
岸田文雄首相は11月16日、サンフランシスコにおいてバイデン大統領と会談したあと、「来年早期の国賓待遇の公式訪問の招待を受けた」と語りました。
アメリカから国賓待遇の招待を受けるというのは、岸田外交の大きな成果とされるはずですが、今のところそういう反応はありません。
ヤフーコメントには「年内退陣が噂される中、バイデンに泣きついて年明けの訪米に招待して貰ったんでしょう」などと書かれています。
これまで岸田首相は「聞く力」をアメリカに対して大いに発揮してきました。
その最たるものは、防衛費をGDP比1%から2%へ増額したことです。
予算というのは1割、2割増やすのもたいへんなのに、あっさり倍増したのには驚きました。
岸田政権はウクライナ支援にも巨額の支出をしています。
今年2月の時点で岸田首相は「55億ドル(7370億円)の追加財政支援をすると表明した」と日経新聞は書いています。
日本の防衛費増額やウクライナ支援はアメリカにとってありがたいことですから、バイデン大統領が岸田首相を国賓待遇で招待したのも当然です。
このようにひたすらアメリカに追従する外交を日本国民も支持してきました。
岸田首相も長年外務大臣を務めたことからそれがわかっていて、自信を持ってやってきたのでしょう。
ところが、最近は国民の意識が変わってきました。
要するにこれまでの日本外交は「経済大国の外交」でした。
たとえば日本の首相がアジア・アフリカの国を訪問すると、必ず経済援助の約束をします。豊かな国が貧しい国に援助するのは当然です。しかし、日本がどんどん貧しくなってくると、国民の不満が高まってきました。こんな“バラマキ外交”をするのではなく、国内のことに金を使うべきだという声が強まりました。
防衛費増額もウクライナ援助も要するに「経済大国の外交」です。今の日本にそんなことをする余裕はありません。
アメリカはNATO諸国にも軍事費GDP比2%を要求していて、ドイツも2%に引き上げることを約束しました。
しかし、日本とドイツなどの国では財政赤字のレベルが違います。
債務残高の国際比較(対GDP比)

財政赤字国の日本は他国並みの負担を要求されても断って当然です。ところが、日本は断らなかったのですから、これはバイデン大統領にとっては大きな成果です。
「日本は長期にわたり軍事費を増やしてこなかったが、私は日本の指導者に、広島(G7広島サミット)を含めて3回会い、彼を説得した」と語って、その成果を自慢しました。
岸田首相はバイデン大統領に屈しましたが、防衛費GDP比1%を2%にするのはたいへんです。
これまで防衛費と文教科学振興費はだいたい同額でしたから、文教科学振興費をゼロにして、それをそのまま防衛費に回す計算です。
もちろんそんなことはできませんから、文教科学振興費のほかに福祉や公共事業費などを少しずつ削り、増税し、国債を増発するということになり、今その議論をしているわけです。
岸田首相は所信表明演説で「経済、経済、経済」と言いましたが、日本は乏しい金をアメリカに貢いでいるので、少しも経済はよくなりません。
日本は敵基地攻撃能力として400発のトマホークを3500億円で購入して配備する予定ですが、本来ならアメリカが自費で購入するところを日本が代わりに購入するのですから、アメリカにとっては笑いがとまりません。
このところ岸田内閣支持率が急落しているのは、防衛費倍増のツケが回ってきたからです。
岸田首相は国民の税金を使ってみずからの国賓待遇を買ったようなものです。
今後日本は、分相応の「財政赤字国の外交」をしていくしかありません。



