村田基の逆転日記

親子関係から国際関係までを把握する統一理論がここに

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小泉純一郎首相は2005年の日米首脳会談に際して「日米関係が良ければ中韓はじめ世界各国と良好な関係が築ける」と語ったことがありました。
小泉氏らしい直観の言葉ですが、半分ぐらいは当たっていそうです。
安倍首相も同じ考えで外交をやってきたのではないでしょうか。
 
日韓関係は慰安婦問題でかなりぎくしゃくしましたが、結局アメリカが仲裁して日韓合意が成立しました。
また、安倍首相は靖国参拝にこだわっていましたが、アメリカに止められて、おかげで中国との関係がそれほど悪化しませんでした。
アメリカは日本よりも大局的見地があるので、アメリカに従うことでうまくいったケースです。
 
しかし、アメリカ一辺倒の外交のマイナスも当然あります。
たとえば対ロシア外交で、北方領土返還がうまくいきそうでしたが、最後まで日本は「北方領土に米軍基地はつくらせない」と言うことができなかったために、結局だめになりました。
 
そして、トランプ大統領の登場で、アメリカ一辺倒の外交は完全に破たんしました。
 
安倍首相はトランプ大統領と個人的に親密な関係を築こうとがんばってきましたが、トランプ政権は鉄鋼・アルミの輸入制限を発動して追加関税を課し、日本はアメリカの同盟国で唯一適用除外国から外されました。安倍首相がこれまでやってきたことはなんだったのかということになります。
 
トランプ大統領は3月22日、対日貿易赤字に関して、「安倍晋三首相と話をすると、ほほ笑んでいる。『こんなに長い間、米国を出し抜くことができたとは信じられない』という笑みだ」と語りました。これに対して、安倍首相はもとより日本政府高官の誰一人として反論をしませんでした。これではなめられて当然です。
トランプ大統領はディールを得意としています。安倍首相はディールの対象ではなく、「なにをやってもいい相手」と認識されたのでしょう。
トランプ大統領に媚びる作戦が完全に裏目に出ました。

「日米関係がよければ世界各国とよい関係になる」という考え方だったのに、日米関係が悪くなっては土台から崩れてしまいます。
かりに日米関係がうまくいっても、トランプ大統領には大局的見地がないので、日本はアメリカに利用されるだけになります。
 
トランプ大統領は日本にとって、さらには世界にとって最大のリスクです。
 
トランプ大統領はイラン核合意から離脱することを表明しましたが、この調子では、米朝合意がなされてもいつトランプ大統領は離脱を表明するかわかりません。
北朝鮮もそれはわかっているはずです。
ということは、北朝鮮は本気で米朝合意を目指しているのではなく、時間稼ぎをしているのではないかということになります。
 
北朝鮮の真意はわかりませんが、トランプ大統領の真意はもっとわかりません。
安倍首相はそんなトランプ大統領をいまだに頼りにしています。
拉致問題の解決もトランプ大統領頼みです(日中韓首脳会談では中国と韓国にも頼みました)
日本人拉致問題は、日本と北朝鮮との問題ですから、他国に頼むことではありません。
アメリカ依存の外交を続けてきた安倍首相は、そういうこともわからなくなっているようです。
 
日本外交の立て直しのためにも安倍首相には退陣してもらうしかありません。

4月27日、南北首脳会談が行われ、友好ムードが演出されました。テレビを見ていた韓国人には涙を流す人もいました。
果たしてこれから北朝鮮の核放棄などがうまくいくのかわかりませんが、友好ムードがあれば戦争は起こりにくくなるので、とりあえず歓迎したいと思います。
 
世界の首脳も歓迎しているはずですが、その中でいちばん歓迎していないのは安倍首相でしょう。
「圧力」一辺倒を唱えてきて、今は蚊帳の外です。
安倍首相は朝鮮半島の危機を利用することばかり考えてきて、そのツケが回ってきた格好です。
というか、そもそも安倍首相には平和を愛する気持ちがあったのでしょうか。
 
 
トランプ大統領も平和を愛する気持ちがあるのか疑わしい人間です。
この平和への流れを壊す人間がいるとすれば、それはトランプ大統領でしょう。
トランプ大統領は南北首脳会談の結果を歓迎していますが、予定される米朝首脳会談が決裂した場合、武力行使に踏み切るしかないという意向を日本側に伝えてきたという報道があります。
今、世界は平和か戦争かという分水嶺にあるのかもしれません。
 
とにかくトランプ大統領はなにをやるかわからない人間です。
米朝首脳会談を決めたのも唐突で、側近はみな驚いたと言われます。
しかし、自分を第一に考えている人間であることは間違いありません。
ですから、自分が世界から喝采を受けるとわかれば、大胆に平和のほうに動く可能性もあるはずです。
 
米朝会談を成功させればトランプ大統領にノーベル平和賞の可能性があるという声が出ています。
会談は成功しても、そのあとのプロセスにさまざまな困難がありますから、ノーベル平和賞は早すぎる気がしますが、トランプ大統領にとってノーベル平和賞は大きな魅力でしょう。
「ブタもおだてりゃ木に登る」という言葉がありますが、「トランプもおだてりゃ世界を平和にする」ということもあるはずです。
 
トランプ大統領はもともとプーチンと仲良くなりたがっていました。
それがロシアのアメリカ大統領選介入疑惑などで思うようにいっていません。
トランプ大統領が米ロ友好を実現させたら、それこそノーベル平和賞は確実です。
 
 
トランプ氏が米大統領になって1年余り、今ではその思考パターンがかなり読めるようになってきました。
フランスのマクロン大統領も読んだようです。
 
 
米のシリア撤退方針転換 仏大統領「自分が説得」
【パリ=竹田佳彦】化学兵器使用疑惑があるシリアに米英と軍事介入したフランスのマクロン大統領は十五日、攻撃後初めて仏メディアのインタビューに応じ、シリアから撤退方針を示していたトランプ米大統領が今月四日に撤回したことについて「自分が説得した」と主張した。 
 マクロン氏は仏BFMテレビのインタビューで「トランプ氏は『米国はシリアから撤退を考えている』と言った」と指摘。「われわれが駐留継続と、攻撃目標は化学兵器関連施設に限定すべきことも説得した」と述べた。
(後略)
 
 
朝鮮半島問題でも誰かがトランプ大統領を説得すればいいのです。
誰が説得すればいいのかと考えたとき、安倍首相が適任ではないかと思いつきました。
 
安倍首相は今、外交面ではどん底にあります。挽回するにはなにか思い切ったことをやらねばなりません。
トランプ大統領も安倍首相も、世界平和よりも自分第一という人間です。マイナスとマイナスをかければプラスになるように、二人が力を合わせて世界平和を実現する――というのはほとんど妄想でした。
実際には、安倍首相にそんな発想も実行力もあるわけありません。
 
ともかく、世界平和にとってもっとも危険なのはトランプ大統領です(金正恩氏は自国の安全保障を第一に考えているので、たいして危険ではありません)
トランプ大統領をこれからどう制御していくかが世界にとって最大の課題ですが、ノーベル平和賞を餌にすると案外うまくいくのではないでしょうか。

フィリピンのドゥテルテ大統領は「フィリピンのトランプ」と呼ばれたこともあり、“フィリピンファースト”の姿勢を貫いているようです。
最近もドゥテルテ大統領はこんな発言をしました。
 
 
フィリピン、「アメリカが起こす戦争には参戦しない」
フィリピンのドゥテルテ大統領が、「フィリピンは、今後アメリカが世界で起こす戦争には参戦しない」と語りました。
イルナー通信によりますと、ドゥテルテ大統領は、イラク戦争へのフィリピン軍の参戦を批判し、「今後、フィリピン軍に対し、アメリカ軍が絡んでいる無駄な戦争への参加を許可しない」と述べています。
また、「アメリカは、大量破壊兵器の存在を口実にイラクを攻撃したが、実際にそのような兵器はイラクには存在しなかった」としました。
さらに、「アメリカは、8年間にわたりイラクを占領したが、その結果地域に様々な勢力による戦争が多発し、テロが広まることになった」と語っています。
近年、アメリカとフィリピンの関係は緊迫化しています。
アメリカの情報機関は最近、報告の中でドゥテルテ大統領を東南アジアにおける民主主義に対する脅威であるとしていますが、フィリピン政府はこの報告には根拠がないとして、これを否定しています。
 
 
ドゥテルテ大統領は犯罪者を法の裁きにかけないで殺害するという無法な犯罪対策をやっていて、国際的に批判されていますが、ここで言っていることはきわめてまともです。
フィリピンはアメリカと同盟関係にあり、かつ中国と南沙諸島をめぐる領土問題をかかえているという点で日本と共通していますが、ドゥテルテ大統領の対米姿勢は安倍首相のそれとまったく違います。
 
ところで、この記事を配信したのは「Pars Today」というニュースサイトで、イラン国営放送のラジオ局が運営しています。このサイトがあることは初めて知りました。
 
最近は日本語で読める中国系、韓国系、ロシア系のニュースサイトがあり、多面的な情報が入ってくるのはけっこうなことです。
日本のマスコミは、日本寄りかつアメリカ寄りに偏りすぎていて、国際情勢がよくわかりません。
イランはアメリカと対立しているので、日本にとってはとくに新鮮な視点があります。
 
 
たとえば、2月26日からジュネーブで国連人権理事会の定例会合が開かれているのですが、日本の報道は、韓国の外相が慰安婦問題に言及したこと、それに対して堀井学外務政務官が「性奴隷という言葉は事実に反する」とか「強制連行はなかった」とか反論したということばかりです。
 
イランの報道は違います。
これがおもしろいので、引用しておきます。
 
 
国連人権理事会とこの機関に押し付けられたダブルスタンダード
国連人権理事会の会合がスイスのジュネーブで開催されています。
この会合は、人権に関するダブルスタンダードについて、さまざまな見解を説明するための機会になっています。

イランのアーヴァーイー法務大臣は、この会合で、28日水曜に演説し、西側のダブルスタンダードによる、人権を巡る現実や問題について語りました。アーヴァーイー大臣は、「冷戦時代の東と西の陣営の分割により、世界に2つの政治システムが作られ、それが人権に関する基準の形成に悪影響を及ぼした。現在も、残念ながら、このダブルスタンダードの影響が見られ、人権の意味が、一部の国の影響下に置かれている」と語りました。

テヘラン大学の国際関係の研究者であるモッタギー教授は、これについて、国際機関が発表した公式統計に触れ、次のように語っています。
「アメリカは、世界各地で350箇所の軍事・治安施設を持ち、これらの多くの施設で人権侵害が行われている。これ煮対しては、一部のヨーロッパ諸国から何度か抗議の声が上がっている」
こうした中、アメリカは、人権擁護者であることを主張し、他国の人権侵害を非難したり、その国に制裁を加えたりしています。その一方で、アメリカの市民、特に移民や黒人、外国人、先住民は、差別的な政策や人権侵害に苦しんでいます。

テヘラン大学の政治学部のアスギャルハーニー教授は、これについて、西側における人権の現状やダブルスタンダードに触れ、次のように語っています。
「アメリカは、世界最大の人権侵害国であり、その例として、世界各国で、アメリカ政府が数十ものクーデターを主導していることを挙げることができる」
人権侵害の明らかな例の一つに、パレスチナ人に対するシオニスト政権イスラエルの犯罪と、西側による支援があります。イエメンの戦争も、これに関する一つの例です。イエメンに対する大規模な制裁により、食料品や燃料などのイエメンへの移送が絶たれ、この国の1700万人が飢餓の危機に直面しています。

イマームホセイン大学のサラーヒー氏は、イラク攻撃におけるアメリカの犯罪に触れ、次のように語っています。
「イラクで占領者が行った事柄は、政権交代をはるかに超えることだった。占領者は、この国を占領している間、化学兵器、クラスター爆弾、白リン弾、劣化ウラン弾などの被通常兵器を使用し、この国だけでなく、地域全体に、人道的、社会的に深刻な影響を及ぼした」
 
このようなダブルスタンダードにより、人権は形骸化し、政治的な対応やダブルスタンダードといった結果をもたらしているのです。
 
 
イランの人権状況もひどいものなので、アメリカを批判する資格があるのかと言いたくなりますが、アメリカべったりの日本のマスコミには決して書けない内容です。
 
 
また、アメリカとイスラエルが合同軍事演習を3月4日から11日間にわたって行うというニュースもありました。
 
アメリカとイスラエルが合同軍事演習
 
アメリカは延期していた米韓合同軍事演習をパラリンピック後に行うと表明しています。
日本では、米韓合同軍事演習を批判する声はほとんどありませんが、北朝鮮の目の前で軍事演習を行うことは、国連憲章の禁じる「武力による威嚇」に当たると考えられます。
アメリカは中東でもアジアでも軍事演習をして、軍事的な緊張をつくりだしています。
 
偏ったものの見方を脱することが平和への第一歩です。

トランプ政権は「核体制の見直し(NPR)」を公表し、低爆発力の小型核兵器を開発して、通常兵器で攻撃された場合でも核兵器で報復する可能性を表明しました。
これは「核による脅迫」以外のなにものでもありません。
トランプ政権が昨年12月に発表した「国家安全保障戦略」でうたわれた「力による平和」を具現化したものです。
 
しかし、アメリカが軍事力を前面に打ち出せば、他国も軍事力で対抗しようとします。
こうして世界はどんどん破滅に近づいていきます。子どもにもわかる単純な理屈です。
 
敵視された中国、ロシア、イランなどが反発したのは当然として、ドイツのガブリエル外務大臣も、「トランプ政権の新たな核戦略は、世界の新たな核兵器競争につながり、ヨーロッパにとっての深刻な脅威とみなされる」と語っています。
 
ところが、河野外務大臣は「今回のNPRを高く評価する」との談話を発表し、国会答弁では「北朝鮮による核・ミサイル開発の進展等、安全保障環境が急速に悪化している」ということを理由に挙げました。
 
しかし、北朝鮮について言うのなら、今回のNPRで北朝鮮はますますアメリカの核攻撃を恐れて、核抑止力に頼ろうとするでしょう。北朝鮮に核放棄させるという目的に反します。
 
そもそもアメリカの「力による平和」というやり方は、テロには通用しません。力で負ける者がテロに走るわけで、むしろテロを増大させます。
現にアメリカが対テロ戦争を始めて17年、終わるメドはまったく立っていません。
 
アメリカの「力による平和」や「核による脅迫」は、根本的に間違っています。
このことに世界は気づきつつありますが、日本だけは逆行しています。

トランプ大統領は1月30日、一般教書演説を行いましたが、TPPにもパリ協定にもまったく触れませんでした。
少し前のダボス会議では、TPPとパリ協定に復帰する可能性を表明して世界を驚かせたのですが。
ダボス会議はグローバリズムの牙城みたいなところですから、そこでの受けをねらって言っただけだったようです。
自分がよく思われたいという「自分ファースト」の大統領が世界を振り回しています。
 
 
ともかく、トランプ大統領の一般教書演説の要旨を読んでみました。
 
「力による平和」へ核増強 トランプ大統領 一般教書演説
 
 
アメリカは圧倒的な軍事大国です。ストックホルム国際平和研究所の2016年版のレポートによると、アメリカの軍事費は世界の軍事費の36.3%を占めており、2位の中国の約3倍、3位のロシアの約9倍です。
 
また、アメリカは70以上の国と地域に約800の軍事基地を有しているとされます。
http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/55904-全世界に駐留するアメリカ軍
 
ところが、トランプ大統領の認識では「米国に挑戦する『ならず者国家』やテロリスト、中国、ロシアのようなライバルにわれわれは直面している」ということになります。
 
もしアメリカが自国の領土と領海を守るだけの専守防衛に撤していたら、誰もアメリカに挑戦しようとはしないでしょう。
アメリカは世界に進出しすぎなのです。
ところが、政治学者などは、アメリカが少しでもプレゼンスをへらそうとすると、「力の空白」だとか「孤立主義」だとかいって、逆に世界が危険になるようなことを言います。こういう政治学者はみなアメリカのしもべです。
 
世界中の国が専守防衛に撤したら、戦争は起こらない理屈です。
それでも戦争が起こったら、国連軍を編成して対処すればいいのです。そのために国連をつくったのですから。

世界平和の実現はきわめて簡単です。アメリカがそれを困難にしているだけです。
 
また、トランプ大統領は、「世界中から核兵器をなくす魔法のような時が来るかもしれないが、残念ながら、われわれはまだそこには至らない」と言って、オバマ大統領の「核兵器のない世界」を否定しました。
 
しかし、核廃絶にいちばん抵抗しているのはトランプ大統領ですから、魔法など使わなくてもトランプ大統領を除去すれば、それだけ「核兵器のない世界」に近づきます。
 
もっとも、トランプ大統領がアメリカの外交軍事政策を特別に変えたわけではありません。もともとアメリカの覇権主義が世界の平和を脅かしてきたのです。
トランプ大統領のおかげでわかりやすくなったともいえます。
 

世界の平和にとってより脅威なのは、北朝鮮とアメリカのどちらか、冷静に考えればわかるはずです。
アメリカに依存する日本にとっては不都合な真実ではありますが。

平昌冬季五輪で韓国と北朝鮮は開会式で統一旗を掲げて合同入場し、女子アイスホッケーで合同チームをつくるなどが決まりましたが、韓国内の世論は意外ときびしい反応です。
かつて2000年のシドニー、2004年のアテネの夏季五輪で両国が統一旗で合同入場をしたときは、韓国世論はもっと歓迎していた気がします。
当時の北朝鮮は韓国からしたら「できの悪い弟」みたいなものでしたが、今の北朝鮮は核保有もして、金正恩という若くて元気のいい指導者もいるので、「ライバル」になってきたのかもしれません。
 
いずれ韓国と北朝鮮が統一される日がきたら、そのときの苦労は合同チームをつくることの比ではありません。韓国にその覚悟はあるのでしょうか。
 
もっとも最近、南北朝鮮の統一ということは少しも語られません。
経済制裁で北朝鮮に圧力を加えるということばかり語られますが、北朝鮮に核放棄させるには、そのあとのビジョンを示す必要があります。
 
それができるのはアメリカだけです。
今の休戦状態をどこまでも続けるのか、平和条約を締結して休戦状態を終わらせるのか、韓国と北朝鮮の話し合いで南北統一をするのかとか、さまざまな選択肢がありますし、それとは別に、軍事力で北の体制崩壊を目指すというのもあります。
しかし、こういう根本的なことは誰も語りません。
 
トランプ政権は昨年12月に「国家安全保障戦略」をまとめています。これはアメリカのいちばん根本的な戦略です。
 
在日米国大使館のホームページにその概略が発表されています。
 

国家安全保障戦略ファクトシート

 
この戦略は「4本柱」から成り立っています。
 

I.国土と国民、米国の生活様式を守る

II.米国の繁栄を促進する

III.力による平和を維持する

IV.米国の影響力を向上する

 
まさにアメリカファーストになっていますが、問題は「III. 力による平和を維持する」のところです。
これはこのように説明されています。
 
・我々は米国の軍事力を再建し、最強の軍隊を堅持する。
・米国は戦略的競争という新たな時代において、外交、情報、軍事、経済といった分野で国家として持つあらゆる手段を用い、国益を守る。
・米国は宇宙やサイバーを含む多くの分野で能力を強化し、これまで軽視されてきた能力も再生させる。
・米国の同盟国とパートナー国は、米国の力を拡大させ共通の利害を守る。米国はこうした国々が、共通の脅威に対応するためにより大きな責任を負うことを期待する。
・我々は世界の主要地域である、インド太平洋、ヨーロッパ、および中東において、勢力の均衡が米国を利するものになるよう努める。
 
「平和」という言葉も概念もありません。
「公正」も「法の支配」もありません。
同盟国ですら下僕扱いです。
 
ここまで露骨にトランプ政権がアメリカファーストを公言しているのに、安倍政権や親米右翼はいまだに対米追従を続けています。
いや、この「国家安全保障戦略」自体あまり報道されていない気がします。日本が頼りにする同盟国がこんなお粗末な国であることをマスコミも隠したいのでしょうか。
 
トランプ政権がこういう戦略なら、北朝鮮と話し合いをして核放棄をさせるのはまったく不可能に思えます。
金正恩氏がまともな判断力を持っていたら、トランプ政権に対するには核抑止力が絶対に必要だと思うでしょう。
 
この「国家安全保障戦略」を読むと、トランプ政権では北朝鮮の核問題を解決することは不可能だし、世界を平和にすることも不可能なことがよくわかります。

トランプ大統領が差別発言で世界的に炎上状態です。
 
トランプ大統領はハイチやアフリカ諸国のことを「shithole」と言いました。これは最初「屋外便所」と訳されたりしていましたが、そのうち「肥溜め」になり、今は「くそったれ国家」とも訳されています。公で使ってはいけない言葉ということです。
 
トランプ大統領の人種差別発言には今さら驚きませんが、問題はそのあとにあります。
 
トランプ大統領は世界的に非難されると、ツイッターで「自分は非難されている単語は使っていない」と否定しました。しかし、民主党のリチャード・ダービン上院議員は「何度も使った」と言っていますし、ホワイトハウスも発言は否定していません。
つまりトランプ大統領は嘘をついたのです。
 
トランプ大統領はウォールストリート・ジャーナルのインタビューで、金正恩委員長と「とてもよい関係にある」と語って、世の中を驚かせました。
ところが、このあとトランプ大統領はこれをフェイクニュースだとして、実際には「よい関係になるだろう」と述べたのだと主張しました。
ウォールストリート・ジャーナル社はインタビューの録音を公表して、「報道は正確だった」と反論しています。
 
トランプ大統領は、つごうが悪くなると、とっさに嘘をつくようです。
要するに自己防衛の嘘で、自分ファーストの表れです。
平気で嘘をつく人間に外交交渉はもとより政治ができるでしょうか。
 
「炎と怒り」というトランプ政権の暴露本の著者マイケル・ウルフ氏は『「取り巻きの100パーセント」がトランプ氏の資質に疑念を抱いていると断言し、「彼はまるで子どものようだと、誰もが言っている。つまり、すぐに満足させてあげる必要があるということ。彼がすべてなのだ」と語った』ということです。
 
 
ところが、日本ではトランプ大統領に対する批判の声がほとんど上がりません。
アメリカは日本がいちばん頼りにする同盟国です。その大統領がまともでないというのは、日本にとって最大の「国難」ですから、思考停止に陥っているのではないでしょうか。
 
その最たるものが安倍首相でしょう。
安倍首相には長い外交経験がありますが、やってきたことはひたすらアメリカ追従です。今もトランプ大統領に追従しています。それ以外のことをやったことがないので、路線変更ができないのでしょう。
トランプ大統領といっしょにゴルフをしたことも今では恥ずかしい過去になってしまいました(あの時点から恥ずかしかったのですが)
 
超大国の大統領がまともでないというのは、世界にとって大きな危機です。
世界各国が協力して、トランプ包囲網を構築するべきです。
日本人はそんなことは不可能だと思うかもしれませんが、そんなことはありません。トランプ大統領は昨年中にイギリスを訪問する予定でしたが、イギリスで180万人を越える反対署名が集まったために延期になり、今年2月に予定されていたイギリス訪問も、労働党の党首が大規模な反対デモを呼び掛けていたことなどから、またしても中止になりました。
世界各国がトランプ大統領にこうした対応をすれば、トランプ大統領を辞任に追い込めるかもしれません。
 
イギリス人にできて日本人にできないはずはない――と言いたいところですが、安倍首相にはむりですから、ほかの国に期待したいと思います。
 

今年を振り返ってみると、トランプ政権に振り回された一年だったなあと思います。
 
北朝鮮問題にしても、北の核が脅威だというよりも、トランプ政権が武力行使をしそうなことのほうがよほど脅威でした。
パリ協定離脱とかイスラエルのエルサレム首都認定とか、トランプ政権は確実に世界を悪くしています。
 
すべてのもとは、トランプ大統領が「アメリカファースト」を掲げて世界に出てきたとき、誰もそれをたしなめなかったことです。
もし子どもが「自分第一だ」と言ったら、親や教師は「みんなが自分第一だと言ったらどうなると思う?」と言ってたしなめるはずです。
利己主義はよくないというのは倫理の基本です。
 
安倍首相が「じゃあ私はジャパンファーストで行く」と言うのもひとつの手です。これもトランプ大統領をたしなめることになります。
しかし、世界の首脳でそういうことを言う人はいなかったと思います。
 
もっとも、マクロン大統領が「トランプ大統領がアメリカファーストなら、われわれはフランスファーストだ」と言ったとしても、トランプ大統領はマクロン大統領を罵倒して終わりでしょう。
トランプ大統領は、アメリカは特別な国で、ほかの国とは比べものにならないと思っているに違いありません。
 
特別な国というのは、要するに「神の国」ということです。もともとアメリカはきわめて宗教的な国ですが、トランプ大統領の支持層はとくに宗教的です。
たとえば、最近アメリカではクリスマスに「メリークリスマス」ではなく「ハッピーホリデー」という言葉を使う傾向がありましたが、トランプ大統領は選挙中から「当選したらメリークリスマスを使う」と約束していて、ニュースによると、最近約束通り「メリークリスマス」という言葉を連発しているそうです。
 
それはアメリカの国内問題ですが、エルサレムをイスラエルの首都と認定してアメリカ大使館を移転するとなると、国際問題です。
日本のマスコミは、これはアメリカ国内の支持者向けの政策だと解説していますが、だったら国連総会に首都認定の撤回を求める決議案が出されたとき、法的拘束力のない決議案ですから、無視していればいいのです。ところが、トランプ政権は決議案に賛成した国には援助を削減すると脅しをかけました。
エルサレムはキリスト教にとっても聖地です。エルサレムはユダヤ・キリスト教のものだと世界に(とくにイスラム教徒に)認めさせたいのでしょう。
 
ともかく、アメリカは「神の国」で、ほかの国と違うのだから、アメリカファーストを主張するのは当然だというのがトランプ大統領の考えでしょう。
 
主権国家はどの国も国際法に従うべきで、これは法の支配の精神からも当然です。
「法の支配」の反対語は「人の支配」で、要するに王様が支配している状態です。
アメリカファーストの主張が通用する世界は、アメリカが王様としてわがままにふるまっている世界です。
 
前からアメリカは王様のようにふるまってきましたが、トランプ大統領が登場して、それが露骨になりました。
アメリカは相対的に世界における地位を下げ続けてきて、これが最後のあがきというところです。
誰かが「王様は裸だ」と叫んでもいいときです。

トランプ大統領がイスラエルの首都をエルサレムと認めてアメリカ大使館の移転を表明してから、パレスチナはじめ中東各国で反発が高まっています。
 
かつての十字軍の目的は聖地エルサレムの奪還でした。トランプ大統領は十字軍が果たせなかったことをやろうとしているわけです。
少なくとも聖地にアメリカ大使館を置こうという宗教的な決定であることは明らかです。
ユダヤ・キリスト教対イスラム教の対立が深刻化するのは当然です。
 
しかし、日本のマスコミはトランプ大統領の決定を報じるのに、「十字軍」や「反イスラム主義」というキーワードをまったく使いません。
 
朝日新聞はこのような解説を載せています。
 
朝日新聞
■<考論>米国内の支持基盤へアピール ジョエル・ミグダル教授(ワシントン大学〈国際関係〉)
トランプ氏は就任以降、選挙公約の達成に次々と失敗している。メキシコ国境の壁の建設もできていない。「医療保険制度改革(オバマケア)」の撤廃も進んでいない。そんな中、エルサレムの問題は、完全に一存で公約を達成できる。国内の支持者、特に(ユダヤ人のエルサレム帰還を支持する)キリスト教の保守派に示す狙いがあったと考える。
 
要するに「公約」と「支持者」のためだというわけです。
「公約」と「支持者」のためなら、トランプ大統領は民主主義的な決定をしたことになります。
しかし、「公約」は支持者にアピールするようにつくられますし、トランプ大統領の支持者の多くは「反イスラム主義」で「十字軍」意識の持ち主です。
 
この教授はトランプ大統領とアメリカ人を悪く言わないために、「反イスラム主義」と「十字軍」を隠して、代わりに「公約」と「支持者」を持ち出しているのです。
 
アメリカ人の政治学者がそのように言うのはわかりますが、驚いたことに日本のマスコミのほとんどすべてが同じ論調です。
 
 
日テレNEWS24
 エルサレムを首都と認めることは中東情勢を緊迫化させる引き金を引くことになるが、トランプ大統領はそうしたことより、「公約の実現だ」と支持者固めを優先させた。
 
NHKNEWSWEB
ワシントン支局の西河記者が指摘するポイントは:
▼トランプ大統領は「国際社会からどう見られるか」よりも「国内の支持者にどうアピールするか」を優先させたということ。
▼トランプ大統領の強い支持層は国際的な評価よりもいかにトランプ大統領が既存の政治家とは異なる取り組みを行っているかを重視する傾向にある。
 
毎日新聞
トランプ米大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認定したことを受け、米議会からは称賛する声が相次いでいる。支持者向けの公約実現に固執するトランプ氏の特異性が強調される今回の問題だが、米政界に根強い親イスラエルの姿勢も改めて浮き彫りにしたといえそうだ。
 
TBSNEWS
今回の決定は、中東和平やアメリカの利益より、大統領が自らの政権公約を最優先に考えたいわば「トランプ政権第一主義」に基づくものといえます。背景には、「選挙中の公約を守る」姿勢を支持者に強く訴えるとともに、イスラエル寄りの姿勢を鮮明にすることで、「親イスラエル」のキリスト教右派やユダヤ系ロビー団体の支持を得る狙いがあるとみられます。
 
JPNEWS
トランプ氏の動きは親トランプを鮮明にしているイスラエル政府や、イスラエル寄りのトランプ氏支持者を意識したものとみられますが、トランプ氏がエルサレムを「イスラエルの不可分の首都」だと認めると、東エルサレムを将来のパレスチナ国家の首都と位置づけるパレスチナ自治政府をはじめとするアラブ世界からの反発は必至で、トランプ氏の娘婿でユダヤ人のクシュナー大統領上級顧問が関わる中東和平交渉にも影響を与えます。
 
 
すべて「公約」と「支持者」で説明しています。
「聖地にアメリカ大使館を置く」という宗教的行為であることがまったく説明されていません。
これではなぜ中東の緊張が激化するのかわかりませんし、トランプ氏の決定に反発するイスラム教徒のほうが悪いということにもなりかねません。
 
安倍政権は無条件でアメリカに追随していますが、日本のマスコミも同じです。

トランプ政権は「反イスラム主義」です。 
同盟国の正しい姿を知らなければ日本の安全保障も成り立ちません。
 
 

9月11日はアメリカ同時多発テロから16周年でした。
テロの翌月にアメリカはアフガニスタン戦争を始めているので、アフガニスタン戦争も16周年です。「アメリカ史上最長の戦争」と言われていますが、トランプ政権はアフガン増派を決定していますから、まだまだ終わりそうにありません。
イラクもいまだに内戦状態です。
外国が武力で政権を転覆しても、そのあとがうまくいかないということがよくわかります。
 
ベルリンの壁崩壊で東欧圏の多くの国で政権の転覆が起きましたが、これはいわば自然発生したものです。
もしその前にNATO軍が侵攻して政権を転覆させていたらどうなっていたでしょうか。
東西ドイツが統一されたとき、旧東ドイツでは国営企業の倒産などで失業者が増大し、旧西ドイツでは援助コストに苦しみ、長い不況になりました。
もし東ドイツの政権が武力で倒されていたら、旧東ドイツの人々は現在の生活苦を「あのとき武力で政権が倒されたせいだ」と考えて、反体制運動やテロなどに走って、政情不安が起きたかもしれません。
 
外国の武力で政権が転覆されると、国民にとってはそのときの武力衝突自体がトラウマになりますし、それによってできた政権が自分たちの政権だという意識も持てないので、どうしても不安定な政権になります。
 
そういうことを考えると、北朝鮮に対して武力行使をするべきだという意見がありますが、そのときの戦争によって甚大な被害が生じるだけでなく、のちのち問題を残して、アフガニスタンやイラクのようなことにもなりかねません。とくに金正恩氏をアメリカ軍が殺すと、英雄視や神格化の対象となるということも考えられます。
 
 
考えてみれば、日本もまた外国軍によって“国体”を変えられた国です。
もっとも、互いに宣戦布告しての戦争ですし、日本が先制攻撃していますし、国民はある程度敗戦の不利益を受け入れる覚悟があったでしょう。
それでも、いまだに戦前の“国体”に戻したいという政治勢力が存在しています。
これはトラウマによるもので、理屈ではありません。そのため、この政治勢力は平和主義、主権在民といったものまで否定しようとしています。
 
70年以上たっても日本はまだトラウマを克服できていないのですから、アメリカ軍がいる限りアフガニスタン戦争は100年続いてもおかしくありません。
アメリカは「あとは野となれ山となれ」と思って撤退するのがアフガニスタンのためです。
 
アフガニスタン戦争を見ていると、民族自決権のたいせつさが改めてわかります。
北朝鮮はどうあるべきかという問題も、北朝鮮の国民と韓国が決めることです。
最近の日本における北朝鮮問題の議論を見ていると、民族自決権を忘れているかのようです。
 

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