村田基の逆転日記

親子関係から国際関係までを把握する統一理論がここに

タグ:バイトテロ

4834097_m

はま寿司で他人が注文した寿司を横取りして食べる動画が拡散したことがきっかけでした。
次に、スシローで少年がレーンを流れている寿司に唾をつけたり、置いてある湯呑みをなめてもとに戻したり、醤油の注ぎ口をなめたりする動画が拡散し、それから、流れている寿司にわさびをつけたり、流れているポテトチップをつまみ食いしたり、うどん店で天かすを共用のスプーンで食べたりする動画が次々と拡散しました。

かつてバイト店員の悪ふざけ動画が拡散し、“バイトテロ”と呼ばれたことがありました。
それにならっていうと、今度は客が悪ふざけをしているので“客テロ”です。


他人が食べ物に触ったり、唾をつけたりする行為を見ると不愉快になるのは、感染症を防ぐための本能的な反応なので、こうした動画を見た人が不愉快になるのは当然です。
しかし、動画に映っている行為は過去のものです。唾がついた寿司や湯飲みや醤油差しなどはすでに片付けられるか洗われるかしていますし、迷惑行為をした人と店の間で話し合いが行われて解決している場合もあります。
ところが、動画が引き起こす本能的感情がひじょうに強いので、人々は現在の問題と思ってしまうようです。
「もう回転寿司に行けない」などと言っている人もいます。

こうした行為が「マナーが悪い」とか「常識に欠ける」と非難されるのは当然です。
しかし、日本には一億二千万人もいるのですから、中にはおかしな人もいます。
動画の迷惑行為をする人の中には、発達障害の人がいる可能性がありますし、ポテトチップをつまみ食いしたのは高齢の女性ですから、認知症かもしれません。
宮口幸治著『ケーキの切れない非行少年たち』に書かれたように、世の中には知的障害とはされない軽度の知的障害(境界知能)の人もいます。
もちろん知的障害の人もいます。
そうした可能性があるので、動画で迷惑行為をしている人を見て安易に非難するべきではありません。
ところが、やはり本能的感情が強烈なので、そうした判断のできない人が多いようです。

迷惑行為をしているのはたいてい若い人です。バイトテロが騒がれたのは10年近く前のことですから、そのころのことを知らない可能性があります。また、SNSやインターネットの影響力についてもまだよく理解していません。SNSを仲間内で盛り上がるためのツールととらえている可能性があります。
「こんな動画を上げれば騒ぎになるに決まっている。知らなかったではすまされない」などと言う人がいますが、自分が知っているから他人も知っているだろうと思うのは愚かです。

迷惑行為の動画が拡散して店は大きな損害をこうむりました。迷惑行為は過去のことなので、この損害は、動画を発掘して拡散させた人たちのせいです。迷惑行為をした人間は、その場にいた数人に被害を与えただけです。

私はこれを“炎上テロ”と名づけました。
つまり迷惑行為をやった人間がテロをしたのではなく、迷惑行為の動画を発掘・拡散して炎上させた人間がテロをしたのです。

“炎上テロ”は社会に損失を生みます。
回転寿司店は被害を防ぐためにAI搭載監視カメラを設置したり、回転寿司のレーンを改良したりすることを検討しています。実行することになれば、そのコストは客が負担することになります。

2月4日には、とんかつチェーンの「松のや」において少年が箸立ての箸を二十膳ほど両手でつかみ、先端を口の中に含んだあと、箸立てに戻し箸を混ぜるという動画が拡散しました。しかし、松のやによると、問題の動画が撮影されたのは2020年9月で、当時警察に被害届を提出し、すでに解決済みです。しかし、今回の拡散で、個別包装の箸に変更することを検討しているということです。
この例を見れば、迷惑行為をした人の悪は社会の片隅の小さな悪ですが、動画を発掘・拡散して炎上させた人たちの悪は社会を害する巨悪だということがわかります。


ネットで炎上させる人間は「正義の快感」に酔いしれているのでしょう。
スシローで唾をつけた少年は企業から損害賠償請求をされる可能性があり、その金額は最大100億円などといわれ、しかもそれは自己破産してもなくならない「非免責債権」であるといった報道がありました。
こうした報道を見て喜んでいる人がたくさんいました。
こうなると「正義の快感」というより「いじめの快感」です。
学校で子どもが自分より弱い子どもをいじめて喜んでいるのと同じです(いじめっ子にもそれなりの“正義”の理屈があるものです)。

学校ではいじめが増え続けています。
いじめが社会全体に広がってきたようです。

なお、損害賠償金については、唾をつけた少年の負担は少額で十分です。そして、動画を拡散させて騒いだ人も同じぐらいの額を負担するべきです。そうすれば合計して巨額の賠償金になります(現実にこのやり方は困難でしょうが、これが正しい責任の分担です)。


社会にはさまざまな人がいて、中にはおかしな人もいます。
おかしな人をなくすことはできません。
むりしてなくそうとすると、「角を矯めて牛を殺す」という言葉のように社会全体をおかしくします。


今の騒ぎは、本能的感情が暴走して引き起こされています。
本能的感情はもともと生存に必要なものでしたが、今は明らかに社会的損失を生んでいます。
ここは冷静になって、自分の感情はこれでいいのかと考えなければいけません。
これは「認知を認知する」という意味で「メタ認知」といわれます。
「メタ認知」のできる人が真に知性のある人です。

social-3064515_1920

またしてもバイトテロ騒動です。

「カレーハウスCoCo壱番屋」の福岡県内の店舗で若い男性店員が愚かな行為をする動画がインスタグラムに投稿され、それが拡散して炎上し、CoCo壱番屋の本社が公式サイトで謝罪するはめになりました。
どういう愚かな行為をしたかというと、ヤフーニュースに載った記事から引用します。
 12日には福岡県内の「カレーハウスCoCo壱番屋」の店舗内の休憩室で、男性店員がまかないのカレーを不衛生に扱う様子をバイト仲間が撮影。それがツイッターに流出し、大騒ぎになっている。

 問題の動画は、店員が黄色の半ズボンの中に左手を突っ込んでいる場面から始まる。まかないのカレーを食べていた撮影者が「何してるんですか?」と声を掛けると、店員は再びズボンの中に手を入れて何かを引っこ抜き、カレーの上に放り投げた。店員は「スパイスを振りかけました」とおどけ、「スパイス、スパイス」と口ずさみながら踊り出す。カメラがアップで捉えたカレーライスの上には、黒い陰毛らしきものがのっていた。
https://news.yahoo.co.jp/articles/2bcc104760bf65a5e2e786d2f820fd56b38a0fbd

先ほど「バイトテロ」という言葉を使いましたが、「テロ」はおそろしい犯罪です。果たしてこれはおそろしい犯罪でしょうか。

記事に「まかないのカレー」という言葉があるように、お客さんに出すカレーではありません。動画を見ると、食べ残しの皿であるようです。つまりこれから捨てる残飯の上に陰毛を載せたということです。
食べ物の上に陰毛を載せるという行為は、感覚的に不快ですが、実害はありません。残飯を捨てて、手を洗えば、不衛生なこともありません。

無意味で、バカらしいことではありますが、若者にはありがちなことです。


この動画はインスタグラムに、フォロワー以外は見ることができない「鍵付きアカウント」として、しかも24時間で消える「ストーリー」として投稿されました。つまり非公開で、すぐに消えるものでした。仲間内だけで見るつもりだったと思われます。
しかし、フォロワーの中に、これを公開してやろうという人がいたのでしょう。ツイッターに動画がアップされ、拡散し、炎上したわけです。

この動画が拡散することはCoCo壱番屋にとってはイメージダウンです。
そのため、その行為をして最初の動画をアップしたバイト店員が「バイトテロ」として非難されていますが、実はイメージダウンを招いたのは、動画を拡散させた人たちです。

拡散させた人たちは、正義のつもりでバイト店員を攻撃したのかもしれません。しかし、バイト店員は仲間内で悪ふざけをしただけで、放っておけばなんの問題もありませんでした。
バイト店員への攻撃は、人を不幸にしてやろうという悪意に基づくものです。
しかも、その行為はCoCo壱番屋のイメージダウンになります。
CoCo壱番屋のような大企業を困らせることを楽しんでいる可能性がありますし、そうでなくても、CoCo壱番屋に対する配慮がないのは明らかです。

このケースは、非公開のものを最初に公開した人間がいちばん悪く、それを拡散させた人間が次に悪いわけです。
6月15日のフジテレビ系「バイキングMORE」を見ていたら、弁護士も「“鍵垢”での公開のものを一般に公開した人が業務妨害罪に当たる可能性が高い」と指摘していました。
DSC_0006


ところが、MCの坂上忍氏やブラックマヨネーズなどのコメンテーターはこの指摘に納得せず、バイト店員がいちばん悪いと主張していました。
世の中にもそういう認識の人が多いのではないでしょうか。

そうした間違った認識が生まれるのは、「バイトテロ」という言葉も原因です。
この言葉をつくったのは、ネットで拡散させている人たち、つまり悪い人たちです。
悪い人たちがつくった言葉が間違ったものであるのは当然です。

これまで「バイトテロ」と呼ばれる出来事は数々ありましたが、そのほとんどはスルーしておけばなんの問題もないことでした。
最初に騒がれた事件は、ローソンの店舗でアイスクリームなどを入れる冷凍ケースの中で男性が寝そべった写真が拡散したことです。これは不衛生だと非難されましたが、アイスクリームなどは包装されているので、それほどのことはなかったでしょう。
バーガーキングの店舗では、床の上の大量のバンズの上に店員が寝転がっている写真が拡散しましたが、バンズは誤発注のために廃棄する予定のものでした。
ほっともっとの店舗では、冷蔵庫に入った店員の写真が「今日暑くね?」というコメントとともにツイッターに投稿されました。

確かに愚かな行為ではあります。

「バカッター」という言葉があります。ツイッター上でバカな行為をさらす人のことです。これは割と適切なネーミングかと思います。
「バイトテロ」も同じような行為を指す言葉ですが、「バカな行為」と「テロ行為」は根本的に違います。

「バイトテロ」は企業に大きな損害をもたらす場合がありますが、これはバイト店員のせいではなく、拡散させ炎上させた人たちのせいです。
ですから、これは「炎上テロ」と呼ぶのが正解です。

炎上させる人間は、バイト店員を不幸にし、企業に損害を与えることを意図しているので、悪質です。


若者は、悪ふざけなどさまざまな愚かな行為をおもしろがってするものです。
それによって経験値を上げ、そこから創造的な発想が生まれることもあります。

最近の日本は、赤ん坊の泣き声がうるさいとか、公園で子どもの遊ぶ声がうるさいというように、子どもに不寛容な社会になっていますが、若者の愚行を「バイトテロ」と呼んで攻撃するのもその流れです。

CoCo壱番屋のバイト店員は身元が特定され、巨額の損害賠償請求される可能性があるといったネット記事を見かけます。
こうしたことがあると、若者は無難なことしかしなくなります。

元気な若者がいない社会に未来はありません。

18e804dd6600c69dcc8467ad621b78eb_m

人間に裏表があるのは当たり前です。
しかし、ネットの世界では裏表の区別もつかない人が多いようです。

ドコモショップの店員から「クソ野郎」とののしられたとして怒っている人がいて、それがきっかけで炎上しています。

「親が支払いしてるクソ野郎」 ドコモ代理店の書類に信じられないメモ書き 受け取った本人に話を聞いた
ドコモショップの書類に残されていた信じられないメモ書きがTwitterで拡散されています。「親が支払いしてるから、お金に無トンチャク」「つまりクソ野郎」と利用客を侮辱したうえで、プランの追加を勧めるよう指示が記されています。
編集部では、メモを受け取ったAさんに取材。あわせてNTTドコモ本社にコメントを求めました。

 以下は編集部がAさんに電話取材した内容です。

「場所は機種変更で訪れた千葉県のドコモショップです。その際、店員からプランの変更を勧められ、ホチキスで綴じられた資料を渡されました」

「やりとりの中で店員がPCを操作し始め、手持無沙汰な時間ができました。それなら変更内容を確認しておこうと資料のページをめくったところ、『クソ野郎』などのメモが書かれていたという経緯です。本来は客に見せない紙が紛れ込んでしまったのだと思います」

「『親が支払いしてる』とありましたが、うちは一家で自営業を営んでおり、父親の名義でまとめて支払うと都合がいいというだけの理由です。顧客情報から勝手に事情を推測して、このような指示を出しているのでしょうか。信じられません」

「メモを発見しすぐに責任者を呼びました。納得できる説明を求めましたが、『すみません』とへらへら謝るばかりで、らちがあきませんでした」

「ドコモ本社に報告したいと申し出ましたが、『コールセンターしかありません』と説明され、直通の電話番号などは教えてもらえませんでした。そのコールセンターも、代理店が用意した番号だったので、ちゃんと本社まで話が通っていたかは分かりません」

「Twitterで話題になってから、ようやく代理店よりお詫びのメールが届きました。何度もなかったかのようにだんまりを決め込んでおいて、事が大きくなって初めて連絡してくるのもおかしな話だと思います」

「インターネット回線もドコモ光の契約を検討していましたが、今回の一件で躊躇(ちゅうちょ)してしまいました」
(後略)
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2001/09/news126.html
NTTドコモはこの事実を認めて、「お客様にご不快な思いをさせてしまったことを大変申し訳ないと考えております」と謝罪しています。


要するに客に見せるべきでないメモを見せてしまったことで生じた問題です。
メモを客に見せたのは店のミスです。
「クソ野郎」などと書いたのはよくありませんが、客が見なければどうでもいいことでした。

客の側も、これが純然たる私的なメモなら、目にしても読まないのがマナーですが、自分のことが書かれているのですから、読むのは当然です。
そこに「クソ野郎」などと書かれていれば、腹が立つのも当然です。
で、文句を言いたくなるのも当然ですが、ここが考えどころでした。

自分は本来読むべきでないものを読んだので、それほど堂々と文句を言える立場ではありません。
それに、文句を言って謝罪させたところで、なにか得をするわけではありません。この人はコールセンターに電話して文句を言ったようですが、まったくの時間のむだです。

店の対応が悪い場合、クレームをつけることで店の対応が改善されることが期待でき、少しは世のため人のためになります。
ところが、この場合は店の対応が悪いわけではないので、クレームをつけてもなにも改善しません。

要するにこれは、人のひそひそ話がたまたま耳に入ってきて、自分の悪口を言っていたので、怒って謝罪を要求したというのと同じです。
そこは、聞いて聞かないふりをするのがおとなというものです。



ただ、この人が腹を立てたのはわかります。
問題は、この人に便乗してネットで炎上させた人たちです。
店の人やドコモを攻撃し、店長の名前や写真をネットにさらしたりしています。
これは世のため人のためにならないばかりか、むしろ逆です。
NTTドコモは「全店舗に対して今まで以上に指導徹底し、再発防止に努めてまいります」と表明していますが、店員同士がやり取りするメモまで監視されるようになると、働きにくくなります(監視する手間もむだです)。
この店員は、「この客は親が料金を払っているので、高いプランを勧めてもうまくいくかもしれない」という業務連絡のメモを書くのに、それだけではつまらないので、「クソ野郎」という言葉を入れたわけです。誰にも迷惑をかけずに、つまらない仕事を少しでもおもしろくしようという工夫です。


いわゆる「バイトテロ」も同じ構図です。
若いバイト店員が悪ふざけをして、SNSに動画や写真をアップして仲間内で楽しんでいると、それを拡散して、攻撃する人が出てくるわけです。バイト店員の悪ふざけは個人的な行為ですし、隠れてやっている限り問題はありません(若者が悪ふざけをするのは自然な姿です)。それを拡散させて攻撃するほうに問題があります。

ところが、拡散させて攻撃するほうは圧倒的多数派で、攻撃されるほうは個人です。そうすると、多数派のほうが正義だという世論が形成されます。


人間に裏表があるのは当たり前で、たまたま裏を見て、「表と違う」と怒るのは愚かです。
こういう問題は、多数派に影響されずに、各個人がしっかりとした倫理の軸をもって判断することがたいせつです。

ただ、最近は炎上させる側を「正義マン」とか「道徳警察」という言葉で批判する傾向も出てきました。
私自身は「道徳という棍棒を持ったサル」という言葉を使っています。

このページのトップヘ