村田基の逆転日記

親子関係から国際関係までを把握する統一理論がここに

タグ:ネトウヨ

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(タイの昆虫スナックの屋台)

このところコオロギ食が話題です。
もともと栄養価が高く環境への負荷も少ないことから国連食糧農業機関(FAO)も推奨していましたが、河野太郎デジタル大臣がコオロギを食べるパフォーマンスの映像が拡散したことで急に注目されました。

無印良品が徳島大学と連携して「コオロギチョコ」や「コオロギせんべい」を開発して販売しています。
無印良品の「コオロギが地球を救う」というサイトには、「香ばしいエビのような味がする」「野生のコオロギでなく衛生的な環境で飼育したコオロギを使っている」などと説明されています。

世界では昆虫食はそれほど珍しいものではありませんし、日本でもイナゴやハチの子が食べられていました。
とはいえ、「コオロギを食べるなんて気持ち悪い」と思う人も多いでしょう。
「自分は食べたくない」と思うのは自由です。

しかし、「コオロギ食に反対」という人がかなりいます。
コオロギ食反対は、コオロギを食べたいという人の権利を侵害しています。いったいどういう理屈でしょうか。

ツイッター上でコオロギ食反対を主張する人は、ネトウヨとかなりの程度重なり合っています。
つまりほとんどのネトウヨはコオロギ食反対です。
典型的なのは、ネトウヨジャーナリストの有本香氏が「コオロギ食べない連合」を立ち上げたことです。この話題はツイッターでトレンド入りしました。

なぜネトウヨはコオロギ食に反対するのでしょうか。
一応もっともらしい理由は挙げられています。
たとえば「たんぱく源確保なら昆虫食より日本の畜産業再生が先だ」というものです。
しかし、昆虫食を推進することで畜産業再生が遅れるわけではなく、昆虫食に反対する理由にはなりません。
「昆虫食よりフードロス解決が先だ」というのもありますが、やはり昆虫食推進とフードロス解決を同時進行させればいいだけのことです。それに、廃棄食品を飼料にしてコオロギを育てることができるので、コオロギ食はフードロス解決に貢献するという説があります。


コオロギ食に反対するまともな理由はありません。
実は陰謀論による反対がほとんどです。
反コロナワクチンの陰謀論の代表的なものは、「この世界を陰で支配しているディープステートは人口削減のために有害なワクチンを打たせている」というものですが、それと同じ陰謀論が昆虫食にもあります。
「昆虫食には発がん性、病原菌、寄生虫、アレルゲンがあり、人口削減の陰謀が行われている」というものです。

希望の党から選挙に出たことがあり、さまざまな問題発言を連発している橋本琴絵氏は『聖書にはイナゴ以外の虫は食べては駄目だと書いてあったのですが、2017年から聖書の記載内容が変更されて「イナゴとコオロギ以外は食べてはならない」に書き換えられたので闇が深い。これ冗談ではないですよ』とツイートし、これが拡散しました。
聖書の書き換えができるとなると、そうとう力のある闇組織ということになり、典型的な陰謀論ですが、もちろんそんなことはありません(こちらにファクトチェックあり)。

「支配層は日本人に昆虫を食わせて、自分たちは高級な牛肉を食べ、高級なワインを飲んでいる」とか、さらには「世界の支配層は爬虫類人間で、虫を食糧にするのは爬虫類の発想だ」などというものまであります。

アメリカでも日本でも、右翼や保守派は陰謀論にはまる傾向があります。
とはいえ、右翼や保守派が昆虫食に反対しなければならない理由はないはずです。なぜ反対するのでしょうか。

こう考えたとき、あることを思い出しました。
それは、「グロ画像を見た時の脳の反応で政治的傾向が右なのか左なのかがわかる?(米研究)」という記事です。
私はこの記事にはひじょうに重要なことが書かれていると思い、全文を引用して「右翼思考の謎が解けた!」という記事を書きました。

リンク先を読むのがめんどうな人もいるでしょうから、研究内容を簡単に紹介しておきます。

米バージニア工科大学の研究チームは、83人の男性と女性を対象に、不快な画像、心地よい画像、そのどちらでもないニュートラルな画像を取り混ぜて見せて、MRI脳スキャンを行いました。心地よい画像というのは赤ちゃんや美しい風景などで、不快な画像というのはいわゆるグロ画像のことで、ウジ虫やバラバラ死体、キッチンの流しのヌメっとした汚れやツブツブが密集したものなどです。
次に「銃規制」「同性結婚」「移民問題」などを含む政治理念に関するアンケートに答えてもらうと、右寄り(保守)と左寄り(革新)では、嫌悪の認知、感情の制御、注意力、そして記憶力に関する脳活動が大きく異なっていました。
総じて右寄りの人の脳の方がグロ画像に対して強く反応し、特に保守的な傾向にある人は嫌な画像に強い拒絶反応を示しました。右寄りの人と左寄りの人の脳スキャンは、あまりにも違っていたため、基本的にわずか1枚のグロ画像に対する脳の反応を見るだけで、95%の確率でその人の政治的傾向を当てることができたそうです。

例に挙がっているグロ画像は、要するに生理的な不快感を催すものです。生理的不快感というのは誰でも同じようなものと思えますが、実は個人差が大きかったというわけです。

この研究は「グロ画像」を対象にしたものですが、おそらくは「グロい現実」についても同じことがいえるでしょう。つまり右寄りの人は「グロい現実」に強い不快感を覚えるので、拒否し、抹殺しようとするのです。
こう考えれば、右翼、保守派、ネトウヨの思考法がわかります。

たとえばマンガ「はだしのゲン」について、左翼はこのマンガを強く支持し、右翼は強く拒否します。もちろん内容が左翼的だということもありますが、絵と内容のグロさが決定的要因ではないでしょうか。
アウシュビッツなど強制収容所の悲惨さによく言及するのも左翼です。
カンボジアのポル・ポト政権の大量虐殺はきわめて悲惨で、骸骨の山などの写真もあるので、右翼は反共プロパガンダにこれらの写真を利用すればいいはずですが、ほとんど行われていません。自分もグロい写真は見たくないからでしょう。

右翼、保守派がグロいものに拒否反応を示すとすれば、コオロギ食に拒否反応を示すのも当然です。
その拒否反応がきわめて強いので、自分が拒否しているだけではすまず、世の中からコオロギ食を抹殺したくなるものと思われます。

コロナワクチンについても、注射針が体に刺さるのは不快ですし、薬液が体内で抗体を生成するのを想像するのも不快です。かといって、ワクチンを拒否する合理的、科学的な理由がありません。そこで不合理な陰謀論に飛びつくというわけです。

反コオロギ食の人や反ワクチンの人が陰謀論にはまるのは、そういうことで説明できます。


さらにいうと、同性愛傾向のまったくない人は、同性同士がセックスする場面を想像すると不快になるでしょう。
しかし、自分が不快だからといって人の幸せをじゃまするわけにいきません。普通の人はそう考えて、同性婚に賛成します。
ところが、不快感がきわめて強い人は、同性婚が公認されて、身近に同性婚カップルが存在すると思うだけで自分の幸せが脅かされると感じます。
右翼、保守派が同性婚に反対するのはそういう理由があるからでしょう。


グロい現実に強い不快を感じるという性質は、おそらく生まれつきのものでしょう。
そういう性質の人は多様性を嫌います。多様性にはグロいものも含まれるからです。そうしておのずと外国人排斥思想やLGBTQ排斥思想を身につけて、右翼になっていくのかと思われます。

右翼、保守派、ネトウヨは心のキャパシティの小さい人だと思えば、その思考や行動の原理が見えてきます。
心の狭さは生まれ持った性質なので、批判しても直りません。心のケアをして社会に取り込んでいくというインクルーシブ社会を目指すのが正しい方向です。
しかし、自分を正当化して、陰謀論を信じたり非科学的、非合理的な主張をしたりするのは認知のゆがみですから、そこは批判していかなければなりません。

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アメリカ大統領選挙を通してわかったのは、日本に盲目的なトランプ信者がかなりいるということです。
彼らはいまだに「民主党が選挙を盗んだ」というトランプ大統領の吹聴する陰謀論を信じていたりします。
こんなにトランプ信者がいるのは、アメリカ以外では日本ぐらいではないでしょうか。

日本のトランプ信者のほとんどが保守派、右翼、ネトウヨです。
彼らは一応愛国者を自認しているので、それに合わせてトランプ支持の理由づけをしています。
それは、「トランプは中国にきびしいから」というものです(「バイデンは中国の手先だ」という陰謀論も信じていそうです)。

トランプ氏でもバイデン氏でも対中国政策にそれほど変わりはないだろうというのが一般的な見方ですが、とりあえず今は、おそらく新型コロナウイルスによる被害を中国に責任転嫁するために、トランプ政権が中国にきびしく当たっているのは事実です。


反中国の感情は、ネトウヨに限らず日本人に広く蔓延しています。
11月17日に発表されたNPO法人「言論NPO」などによる日中共同の世論調査によると、中国への印象が「良くない」「どちらかといえば良くない」とした日本人は89・7%で前年比5ポイント増だったということです。
習近平政権は独裁色を強め、香港の民主化運動を弾圧しているので、それが反映されたのでしょう。

しかし、今では日本にとって中国は最大の貿易相手国です。
日中関係をこじれさせるわけにいきません。
ほとんどの日本人はそのことがわかっていますし、自民党政権も同じです。

しかし、わかろうとしない人もいます。
かつて日本の経済力が中国を上回っていたころ、中国を見下していた人たちです。
中国経済が次第に日本に追いついてきても、「中国経済はもうすぐ大崩壊する」などという本や雑誌記事を読んで信じていました。

しかし、中国のGDPが2010年に日本を超え、その差が年々拡大してくると、「中国経済は崩壊する」という説は見なくなりました。
また、「南京虐殺はなかった」というのは、「従軍慰安婦の強制連行はなかった」というのと並んでネトウヨの主張の定番でしたが、最近「南京虐殺はなかった」という主張はとんと見なくなりました。

今では中国のGDPは日本の3倍近くになっています。
ネトウヨも反中国の旗をおろさざるをえなくなって、もっぱら慰安婦像問題や徴用工問題などで反韓国の旗を振るしかないというときに、トランプ大統領が強硬な反中国政策を取り始めたのです。
ネトウヨは大喜びしたでしょう。
アメリカが中国をやっつけてくれて、日本もアメリカの威を借りる形で中国に強く出られそうだからです。

そうしてネトウヨはトランプ信者になったというわけです。


もともと多くの日本人は、強いアメリカに媚び、弱い中国や韓国や北朝鮮に威張るという精神構造をしていました。
この精神構造は、半島と大陸を植民地化したことからきていますが、若い人の場合、学校でのいじめとも関係しているかもしれません。
クラスで強い者が弱い者をいじめるという現実の中で育ってきて、国際社会も同じようなものだと思っているのではないでしょうか。

しかし、アメリカの覇権はいつまでも続くとは限りません。将来は覇権が中国に移るということは十分に考えられます。
日本がアメリカの威を借りて中国に対処していると、そのときみっともないことになります。

アメリカであれ中国であれ、覇権主義に反対するというのが日本外交の基本でなけれはなりません。

覇権主義に代わるものは「法の支配」です。
日本は人権、平和、法の支配といった価値観で世界から信頼される国になるしかありません。

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