
東京都千代田区立麹町中学校でダンス部がヒップホップダンスの発表をすることが禁じられ、波紋を呼んでいます。
麹町中ダンス部では春の体育祭と秋の文化祭でヒップホップダンスを発表するために週2回ヒップホップ専門のコーチから指導を受けてきましたが、4月からは活動内容を「創作ダンス」に変更することを学校側が決定、コーチも交代し、体育祭と文化祭でのヒップホップダンスの発表もなくなりました。
保護者らが学校に抗議したところ、1学期末の7月まで週1回だけヒップホップの自主練習をすることが認められましたが、ある保護者は「部員たちは学校側の一方的な変更で別の部に入れられたようなもの」と話しています(朝日新聞の『部活でヒップホップ、だめ? ダンス部、中学校が「創作ダンス」に』より)。
これは単に一中学校の部活の問題ではなく、日本の学校教育全体の問題でもあります。
重層的な問題でもあるので、ひとつずつ解きほぐしていきたいと思います。
まずこれを「ヒップホップ」の問題ととらえることができます。
ヒップホップは1970年代にアメリカで生まれた黒人の音楽、ダンス、ファッションの大衆文化です。
そのため、「不良の音楽」ととらえる向きもあります。ジャズやロックなどもみな昔は「不良の音楽」でした。
「ヒップホップ禁止は当然」とか「部活にヒップホップはふさわしくない」とか「ヒップホップをやりたければ学校外でやればよい」といった意見がありますが、これらはみなヒップホップに対する価値観に基づく意見です。
それから、学校と部活の関係という問題があります。
ダンスといってもいろいろあります。ダンス部という名前であればどんなダンスをやってもいいはずです。
どんなダンスをやるかは、ダンス部が決めることです。
ところが、麹町中では学校が決めたわけです。
しかも学校は部員たちの希望とは違うことを決めて、押しつけました。
部活動の破壊といわれてもしかたありません。
学校が部活に対してこうした理不尽なことをしてもいいのかと思いますが、文科省は容認しているようです。
生徒が理不尽なブラック校則に縛られていても、文科省はなんのアクションも起こさないですから、部活でも同じなのでしょう。
文科省は生徒を管理の対象としか見ていません。
2017年告示の学習指導要領総則には部活動に関して「生徒の自主的、自発的な参加により行われる部活動については、スポーツや文化、科学等に親しませ、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等、学校教育が目指す資質・能力の育成に資するものであり、学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意すること」とあり、この中に「生徒の自主的、自発的な参加」という言葉があって注目されました。
それまでは生徒は最低ひとつの部に所属しなければならないという学校があり、部活が強制されていましたが、そういうことは否定されたわけです。
しかし、この「自主的、自発的」はあくまで「参加」にかかった言葉で、部活の内容について「自主的、自発的」を認めたわけではないと思われます。
ともかく、日本の学校は生徒の意志を平気で無視するというとんでもないところです。
ミュージシャンのGACKT氏はXにおいてヒップホップ禁止問題について「何でよくわからん偏った大人の尺度で子供たちを縛るのか?」「そもそもダンスは自分の表現のためのもの。表現することに縛りをつけるのが教育と呼べるのだろうか?それはまるで、絵を描きたい子に絵の具はダメだ!墨だけ使え!と言っているようなもの」「今の日本を象徴しているかのような歪んだ教育の末路とも言える」などと意見を述べました。
ゆたぼんのパパで心理カウンセラーの中村幸也氏もXにおいて「このようになんでもかんでも禁止することによって子どもたちは可能性を奪われて凡人化されていく。しかも『学校』の禁止令は人権侵害スレスレのものばかり」と述べました。
麹町中がヒップホップ禁止令を出した背景には、大きな教育観の対立がありました。
麹町中は公立中学ですが、昔から日比谷高校に多数の合格者を出し、越境入学者も多くいるという名門中学校です。
2014年に工藤勇一氏が校長に就任すると、生徒の自主、自律を尊重した学校改革に取り組み、宿題廃止、定期テスト廃止、固定担任制廃止、校則の自由化など大胆な方針を打ち出しました(定期テストは廃止しても成績をつけるための別の形式のテストはあります)。
これは評判となり、越境入学者はさらにふえ、工藤校長は「カンブリア宮殿」や「林先生の初耳学SP」に出演するなどし、何冊かの著書も出版しました。
こうした学校が可能で、評判もよいとなれば、日本の学校教育も変わっていくはずです。
麹町中はいわば希望の星です。
ただ、これは文科省の教育の否定です。
工藤氏は文科省関係の公職にもついているので、文科省との関係は悪くなさそうですが、文科省としては工藤氏の教育方針を認めるわけにはいかないはずです。
工藤氏は2020年3月に校長を退任しましたが、後任の校長が同じ路線を継承しました。
しかし、2023年4月に堀越勉氏が校長に就任すると、7月の保護者向け学校説明会で、定期試験の実施、学級担任制の導入、指定の制服・体操着の着用などの方針を表明、方針転換の理由としては生徒の学力向上、生活指導強化の必要性を挙げました。
要するに工藤校長の方針を全部くつがえして、「当たり前」の学校に戻すようです。
ヒップホップ禁止もその一環なのでしょう。
日本の教育を根本的に変革する可能性を堀越校長一人がつぶそうとしているわけです。
もっとも、堀越校長の背後に文科省あるいは千代田区がいるのかもしれません(樋口高顕千代田区長は都民ファーストの会推薦で当選)。
堀越校長には、個人の考えでやっているのか、文科省の後押しがあるのか、問いただしたいところです。
いずれにしても、麹町中のヒップホップ禁止令は、日本の学校教育の今後を左右する問題です。
文科省式の管理教育か、工藤校長式の自由教育かが問われています。
もちろんどちらがよいかは明らかです。
文科省式の管理教育では子どもの意欲も創造性も失われてしまいますし、それ以前に、子どもの自殺、いじめ、不登校が統計的に増加していることで破綻は明らかです。
教育といってもむずかしく考える必要はありません。
子どもが元気になる教育がよい教育です。
麹町中がヒップホップ禁止令を出した背景には、大きな教育観の対立がありました。
麹町中は公立中学ですが、昔から日比谷高校に多数の合格者を出し、越境入学者も多くいるという名門中学校です。
2014年に工藤勇一氏が校長に就任すると、生徒の自主、自律を尊重した学校改革に取り組み、宿題廃止、定期テスト廃止、固定担任制廃止、校則の自由化など大胆な方針を打ち出しました(定期テストは廃止しても成績をつけるための別の形式のテストはあります)。
これは評判となり、越境入学者はさらにふえ、工藤校長は「カンブリア宮殿」や「林先生の初耳学SP」に出演するなどし、何冊かの著書も出版しました。
こうした学校が可能で、評判もよいとなれば、日本の学校教育も変わっていくはずです。
麹町中はいわば希望の星です。
ただ、これは文科省の教育の否定です。
工藤氏は文科省関係の公職にもついているので、文科省との関係は悪くなさそうですが、文科省としては工藤氏の教育方針を認めるわけにはいかないはずです。
工藤氏は2020年3月に校長を退任しましたが、後任の校長が同じ路線を継承しました。
しかし、2023年4月に堀越勉氏が校長に就任すると、7月の保護者向け学校説明会で、定期試験の実施、学級担任制の導入、指定の制服・体操着の着用などの方針を表明、方針転換の理由としては生徒の学力向上、生活指導強化の必要性を挙げました。
要するに工藤校長の方針を全部くつがえして、「当たり前」の学校に戻すようです。
ヒップホップ禁止もその一環なのでしょう。
日本の教育を根本的に変革する可能性を堀越校長一人がつぶそうとしているわけです。
もっとも、堀越校長の背後に文科省あるいは千代田区がいるのかもしれません(樋口高顕千代田区長は都民ファーストの会推薦で当選)。
堀越校長には、個人の考えでやっているのか、文科省の後押しがあるのか、問いただしたいところです。
いずれにしても、麹町中のヒップホップ禁止令は、日本の学校教育の今後を左右する問題です。
文科省式の管理教育か、工藤校長式の自由教育かが問われています。
もちろんどちらがよいかは明らかです。
文科省式の管理教育では子どもの意欲も創造性も失われてしまいますし、それ以前に、子どもの自殺、いじめ、不登校が統計的に増加していることで破綻は明らかです。
教育といってもむずかしく考える必要はありません。
子どもが元気になる教育がよい教育です。