメリカと中国が覇権争いをするということは、日本にとってはチャンスでもあります(戦争にならなければという条件つきですが)。両者の間でうまく立ち回ればいいわけです。
もっとも、日本の外交力ではなにもできそうにありません。安倍首相はちょうど今月25日から訪中することになっていますが、パンダ貸与を要請しているという話があります。安倍政権にとってはパンダをもらうことが“外交の成果”なのでしょう。
 
 
今の国際社会は力のあるものが支配する社会です。
トランプ政権はもっとも基本となる国家安全保障戦略において「力による平和」をうたっています。この「力」はもちろん「アメリカの力」のことです。アメリカに従えば平和になるが、アメリカに逆らえば戦争になるということです。この方針はトランプ政権に限らずアメリカの基本的な方針です。
 
アメリカが力で世界を支配してもアメリカが公正な国ならそれでもいいという考え方があるかもしれませんが、アメリカは公正な国ではありません。
アメリカは国際連盟に加盟しませんでした。国際連合には加盟しましたが、常任理事国には拒否権があるからです。国際司法裁判所にも国際刑事裁判所にも参加していません。
つまりアメリカは自分勝手にふるまうというポジションをつねに確保しているのです。
 
中国はアメリカのふるまいを見て、自分も同じことをするようになってきたわけです。
覇権争いが生じるのは必然です。
 
アメリカと中国の覇権争いにおいて、日本はとりあえずアメリカについていくことになります。
しかし、覇権がアメリカから中国に移ると、今度は中国についていくことになります。
覇権主義の支配する世界では、国益を考えるとそうするしかありません。
 
民主主義国のアメリカと独裁国の中国は違うという意見もありそうですが、それは国の内部の違いで、外から見たらどちらも同じ覇権国です。
 
民主主義を言うなら、国際社会が民主化されなければなりません。
つまり国際法が民主的に決められ、すべての国が国際法に従うようになればいいわけです。
これは具体的には国連中心主義ということになりますが、これまで日本ではアメリカべったりの国際政治学者がさんざん国連をおとしめてきたので、最近国連中心主義ということはあまり言われません。
だったら、「国際社会の民主化」と言えばいいわけです。
民主主義の価値を信じるなら、「国際社会の民主化」を実現するしかありません。
 
アメリカに従うか、中国に従うか、それとも第三の道を目指すかという単純な問題なので、答えは明らかです。
 

トランプ大統領の政策は、その多くが人種差別的です。メキシコの壁建設や移民排斥はもちろん、オバマ政権の政策を次々とくつがえしていったのも、オバマ大統領が黒人だったからです。
そして、トランプ大統領の政策は、宗教的でもあります。イスラエルの首都をエルサレムと認定し、アメリカ大使館をエルサレムに移転しました。イランを徹底的に敵視し、同盟国であるトルコとも対立している裏には、反イスラム感情があることは明らかです。
 
ところが、日本のマスコミはトランプ大統領の政策が人種差別的で、宗教的であるという事実をまったく伝えようとしません。
朝日新聞は比較的トランプ政権に批判的かと思いますが、批判的なのは主に社説や解説などで、事実を伝えるニュースではまったく逆です。
 
たとえば、トランプ政権は国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への拠出金を完全に停止することを決め、これによってUNRWAの資金が9月末に尽き、パレスチナ難民とその子孫約530万人の人道危機が深刻化するという記事を朝日新聞が書いています。
 
米、拠出金を完全停止か 国連のパレスチナ難民支援
 
なぜトランプ大統領がこうしたことをするのかというと、なによりもパレスチナ人を差別していて、パレスチナ人のために金など出したくないからです。もちろんパレスチナに人道危機が生じても平気です。
ところが、朝日新聞の記事ではトランプ政権の意図をこのように“忖度”します。
 
 UNRWAは49年設立。パレスチナ自治区や隣国のヨルダン、レバノン、シリアで教育や医療、食料配布などを行っている。米国は、2016年の拠出金総額約12億4千万ドル(約1364億円)のうち、3割にあたる3億6千万ドル(約396億円)超を拠出する最大の支援国だった。だが今年は6千万ドル(約66億円)しか拠出していない。トランプ政権は24日、これとは別にパレスチナ自治政府に向けた2億ドル(約220億円)の経済支援の撤回を表明。米国が仲介するイスラエルとの和平交渉を拒否するパレスチナ自治政府に圧力をかける「兵糧攻め」が狙いだ。
 トランプ政権が難民問題でもイスラエル寄りの姿勢を鮮明にしているのは、11月の米中間選挙を前にキリスト教福音派の支持を確実にしたい思惑があるとみられる。
 
トランプ政権の「狙い」と「思惑」を書いていますが、その根拠は示されません。
そもそもこの記事はニュース解説ではないので、トランプ政権の「狙い」とか「思惑」を推測して書く必要はありません。
しかし、事実だけを書くと、トランプ政権はパレスチナに人道危機を引き起こすひどい政策をしているということがあらわになってしまいます。そのため「狙い」や「思惑」を書き足して、悪い印象を中和していると思われます。
 
この記事は9月2日付のもので、トランプ政権が拠出金を停止することはまだ確定的でありませんでした。アメリカ国務省が公式に発表したのを受けて、翌日に同じような記事が書かれています。
 
米、パレスチナへ再び圧力 難民支援への拠出金、完全停止
 
この記事にもやはり、根拠のない「狙い」と「思惑」が書かれています。
 
 トランプ政権は、米国が仲介するイスラエルとの和平交渉を拒否するパレスチナ自治政府に圧力をかける狙いがある。11月の米中間選挙に向け、イスラエル支持者が多いキリスト教福音派の支持を確実にする思惑もあるとみられる。
 
朝日新聞はどうしてもトランプ政権が人種差別的で反イスラム的であるという印象を消し去りたいようです。
 
 
そもそもパレスチナ支援の問題は、オバマ大統領の時代からオバマ対トランプの争いの種でした。
 
オバマ大統領は大統領の座にある最後の日にパレスチナ支援を決めました。これは小さなニュースでしたが、深い意味がありそうで印象に残っています。
 
大統領最後の日、オバマはパレスチナに2億ドルを贈った
 
この記事から3か所を引用します。
 
 バラク・オバマ前大統領はその任期最終日に、22100万ドルをパレスチナに拠出していたことがわかった。
(中略)
 パレスチナへの資金拠出は、2015年と2016年に議会で承認されたものだが、多数派の共和党議員が拠出の実施に反対していた。この反対には法的拘束力がないため、オバマ政権は、120日にドナルド・トランプ新大統領がホワイトハウス入りする数時間前に手続きを進めた。
(中略)
オバマが大統領としての最終日にパレスチナ寄りのジェスチャーを見せた背景には、トランプの政権移行チームが、在イスラエル米国大使館をテルアビブからエルサレムへ移すと公言していたという状況がある。エルサレムは将来のパレスチナ国家の首都としても望まれている聖地であり、もし実行されれば、和平協議は完全にとん挫しかねない。
 
 
しかし、それに対してトランプ大統領は、2017年1月20日に就任すると1月24日にはパレスチナへの拠出を見直すと発表しました。
 
 
トランプ大統領がオバマ前大統領の「22100万ドル」の供出を凍結した理由
 
 
要するにトランプ大統領がパレスチナ支援をしたくないのは、反オバマ、反パレスチナ、反イスラム、親イスラエルの感情からで、これは就任のときから一貫しています。
朝日新聞が書く「米国が仲介するイスラエルとの和平交渉を拒否するパレスチナ自治政府に圧力をかける狙い」というような立派な政治的意図があるはずありません。
 
朝日新聞に限らず日本のマスコミはつねにアメリカ、そしてトランプ政権を美化しています。
米軍基地の辺野古移設の問題にしても、代替基地を日本がつくるまで危険な普天間基地を維持し続けるというアメリカの日本人の命を軽視する姿勢が根本にあるのに、そのことにはまったく触れません。
こういうマスコミの姿勢が日本とアメリカの関係をゆがめ、日本の自立をはばむ大きな原因になっています。
 

トランプ大統領が就任して1年7か月、世界は加速度的に混迷を深めています。
 
米朝合意は成立したものの、非核化がどうなるのかもわからないし、米朝合意がいつ破棄されるかもわかりません。
これは、北朝鮮がどう出るかわからないというよりも、主にトランプ大統領がどう出るかがわからないということによります。
 
トランプ大統領の保護貿易主義が世界各国と摩擦を起こし、とりわけ米中間の貿易戦争が激化しています。
最初のうちは、米中間の争いがこれからどうなるかという予測記事がけっこうありましたが、最近そういうものは見ません。誰も予測がつかなくなったからでしょう。
 
トランプ大統領はトルコとの対立もどんどん激化させていますが、同盟国であるトルコとこれほど対立するとは、誰も予想しなかったでしょう。
 
私も最初のうちはトランプ氏の心理を推測し、行動を予想していましたが、最近はやめています。
 
そうした中、8月22日に安倍首相とトランプ大統領との電話会談が行われました。朝鮮半島の非核化と拉致問題について話し合ったということで、安倍首相は例によって「朝鮮半島の完全な非核化を実現するとの方針において、日米は完全に一致をしている」という得意のセリフを言いました。
今、トランプ大統領と一致していることを自慢するのは、世界中で安倍首相ぐらいのものでしょう。
 
トランプ大統領の行動がなぜ予測しにくいかは、次のニュースからもある程度理解できます。
 
 
トランプ氏、南アを刺激 人種隔離政策の傷痕に踏み込む
トランプ米大統領が南アフリカの土地政策にツイッターで「介入」し、波紋を呼んでいる。南ア政府が少数派の白人が所有する農地を収用できるようにする方針だと懸念を示し、ポンペオ国務長官に調査を命じたことを明らかにした。アパルトヘイト(人種隔離)政策の傷痕に踏み込む発言に、南ア政府は強く反発している。
 トランプ氏は22日夜、「ポンペオ国務長官に、南アの土地農地の収用問題と大規模な農家殺害について詳しく調査するよう頼んだ」とツイート。これに対し、南アフリカ政府は23日、公式ツイッターで「かつての植民地時代を思い起こさせる狭い見方を拒否する」と反発した。
 南アフリカでは1991年、少数派の白人が大半の土地を所有する結果を生んだアパルトヘイト関連法が廃止されたが、土地所有の現状は大きく変わっていない。ラマポーザ大統領は「不平等を是正する」とし、白人所有の土地を補償金なしで収用し黒人に再配分する方針を提示。7月には、これを可能にするための憲法改正を進めるとした。
 トランプ氏のツイートの直前、保守系の米FOXテレビがこの動きを取り上げ「人種差別的な土地没収だ」と報道。「トランプ政権はこの人権の悲劇にどう対処すべきか」と、経済制裁などの可能性に言及した。トランプ氏はこの報道に反応したとみられる。
(後略)
 
 
南アフリカは長年の白人支配によって今でも「白人の人口比率は全体の8%に過ぎないが、現在も農地の72%を白人農家が所有している」とのことです。
 
南アフリカの政策は戦後日本の農地解放のようなものだと思えば、アメリカが文句を言うのはおかしなものです。
それに、トランプ大統領が文句を言ったのは、明らかに黒人対白人の問題で白人に肩入れするためであり、黒人への差別感情からです。
 
そして、これはなによりも南アフリカに対する内政干渉です。
今の時点では国務長官に調査を命じただけですが、南アフリカの政策に言及しただけで立派に内政干渉になります。
 
しかも、そのきっかけがFOXテレビの報道であるようです。
トランプ大統領はひとつのテレビ番組を見ただけで行動を起こすのです。
 
行動のきっかけはテレビ番組で、動機は人種差別――トランプ大統領の行動が予測しにくいのは当然です。
 
アメリカでは「トランプが次になにをするのかわからない」「トランプがいつか核のボタンを押すのではないかと心配」という不安から精神を病む人がふえていて、「トランプ不安障害(TAD=Trump Anxiety Disorder)」という名前がついているそうです。
 
 
不安障害から逃れるひとつの手は、私みたいにトランプ氏の行動を予測するのをやめることですが、安倍首相のようにつねに「アメリカと完全に一致」と考える(思考放棄する)ことも、もうひとつの手かもしれません。

前回の「平和が先か、核廃棄が先か」という記事を書くとき、南アフリカの核保有のことを調べていたら、イスラエルが南アフリカの核開発に協力したとウィキペディアに書かれていました。
当時、アパルトヘイト政策のために世界中から批判されていた南アフリカに協力するとは、イスラエルもとんでもない人種差別主義国です。
 
そして、思ったのですが、アメリカやイギリスの情報機関が南アフリカの核開発を知らなかったはずはありません。
これまで北朝鮮、イラン、シリア、リビアなどが核兵器を開発しようとしたか、しようとしたとの疑いがかけられ、どの国のことも国際的に大きな問題になってきました。
ところが、南アフリカについては私の知る限り、そうした疑惑はありませんでした。まったく知られないうちに核保有国になっていたのです。
アメリカやイギリスは表向き南アフリカのアパルトヘイト政策を批判していましたが、少なくとも情報機関や外交軍事の当局は、白人国である南アフリカの核保有を容認していたようです。
 
外交軍事における人種差別というと、ファイブ・アイズ(UKUSA協定)というのもあります。
これはアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドというアングロサクソン系の5か国の情報機関が情報を共有するという協定です。かつては秘密協定でしたが、今は条文の一部が公開されているということです。
人種によって結束しているということに驚きます。日本はこうしたことを批判してもいい立場ですが、そもそも日本のメディアはこのことをほとんど報道しません。
 
UKUSA協定
 
核拡散防止条約も、アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国という五大国だけに核保有を認めるというもので、人種差別とはちょっと違いますが、やはり差別的なものです。
日本はこんな差別的なものを認めるわけにはいかないので、かなり抵抗しましたが、結局アメリカの圧力に屈して批准しました。
そして今では、日本は核拡散防止条約をよりどころにして、核兵器禁止条約に反対するというおかしなポジションになっています。
 
日本やアメリカは北朝鮮に核廃棄を迫っていますが、それは差別的な世界を維持しようという間違った方向を目指すものです。
 
イスラエルは核保有国ですが、北朝鮮のように核放棄を迫られていません。
アメリカはイラン核合意から離脱し、トランプ大統領は7月22日、ツイッターでイランのロウハニ大統領に対して「アメリカを二度と脅迫するな。さもないと誰も経験したことがないような結末に苦しむことになるだろう」と脅しました。
 
差別的な世界は決して平和にはなりません。

「甲の薬は乙の毒」という言葉があります。
たとえばトランプ大統領の移民規制や保護貿易主義的政策は、アメリカの一部の人たちには薬ですが、世界にとっては毒です。
ただ「甲の毒は乙の薬」でもあります。
トランプ大統領の親プーチン外交は、アメリカ国内では圧倒的に反対されていますが、世界にとっては薬です。
 
7月16日の米ロ首脳会談でトランプ大統領がプーチン大統領と親密さを見せつけたことについて、アメリカ国内であまりにも反対が強いので、トランプ大統領は米大統領選へのロシア介入疑惑を否定したことについて、17日の記者会見で「二重否定にするべきところを言い間違えた」と苦しい弁解をしました。
これでトランプ大統領は軌道修正をするのかと思ったら、19日には「ロシアとの首脳会談は大きな成功だった」とツイートし、会談に否定的なメディアを「真の国民の敵であるフェイクニュースのメディア」と攻撃しました。そして、プーチン大統領を今秋にワシントンに招待する方向で調整するように指示したということです。
 
トランプ大統領は17日には「敵意や衝突よりも、外交と契約の方が素晴らしいという強い信念で首脳会談に臨んだ」と語っています。
これは正論です。この点についてはアメリカの世論よりもトランプ大統領のほうが正しいといえます。
 
 
トランプ大統領は、米朝関係でもかなり正論を言っています。
たとえば米韓合同軍事演習を中止したことについて、「演習は高くつく」「(北朝鮮に対して)非常に挑発的だ」と言っています。
 
日本では米朝合意について、非核化の道筋がはっきりせず、北朝鮮の時間稼ぎに使われているという批判があります。
しかし、非核化は最終目的ではありません。あくまで平和が最終目的です。
もし平和が達成されたら、核兵器はあってもなくてもどうでもいいことです。
 
たとえば南アフリカは1980年代に秘密裡に核開発し、核保有国になりました。当時はアパルトヘイト政策をとっており、周辺の黒人国への恐れからとされます。
南アフリカはアバルトヘイト政策をやめるとともに、1990年にみずから核保有国であることを公表し、IAEAの監視のもとで核兵器を廃棄しました。
また、ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンはソ連の崩壊によって独立し、同時に核保有国になりましたが、核兵器は段階的にロシアに移管され、今では非核保有国です。
つまり核兵器は、その国が必要ないと判断すれば、自主的に廃棄されるものです。
 
北朝鮮も、アメリカ、韓国、日本と友好関係を確立し、もう攻撃される恐れがないと判断すれば、自主的に廃棄することがありえます。
逆に、アメリカなどが強硬に核廃棄を迫れば、核廃棄すれば攻撃されるという恐れを強くして、ますます核兵器にしがみつくということになります。
そうすると、核廃棄を後回しにするというトランプ大統領のやり方が結果的に核廃棄を実現させるということも十分に考えられます。
 
ともかく、トランプ大統領がプーチン大統領や金正恩委員長と親密であるのは、アメリカの体制派や日本の対米従属派にとっては毒ですが、世界にとっては薬です。

「平和を望まない人間はいない」とよく言われますが、ほんとうでしょうか。

トランプ大統領とプーチン大統領は7月16日、フィンランドのヘルシンキで米ロ首脳会談を行いましたが、この会談を評価する人がほとんどいません。
アメリカで、もともと反トランプ派の人が批判するのは当然として、最近はトランプ支持を強めている共和党保守派も口をそろえて米ロ首脳会談を批判しています。
NATO諸国からも評価する声は聞こえてきまません。
「日米は完全に一致」が口ぐせの安倍首相も、今のところ評価する発言はしていません。
日本のメディアもどちらかというと批判的です。
 
私はトランプ大統領のほとんどすべてに否定的ですが、唯一肯定できるのは、トランプ大統領がロシアと仲良くしようとしている点です。
アメリカとロシアがどんどん友好を深めて、平和条約を締結することになれば、世界は激変します。
 
ベルリンの壁が崩壊してロシアが資本主義国になると、アメリカとロシアが対立する理由はなくなりました。しかし、なぜかいまだに冷戦が続いています。
今、アメリカとロシアの間にある問題は、ロシアのクリミア併合、ロシアのシリア内戦への介入、ロシアによるアメリカ大統領選挙介入疑惑、それとロシアの元スパイがイギリスでノビチョクによる攻撃を受けて重体となったことなどです。つくられた問題もありそうですし、クリミア併合などは認めてしまえばそれで終わりです。
どの問題もアメリカが乗り越えようとすれば乗り越えられるものです(つまり冷戦を継続させているのはアメリカです)
 
ロシアとの冷戦が終われば、アメリカがヨーロッパに軍事基地を置いている意味はなくなり、アメリカは大きな経費削減ができることになります。
アメリカと北朝鮮の友好関係が確立されても同じことが起きます。
アメリカは在韓米軍を引き上げることが可能ですし、さらには在日米軍の存在理由も大幅になくなります。
 
「平和の配当」という言葉があります。冷戦が終結すれば軍事費が削減でき、それをほかに回せるという意味です。
クリントン政権のとき、「平和の配当」は実際にありました。1989年にはアメリカのGDPの5.9%を占めていた軍事費は1996年には3.6%にまで下がり、おかげでアメリカ経済は好調でした。
ところが、9.11テロをきっかけにアメリカはアフガン戦争、イラク戦争で軍事費を増大させ、「平和の配当」をほとんど失ってしまいました。
 
 
トランプ大統領がなにを考えているのかわかりません。ロシアとの友好を模索する一方で、NATOに対しては軍事費を増大するように要求していますから、なんの戦略もなさそうです。
しかし、トランプ大統領がロシアと北朝鮮との友好を進めていけば、世界は「平和の配当」を受け取れる理屈です。
ここは「豚もおだてりゃ木に登る」に習って、トランプ大統領をおだてあげて木に登らせればいいのです。

考えてみれば、米ロ友好や米朝友好を批判する声が多いのは、軍事利権につながる人たちがいかに多いかということなのでしょう。
「平和の配当」か「戦争の配当」かで綱引きが行われているのです。

トランプ政権が国連人権理事会からの脱退を表明したのに対して、菅官房長官は6月20日の記者会見で、「他国の国際機関への対応について政府としてはコメントするべきではない」と語りました。
しかし、これは国連のことであり、かつ人権のことですから、コメントしても内政干渉にはなりません。とりわけ国連人権理事会は日本政府が拉致問題を訴えてきた場です。
もっとも、日本政府がアメリカになにも言えないのはいつものことです。
 
そもそものきっかけは、トランプ政権がイスラエルのアメリカ大使館を聖地エルサレムに移転すると決めたことです。それに反発したパレスチナのデモ隊にイスラエル軍が発砲し、多数の死傷者が出ました(たとえば5月14日には約60人が死亡、2000人以上が負傷)
武器を持たないデモ隊に軍が発砲して多数の死傷者が出れば、その国の政府が非難されるのは当然です。もしこれがロシアや中国で起これば、国際社会は大騒ぎでしょう。
しかし、イスラエルはアメリカが断固として擁護し、アメリカの影響力は強大なので、国際社会ではそれほど大きな騒ぎにはなりません。しかし、人権理事会は調査団の派遣を決めるなどアメリカの思い通りにならなかったので、今回の脱退表明にいたったわけです。
 
日本政府はいつものこととして、日本のマスコミはどうでしょうか。
朝日新聞がアメリカの人権理事会脱退に関する解説記事を書いています。
 
(時時刻刻)「国益優先」改めて鮮明 「反イスラエル」と非難 米、国連人権理を脱退
 トランプ米政権が「反イスラエルへの偏向」を理由に、国連人権理事会からの脱退を19日に表明した。温暖化対策の国際ルール「パリ協定」、イラン核合意、国連教育科学文化機関(ユネスコ)などに続き、国際社会が米国の意向に沿わなければ、国益を優先する姿勢が改めて鮮明に。人権侵害が指摘される現場からは、米国の地位が低下し、理事会での中国などの影響力が強まるとの見方も出ている。
 
 「政治的偏向に満ちた汚水だめ」「恥知らずの偽善」
 米国務省で19日に会見したポンペオ国務長官とヘイリー米国連大使は、人権理事会をあらゆる言葉を使って批判した。トランプ政権の主張は、人権侵害国家が理事国になり、理事会を隠れみのにし、イスラエルを不当に糾弾しているというものだ。イスラエルは米政界に強い影響力があり、トランプ氏支持のキリスト教福音派は親イスラエルだ。
(後略)
 
 
アメリカの今回の決定を批判しているようですが、実際はアメリカの側に立って、トランプ政権を擁護する記事になっています。
 
見出しに『「国益優先」改めて鮮明』とあります。
「国益優先」というのは国際政治の世界では当たり前のことです。そういう意味で、この記事はアメリカを批判していない記事と思われてもしかたありません。
もしアメリカの今回の決定を批判するなら、『「人権軽視」改めて鮮明』という見出しになるはずです。
 
それに、人権理事会脱退がアメリカの国益になるかというと、まったくなりません。むしろ国際的に孤立して、国益に反するはずです。現にこの記事にも「米国の地位が低下し、理事会での中国などの影響力が強まるとの見方も出ている」と書かれています。
つまり事実に反することを見出しにしてアメリカ擁護をしているのです。
 
それからこの記事は、「イスラエルは米政界に強い影響力があり、トランプ氏支持のキリスト教福音派は親イスラエルだ」と解説しています。
つまり人権理事会脱退はイスラエルとトランプ支持者のためだというのです。
これは嘘ではありませんが、わざと的の真ん中を外した書き方です。
 
的の真ん中というのは、パレスチナ人がイスラエル軍に殺されている、つまりパレスチナ人の人権が軽視されているということです。
アメリカはイスラエルと緊密な関係にあるのですから、当然イスラエルを止めてパレスチナ人の命を救わなければなりません。
それをしない理由は、アメリカもまたパレスチナ人の人権を軽視していること以外にはありえません。
 
トランプ大統領は人種差別主義者ですから、パレスチナ人を差別しているのは当然です。しかも、キリスト教思想からイスラム教徒を差別していますし、聖地エルサレムを完全支配下に置くためにじゃまなパレスチナ人を排除したいとも思っているはずです。
 
その理由はともかく、アメリカとイスラエルがパレスチナ人の人権を軽視しているのは現実の出来事で、それが問題の核心です。
 
 
ところが、朝日新聞の解説記事は、「アメリカはパレスチナ人の命をなんと思っているのか」という批判をせず、「重要な役割を果たしている国連人権理事会からアメリカが脱退するのは国際政治にマイナスだ」という政治力学のことばかり書いています。
 
今の政治状況は、右翼と左翼の対立はほとんど無意味になり、もちろん進歩と反動というモノサシもありません。ですから、人権をどこまで深くとらえているかが唯一のモノサシになるといっても過言ではありません。
たとえば最近よく議論の対象になるのは、パワハラ、セクハラ、ヘイトスピーチ、学校でのイジメ、犯罪報道のあり方、芸能人不倫報道のあり方などですが、これらはすべて人権問題です。
 
 
朝日新聞というと進歩派で人権重視というイメージがありますが、人権についての認識はまったくいい加減です。そのため社会への影響力を失っていますし、逆に偽善的という批判を招いています。

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