村田基の逆転日記

親子関係から国際関係までを把握する統一理論がここに

タグ:差別主義

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トランプ大統領の支持層のほとんどは白人であり、白人至上主義者です。
欧州の極右政党も白人至上主義です。欧州は移民や難民を入れすぎてたいへんなことになっているなどという人がいますが、移民や難民を不快に思う白人至上主義者がそういっているだけです。

差別主義の波は日本にもやってきて、参政党のスローガン「日本人ファースト」がその典型です。
参政党の神谷宗幣代表は、これは差別主義ではないし排外主義でもないと言っていますが、あくまで表向きです。

神谷代表は選挙演説のとき、「アホだ、バカだ、チョンだと言われる」と言い、その直後に「あ、『チョン』って言ったらダメだ。ごめんなさい。いまのカット。ああ、また言っちゃった。これ、切り取られるわけですよ。私がちょっとでも差別的なことを言うと、すぐ記事になる」と言いました。
これは明らかにわざと言い間違っています。聴衆の受けを狙うと同時に、マスコミを挑発しているのでしょう。
聴衆も「チョン」という言葉をおもしろがっています。
「差別語はいけない」という常識をバカにしているのです。


差別主義が世界的に勢いづいているのは、もちろんインターネットの普及のせいです。
インターネット以前は、メディアと知識人が言論を支配していて、そこには「差別はいけない」という共通認識がありました。
しかし、インターネットの世界では大衆が言論を支配して、そこでは差別的な言説が横行しています。

差別というのは日常生活の中にあり、人間は幼児期から周りの人々の言動から差別を学びます。
たとえばアメリカの白人にとっては黒人を見下すのは当たり前のことでした。そこに「白人も黒人も同じ人間だ。人種差別はよくない」という新しい考えが脳の表層に植えつけられるので、差別肯定の感情と差別否定の理性に分裂することになります。差別感情がまったくないというのはよほどできた人間だけです。
人々は差別語を使わないようにして差別感情を隠して生きています。これは知識人も大衆もたいして変わりません。
そうしたところにインターネットが普及し、誰でも匿名で発信ができるようになると、隠されていた差別感情が放出されました。昔、ひろゆき氏が管理人をしていたころの2ちゃんねるはヘイトスピーチの巣窟でした。
掲示板の書き込みは「便所の落書き」といわれました。


ネットでは個人に対する誹謗中傷も盛んです。
人は誰でも悪口を言いたくなるときがありますが、あまり悪口ばかり言っていると性格の悪い人間と思われます。そこで少数の人間にだけ悪口を言います。それが「陰口」です。
ネットでは匿名で発信できるので、これまで陰口で言っていたことを公然と言えるようになりました。そのためネットは人の悪口、つまり誹謗中傷であふれることになったのです。
よく若い芸能人が「エゴサをすると悪口ばかりで落ち込む」と言っていますが、そうなるのは当然です。

バイトテロなどといわれましたが、悪ふざけをしたバイト店員の動画がSNSなどにアップされると、非難が集中して炎上するということがひところ相次ぎました。
それから、寿司テロとか飲食店テロなどといわれましたが、客が醤油差しをなめるなどした悪ふざけ動画もよく炎上しました。
悪ふざけの若者を非難してもなんの世直しにもなりませんが、人を非難したい人がネットにはたくさんいるためにこうした炎上が起こります。
私はこれを「ネットテロ」と呼んでいます。悪ふざけしたバイト店員や飲食店の客よりもネットで炎上させる人間のほうがよほど悪質です。

ヘイトスピーチも誹謗中傷も同じことで、人はみなリアルではいい人ぶって生きているので、ネガティブな感情をネットで出して人を非難するのです。
ネット言論の世界は、『ジキル博士とハイド氏』でいえばハイド氏の横行する世界です。


政治の世界ではYouTubeやTikTok のショート動画がよく利用されています。
最初にこれを有効に使ったのは安芸高田市長時代の石丸伸二氏でした。石丸市長が市会議員や記者と議論してやりこめるシーンを切り抜いた動画が再生回数を稼ぎ、石丸氏はその人気で東京都知事選で善戦しました。
その後、兵庫県知事選でも切り抜き動画がよく使われ、最近は参政党や国民民主党がうまく利用しています。
切り抜き動画でも同じことで、誰かを非難するものが人気になるようです。
財務省を非難することから財務省解体デモが起きました。
外国人を非難することから「日本人ファースト」のスローガンができました。
政治の世界では「世のため人のため」という大義名分が立つので、遠慮なく誰かを非難できます。


「便所の落書き」といわれたネットの言論が今では政治を動かすまでになりました。
しかし、ネット言論の本質はやはり「便所の落書き」であり、差別発言であり、陰口です。
人間は誰でもいい人の部分を表面に出して、みにくい部分は隠しています。つまり「美しい建前」と「みにくい本音」に分裂しています。
ところが、そのことに気づく人はめったにいません。
その意味で、デルフォイの神託「汝自身を知れ」はまさに金言です。

ネット世論のそうした性質をわきまえず、ネット世論に受ける政策を打ち出そうとする政治家はみんな“闇落ち”していきます。


つけ加えると、多数派の民意は正しいと思っている人がいるかもしれませんが、それは誤解です。
たとえばアメリカのように多数派の白人が少数派の黒人を差別している社会では、多数派の民意は差別的になります。
「日本人ファースト」が多数の日本人に受けたとしても、それが差別的であることに変わりはありません。

なお、多数派といってもそれは日本国内だけのことで、世界から見れば差別的だというのは容易にわかりますし、アメリカで起こっていることも日本から見れば差別的だとわかります。
ただ、日本人はヨーロッパ文化を尊敬しているせいか、ヨーロッパの移民排斥運動が差別的だということに気づかない人が多いかもしれません。

ネット内では、一般的な世論調査の世論を見下し、ネットの世論のほうが優れているみたいな主張がされていますが、これはネット内でしか通用しない意見です。
人々はリアルではいい人としてふるまい、ネットではみにくい感情を吐き出しています。
このことを理解すれば、ネット世論に左右されることはなくなり、逆にネット世論を左右する方法が見えてくるかもしれません。


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Foto-RabeによるPixabayからの画像 

トランプ大統領は7月14日、民主党の4人の女性議員に対してツイッターで「アメリカで暮らして幸せでないなら出ていけばよい」「どうして彼女たちは完全に崩壊し、犯罪が横行するもとの国に戻って建て直さないのか」などと発言し、さらに17日に支持者を集めた集会で、「彼女たちがアメリカを好きでないなら出て行けばよい」と繰り返しました。
4人の女性議員は、もとはソマリアの難民だったり両親がパレスチナ人だったりするので、トランプ大統領は「もとの国」と言ったようです。

こうした発言に対して、「アメリカは移民の国だ。トランプ大統領も移民の子孫なのに、出ていけというのはおかしい」という声がありますが、それはアメリカについて考え違いをしています。
アメリカは白人が先住民を追い出してつくった国ですから、白人が非白人に対して出ていけと言うのは建国の理念にかなっています。
ついでにいうと、白人は銃を使って銃を持たない先住民を追い出したので、白人が銃を持つことも建国の理念にかなっています。
アメリカ独立宣言には基本的人権がうたわれましたが、先住民にも黒人にも人権は認められませんでした。ということは人種差別がアメリカの建国の理念なのです。
リンカーン大統領は奴隷解放という偉業を成し遂げたとされますが、ヨーロッパは奴隷制を廃止していたのにアメリカは最後まで奴隷制を続けていただけのことです。

つまりアメリカは世界最悪の人種差別国家です。
トランプ大統領が言ったことはアメリカの建国の理念であり、白人至上主義者の本音です。


とはいえ、差別主義の発言に世界から批判が集まるのは当然です。
イギリスのメイ首相は「まったく受け入れられない」、ドイツのメルケル首相は「強いアメリカと矛盾する」、ニュージーランドのアーダーン首相は「ニュージーランドでは人々が正反対の考え方を持っていることを誇りに思う」、カナダのトルドー首相は「カナダで私たちがとる対応ではない」といった具合です。

わか安倍首相はというと、もちろんなにも言いません。
トランプ大統領に従うことしか考えていませんし、それに、もともと人権感覚がほとんどないからです。

トランプ大統領の差別発言を批判しないのは日本のメディアも同じです。
そもそも日本のメディアは、トランプ大統領の差別発言を差別発言でないようにごまかして報道しています。
たとえば、次の日経新聞の記事がその典型です。

トランプ氏「国へ帰れ」発言が波紋、与野党が批判
【ワシントン=中村亮】トランプ米大統領の人種差別と受け取られかねない発言が米政界で波紋を広げている。祖先の出身地が中東やアフリカの野党・民主党の女性下院議員に「国に帰ったらどうか」と促した。不法移民対策の停滞に不満を示し保守層にアピールする狙いがあるとみられるが、非白人議員を狙い撃ちした批判に民主党は猛反発し、与党・共和党内からも「限度を超えている」と非難する声が出ている。
「彼女らは(過激派組織の)アルカイダに近い」。トランプ氏は15日、ツイッターでソマリア出身のオマル、パレスチナ系のタリーブ両下院議員らを念頭に断じた。両議員らがトランプ政権の批判を繰り返す姿勢に不満をにじませ「この国を愛せないのであれば、国を去った方がよい!」と訴えた。
オマル、タリーブ両氏は2018年秋の中間選挙でイスラム教徒女性として連邦下院議員に初当選した。同時に当選したプエルトリコ系の母親を持つオカシオコルテス氏、アフリカ系のプレスリー氏と合わせた新人女性議員4人は民主党の急進リベラル派の中核的存在だ。トランプ氏の不法移民政策を厳しく批判してきたことでも知られる。
オマル氏は15日、他の3議員とともに緊急記者会見を開いて「トランプ氏は白人至上主義者の主張をしている」と痛烈に非難した。タリーブ氏はトランプ氏の言動が弾劾に値するとの考えも示し、対決姿勢を鮮明にした。
トランプ氏の発言は不法移民対策の進捗への不満を反映したとの受け止めが多い。米税関・国境取締局(CBP)によると、メキシコ国境での拘束数は18年10月~19年6月の9カ月間で約69万人と、すでに18会計年度(17年10月~18年9月)の通年実績の1.7倍に上った。
(中略)
だが人種差別とも受け取られるトランプ氏の言動は米社会の分断を広げかねない。トランプ氏はこれまでも白人至上主義者と反対派が衝突し死者を出した事件を巡り、白人至上主義を非難せず激しい批判を浴びた。ユダヤ教の礼拝堂で銃乱射事件が相次いだのも、トランプ氏の人種間の分断をあおる言動が一因だとの指摘は根強い。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47408260W9A710C1EA1000/

「人種差別と受け取られかねない発言」とか「人種差別とも受け取られるトランプ氏の言動」というように、人種差別と断定しない書き方になっています。

では、トランプ大統領はなぜそんな発言をしたかというと、選挙対策のために「保守層にアピールする狙い」であり「不法移民対策の進捗への不満を反映」したものであるので、差別主義からではないということになります。
しかし、それはあくまで記者の推測です。そうしたことは解説や論説で書くべきで、こうした短い記事は事実だけでいいはずです。

差別主義の発言ではなく再選戦略のための発言だ――という論理でトランプ大統領の差別発言を擁護することは、日本のあらゆるメディアが行っています。
今回の差別発言に限ってもそうした記事がいくつも目につきます。

たとえば毎日新聞の『「国に帰れ」 裏に再選戦略 岩盤支持層にアピール、野党左傾化を印象付け』という記事はこう書いています。

発言からは、保守派の「岩盤支持層」にアピールすると共に、野党・民主党の「左傾化」を強く印象付けて批判材料にしようとするトランプ氏の再選戦略が透けて見える。 
https://mainichi.jp/articles/20190718/ddm/007/030/134000c

日刊スポーツの『トランプ大統領、非白人議員に「国に帰れ」撤回せず』という記事はこうです。

トランプ氏には来年の大統領選に向け、保守派支持層にアピールする狙いがある。女性議員らがペロシ下院議長ら民主党指導部ともあつれきを生んでいる点を突き、同党内の亀裂を深めさせる思惑もありそうだ。
https://www.nikkansports.com/general/news/201907160000109.html

FNNPRIMに木村太郎氏が執筆した記事は、民主党の4人の女性議員を過激な「独立愚連隊」と見なすNBCニュースの記事を紹介する形でこう書いています。

反トランプの立場を貫いているNBCニュースのサイトに「トランプは民主党が急進左派に縛られるよう期待し、その通りになった」という分析記事が16日掲載された。

それによると、トランプ大統領は来年の大統領選で対立候補が誰であれ急進過激派に近ければ「国を率いるには過激すぎる」と攻撃して有利な立場になると計算してシナリオを作り、まず「独立愚連隊」に攻撃を仕掛けた。案の定民主党内では反発が広がり、もともとは「独立愚連隊」と党内で対立していたペロシ下院議長も大統領の主張は「米国を白人第一に」とするものだと非難する声明を発表した。

大統領の狙い通り、民主党を「独立愚連隊」の周囲に結束させることになったわけだが、これについてNBCニュースの分析記事はこう評している。

「トランプが喋ったりツイートする誹謗中傷の全てが彼の天才的な駆け引きの賜物であると考えるのは間違いだが、彼のメッセージが何の思惑もなく発せられていると考えるのも間違っている」

民主党は、トランプ大統領の「罠」にハマったのだろうか?
https://www.fnn.jp/posts/00047257HDK/201907161730_tarokimura_HDK

こうした分析に当たっているところがあるかもしれませんが、過激な差別発言はコアな白人支持層にしかアピールしません。再選されるには中間層に支持を広げる必要があり、もしこれが再選戦略であるなら、間違った再選戦略です。

ともかく、日本のメディアはトランプ大統領の差別発言を、あの手この手で差別発言でないように報道しています。
トランプ大統領は今でも40%ぐらいの支持率があります。トランプ大統領の差別主義はアメリカの根幹とつながっています。
トランプ氏個人を批判することはできても、アメリカの根幹を批判することはできないということでしょう。
首相もメディアも属国根性です。

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